鈴木エドワード氏の代表作「さいたま新都心駅」の建築に迫る

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皆さんはさいたま新都心駅に行ったことはありますでしょうか。
埼玉県にお住まいの方は、コクーンなどの商業施設や近年できた病院などでお馴染みのさいたま新都心駅。また、それ以外の方もさいたまスーパーアリーナは訪れたりテレビで見たことがあるという方は多いのではないでしょうか。

今回はそんなさいたま新都心の玄関口でもあるさいたま新都心駅を久しぶりにこの駅を訪れてみましたので、その建築の感想や見方のポイントをレポートしたいと思います。

【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走

【この記事で分かること】
・さいたま新都心駅を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・さいたま新都心駅の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・さいたま新都心駅の建築的な見どころや注目ポイント

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1.さいたま新都心駅とは

さいたま新都心駅は2000年に開業した埼玉県さいたま市にある駅舎です。
さいたま新都心の街開きに先立って開業し、その後できたさいたまスーパーアリーナや合同庁舎群、商業施設を迎える玄関口としての駅となっています。

建物の設計は鈴木エドワード氏とジェイアール東日本建築設計が行っており、2019年に亡くなった鈴木エドワード氏の代表作でもあります。

2.鈴木エドワードってどんな人?

鈴木エドワード氏は1947年埼玉県生まれの建築家です。
1971年にノートルダム大学、ハーバード大学大学院を経て丹下健三都市建築設計事務所に入所、その後まもなく独立して鈴木エドワード建築設計事務所します。
初期の代表作である渋谷の宇田川派出所は東京に住んでる人であれば一度は見たことがある方も多いのではないでしょうか。

宇田川派出所(渋谷)

その後も数々の話題となる建築を発表し続けていましたが、つい先日の2019年9月に71歳で亡くなられました。
さいたま新都心駅は中期~後期の代表作となりますが、その少し前にJR東日本の赤湯駅舎や大曲駅舎、さいたま新都心駅の2年後には東京駅構内にある銀の鈴待合い広場など駅舎関係のプロジェクトにも多く携わっています。

また、あまり知られていないことではありますが、鈴木エドワード氏は大学卒業後のごく短い期間ではありますが、バックミンスター・フラーというアメリカ建築家のスタジオにいた時期があります。
鈴木エドワード氏の建築からはこのフラーという建築家の影響も大きく見てとることができますが、この点は後ほど紹介します。。

3.早速さいたま新都心駅を見学

早速さいたま新都心駅を見学します。
駅のホームは後ほど紹介するとして、まずは改札を出たところの自由通路部分から。

最初の感想は、広い!!!そして明るい!!!でした。
写真では見たことがあったのですが、実際に見てみるとその大きさに圧倒されます。
今まで見たことのないスケールの解放感と、決して閉鎖的でなく光が漏れる屋根がスゴイです。
その自由通路は、さいたまスーパーアリーナなどで大量の人の行き来があることから「約80mの幅の空間に柱を1本も立てず、さらに23mの幅員を確保する」という条件があったそうですが、それを楕円形にカーブする大屋根によって実現しています。

駅舎に限らず建築は普通、壁、天井、屋根というパーツに分れていますが、ここではそれらがすべて一体になっています。
鈴木氏はこの駅舎のデザインに当たって雲のような建築を目指したと語っていますが、まさにこれは建築の様であって建築でない、言葉はおかしいですが一種の大きな「人工自然」のような建築となっています。

4.大屋根がそのままホームまで伸びている!

その大きさや明るさに圧倒された大屋根ですが、その屋根はそのまま改札の中まで伸びていきます。
屋根は何本もの帯状の折板材とガラスによって構成されていますが、その帯は少しずつずれながら改札の中まで続いていきます。

そしてさらにその何本かはそのまま階段を降りてホームの屋根へと続いていっています。
ホームから来た時にはその連続した屋根に導かれるように自由通路の大屋根まで、自由通路の大屋根からはそのままホームまで連続した空間が続きます。

駅舎の設計はホームでの動線や安全上・機能上の制約が多く、建築家がデザインする際もコンコース部分だけを主にデザインするという例も少なくありません。
さいたま新都心駅では、この「屋根」に注目することでホームから改札を出た自由通路部分までを「1つ屋根の下」の一体的な建築としてデザインしていることがポイントですね。

ホームに降りてみると、ほとんどこの屋根に目を向けている人はいませんでした。
「しかし、ここなんかちょっと気持ちいいな」な感じると、そこは波打つ屋根の天井が高いところだったりして、単純な駅のホームの中にあっても退屈しない変化と気持ちよさを生みだしていることが分りました。

