建築本「一級建築士矩子の設計思考」がスゴい!話題の本格建築漫画をレポート

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本サイト「トーキョー建築トリップ」では普段は東京都内の建築を中心に私やま菜が訪れた建築や街をレポートしていますが、今日は実際の建築ではなく、建築家が主人公の建築漫画「一級建築士矩子の設計思考」を紹介したいと思います。

【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走

【この記事で分かること】
・話題の建築漫画「一級建築士矩子の設計思考」の概要
・「一級建築士矩子の設計思考」のおススメポイント
・矩子の舞台となった亀戸の注目建築

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1.「一級建築士矩子の設計思考」って?

「一級建築士矩子の設計思考」は、一級建築士として独立し、東京亀戸に立吞み屋併設の設計事務所を構えた矩子(かなこ)の日々の奮闘を描いた漫画です。

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実は建築にフォーカスを当てた建築漫画というのは、昔から数は少ないながら存在していますが、こちらの「一級建築士矩子の設計思考」は、実際に一級建築士の資格を持ち、設計事務所での実務経験を持つ著者が描く、唯一無二といっていい建築漫画です。

【上京女子の、東京亀戸設計ライフ! ! 】
古川矩子(こがわかなこ)は20歳で青森から上京。
建築とお酒が大好きな彼女は
7年間、設計事務所に勤めた後に独立。
東京亀戸に“立呑み”併設の個人事務所を設立した。
お金は無いけど、理想とお酒はある!
心(じょっぱり)に、火をつけろ!
知られざる『一級建築士』の実務が描かれる、
唯一無二のプロフェッショナル物語! !
『一級建築士』『1級建築施工管理技士』
資格を実際に有する著者、魂の会心作! ! !

日本文芸社公式ホームページより引用

2.こんな漫画が読みたかった!一級建築士が描く唯一無二の建築漫画

「一級建築士矩子の設計思考」の単行本1巻は2022年の3月に発売され、発売当初からSNSを中心に大きな話題となりました。

この漫画の特徴は、実務経験のある建築士ならではの建築ネタが、ストーリーと漫画表現と一体的に描かれていること。
建築好きなら思わずニヤリとしてしまうマニアックさと、建築初心者でも十二分に楽しめるエンターテイメント性を併せ持っている漫画となっています。

著者である鬼ノ仁(きのひとし)先生は、R18漫画で長らく活躍されていた漫画家さんでもあります。
特に女性の可愛らしい表情やちょっとコミカルな描き方、巧みなストーリー展開には、ベテラン漫画家さんならではの魅力と技術が凝縮されています。

やま菜
やま菜

私も発売直後に入手して、すっかりファンになってしまいました

一方で、建築を描いた漫画としても秀逸で、実務経験者ならではのディテール(建築の詳細の納まりや表現)の解説や、ポイントを押さえた手書きの図面は見ていて楽しくなってしまいます。
この漫画は建築知識をただ漫画にしているのではなく、建築に関わる様々なトピックをいかに分かりやすく表現し、漫画としてのストーリーや展開の中で読者に楽しんでもらうかという視点で描かれているのも嬉しいポイントです。

また、テーマは話ごとに、建築のデザイン面だけでなく建築の法律や構造、施工や不動産に至るまで幅広く扱われているので、この漫画を読むだけで建築の知識と思わぬ裏事情を知ることができます。

例えば第4話の中高層建物の条例をテーマにした回では、著者自身が住民として住んでいるマンションで感じた些細な疑問から着想を得たそうです。
建築の実務経験者としての経験と、実際の住民としての視点から生まれた話は、まさに鬼ノ仁氏ならでは。普段建築に接点がない人の視点でみてみても、実は建築って思っていたよりも身近な存在なんだと、実感できるエピソードとなっています。

やま菜
やま菜

建築好きとしては「こんな建築漫画が読みたかった」といった内容となっています

矩子の設計思想を読むと、普段建築を見慣れていると思っていた自分自身も、建築の面白さや奥深さを改めて感じます。
矩子を読んだ後に身の回りの建築や街をみてみると、思わぬ発見があります。

