三鷹「山本有三記念館」大正末期に建てられた素敵な旧邸宅をレポート

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今日は東京都三鷹市に建つ山本有三記念館を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。

【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走

【この記事で分かること】
・山本有三記念館を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・山本有三記念館の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・山本有三記念館の建築的な見どころや注目ポイント

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1.作家山本有三が暮らした三鷹の邸宅を改修した記念館を訪問

今回の訪れたのは東京都の三鷹市にある山本有三記念館です。

山本有三記念館

この記念館は、大正時代に建てられた邸宅を改修した建物で、大正時代から昭和の時代に活躍した作家・政治家の山本有三が1936年からの10年間暮らした邸宅を改修してつくられた記念館です。

山本有三記念館

山本有三といえば、以前このブログでもレポートした栃木市立文学館の常設展示でもメインの作家として取り上げられていた栃木県出身の人物。
山本は東京帝国大学出身で、戦後は参議院議員としても活動し、日本の国語教育や制度に大きな影響を与えましたが、若い頃は丁稚奉公に出されたりと苦労を重ねた人物でもありました。
詳細記事
・栃木「栃木市立文学館」大正時代の町役場をコンバージョンした文学館をレポート

自身の生い立ちや人生観を元にした小説に「路傍の石」がありますが、路傍の石という表現は、山本有三の小説のタイトルからきているというのは意外と知られていないかもしれません。
また、以前立川の建築巡りで槇文彦氏(槇総合計画事務所)が設計した国立国語研究所を紹介しましたが、山本は戦後に国立国語研究所の創設に尽力し、この旧邸は国立国語研究所の分室として使われていていたこともあります。
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そんな山本が、50歳を目前とした1936年に引っ越してきたのが、玉川上水のほとりに建つこちらの邸宅。

山本有三記念館

元々この邸宅は貿易商を営んでいた清田龍之介の住まいとして1926年ごろに建てられたのもでした。

元々の家主であった清田氏が邸宅を売却したあと、1936年から山本氏の手にわたり、戦争が終わりGHQに接収される1946年まで山本氏の住まいとして使われました。

建物の構造は、1階が鉄筋コンクリート造で2階が木造の混構造で、正面にそびえ立つ煙突と各方向に隆起するような屋根がそれらを支え、繋げるようなデザインが特徴です。

ちなみに記念館には山本有三氏はこの邸宅に引っ越す以前に新聞に寄せた文章が展示されていて、そこで山本氏は文学を建築に例え「鉄筋コンクリート造の」作品を望むという文章を寄せています。

山本氏は、文学は堅牢で強固な土台の上にこそ発展するという考えを持っていたようです。
大正時代の1923年に関東大震災が起こったこと影響していると思いますが、そんな考えにピッタリと合致したのがこの邸宅でした。

また、山本邸は石やタイル、木や金属を組み合わせたデザインとなっていて、遠目からみるとダイナミックで大胆な造形ですが、近づいてみると細かい装飾やスクラッチタイルの表情豊かな陰影が浮かび上がってくるのもユニークです。

山本有三記念館

様々な素材を組み合わせ、当時の建築流行を反映させつつも、大正時代の個人住宅らしい自由でモダンな印象の邸宅となっています。
この邸宅はGHQの接収解除後は、山本氏から三鷹市に寄贈されて様々な用途の施設として使われてきましたが、1996年に改めて改修・復元を行い現在の山本有三記念館がオープンしました。

2.内部も面白い!知られざる山本有三の足跡と魅力を堪能

建物の入口は台形のアーチのような独特の形をしていましたが、中の扉は尖塔アーチになっていて、さらに中に入ったアイストップは円形アーチとなっているなど、歩みを進めるごとに変化するしかけが面白いです。

玄関を入ってすぐのところが受付カウンターとなっていて、まずはチケットを購入します。
入館料は一般300円で、中学生以下は無料。

記念館の内部は、邸宅の各部屋がそのまま展示室として使われています。

山本有三記念館

1階は応接間から始まり、食堂、長女の部屋と展示空間が続き、山本有三の歩んだ軌跡を辿ることができます。

山本有三記念館

前庭に開いたこちらの応接間では、私設文庫「ミタカ少国民文庫」を開館していました。
山本がこの邸宅で暮らしていたのは10年という短い期間でしたが、自身が編纂代表を務めた日本少国民文庫の「君たちはどう生きるか」の刊行を行ったのもこの時期でした。

「君たちはどう生きるか」は元々山本が執筆する予定だったそうですが、未来の日本の礎をつくる子どもたちに向けた作品をつくる姿勢が伝わってきます。

展示室では、細かな文字でうめつくされた創作ノートなど貴重な資料はもちろん、日々の生活の様子や、人間関係の出来事など様々な角度から山本有三という人物を知ることができました。

また、自宅を建築するときの職人さんとのやり取りなどの記録も残されていて、山本の人となりを知ることができます。

こちらは物語やゲームの中でしか見たことのなかった巨大なチェスト。住宅がそのまま記念館になっているので、そこでの暮らしぶりが目に浮かぶようです。

館内には常設展示の他に、時期ごとにテーマを変えた企画展示もあり、どれも興味深いものでした。

また、子ども部屋がそのまま子供向けの展示スペースになっていたりと、内容もや展示方法も様々で面白いです。

3.見どころ満載の建築もたっぷりと堪能

各展示空間だけでなく、廊下や階段も見ごたえがあります。

山本有三記念館

例えばこちらのメイン階段は、ステンドグラスを通じて室内に降り注ぐ色とりどりの光が降り注ぎ、真っ赤な絨毯と濃い木材のコントラストが鮮やかな人気スポットとなっています。

山本有三記念館

手すりの造形も職人技が光るこだわりのデザインとなっていて、思わず見惚れてしまいます。

山本有三記念館

こちらの和室は、元々は洋室だった部屋を山本有三が書斎に改装しました。
隣の部屋も洋装の書斎なのですが、邸宅の中央の書斎がメインの執筆スペースでした。

こちらはイングルヌックと呼ばれる暖炉付きのスペース。
記念館では受付カウンターの横の休憩スペースになっていて、展示を見終えた人が余韻に浸っていました。

山本有三記念館の家具

建築だけでなく家具も見ごたえがあります。
窓際に置かれた鮮やかなブルーのテーブルセットや、年季の入った精巧な装飾の椅子など、見事な家具や調度品が間近で見ることができます。

山本有三記念館の家具

記念館を訪れるまでは、山本有三は著名な作家・政治家という認識しかありませんでしたが、展示を通じて山本有三の残した功績や、彼が歩んできた人生をより詳しく知ることができました。

素敵な建築と充実した展示を堪能して、この日の建築巡りも大満足のものとなりました。
とてもオススメの建築なので、皆さんも機会があれば是非訪れてみてくださいね。

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山本有三記念館
所在地:東京都三鷹市下連雀2-12-27
アクセス:三鷹駅より徒歩約12分
竣工:1926年
営業時間:9:30~17:00
休館日:月曜日
入館料:300円
備考:三鷹市有形文化財


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