今回は今までに私が訪れた建築の中から有名建築家が設計したお寺建築をご紹介します。
今回改めて振り返ってみるとどの建築もそれぞれの建築家の特長が滲みだしていてとても面白いです。
古いものから最新のものまで幅広くご紹介していたいと思いますので、気になった建築があれば是非実際に足を運んでみて下さい。(見学は許可が必要なものもありますのでその辺はご自身でご確認の上見学をお願いします。)
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・東京都内の素敵寺院の建築巡りを写真と文字でレポート
・著名な建築家がデザインした寺院建築をまとめ
1.仙行寺本堂ビル(原田真宏/マウントフジ・アーキテクツ)

まずはじめに紹介する仙行寺本堂ビルは、池袋駅からほどなくの南池袋公園の裏側にある立体的なお寺です。
「都市の中の山寺」というコンセプトのもと、現代都市生活者の為のお寺として設計されています。
一見すると奇抜に見えますが、実際に訪れてみるとシックな色彩と緑が街に馴染んでいて違和感は感じませんでした。

上部の緑が本当に山の様で、高さが抑えられ水平面が強調されるエントランスを入るときにはまさに「入山」するような感覚を覚えます。

設計:原田真宏/マウントフジ・アーキテクツ
所在地:東京都豊島区南池袋2-20-4
アクセス:池袋駅より徒歩約10分
竣工:2018年
2.観音寺(石山修武)

観音寺は、早稲田大学のすぐ近くにあるアバンギャルド感が満載なデザインのお寺です。
不整形な敷地と緩やかさ高低差に従ってつくられた建築は、そのまま階段を上がって2階が入り口となっています。

幾重にも折れ曲がる屋根から集まった雨水は階段を沿った雨樋で一か所に流されます。1990年代の脱構築のデザインを感じつつ、前時代的といった古めかしさを感じさせないデザインに注目です。
実際に見てみると写真のような奇抜さはなく、落ち着いた雰囲気すら感じさせるのも面白かったです。

設計:石山修武
所在地:東京都新宿区西早稲田1-7-1
アクセス:早稲田駅より徒歩約8分
竣工:1996年
3.乗泉寺(谷口吉郎)

乗泉寺は建築家の谷口吉生氏の父であり、東京国立博物館東洋館等の設計でも知られる谷口吉郎氏が設計を手掛けたお寺です。
コンクリートによる低層のデザインは一見シンプルですが、権威ばっていない、一般市民の為の建築として変わらぬ美しさが味わえます。
コンクリートの建物の内側には六角形の霊廟がありますが、こちらも最小限の装飾ですが美しいです。
また、建物の中は外のシンプルさを引き継ぎつつ、多様な光の入り方が楽しめたり、大空間の迫力の本堂だったりと、そのギャップと美しさを存分に味わえます。


設計:谷口吉郎
所在地:東京都渋谷区鶯谷町10-15
アクセス:渋谷駅より徒歩約7分
竣工:1964年
4.常在寺(横山公男)

常在寺は、伽藍建築の大家と称されることもある横山公男氏が設計を手掛けたお寺です。
横山氏の比較的初期の作品ですが、コンクリートを巧みに使い上部に浮くように湾曲した屋根を持つ建築です。60年以上前の建築とは思えない斬新なデザインと造形力ですが、この時横山氏は32歳。
すぐ近くには原田真宏/マウントフジ・アーキテクツによる仙行寺もあるので、60年以上の時を経て建てられた2つの建築を見比べるもの面白いです。

ちなみに池袋のおススメ建築についてはこちらの記事にまとめていますので、池袋を訪れる際は是非参考にしてみて下さい。
関連記事
・池袋で建築巡り!建築好きがおススメする名建築30選
設計:横山公男
所在地:東京都豊島区南池袋2-20-7
アクセス:池袋駅より徒歩約10分
竣工:1956年
5.善照寺本堂(白井晟一)

善照寺は雷門からほどなく歩いたところにある、建築家白井晟一の隠れた代表作ともいえるお寺です。
高床形式に白い外壁の建物は、まるで浮遊しているかのように感じられます。
装飾はなくシンプルな切り妻屋根の建築ですが、厳かで緊張感があり、白井晟一の建築と宗教建築が合わさったらこうなるのかと実感できる建築です。

設計:白井晟一
所在地:東京都台東区浅草1-4-15
アクセス:浅草駅より徒歩約10分
竣工:1958年
6.威光院(竹山聖+設計組織アモルフ)

威光院は、田原町駅をでて浅草通りから1本道路を入ったところに建つ寺院です。
室町時代後期に創建された由緒あるお寺は江戸時代の初頭に現在地に移転しました。
現在の建物は2012年に建築家の竹山聖の設計で建替えられたもので、反りのラインが際立つ屋根が浮かぶように架かる本堂や、型枠の木目が転写された壁面など、コンクリートによってスタイリッシュな建物の中に日本の伝統建築のエッセンスが凝縮されているのが面白いところ。
また、装飾を排し建物を抽象化することで、堅固な物質としての永続性と宗教的な普遍性の両方が表現されているのも素敵です。


設計:竹山聖+設計組織アモルフ
所在地:東京都台東区寿2-6-8
アクセス:田原町駅より徒歩約3分
竣工:2012年
■浅草寺子院(岡田信一郎+岡田捷五郎)
お寺本体ではないのですが、浅草をでもう一つ紹介したいのが浅草寺の住職さんたちの住まいである浅草寺子院(てらこいん)です。

