横浜「大さん橋国際客船ターミナル」大地のようなランドスケープ建築をレポート

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今回は、関内駅からほどなく歩いたところに建つ横浜大さん橋国際客船ターミナルを訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。

【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走

【この記事で分かること】
・大さん橋国際客船ターミナルを実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・大さん橋国際客船ターミナルの基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・大さん橋国際客船ターミナルの建築的な見どころや注目ポイント

大さん橋国際客船ターミナルの入口

今や横浜を代表する観光スポットでもある大さん橋国際客船ターミナルですが、よくよく考えてみるとこれを建築といっていいのかどうか迷うほどの不思議な建築です。

大さん橋国際客船ターミナル

この建築の本来の機能は横浜の港に停留するクルーズ船の為の旅客ターミナルなのですが、大地がうねったような屋上のデッキは広く開放されていて、一般の人も多く訪れる人気のスポットでもあります。
屋上と言っても、建築の様な公園のような、はたまた海に顔を出した鯨の上を歩いているかのような不思議な構築物です。

大さん橋国際客船ターミナル
大さん橋国際客船ターミナルのデッキ

こんな建築がどのような経緯でつくられたかというと、約四半世紀前の1995年に開催された国際コンペにまで遡ります。
この国際コンペで選出されたのがfor(Foreign Office Architects)というイギリスの建築家2人の提案した大地がうねったような建築案です。

大さん橋国際客船ターミナルのデッキ

forの提案は、床・壁・天井・屋根といった縛られた概念で建築をつくるのではなく、それらすべてが一体となった1つの構築物
当時としては、この提案は絵空事のようにも思えるアイデアである上に、実際に建てる建物としても難しくも思われましたが、日本のゼネコンの技術力と当時建築業界で少しずつ使われ始めていたコンピューターの力で、そんな提案が絵空事でなく現実に実現してしまったことはとても面白いことです。

大さん橋国際客船ターミナル

このブログでも2000年代に建てられたいくつかの建築作品でそのことに触れてきましたが、1990年代後半から200年代前半は、世界的に見ても既存の建築の言語(「床」や「壁」や「屋根」など)を解体することが流行した時代でもありました。

現在の私達でも建築を認識するときは、「これは床」「ここは壁」と当たり前のように認識していますが、1995年にforの提案した建築案はそんな常識を覆す未来の建築の建築像。

大さん橋国際客船ターミナルの内部
大さん橋国際客船ターミナル

実際に大さん橋国際客船ターミナルを見てみると、ここまでが床、ここからが壁とった境目や、ここからが建築、ここからが屋外広場といった区分けが限りなく曖昧になっています。
そんな建築が実現してしまったことは日本のみならず世界にも大きな衝撃となり、その後の建築界の潮流の大きな転換点ともいえる建築物になりました。

大さん橋国際客船ターミナル
大さん橋国際客船ターミナル

もちろんこの建築が建てられたのは今から20年も前のことですから、コンペのプレゼンテーションで示されたCG(コンピュータグラフィックス)による流動体のような美しいイメージと、実際に建てられた少しごつごつした建築との間のイメージのギャップは確かにあります。また、莫大な建設費に対する批判的な意見も一部では沸き起こりました。

大さん橋国際客船ターミナルのデッキ

しかし、実際に建築を訪れてみた感想としては、そんなことはどうでもよく思えてしまうぐらい、大胆で挑戦的な建築にワクワクしてしまいます。
いろいろな意味で「ここから始まる」と思わせてくれる建築であることが、この建築の大きな魅力だと思います。

大さん橋国際客船ターミナル

また、うねるような大地というイメージは、船旅で長い期間陸から離れた人を迎える旅客線ターミナルとしてもピッタリ合っていますし、これから始まる船旅に対する浮足立った感覚ともリンクしていてとても秀逸です。

大さん橋国際客船ターミナルのホール
大さん橋国際客船ターミナルのホール

立体的な屋上の広場が魅力的なこの建築ですが、実は建物の内部も大きな見どころがあります。
内部にあるターミナルやホールを支えているのは折半構造と言われる折り紙を折り曲げたような建築構造で、建物の内部に入るとこの構造が大迫力で迫ってきます。

大さん橋国際客船ターミナルのホール

大胆なことをやっているようで、実は意外と理にかなっているクレバーさもこの建築の魅力の1つ。
こんな建築を実現するのは、現場の人たちはさぞ苦労したと思いますが、今や横浜を代表するランドマークとなっていることを考えるとその努力も報われたのだと思います。

観覧車から見た大さん橋国際客船ターミナル

最後にこちらはみなとみらいの大観覧車から見た大さん橋国際客船ターミナル。
この建築は何度か訪れているのですが、実は船がついているのを見るのは今回が初めて。やはり船と一緒だととてもしっくりきます。

大さん橋国際客船ターミナルが現実世界に生まれて約20年。
最初はコンピューターの中で生みだされた建築が、現実世界の中で様々な人に使われ、ここでしか起きなかった様々な出来事や思い出を無数に生み出してきたと思うとちょっぴり感動してしまいます。

この建築はコンピューターを大きく活用して建てられた比較的初期の建築として記念碑的な作品でもありますが、そんな建築は現実に建てられることでコンピューター上にはなかった意味がどんどん付加されていきます。
当たり前のようですが、それこそ実際に建った建築の強さであり、建築そのものの醍醐味なのだと思います。

ちなみにこちらは大さん橋から出るクルーズ船からの写真。現在ランチクルーズのレポートも作成中なので、公開までもう少々お待ちください。
横浜の港に古びることなく堂々と鎮座する建築、皆さんも機会があれば是非トリップしていてくださいね。

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大さん橋国際客船ターミナル
設計:for(アレハンドロ・ザエラ・ポロ、ファッシド・ムサヴィ)
所在地:神奈川県横浜市中区海岸通1-1
アクセス:日本大通り駅より徒歩約7分、関内駅より徒歩約15分
竣工:2002年(コンペ~基本設計は1990年代後半)
備考:第45回BCS賞


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