丹下健三の静岡新聞・静岡放送ビルは銀座に残された1本の樹だった【東京銀座】

東京建築巡り
本日紹介するのはこの建築。
静岡新聞・静岡放送東京支社ビル」です。
この一見奇妙な建築。
日本建築界の超大御所、丹下健三氏の建築です。
丹下氏といえば広島平和記念資料館や代々木第一体育館、東京都庁など数々の国家プロジェクトを設計し、「世界の丹下」と呼ばれた建築家です。
東京大学丹下研究室で学んだ川添登、槇文彦、菊竹清訓、磯崎新、黒川紀章といった日本を代表する建築家らは後に「メタボリズム(新陳代謝)」を組織し世界的に注目されます。

①そもそもメタボリズムとは?

最近ではメタボリック症候群という言葉がよく聞かれるようになりましたが、決してメタボな建築というわけではありません。
メタボリズムは、1959年に黒川紀章ら当時の日本の若手建築家のグループが開始した建築運動です。

メタボリック症候群と全く関係ないかというとそうでもなく、メタボリック症候群の語源でもある「新陳代謝(メタボリズム)」からグループの名をとった建築運動のことを指します。社会の変化や成長に合わせて新陳代謝するように有機的に成長する都市や建築についての理論と提案です。
メタボリズムでは都市と共に新陳代謝していく新しい建築が提示・実践され、日本初の世界に影響を与えた建築運動といわれています。

当時メタボリズムを提唱した建築家たちは、新陳代謝する都市・建築という共通のイメージを持ちながらそれぞれ少しずつ異なった方向に理論を展開しながら数々の実作を生みだしました。

②このビルのどんなところがメタボリズムの建築なの?

静岡新聞・静岡放送東京支社ビルもそんなメタボリズムの思想の中で生まれました。
ではこのビルの一体どんなところがメタボリズムの建築なのでしょうか。
このビルでは中央のシャフトが幹となり、人やモノやエネルギーや情報を輸送する幹線となって枝葉のように広がる事務所部分に繋がっています

この建物は幹と枝葉からなる1本の樹木で、この木々が連結され広がっていくと都市ができるということが描かれました。
「しっかりと固定された幹の部分」と「その周辺にくっつく枝葉の部分」を建築にしたのが静岡新聞・静岡放送東京支社ビルです。

モダニズムとは違った合理性と、社会の変化にフレキシブルに対応できる建築と都市のイメージを見ることができます。

③1年前につくられた山梨文化会館と比較すると面白い

この考え方は同じく丹下健三氏の設計で静岡新聞・静岡放送東京支社ビル完成の1年前であるの1966年に竣工した山梨文化会館を見るとより分かりやすいと思います。

【甲府】山梨文化会館

甲府駅前に建つ山梨文化会館。
構成は静岡新聞・静岡放送東京支社ビルと同じで、1本だった木々が連結された森として建築が成り立っています。
丸い部分が幹となっていて、静岡新聞・静岡放送東京支社ビルと同じくコアと呼ばれるこの円形部分にはエレベータや階段、空気やエネルギーを運ぶパイプが通っています。
その幹の周りに枝葉となるオフィスが生い茂っている状態です。
いわば木々が集まった森のような建築が山梨文化会館、そのうちの一本の木だけが建てられたものが静岡新聞・静岡放送東京支社ビルといえるのです。

④メタボリズム建築のその後

山梨文化会館はメタボリズムの思想に沿って実際に枝葉の部分が更新され、形を変えたことでも有名です。一方で、静岡新聞・静岡放送東京支社ビルをはじめとするほとんどのメタボリズム建築は実際には新陳代謝することなく、建設当時のままから変わらない建築がほとんどです。
1960年代から提唱されたメタボリズムの建築の実践は、当初は夢の建築像として描かれましたが、今となってはある意味失敗したともいう意見もあります。
理論は素晴らしくても実際の建築はそこまでフレキシブルにはいかなかった、というわけです。
しかしこの建築からは、当時の建築家たちは本気でメタボリズムがつくりだす未来の都市を信じ、描いていたということはひしひしと伝わります。
実際の結果は残念であり興味深くもありますが、西洋の建築を模倣することに主眼を置いていた全時代の建築に対して初めて日本独自の建築理論を生み出し、実現させていくターニングポイントになった建築であることは間違いないでしょう。

そういった意味では日本の建築史における記念碑的な建築であり、メタボリズムの理論を端的に表現したこの建築の価値と影響は大きいです。
山手線からも見えるこの建築は半世紀以上前に描かれた建築家の夢が込められた1本の樹そのものです。
新橋駅前に今も残る記念碑的な建築。皆さんも機会があれば是非トリップしてみて下さい。

■まとめ
・都市と共に新陳代謝していく新しい建築・都市像「メタボリズム(新陳代謝)」の建築
・建築そのものが幹と枝葉となっている1本の樹木の様な建築


↑メタボリズムについて合わせてみたいおススメ本も是非チェックしてみて下さい。

建築学ランキング
にほんブログ村 美術ブログ 建築・建築物へ
にほんブログ村

↑建築系のブログランキング。建築やデザイン好きな人はこちらから見てみてもらえるとうれしいです^^

■建築情報
名称:静岡新聞・静岡放送東京支社ビル
設計:丹下健三
所在地:東京都中央区銀座8-3-7
最寄り駅:新橋駅徒歩3分、銀座駅徒歩5分
竣工:1967年

■他にもこんな記事がおススメです。

・ユニクロトーキョーに潜入!建築好き必見のデザインを徹底レポート【東京銀座】
・小澤酒造で酒蔵見学!奥多摩で日本酒を堪能できる酒蔵をレポート【東京青梅】
・2019年リニューアル!意外と知らない東京タワーと設計者について徹底解説【東京】

絶版や品切れになった本に投票して、得票数が多ければ復刊するというプロジェクト!子どもの頃に読んだ思い出の本や、もう読めない貴重な本に再び出会えるチャンスかも!?

タイトルとURLをコピーしました