5.More With Lessの建築

この大屋根は最も効率がいいと判断された楕円形の形状で、1つの形状が壁であり屋根であり構造体を兼ねています。
そしてその素材は全体の1/3をガラス、残りを折板材とすることで低コスト化を実現しています。

また、トイレやカフェなど小さく簡易的でよいものに関してはこの大屋根の下に簡易的につくっています。

このことは壮大なスケール感の屋根空間に対し、これらの部屋を身体感覚に近いスケールに落とし込んで身近な存在にしているだけでなく、その後の改修時にもそこだけを改修すればいいのでとても効率的なつくりになっています。

「Less is More(より少ないことはより豊かなことである)」というのは近代建築の3巨匠であるミース・ファンデル・ローエの言葉ですが、さいたま新都心駅ではこれに対して「More With Less(より少ないものでより多くのことを成す)」の建築であると言えます。

6.「近代建築の概念にない建築」なことに注目!

過去の記事「ミキモト銀座には柱も壁も窓もないけど、次代を切り開く建築だった」や「ディオール表参道はドレスを纏った建築!?」では、2000年以降、現代の建築家は近代建築の柱や壁といった概念を打ち壊す建築をつくってきたと紹介しました。
鈴木エドワード氏はこういった建築家の流れとは無関係の位置にいましたが、さいたま新都心駅でその最初期の2000年にまさにそういった思想の建築を生みだしていたことは驚きです。

この系譜はノートルダム大学卒業後に鈴木エドワード氏が在籍していたバックミンスターフラーという建築家の影響が大きく関係しているのだと思います。
バックミンスターフラーはアメリカの建築家で、建築家という枠にとらわれない超天才です。現代のレオナルドダビンチとも呼ばれ建築家であり構造家であり都市計画家であり、数学者であり、発明家であり、詩人でもあり、「ノーベル平和賞」の候補にもなった人物です。

フラーは近代建築の大前提となっている垂直・水平を前時代のものとして否定して、独自の数学体系から生み出した魔法のようなドームや、クラウドナインという宙に浮くこれも魔法のような(理論的には実現可能な)都市を提案しています。

フラーは「人間が何千年も掛けて培ってきた垂直水平の価値観を元にした文明は次のフェーズにいこうとしている、これまでの常識に囚われずデザインするとこでより豊かで持続可能な世界は実現できる」と説きました。
先ほどの「More With Less」というのもフラーの言葉です。
そうしてみるとフラーのモントリオール万博 アメリカ館をはじめとするジオデシックドームとさいたま新都心駅は巨大な人工環境のシェルターとその内側にある小さな建築といった共通点が沢山あることに気付きます。

鈴木エドワード氏は亡くなる2013年にこちらの「神のデザイン哲学 GOoD DESIGN」本を出していますが、この本はフラーの残した哲学を何とか実践しようと考え・行動した結果にできた本だと言えます。

7.さいたま新都心は見ごたえ満載な建築が一杯

また、さいたま新都心ではこの自由通路を挟んでさいたまスーパーアリーナやけやき広場、合同庁舎群、商業施設群など2000年以降の大手設計事務所・ゼネコンが設計した建築を一手に見学することができます。

特にけやき広場は建築とランドスケープが合わさった見事な建築となっていますので、これ自体を目的に訪れてもいいくらいのおススメのスポットです。
また、イベントも定期的にやっているので、イベントの時期に合わせて訪れるとより楽しめます。

私が訪れたのは11月の紅葉の季節だったのですが、色づく紅葉がとても美しく、たまたまイベントもやっていたので最高に楽しめました。
これからの季節ですとイルミネーションがやっているので、夕方~夜にかけてみてみるのもおススメですよ。

いかがでしたでしょうか。
存在は知っていても意外と見逃しがちな駅建築。
ちょっと注意してみると意外なポイントや面白さが見つかる建築だと思いますので訪れた際には是非チェックしてみて下さい。
尚、バックミンスターフラーについて気になった!という方は↓の宇宙船地球号操縦マニュアルが最初におススメしたいイチオシ書籍です。もう、何十回と読んだ私のバイブル的な本でもあるおススメ本です。

さいたま新都心駅
設計:鈴木エドワード建築設計事務所+ジェイアール東日本建築設計事務所JV
所在地:さいたま市大宮区吉敷町4丁目261-1
竣工:2000年

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