浅草寺に目が行ってついつい見逃してしまいがちですが、実はこの建築、歌舞伎座や明治生命館を設計したことでも知られる岡田信一郎と岡田捷五郎による建物。
浅草寺子院は関東大震災後で焼失した21の子院を1つにまとめたもので、浅草寺北側の小道を入ったところに点在しています。当初は鉄筋コンクリートの2階建てでしたが、現在見てみると改修されて3階になっている建物もあるのが面白いところ。建築当初の姿を色濃く残しながらも改修・整備されて使い続けられているのが素敵です。
建物の設計は複数の建物の配置から各建物のデザインまで岡田兄弟が行っており、デザインを見比べながら見てみるのも面白いです。


ちなみに浅草のおススメ建築についてはこちらの記事にまとめていますので、浅草を訪れる際は是非参考にしてみて下さい。
関連記事
・浅草で建築巡り!おススメの名建築24選を紹介
設計:岡田信一郎+岡田捷五郎
所在地:東京都台東区浅草2-31
アクセス:浅草駅より徒歩約7分
竣工:1932年
7.瑞聖寺 庫裡(隈研吾建築都市設計事務所)

瑞聖寺(ずいしょうじ)は、江戸時代初期の1670年に創建された黄檗宗の寺院です。
境内の中心となる大雄宝殿は、日本に現存するこの時代の中国寺院として貴重な建築ですが、2018年に隈研吾建築都市設計事務所により庫裡が建て替えられました。
水庭を中心としたコの字の配置の新たな建物は、深い軒が重力から開放されたように伸びて荘厳な雰囲気を纏っています。
ボリューム感のある大雄宝殿と、水平に佇む庫裡の美しい対比も注目ポイントです。


設計:隈研吾/隈研吾建築都市設計事務所
所在地:東京都港区白金台3-21-19
アクセス:白金台駅より徒歩約3分
竣工:2018年
■一行院 千日谷浄苑
寺院建築といえば信濃町駅からすぐの場所に建つ納骨堂一行院 千日谷浄苑も見逃せません。

JRの線路、首都高速道路の高架と千日坂と呼ばれる細い坂道に挟まれた敷地に建つ納骨堂は、大部分を地下に納めていて地上部には木調の外装と深い出の屋根が静かに佇むデザインとなっています。
地下には4000以上の骨壷が収納され、自動搬送式により12の参拝口に運ばれてくる最新式の納骨堂となっています。
厳かで伝統を感じる外観ですが、数mもの長さで張り出した屋根や、陰影豊かなな瓦など現代建築としての魅力的なデザインにも注目です。


デザイン監修:隈研吾/隈研吾建築都市設計事務所
設計:竹中工務店+朱雀都市建築研究所
所在地:東京都新宿区南元町19-2
アクセス:信濃町駅より徒歩約2分
竣工:2017年
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8.築地本願寺(伊東忠太)

築地本願寺は、伊東忠太によるインド風の外観は他に類を見ない独特なデザインのお寺です。
このお寺は外観は印度風ですが中に入ると和風なデザインとなっていて、更に進んで本堂の内陣を見ると完全な和風建築となっているという不思議な建築です。

インド風、和風とっても細部まで創り込まれ、考え抜かれたデザインは見事としか言いようがなく、仏教の源流をインドまで遡り徹底的に研究・表現した唯一無二の建築となっています。
伊東忠太氏のアイコンでもある動物というか物の怪もそこかしこに見ることができ、探して歩くのも楽しい建築です。
尚、築地本願寺については詳しくはこちらの「インド風!?特異な寺院建築、築地本願寺を見学してきた」 でも解説しています。

ちなみに伊東忠太氏の東京都内のおススメ建築についてはこちらの記事にまとめていますので、伊東氏の建築を訪れる際は是非参考にしてみて下さい。
関連記事
・建築家 伊東忠太がデザインした都内のおススメ作品10選
設計:伊東忠太
所在地:東京都中央区築地3-15
アクセス:築地駅より徒歩約1分
竣工:1934年
9.清流寺深沢分院(宮崎浩/プランツアソシエイツ)

清流寺深沢分院は、駒沢オリンピック公園を少し南下したところに建つ寺院兼住宅です。
地下に住宅機能を納め、地上部は現代的な素材を組み合わせた抽象的なデザインとなっているのが特徴。
スタイリッシュさの中に日本的なモチーフや美学が浮かび上がっているのがとても面白く、コンクリートやガラスといった素材が繊細で美しい襖のようにみえたりと、現代の寺院らしい魅力的なデザインに注目です。


設計:宮崎浩/プランツアソシエイツ
所在地:東京都世田谷区深沢2-18
アクセス:駒沢大学駅より徒歩約20分
竣工:2005年
10.寳泉寺 客殿庫裏(メグロ建築研究所)

最後に紹介する寳泉寺 客殿庫裏は、雑色駅の東口から程なく歩いたところに建つ寳泉寺の客殿兼庫裏です。
歴史ある寺院に併設されたコンクリート造3階建ての建物はコンクリートのもつ堅固さ・普遍性と、木や紙の儚さ・フレキシブルさが合わさったデザインとなっているのが特徴。
水平に伸びる庇と2・3階の正方形の開口部のコントラストも鮮やかで、それぞれ違った陰影を落としながら刻々と表情を変化させているのも素敵でした。


設計:メグロ建築研究所
所在地:東京都大田区南六郷2-26-12
アクセス:雑色駅より徒歩約6分
竣工:2015年
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いかがでしたでしょうか。
普段あまり意識しないお寺ですが、建築家がデザインしたお寺はどれも個性的で見どころが満載です。気になった建築があれば是非訪れてみて下さい。
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