銀座「静岡新聞・静岡放送ビル」1本の木のような不思議な建築をレポート

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今日は新橋と有楽町の間の線路沿いに建つ静岡新聞・静岡放送東京支社ビルを訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。

【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走

【この記事で分かること】
・静岡新聞・静岡放送ビルを実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・静岡新聞・静岡放送ビルの基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・静岡新聞・静岡放送ビルの建築的な見どころや注目ポイント

この一見奇妙な建築は、日本建築界の超大御所、丹下健三氏が設計を手掛けたオフィスビル。
丹下氏といえば広島平和記念資料館や代々木第一体育館、東京都庁など数々の国家プロジェクトを設計し、「世界の丹下」と呼ばれた世界的な建築家です。

ではそんな世界的な建築家も言える丹下健三はなぜこんな不思議な形の建物をデザインしたのでしょうか。
その秘密を知るには、まずは「メタボリズム(新陳代謝)」について知るのが近道です。

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1.メタボリズムとは?

最近ではメタボリック症候群という言葉がよく聞かれるようになりましたが、決してメタボな建築というわけではありません。
メタボリズムは、1959年に当時の日本の若手建築家のグループが開始した建築運動です。
この運動を起こしたメンバーは東京大学丹下研究室で学んだ川添登、槇文彦、菊竹清訓、磯崎新、黒川紀章といったそうそうたる顔ぶれです。

メタボリック症候群と全く関係ないかというとそうでもなく、メタボリック症候群の語源でもある「新陳代謝(メタボリズム)」からグループの名をとった建築運動のことを指します。
社会の変化や成長に合わせて新陳代謝するように有機的に成長する都市や建築についての理論と提案です。
メタボリズムでは都市と共に新陳代謝していく新しい建築が提示され、戦後しばらくまで西洋の建築を手本に西洋を追いかけてきたばかりであった日本において初めて世界に影響を与えた建築運動といわれています。

当時メタボリズムを提唱した建築家たちは、「新陳代謝する都市・建築」という共通のイメージを持ちながらそれぞれ少しずつ異なった方向に理論を展開しながら数々の作品を生みだしました。

2.このビルのどんなところがメタボリズムの建築なの?

静岡新聞・静岡放送東京支社ビルもそんなメタボリズムの思想の中で生まれました。
ではこのビルの一体どんなところがメタボリズムの建築なのでしょうか。
このビルでは中央のシャフトが幹となり、人やモノやエネルギーや情報を輸送する幹線となって枝葉のように広がる事務所部分に繋がっています。この建物は幹と枝葉からなる1本の樹木なのです。
「しっかりと固定された幹の部分」と「その周辺にくっつく枝葉の部分」を建築にしたのが静岡新聞・静岡放送東京支社ビルです。

さらにこのプロジェクトではそこまでは実現されませんでしたが、この樹木のような建築がいくつも連結され、広がっていくと都市ができるというイメージも描かれてました。
この新陳代謝する建築にはモダニズムとは違った合理性と、社会の変化にフレキシブルに対応できる未来の都市のイメージを見ることができます。

3.前年につくられた山梨文化会館と比較すると面白い

この考え方は同じく丹下健三氏の設計した山梨文化会館を見るとより分かりやすいと思います。山梨文化会館は静岡新聞・静岡放送東京支社ビル完成の1年前である1966年に竣工した甲府に建つ市民会館です。

甲府駅前に建つ山梨文化会館(1966年竣工)

構成は静岡新聞・静岡放送東京支社ビルと同じで、1本だった木々が連結された森として建築が成り立っています。
丸い部分が幹となっていて、静岡新聞・静岡放送東京支社ビルと同じくコアと呼ばれるこの円形部分にはエレベータや階段、空気やエネルギーを運ぶパイプが通っています。
その幹(=コア)の周りに枝葉となるオフィスが生い茂っていて、木々が集まった森のような建築が山梨文化会館、そのうちの一本の木だけが建てられたものが静岡新聞・静岡放送東京支社ビルとみるととてもしっくりきます。

4.メタボリズム建築のその後

さきほど紹介した山梨文化会館はメタボリズムの思想に沿って実際に枝葉の部分が更新され、形を変えたことでも有名です。
一方で、静岡新聞・静岡放送東京支社ビルをはじめとするほとんどのメタボリズム建築は実際には新陳代謝することなく、建設当時のままから変わらない建築がほとんどでした。
1960年代から提唱されたメタボリズムの建築の実践は、当初は夢の建築像として描かれましたが、今となってはある意味失敗したともいう意見もあります。

理論は素晴らしくても実際の建築はそこまでフレキシブルにはいかなかった、というわけです。
しかしこの建築からは、当時の建築家たちは本気でメタボリズムがつくりだす未来の都市を信じて描いていたということはひしひしと伝わります。 実際の結果は残念であり興味深くもありますが、西洋の建築を模倣することに主眼を置いていた全時代の建築に対して初めて日本独自の建築理論を生み出し、実現させていくターニングポイントになった建築であることは間違いないでしょう。

そういった意味では日本の建築史における記念碑的な建築であり、メタボリズムの理論を端的に表現したこの建築の価値と影響は大きいといえます。

今も新橋~銀座の間、山手線からもよく見えるこの建築は半世紀以上前に描かれた建築家の夢をそのままに静かに佇んでいます。
皆さんも機会があれば是非トリップしてご自身の目で確かめてみて下さい。

ちなみに丹下健三氏の東京都内のおススメ建築についてはこちらの記事にまとめていますので、丹下氏の建築を訪れる際は是非参考にしてみて下さい。
関連記事
・建築家 丹下健三がデザインした東京都内のおススメ作品12選

■まとめ
・都市と共に新陳代謝していく新しい建築・都市像「メタボリズム(新陳代謝)」の建築
・建築そのものが幹と枝葉となっている1本の樹木の様な建築

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静岡新聞・静岡放送東京支社ビル
設計:丹下健三/丹下健三・都市・建築設計研究所
所在地:東京都中央区銀座8-3-7
アクセス:新橋駅より徒歩約3分、銀座駅より徒歩約5分
竣工:1967年


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