【4/18追記】
2023年4月18日に第2巻が発売になりました。

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3.矩子の舞台を聖地巡礼!オススメの建築3作品を紹介

今回はせっかくなので、「一級建築士矩子の設計思考」にでてくる亀戸周辺で建築巡りとプチ聖地巡礼をしてきました。
ここからは、そこで出会った亀戸のオススメの建築を紹介したいと思います。

亀戸駅北口のロータリー

一級建築士矩子の設計思考の舞台となった亀戸は、秋葉原から総武線で10分弱、東京東の繁華街錦糸町のお隣にあります。

亀戸駅の北口を出るとまず見えてくるのが、第三話のおまけページで登場した立花亀戸ビルです。
このビルは「道路斜線規制」という建物高さを規定する法律で建物の大きさが決まっていることがよく分かるビルです。

立花亀戸ビル。奥の部分もビルの一部です。

実際の建物を見てみると確かに大通り沿いの部分は9階建ての大ボリュームとなっていますが、奥の部分は建物の上部が斜めにカットされて低層になっていますね。

この立花亀戸ビルのすぐ裏手に建つのが、亀戸オススメ建築の1つ目、その名も「BULLET TOWER」です。
BULLET TOWERは、1980年代から2000年代に活躍した建築家の堀池秀人氏が設計を手掛けた元建設会社のオフィスビルです。

BULLET TOWER外観

BULLETという名前の通り銃丸をモチーフにしていて、斜め前の亀戸駅前公園に開くように建てられたL字の壁にシリンダー状のガラスの筒が立ち上がる独特のデザインとなっています。

この建物が建てられた1980年代後半はポストモダンと呼ばれるムーブメントが全盛を迎えていて、合理的で無駄のないモダニズム建築に対するアンチテーゼとしての建築が世界中で建てられました。
また、建築は都市に対して何か表明し、都市の姿を映し出す装置としての役割を担うという考えが強くありました。

筒状の外装のガラスはハーフミラーガラスとなっていて、ビル自体を広告塔にしつつも都市の風景を映し出す合わせ鏡となるような意味も込められています。
現在はテナントビルとなり、当初はなかった看板やポスターが貼られいるので当初のコンセプトはかなり薄らいでいますが、これも長い年月が経っても残り続ける建築の特性がよく表れていて面白いです。

写真左の赤色部分に「コア」が纏まっています

L字の壁の左側は屋外階段で、階段の奥にはエレベーターや給湯室がまとまった「コア」と呼ばれる部分になっています。
平面的に見ると片側コアのシンプルなオフィスですが、立体の建物はとってもシンボリック。
ちなみに壁の最上部には今はなき「日本電建」の看板が残されています。

BULLET TOWER
設計:堀池秀人/堀池秀人都市・建築研究所
所在地:東京都江東区亀戸2-23-9
アクセス:亀戸駅より徒歩約3分
竣工:1989年

続いて亀戸駅の南エリアに移動して、すぐの所に建つ「KAMEIDO CLOCK」は、第8話の舞台になった敷地に建つ商業施設です。

KAMEIDO CLOCK外観

元々この場所はセイコーの本社と工場があった場所ですが、1997年に開業したサンストリート(北山孝二郎+K計画事務所)が2016年まで営業していて、その後野村不動産が土地を買取った後に再開発が行われて、2022年4月にKAMEIDO CLOCKがオープンしました。

KAMEIDO CLOCKで特に注目なのが、このブログ何度か取り上げている窪田建築都市研究所がデザイン監修を手掛けた一階のフードホールカメクロ横丁です。

カメクロ横丁は、最新の商業施設の中に雑然とした横丁の雰囲気を入れ込んだフードホール。
入口から徐々に通路の幅が狭くなって路地状になる配置や、様々なお店が渾然一体となりながら賑わう亀戸の新たな注目スポットとなっています。

ちなみにカメイドクロックが建つ前にあったサンストリート亀戸は、元々期間限定で計画されたものでしたが、亀戸を代表するスポットとして人気を博していました。
中央の円形の広場を囲うように低層の店舗やパブリックスペースが特徴で、私も学生時代に見学に行った思い出があります。
カメイドクロックが今後どのように街に溶け込み、皆の思い出の場所になっていくのか注目です。

