今日は先日ブログで紹介した厳島神社に続いて、広島の平和記念公園に建つ広島平和記念資料館をレポートします。
戦後の日本建築の原点にして、建築家丹下健三の傑作ともいわれる建築の魅力をたっぷりと紹介したいと思いますので、是非最後までお読みいただけると幸いです。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・広島平和記念資料館を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・広島平和記念資料館の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・広島平和記念資料館の建築的な見どころや注目ポイント
1.日本の近代建築の原点にして、建築家丹下健三の傑作に触れる
広島平和記念資料館といえば、1945年に広島に落とされた原爆の惨状と戦争の悲惨さを後世に伝えるための施設として建てられた建物で、戦後日本を代表する丹下健三によって設計された建物です。
丹下健三といえば「世界のタンゲ」とも呼ばれ、西洋の近代建築の模倣から始まった日本の近代建築を一歩先のステージに押し上げ、世界で初めて認知・評価された建築家としても知られます。
丹下は1938年に東京帝国大学工学部建築科を卒業、ル・コルビュジェの弟子でもある前川國男建築事務所に入所し数年間修業します。
本来であれば師の前川のように、高校時代より憧れていたル・コルビュジェの元で直接学びたかったでしょうが、太平洋戦争前夜のこの時期にはとても海外渡航などできる状況ではなかったようです。
1941年~1946年には東京帝国大学大学院に在籍し、1946年に帝国大学の助教授となり丹下研究室をスタートさせますが、広島平和記念資料館(旧広島平和会館原爆記念陳列館)はそんな丹下のキャリアの最初期に建てられた建築なのです。
実は建築好きの間でもあまり知られていませんが、丹下自身は広島の旧制高校出身。原爆投下によって広島が壊滅した後は、いち早く広島に飛んで広島の復興計画に尽力しています。
実際には広島平和記念資料館の竣工する直前に自邸や静岡県の清水市庁舎などいくつかの建物が竣工していますが、現在は取り壊されてしまっていて、現存する丹下健三の作品の中で一番古い建築が広島平和記念資料館です。
そして何より後の丹下氏の建築のエッセンスというべきものが凝縮して表れているのがこの広島平和記念資料館で、名実ともに戦後の日本の建築史の原点にして記念碑的な建築となっています。
2.モダニズムと日本建築のエッセンスが融合した建築に注目
広島平和記念資料館といえば大学のテキストや、建築の作品集にも度々登場しいつかは自分の目で見て体験したいと思っていたまさに憧れの建築。
平和記念公園に入り、公園内を程なく進むと今までは書籍や写真でしか見たことのなかった広島平和記念資料館が見えてきます。
中央~右に見えるのが広島平和記念資料館の本館(1955年竣工)で、左奥に見えるのが展示室やホール、会議室などが入る東館(1994年建替え/再建)、右側には広島国際会議場(1989年建替え/再建)という3棟の構成です。
遠目で見ると激しい主張のある建物ではないですが、公園の風景とよく馴染みながらも確かな存在感を感じる建物です。
ピロティによって持ち上げられた建物は、左右に繋がる空中回廊と合わせて、後ろに通る平和大通りと呼応するような綺麗な水平のラインをつくり出しています。
この建物が出来た当時はあたり一帯は焼け野原だったでしょうから、一面のランドスケープに対して一層この建物のシルエットは映えたことでしょう。
この建物は原爆の悲惨さを伝える資料館という役割だけでなく、コンクリートの力強く美しいこの建物は今後の広島、ひいては日本の復興の象徴としての役割も担っていたのだと思います。
近づいてみると建物とピロティが想像以上に大きなスケールであることに驚きます。
人の大きさと比べてみるとよく分かるのですが、ピロティと上に乗る建物はそれぞれ約2階分の6.5mの高さを誇っていて、近くで見ると圧倒されます。
丹下はこの建物を平和大通りから公園に入る一種のゲートとしてデザインしていたようで、あえて人間と都市の中間にあるようなスケールでデザインしました。
先日の記事で厳島神社を見た後ということもありますが、ゲートというより鳥居のニュアンスに近いようにも感じます。この大きな鳥居をくぐることで、何か結界の中に足を踏み入れたような厳かで神聖な気持ちに切り替わる装置のようにも感じられます。
実はこの広島を訪れたのは少し前のことで、私が訪れた時にはピロティの一部が耐震工事等の改修の為塞がれていました、現在は工事も終わって今まで通りに開放されているそうです。
