メタボリズムの傑作!中銀カプセルタワーを内部も含めて建築好きが徹底レポート【東京銀座】

今回紹介する建築はこちら。

汐留駅、新橋駅から歩いてすぐ、首都高の隣に聳え立つ中銀カプセルタワービルです。 前回も紹介したメタボリズム(新陳代謝)運動の主要メンバーであった黒川紀章氏設計の集合住宅です。
とにかく変わった見た目のこのビル、一体どんな考えの元につくられたのか。順を追ってご紹介したいと思います。

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1.そもそもメタボリズムって?

メタボリズムは、1959年に黒川紀章ら当時の日本の若手建築家のグループが開始した建築運動です。
「新陳代謝(メタボリズム)」からグループの名をとって、社会の変化や成長に合わせて有機的に成長する都市や建築を提唱したのがメタボリズムです。
当時メタボリズムを提唱した建築家たちは、新陳代謝する都市・建築という共通のイメージを持ちながら、それぞれ少しずつ異なった方向に理論を展開しながら数々の作品を生みだしました。
前回の記事の静岡新聞・静岡放送ビルもその一つですので是非合わせて読んでみてください。
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2.中銀カプセルタワービルの構成

中銀カプセルタワービルでは人の移動する階段やエレベータ、エネルギーや給排水などの設備を基幹となる2本のシャフト部分に納め、その周りに住居機能をまとめた細胞のようなカプセルが140個取り付けられています。

エントランスを入ると左右のエレベータホールから塔上のエレベータを使って各住戸へとアクセスできます。
エレベータの周りには階段が回っていて、整数階で降りた後には階段を半階移動してアクセスする住居もあります。

前述のメタボリズムの考え方の元、幹の周りに取り付けられたカプセルを取り外し可能なものとすることで、社会の変化や住まう人の生活に合わせて建物がフレキシブルに変化できるような建築として計画されました。
まさに新陳代謝するように更新されていく建築が目指されています。
カプセルのサイズは約10m²で、これはトレーラに積めるサイズをもとに決定されています。このカプセルを取り外し、週末は郊外に持って行って自然の中で過ごす、なんてことも考えられました。

よくよく見ると確かに1つ1つのカプセルはギリギリ車で搬送できそうにもみえます。
ちなみに1階には実際のカプセルが置かれ、少しだけですが中を覗くこともできます。

3.塔状の「人工土地」がポイント

中銀カプセルタワーを考える際のポイントは「人工土地」というキーワードです。

この建築が建てられようとしていたのは高度経済成長期です。
高度経済成長下において爆発的に増加する都市人口、国際化・情報化社会の到来によって加速する人々の移動、技術の発展による変化に対応する新しい建築が求められる中、水平に広がる街から、垂直に伸び、集約・更新される都市の姿が提案されたのです。
そしてその理論が「当時の日本の高度経済成長」や「東京という特殊な都市」という特殊な条件とが合わさることで、実際の建物として実現させてしまったのです。
この斬新な考え方と、その理論を実際の建物として建設してしまったことは、日本のみならず世界の建築家に大きな衝撃を与えました。

このメタボリズム運動は日本で初めて世界に認知・影響を与えた建築運動ともいわれています。
まさに日本、そして世界のの建築史が大きく動いた瞬間です。

4.一見特殊すぎる建物も下地は日本古来の感覚からすれば納得

こうしてつくられた中銀カプセルタワーやメタボリズムの考え方は、一見すると突飛押しもない発想に思えるかもしれませんが実はそんなこともありません。
例えば一度つくってしまえば数百年という単位で残ることが当たり前になっている家以外の建築に比べ、日本には20年ごとに更新する伊勢神宮の遷宮やの仕組みがあります。
また中銀カプセルタワーの小さなセルも、1坪の中に小宇宙を見出す日本的な感覚があれば100%の賛同は得られなくても、多くの人には十分受け入れられる余地はあります。

また、日本では土地から持ち上げられた高床式住居が古来からありますが、建物を土地から解放し空中に展開するという考え方にも馴染みやすいです。(石造りで地面にどっしりと構える海外建築の伝統からは大きく離れていますね)

こうした日本に昔からある自然な感覚をうまく未来の建築増に投影し、応用したのが中銀カプセルタワーの凄さでもあります。
そしてそんな建築デザインは東京という世界有数の人口密集地、そして高度経済成長という特殊な状況が合わさって、この奇跡ともいえる建築が生みだされたのです。

5.メタボリズム運動のその後と、現在の中銀カプセルタワー

メタボリズムの建築は技術的、経済的制約からそのほとんが実現されず、その運動自体も高度経済成長の終わりと共に終息していきました。
そんな中、この中銀カプセルタワーも2007年には老朽化やアスベストといった問題から取り壊しの危機に陥りました。
現在も様々な保存活動が続いていますが、安全性や予算の関係から現在も以前取り壊しの危機は続いています。

こちらは内部の水周り部分。現在は水が出なかったり、水はでてもお湯が出ないユニットもたくさんあり、設備としても既に限界に近付いています。
この老朽化問題は深刻で、今も継続的な保存活動が続いています。
建築が新陳代謝するというアイディアは残念ながらこの建築では実現されませんでしたが、様々な人の手でなんとか生きながらえさせようと努力されています。

こちらはエントランスホールと郵便受。隅々まで洗練されたデザイン、造形力も素晴らしいのですが、未来に向けた建築をつくってやろうという気概をひしひしと感じます。

こちらはカプセル内の造りつけの可動デスクです。
最小限の要素が集約したカプセルは昔の漫画で見た宇宙船の中のようでした。

こちらは当時の販売パンフレットの一部ですが、見開きで銀座近辺の都市や建築が描かれていて夢や希望を感じます。
私が中学生の時に初めて買った建築の本にこの建築のスケッチが書かれてて、中学生だった私はその奇抜な見た目が気持ち悪いなと思いつつも、強烈に印象に残っていたことをよく覚えています。

黒川氏と同じく丹下健三氏の弟子であり、共にメタボリストとして活動した磯崎新氏は2005年の丹下健三氏の葬儀にて以下のような弔辞を述べています。


建築することとは、単に街や建物を設計することではない、
人々が生きているその場すべて、社会、都市、国家にいたるまでを構想し、
それを眼に見えるよう組みたてることだ。
これが、私たちが教えていただいた<建築>の本義であります
-磯崎新-

まさにこの建築は磯崎氏のいう建築の本義に沿ってつくられた建築であり、黒川紀章という天才と時代との共鳴よってつくられた唯一無二の建築なのです。

■まとめ
幹となるシャフトに取り付いたカプセルが更新されることをで新陳代謝することが目指された建築
日本の文化や東京という都市だからこそ生まれ、実現した奇跡のような建築


↑メタボリズムについて合わせてみたいおススメ本も是非チェックしてみて下さい。
「メタボリズムの未来都市展──戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン」(Amazonで見る)

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■建築情報
名称:中銀カプセルタワービル
設計:黒川紀章
所在地:東京都中央区銀座8-16-10
最寄り駅:汐留駅徒歩5分、新橋駅徒歩5分
竣工:1972年

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