今日は異端の建築家と呼ばれ、一部のファンから熱狂的な支持を集める梵寿綱氏の建築についてレポートします。
かくいう私も、このブログ「トーキョー建築トリップ」の第一回の記事に梵寿綱氏の建築を取り上げる梵寿綱ファンのひとり。
今回は大まかな時系列と共に東京都内に点在する梵寿綱氏の建築の魅力をたっぷりと紹介していきたいと思いますので、建築巡りの参考やバーチャル建築巡りとしてお楽しみいただければと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・梵寿綱が関わった建築を写真と文字でレポート
・梵寿綱の東京都内のおススメ建築作品が分かる
・梵寿綱の建築の見どころや注目ポイントを解説
異端と呼ばれた建築家梵寿綱がスゴい
今回取り上げる梵寿綱(ぼんじゅこう)氏は1934年に東京都で生まれた日本人の建築家です。
梵寿綱という一風変わった名前は実はアーティストネームのようなもので、元々は田中俊郎という名で活動していました。
その独特の作風から異端の建築家と言われることも多い梵寿綱氏は、早稲田大学で建築を学び、大学卒業後に渡米し、シカゴ美術館附属美術大学で学んだ後アメリカとメキシコを周遊して帰国したという人物。
梵寿綱氏は自身が専門とする建築以外にも工芸家や彫刻家、職人など様々な仲間を集めて「梵寿綱と仲間たち」を結成し、モダニズムの流れを汲む「従来の建築」とは全く異なった建築を次々に生み出しました。
では一体どんな作品を生み出していったのか、早速見ていきたいと思います。
1.シャンボール松涛(渋谷区松濤)
最初に訪れたシャンボール松涛は神泉駅からほどなくのところに建つ地上8階建て総戸数45戸の集合住宅です。
この集合住宅はまだ梵寿綱を名乗る前の田中俊郎名義で活動していた最初期の作品で、この建物が竣工した時に梵寿綱氏は35歳でした。
その後の梵寿綱作品と比べるとかなり大人し目ではありますが、曲線的で優美なバルコニーや庇の造形などに確かな作家性をみることができます。
大きく高低差のある地形と呼応するような大階段やリズミカルに並ぶ開口部など、梵寿綱氏の確かな建築の構成力・造形力を垣間見ることができます。
設計:梵寿綱
所在地:東京都渋谷区松濤2-14-12
アクセス:神泉駅より徒歩約5分
竣工:1969年
2.カーサ相生(月島)
続いて紹介するカーサ相生は月島の清澄通り沿いに建つ地上14階建て総戸数290戸の集合住宅です。
シャンボール松涛から4年後、梵寿綱氏のキャリアの中でも最初期に建てられた物件ではありますが、規模としては中々大きな建物で、豊洲や越中島を見渡せる絶好のロケーションに建つ建築です。
こちらもまだ後の梵寿綱作品と比べるとだいぶ落ち着いて見えますが、近づいてみれば見るほどその独特のデザインや色遣いに個性が光ります。
特に独特の模様や孔雀が描かれた褐色の外壁と、工芸品のようにカーブするバルコニーの手すりは一見の価値ありです。
足元には瓦屋根の門や小庇がついていて、まるで南国のリゾートを思わせるデザインとなっているのが何とも面白い建築です。
設計:梵寿綱
所在地:東京都中央区佃2-22
アクセス:月島駅より徒歩約5分
竣工:1973年
3.カーサ第一亀戸(亀戸)
亀戸駅から15分ほど歩いたところに建つカーサ第一亀戸も梵寿綱氏が田中俊郎と名乗っていた時代に建てられた地上12階建て総戸数250戸の集合住宅です。
月島のカーサ相生と同じく褐色のタイルが特徴的な建物は、竣工から半世紀近く建った現在でも周りのマンションとは一線を画す個性的な外観に見えます。
シンプルでとことん合理的な部分と、手をかけて主張するところをキッチリ分けて、メリハリが効いたデザインになっているのも好感が持てます。
設計:梵寿綱
所在地:東京都江東区亀戸7-39-5
アクセス:亀戸駅より徒歩約15分、亀戸水神駅より徒歩約10分