せっかくなのでこちらでランチをいただきました

KAMEIDO CLOCK
デザイン監修(カメクロ横丁):窪田建築都市研究所
建築設計:東急設計コンサルタント
所在地:東京都江東区亀戸6-31-6
アクセス:亀戸駅より徒歩約3分
竣工:2022年
公式HP:https://www.kameidoclock.jp/

3つ目に紹介するのが、KAMEIDO CLOCK前の京葉道路を東に10分ちょっと歩いたところに建つ「カーサ第一亀戸」です。

カーサ第一亀戸外観

カーサ第一亀戸は、建築好きの間では熱狂的なファンも多いことで知られる異色の建築家梵寿綱(ぼんじゅこう)氏が初期に手掛けた建て総戸数250戸の集合住宅です。

この建物がつくられた1974年は梵寿綱氏は、まだ本名の田中俊郎と名乗っていました。
梵寿綱氏は、高度経済成長期にどんどん標準化・均一化されていく建築に対して、職人的な手仕事や素材に注目し、造り手がその場で生み出す創造性や手垢のようなものを重視した建築家です。
褐色のタイルが特徴的な建物は、竣工から半世紀近く建った現在でも周りのマンションとは一線を画す個性的なデザインとなっています。

カーサ第一亀戸は初期作ということで、梵寿綱氏の建築としてはこれでも少し大人し目のデザインなのですが、シンプルでとことん合理化している部分と、手をかけて主張するところをキッチリ分けてメリハリが効いたデザインとなっています。
また、遠目で見た時と、近づいた時でガラっと印象が変わるのも面白い建築です。

今回久しぶりにカーサ第一亀戸を訪れて気がついたのですが、この建物も「立花亀戸ビル」と同じく道路斜線制限によって建物のボリュームが決められています。

奥側が大通り。手前と真ん中が低層になっています。

写真奥側の大通り沿いの部分は道路から目測でピッタリ35mの位置まで12階建て、そこから手前側は一気に高さが低くなって6階建てのボリュームに切り替わっています。
これはまさしく道路斜線制限によるもの。しかも立花亀戸ビルと同じく3面接道というのも注目ポイントです(マニアックですみません)

この建物は何度も訪れていますが、道路斜線については今まで全く気づきませんでした。
これも矩子の設計思考効果。建築ファンとしてとても面白い発見でした。

カーサ第一亀戸
設計:田中俊郎(梵寿綱)
所在地:東京都江東区亀戸7-39-5
アクセス:亀戸駅より徒歩約15分
竣工:1974年

梵寿綱の東京都内の建築についてはこちらの記事でも紹介しています。

また、亀戸の建築巡りについてはこちらの記事でも紹介していますので、気になった方は是非併せてご覧くださいね。

4.おまけ:鬼ノ仁さんの作品との個人的な思い出

この記事を書きながら、過去に鬼ノ仁さんの作品を読んでいた記憶の蓋が開いたので、最後に少しだけ紹介します。

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こちらの左巻キ式ラストリゾートは、作家の海猫沢めろん先生のデビュー作に鬼ノ仁先生がイラストを書いた作品。

当時私が参加していた本のコミュニティで海猫沢めろん先生をゲストに迎えた一泊二日の読書会旅行が行われたのですが、そのタイミングに併せて読んだのがこちらの左巻キ式ラストリゾートでした。
詳しくはネタバレになるので控えますが、王道のライトノベルと思わせておいて物語と現実が地続きで迫ってくる衝撃のしかけが、鬼ノ仁先生の描くキャラクターが挟み込まれることで、読者により深く突き刺さるような構成となっている傑作本です。

私も完全に記憶に重い蓋を当てていたのですが、今回の記事を書きながら読んだ当時の思い出が鮮明に蘇ってきました。
左巻キ式ラストリゾートは読む人によっては一生忘れられないトラウマ小説(褒めてます)なので、安易にオススメはできませんが、気になる方は是非読んでみてください。

いかがでしたでしょうか。
「一級建築士矩子の設計思考」は、2023年の4月に第2巻の発売が予定されています。
まだ2巻なので、まだ矩子を読んでないという方も十分間に合います。気になる方は是非手にとってみて、一緒に楽しい建築の世界にトリップしましょう。

【4/18追記】
2023年4月18日に「一級建築士矩子の設計思考」第2巻が発売になりました。

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