九段下「昭和館」歴史を伝える記憶装置としての建築をレポート

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今日は東京の九段下に建つ昭和館を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。

【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走

【この記事で分かること】
・昭和館を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・昭和館の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・昭和館の建築的な見どころや注目ポイント

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1.九段下の駅前に建つ国立の博物館 昭和館を訪問

今日訪れたのは東京の九段下駅を出てすぐのところに建つ昭和館です。

昭和館は、戦中・戦後の国民生活の様子を展示する国立の博物館です。
元々昭和館は、戦没者の遺族をはじめとする国民が経験した戦中・戦後の国民生活上の労苦や戦争の経験を後世代に伝えることを目的に建設計画が検討され、1993年に「戦没者追悼平和祈念館」として具体化された施設でした。その後さらに詳しい検討と有識者等からの意見を反映させつつ1998年にオープンに至りました。

昭和館の建設に当たっては、戦後の日本を代表する建築家の菊竹清訓氏が建物の設計を手がけ、地上7階地下2階建てのチタンパネルによる外観が印象的な建物が完成しました。

昭和館

菊竹清訓氏といえば、以前このブログでも紹介した両国の江戸東京博物館の設計を手掛けたことでも知られますが、この建築も建物を空中に持ち上げて、足元に広場をつくるデザインが特徴的です。
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昭和館は、外観は九段下を訪れる度に何度か見学したことがあったのですが、実際に中に入るのは今回がはじめて。

昭和館の建物を改めてみてみると、外観はチタンパネルで覆われていて、開口部が殆ど無いことに気づきます。
開口部がないので、外からはこの建物が一体何階建てでなんの建物なのかよくわかりません。

一見して換気塔のようにも見えますが、換気棟としては大きすぎる建物は、昭和館の設計にあたっては京都の正倉院をモチーフにしたともいわれています。
正倉院といえば、伝統的な校倉造の倉庫建築ですが、昭和という時代の記憶を内包する一種の記憶装置と考えると腑に落ちます。

外壁のチタンパネルという素材は、経年劣化の極めて少ない素材ですが、戦中・戦後の記憶を永きに渡って後世に残し、伝える為に選定されました。
昭和館は既に竣工から四半世紀の時が経ちましたが、25年以上経った現在でも変わらぬ姿で皇居のお堀の片隅に佇んでいます。

反射を抑え、垂直に掘られた溝によってもたらされる微妙な陰影は、派手さはないですが確かな存在感で何かを訴えかけてくるようです。

また、開口部の殆ど無い建物の内部はある種外界とは隔離された空間となっていて、建物の中に入ることで、当時の時代にタイムスリップしたかのような、時を超えた展示体験ももたらしてくれます。

2.特別企画展を満喫!時期ごとに様々に企画される展示は要チェック

昭和館の建物は1階がエントランスロビー・総合案内・チケット売り場等、2階が外部広場、3階が特別企画展示場、4階が図書室、5階が映像・音響室、6・7階が常設展示室となっていています。

この日は、3階の特別企画展示場で「歴史探偵 半藤一利展」が行われていたので、常設展示と併せて見学してきました。

半藤一利は1930年生まれの戦史研究家、作家で、「昭和史」などの著作で知られる人物です。
実は今回の昭和館の見学は、少し前に半藤氏の代表作である昭和史を読む機会があったり、先日レポートした中延のブックカフェ隣町珈琲でたまたま半藤氏の作品が置かれた店の近くの席に座ったことがきっかけでもあります。
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昭和館の施設は、基本的には常設展示以外は無料で楽しめます。(もちろん企画によりますが、特別企画展は入場無料のことが多いです)

常設展示のチケットは、入口を入ってすぐの場所にある自動券売機で購入できます。
チケットは大人400円、高校・大学生200円、65歳以上360円、中学生以下は無料です。

チケットを購入した後は、まずはエレベータで無料の特別企画展示室へ。
今回の展覧会では、少年時代に戦争を体験し、その後昭和史の研究と執筆に人生を捧げた半藤氏の生涯を丁寧に紐解いていてとても見ごたえがありました。

特に少年時代に体験した強烈な戦争体験や、青年時代の挫折、その後の文藝春秋時代のエピソードを通じて、半藤氏の生の人間性に触れることで、半藤氏に対する見方が大きく変わりました。

こちらは、半藤氏の書斎の再現展示コーナー。
半藤氏が文藝春秋を退社する際に記念として譲り受け、その後も自宅での執筆活動で使われることとなった実際の机と椅子を肌で体験できました。

私が訪れたのはちょうど8月のお盆の時期でしたが、3階の特別企画展の他にも、4階の図書室や5階の映像ライブラリーでも子供の夏休みに合わせたちょっとした小中学生向けイベントが行われていました。

3.閉ざされた常設展示空間で昭和の時代にタイムスリップ

続いて6・7階にある常設展示ゾーンへ。
常設展示ゾーンでは、戦中のくらしに関する様々な資料が展示されています。
統制下の生活や、召集令状、残された家族の様子などが貴重な資料や再現模型などでリアルに伺うことができます。

館内はあまり混雑していなくて、ゆっくり展示を見ることがてきましたが、70〜80歳くらいのおじいさんが当時の召集された人の手記をじっとみていたりと、展示物そのものだけでなくそれを受け取る側の人々の思いも一緒に体感でき、胸に深く刻まれるものがありました。

展示は実際に再現模型の中に入って体験できるものがあったりと、様々な工夫がされているのもとてもよかったです。

意外なことに若い人や子連れの来館者もいるようで、特に子供には体を使って体験できるコーナーが人気のようでした。

2フロアを使った展示は、とても見ごたえがありました。
最初に書いたように、チタンパネルによって外界から隔絶された展示空間によって、展示室内では展示内容に入り込み、当時の世界にタイムスリップしたかのような体験ができました。

エレベーターで1階に戻って、外界の光が差し込むエントランスに立つと、現代に「戻ってきた」ような感覚となり、この体験を今後我々の世代はどう活かし伝えていくのか考えされられました。

最後に2階の広場を見学します。
2階の広場は建物脇の階段とスロープからアクセスできます。

4本の脚で支えられた建物の足元の広場は、脚の向こうに皇居の緑が見えたり、靖国神社の敷地の端が見えます。
昭和館でみた展示の余韻を感じながら、広場を散策して、思考を整理します。

改めて訪れてみた昭和館でしたが、予想以上に見応えがあり、充実した建築体験ができました。
とてもオススメのスポットですので、皆さんも機会があれば是非訪れてみてくださいね。

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昭和館
設計:菊竹清訓/菊竹清訓建築設計事務所
所在地:東京都千代田区九段南1-6-1
アクセス:九段下駅より徒歩約1分
竣工:1998年
開館時間:10:00~17:00
休館日:月曜
常設展入館料:
 65歳以上360円
 大人400円
 高校・大学生200円
 中学生以下無料
公式HP:https://www.showakan.go.jp/


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