竣工:1974年
4.カーサ中目黒(中目黒)
カーサ中目黒は中目黒駅からしばらく歩いた坂の中腹に建つ地上3階建ての集合住宅です。
まるで海外のリゾートホテルもしくは修道院のようにも見える外観は、カーサ相生で実践したエキゾチックなデザインをさらに推し進めたように見えます。
梵寿綱氏はこの頃から本名の田中俊郎ではなく梵寿綱と名乗るようになるのですが、大胆な造形が徐々に建築の全体に広がっているのがよく分かります。
中央の日時計から翼のように広がる住居は、その後の梵寿綱氏の活躍を予感させるような個性と躍動を感じます。
設計:梵寿綱
所在地:東京都目黒区中目黒5-7-23
アクセス:中目黒駅より徒歩約17分
竣工:1974年
5.斐禮祈/賢者の石(南池袋)
続いて紹介するのは池袋の南池袋公園の目の前に建つ斐禮祈(ひらき)/賢者の石です。
1Fは居酒屋と酒屋の倉庫・事務所、上階が集合住宅となっていている建物は、まるで映画のセットのような造形の不思議なオーラを放っています。
これまで見てきたエキゾチックな雰囲気に加えて、つくり手の情念のようなものが感じられるのも面白いところで、おどろおどろしさや分からなさといった梵寿綱の特徴が遺憾なく発揮された彼の出世作でもあります。
大都市池袋であっても、そこに立ち並ぶ建築は標準化され、世界中に建つ建築のコピーのような建築の域を脱し得ない。そんな同じようなビルが立ち並ぶディストピアのような風景へ疑問と回答が込められているように感じます。
設計:梵寿綱
所在地:豊島区南池袋2-29-16
アクセス:池袋駅より徒歩約10分
竣工:1979年
6.ヴェッセル/輝く器(南池袋)
斐禮祈のすぐ先にはヴェッセル/輝く器という作品があり、梵寿綱好きにとってはちょっとした聖地にもなっている南池袋。
こちらのヴェッセルは斐禮祈と比べてガラスと金属を多用した作品で、一見して何の変哲もなく見える格子状のパネルが特徴の建築なのですが、近づいて見てみるとどれ一つとして同じ柄がないことが分ります。
精巧に施されたパターンは今見るとどうしてもコンピューターによって決められたランダム性や、数学的な規則性からくる美しさを見つけようとしてしまいますが、そういった規則性はどうしても見つけられません。
これは人間が一つ一つ考えて創ったのだと気付いた時に、驚きと同時に怖さすら感じます。
外観以外にも精巧な扉の金属装飾や、点在する動物の像など、様々なところに見どころが溢れる建築となっています。
詳細記事
・唯一無二のデザイン!梵寿綱の「輝く器」で俗なるパワーを堪能【東京池袋】
設計:梵寿綱
所在地:東京都豊島区南池袋2-31-3
アクセス:池袋駅より徒歩約10分
竣工:1990年
7.ドラード早稲田/和世陀(早稲田)
続いて紹介するドラード早稲田/和世陀は梵寿綱氏の作品の中でもっとも有名で、彼の一番の代表作といえる建築です。
早稲田大学からほど近いこともあって建築に興味のない友達に聞いても知っている人がいるくらい有名で、1階に入る理髪店と上階の集合住宅はもちろん現役で使われています。
機械によって製造された工業製品にはない、人間が考えて、人間が手を動かした結果に出来きあがった建築は、それ自体が人間賛歌を表現しているようにも感じます。
実物大の工芸品のような建築はとてつもなくエネルギッシュです。よく梵寿綱氏はその作風から「日本のガウディ」と呼ばれることも多いですが、ガウディが聖なるものへ向かったとしたら、梵寿綱氏は真逆の「俗」なるものへ向かった建築家ではないかと思います。
ドラード早稲田にはそんな俗なるものの魅力とエネルギーがぎっしりと詰まっています。
設計者:梵寿綱
所在地:東京都新宿区鶴巻町517
最寄り駅:早稲田駅より徒歩10分
竣工:1983年
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