今回は栃木県の栃木市に建つ栃木市立文学館を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・栃木市立文学館を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・栃木市立文学館の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・栃木市立文学館の建築的な見どころや注目ポイント
1.歴史ある旧町役場を改修した文学館を訪問
今日は東京を少し離れ、東武線を北上した栃木県栃木市で建築巡りをしてきました。
今回の一番の目的は、2022年に旧町役場の建物を大改修してオープンした栃木市立文学館を訪れること。
この栃木市立文学館は、令和の大改修と呼ばれる今回の改修事業によって栃木県で唯一の公的な総合文学館として2022年4月にオープンしたものです。
ちなみに栃木市は古き時代の建築と水運が合わさった風景が残る「蔵の街」として知られる場所。
市内には今も数百とも言われる蔵や、洋館をはじめとする近代建築が残されていて、週末には観光客で賑わう街でもあります。
私も学生時代には大学の授業絡みの街歩きや、個人的な建築巡りで何度か訪れたことのある思い出深い場所でもあります。
栃木市立文学館が建つのは、東武線栃木駅の北側に流れる巴波川(うずまがわ)を中心としたエリアです。
このエリアは江戸時代の頃から北関東の水運の結節点となっており、今も多くの蔵や商店が残るエリアとなっています。
明治時代には栃木県庁舎もこのエリアに建てられていて、その県庁舎跡に1921年(大正10年)に建てられたのが今回訪れた旧栃木町庁舎(現栃木市立文学館)なのです。
ちなみに私が以前訪れた時は、まだ市役所別館として使われていました。
市の役所としての建物は2014年まで現役で使われた後、築100年を迎えるタイミングで大改修が行われて、2022年の4月に栃木市立文学館としてリニューアルオープンとなりました。
2.登録有形文化財でもある古き洋館を文学館にコンバージョン
巴波川の川沿いの道を少し入ると、栃木市立文学館の鮮やかな色の外観が目に飛び込んできます。
今から100年以上前の1921年(大正10年)に建てられた建物は、木組みの躯体をそのまま外観に活かしたハーフティンバー様式となっていて、まさに大正ロマン雰囲気漂うハイカラな洋館となっています。
以前訪れた時は手前の建物側面には増築されたと思われる平屋がついていましたが、今回栃木市立文学館へコンバージョン(用途変換)した際に、元のデザインに戻すために撤去・修復されました。
今回の令和の大改修では当時の写真や資料を参照し、可能な限り創建当時のデザインへの復元がなされています。
正面の玄関部分は、町役場時代の車寄せの名残。
正面の車寄せは決して大きくはないですが堂々とていて、車寄せがあることで建物全体が一気に引き締まってみえます。
現在はこちらの正面入口は閉鎖・保存されていて、文学館の実際のエントランスは建物西側にあります。
リューアル工事の中では、竣工当初の建物にできるだけ近づけつつ、スロープやエレベーターなど現代の建物に必要な設備の追加や、文学館としての改装された部分も多くあります。
こちらが建物の西側のエントランス部分ですが、増築された部分はガラスとコンクリートによる現代的なデザインとなっています。
本体部分は淡いグリーンの木による優しいイメージでしたが、増築部分をあえて現代的なデザインとすることで、古い建物とのコントラストが寄り際立つようになっています。
このような手法は近代建築の改修デザインではよく使われ、例えばこのブログでも以前紹介した上野の国際子ども図書館や洗足の勝海舟記念館などでも同じ手法が用いられています。
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・上野「国際子ども図書館」新旧が融合した素敵な建築をレポート
・洗足「勝海舟記念館」近代建築と現代建築の融合した建物を徹底レポート
詳しくはこちらの記事でも紹介していますので、興味のある方は是非併せてご覧ください。
3.内部を見学!歴史の詰まった建物で栃木ゆかりの文学者の足跡に触れる
建物の内部は、1階の受付、休憩コーナー、展示スペースと2階の常設展示室と多目的ホールで構成されています。
内部は優しい木のテイストを中心にしながら、その中でも白や淡い色の内装と濃い木のコントラストが際立っていて、大正時代の雰囲気が存分に堪能できる空間となっていました。
また、1階の外周部にまわる回廊は、高い天井高と大きな窓による開放的で自然光溢れる空間となっていて、こちらも見応えがありました。
展示によって異なりますが、私が訪れた時は2階がチケットが必要な展示となっていて、栃木ゆかりの作家を紹介する常設展と、文学館の開館記念の企画展「令和大改修竣工記念企画展 旧栃木町役場庁舎100年のあゆみ」が行われていました。
また、企画展は1階の無料ゾーンでも展示がされていて、今回の令和の大改修の様子を模型や実物資料で見ることができました。
実際の建築空間の中で保存された建築材や図面、再現模型などの展示資料が見れたこともとてもよい体験となりました。
また、改修に際しては、建物の構造が覗ける床の開口部などもありました。
ちなみにこの旧栃木町庁舎の設計者は、私が所有している書籍(建築採集記 関東甲信越編/建築知識スーパームック など)を見ると、当時の町役場の技師であった堀井寅吉となっています。
しかし今回の企画展示でも展示されている棟札では柏分寅雄、藤野兼政の名が記されていて、情報が一致しません。
この辺りについては調べる限りハッキリとした事実は分かっていないようです。
2階の常設展示は撮影禁止だったので具体的な写真はお見せできないですが、栃木にゆかりのある山本有三、吉屋信子、柴田トヨの3人を中心にした展示となっています。
3人が生きた時代もこの町役場は建っていたので、ことあるごとに彼らもこの場を訪れていたのかと思うと感慨深いです。
展示は貴重な資料が多数見れる他、それぞれのブースが併設されて見ることができる構成となっているので、作家毎の違いや個性も浮かび上がってきて面白かったです。
2階の展示を一通り堪能した後は、再び1階に降りて建物を散策しました。
久しぶりに訪れた建物でしたが、素敵な建物と展示を体験できて大満足の建築巡りとなりました。
とても魅力的なスポットですので、機会があれば皆さんも是非訪れてみてくださいね。
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栃木市立文学館
設計:堀井寅吉または柏分寅雄+藤野兼政
所在地:栃木県栃木市入舟町7-31
アクセス:栃木駅より徒歩約20分
竣工:1921年(2022年リューアルオープン)
開館時間:9:30~17:00
休館日:月曜、祝日の翌日、年末年始
観覧料:
常設展 一般 220円
企画展 企画による
備考:国登録有形文化財
公式HP:https://www.city.tochigi.lg.jp/site/museum-tclm/
※記載している営業時間や金額は記事執筆時点のものです。変更となっている場合もありますので、訪れる際は公式HP等をご確認ください。
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