ピロティに関しては建築好きとしてどうしても気になってしまうのは、近代建築の3巨匠であるル・コルビジュエの影響です。
旧制高校時代からル・コルビュジエに傾倒し、建築の道を志すきっかけになった程の人物でなので、随所にその影響を色濃く残しています。
日本でコルビュジエの作品といえば東京上野に1959年に建てられ、2016年に世界文化遺産にも登録された西洋美術館が思い浮かびますが、建築単体で見ても本家のコルビュジエと比べても遜色のない作品であることに改めて感動します。
ピロティだけでなく湾曲した柱の形状などはマルセイユのユニテダビダシオンそのものにもみえますが、丹下氏はこのピロティを単なる行き来ができる地上部分としてだけでなく、平和記念公園へ入るための結界として、そして時には数千人・数万人が集まる広場としても応用しているとは物凄いアイディアです。
さらに近づいてみるとコンクリートの表面には、コンクリートを流し込んだ際に型枠として使われていた杉板のプリントがきれいに残され、まるで木のようにも見えます。
これは杉板を型枠として使っていた戦後の建築にはよく見られるものではありますが、丹下氏は明らかにコンクリートのモダニズム建築に日本の伝統建築を重ね合わせて表現していたのだと思います。
ゲートとしての建物をくぐるともう1つ湾曲したゲート上の慰霊碑が建ち、さらにその先には原爆ドームが見えます。
この平和記念通りを背にして広島平和記念資料館、慰霊碑、原爆ドームという軸線によって、この建築は単なる建築としてだけでなく、広島という都市までもを視座に入れた特別な存在へと変化しています。
平和記念公園の敷地や周辺道路への接続を考えると別の配置も十分にあり得たはずで、事実コンペ時の丹下氏以外の提案は原爆ドームについては特に考慮にいれていませんでした。
先日厳島神社を見学したこともあるかもしれませんが、こうしてみると丹下氏の広島平和記念資料館の設計に当たってはやはり厳島神社の影響はとても大きいように思えます。
丹下氏の凄いところはコルビュジエらのモダニズムのエッセンスを完璧に吸収しながらも、それを日本の伝統建築のエッセンスと融合させ、そこに必然性をつくり出したことにあるのだと思います。
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結果として、軸線と鳥居によって原爆ドームを取り入れた設計案は見事にその効果を発揮して、唯一無二といっていい建築を生み出しました。
原爆ドームは、原爆の恐ろしさや恒久平和への願いを70年以上たった現在でも強烈なイメージを伴って実感させてくれます。
これも形ある建築の持つ力だと思いますが、その建築の力を最大限に引き出した広島平和記念資料館は日本の戦後建築の原点にして後世に受け継ぐ財産であると感じます。
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3.両翼の建築と展示を鑑賞!
最後は両翼に建つ東館と広島国際会議場を見学します。
この2つの建物はそれぞれ1994年と1989年に元々のデザインを引き継いだ形で建替えがなされたものです。
現在はピロティ部分にガラスのカーテンウォールが嵌め込まれて、内部には平和記念公園の風景がそのまま取り込まれるようにデザインされています。
本館と同じように約2層分の高い階高なので、公園の自然の延長のような開放感を感じます。
内部の展示も時代に合わせて最新のテクノロジーが導入されていて、プロジェクションマッピングやCGを使った展示は分かりやすくて迫力がありました。
もちろん当時の被爆した実物や色褪せた写真はそれだけで存在感があり芯に迫ってくるものがありましが、同時にテクノロジーを使っていかにこの惨劇を伝えていくかも大切なんだと実感できました。
最後は公園内を散策しながら、戦争と平和、そして建築の役割について思いを馳せました。
ちなみに写真のモニュメントは丹下健三氏がデザインした「平和の灯」です。
この他にも公園内には様々なアーティストや建築家がデザインしたモニュメントが点在しているので、訪れた際には是非合わせて巡ってみてくださいね。
広島平和記念資料館
設計:丹下健三
所在地:広島県広島市中区中島町1-2
アクセス:JR広島駅よりバス約20分、地下鉄最寄り駅より徒歩約5分
竣工:1955年(本館)
備考:重要文化財(本館)
開館時間:
3月~7月 8:30~18:00
8月 8:30~19:00
9月~11月 8:30~18:00
12月~2月 8:30~17:00
休館日:12月30日、12月31日
常設展示料金:大人 200円、高校生 100円、中学生以下 無料
公式HP:http://hpmmuseum.jp/
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