今日は東京都の三田周辺で建築巡りをしてきましたので、そこで出会った名建築についてレポートしていきたいと思います。
明治大正の超貴重な近代建築から、最新の現代建築まで様々な建築が点在する三田エリア。
是非建築巡り・街歩きの参考やバーチャル建築巡りとして楽しんでいただければと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・三田エリアでの建築巡りを写真と文字でレポート
・三田エリアの著名な建築家がデザインした建築や歴史のある近代建築をまとめ
・三田エリアの建築の見どころや注目ポイントを解説
ちなみに田町駅東側エリアでの建築巡りについては、こちらの記事でレポートしていますので、興味のある方は是非合わせてご覧ください。
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1.森永プラザビル(森永エンゼルプラザ)
今回建築巡りでまず最初に訪れたのは、田町駅の西口を出てすぐのところに建つ森永プラザビルです。
一見して普通の駅前ビルにも見えるこの建物ですが、1970年に日本初となる超高層ビルである霞が関ビルが建てられた当時ではまだ日本で数えるほどしかなかった時代の超高層建築の一つです。
地上24階地下2階、建物高さ約100mの建物には白い外壁に黒のガラス開口部が垂直に伸びていて、同時期に建てられた超高層建築のどの建築とも違うオリジナリティに溢れたデザインとなっているのが面白い建物です。
設計:森永エンゼルプラザ
所在地:東京都港区芝5-33-1
アクセス:田町駅より徒歩約1分、三田駅より徒歩約2分
竣工:1974年(本館)、1968年(別館)
備考:2024年解体
2.NECスーパータワー(日建設計)
森永プラザビルからすぐのところに見える旧日本電気本社ビル(NECスーパータワー)は、ビルの真ん中に風穴のような開口が開いた何とも不思議な建物です。
この風穴は本当に風を通すために開けられたもので、当時問題となっていた超高層ビルのビル風問題への対応策として建物周辺への風害を緩和する役割と、建物内部にある巨大なアトリウム(光庭)に自然光を落とし、外気を取り入れる2つの役割を担っています。
バルブ経済の只中に計画されたということもありますが、このビルが生まれたのは日本最大の組織設計事務所である日建設計の技術力とNECという先端企業のチャレンジング精神が合わさってのもの。建設前は批判もあったようですが、完成してからは三田・田町で働くサラリーマンにとってNECという企業の先鋭性を表す広告塔として長らくのその役割を果たしてきた記念碑的な建物です。
尚、NECスーパータワーについてはこちらの記事にも詳しく紹介していますので、気になった方は是非合わせてお読みください。
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設計:日建設計
所在地:東京都港区芝5-7-1
アクセス:田町駅より徒歩約3分、三田駅より徒歩約1分
竣工:1990年
備考:第32回BCS賞
1994年度グッドデザイン賞
3.戸坂女子短期大学(久米設計)
NECスーパータワーのすぐ先に建つ戸坂女子短期大学は、裁縫学校を起源に持つ短期大学です。
都心の学校施設らしく敷地一杯に建てられ建物ですが、ピロティ状の1階や段々の集落のような上層部によって単なる都心のビルではなく周辺環境を巻き込んだ豊かな建築を目指していることが分かります。
まだ、バブルの記憶が残る1995年に竣工したビルだけあってポストモダン建築の特徴をよく残す多様な形態が隋所に見られることも楽しい建築です。
設計:久米設計
所在地:東京都港区芝2-21-17
アクセス:田町駅より徒歩約4分、三田駅より徒歩約2分
竣工:1995年
4.建築会館(秋元和雄設計事務所)
三田駅の雑居ビル群の中に建つ建築会館は、日本建築学会の創立100周年を記念して建てられた建物です。
設計者の秋元和雄氏は元々は清水建設の設計者でしたが、この建築会館コンペの当選を期に独立した建築家でもあります。
2つの道路に挟まれた敷地に中庭を中心として各機能が配置されていて、建築の一部であり都市の一部であるこの中庭によってこの建物全体が公共性を帯びているように見えるのが面白いです。
中央の中庭には膜状の屋根を掛けることもできて、雨のイベント時など運が良ければ軽やかなその姿を見ることが出来ます。
設計:秋元和雄設計事務所
所在地:東京都港区芝5-26-20
アクセス:田町駅より徒歩約3分、三田駅より徒歩約4分
竣工:1982年
5.分福
建築会館からほどなくのところに建つのは創業約90年の銭湯「万才湯」をリノベーションしてつくられた居酒屋分福です。
「ゆ」の看板が現在も残る建物は、銭湯の脱衣所や湯舟をそのまま利用した飲食店としてSNSを中心に密かな話題となっています。
天井高の高い銭湯の空間を利用したロフトの2階席等の新しい要素と、昔ながらの富士山の壁画などの古い要素が合わさる空間は一見の価値ありです。
※2022年追記
居酒屋としての分福は残念ながら2020年に閉店してしまいました。
現在は同じ運営者によって改修がされ、スパ施設PARADAISEとして生まれ変わりました。
PARADAISEは2022年の春にオープン予定ですので、訪れたらこのブログでもレポートしたいと思います。
所在地:東京都港区芝5-23-16
アクセス:田町駅より徒歩約6分、三田駅より徒歩約5分
竣工:2016年(改修)、2022年(改修)
公式HP:https://paradise-mita.com/
6.慶應義塾大学
続いて訪れた慶應義塾大学は、まさに名建築の宝庫と言えるほど各年代の貴重な建築が集まっている建築必見スポットです。
慶応大学と言えば明治初期に福沢諭吉が創設したことでも知られますが、まず注目したいのは福澤諭吉が自ら資金によって建てた日本最初の演説講堂 三田演説館です。
日本古来から用いられてきたなまこ壁の外壁を用いた擬洋風建築は今年でなんと築149年。現役で内部も見られる近代建築(常時公開ではないので注意)としてはかなり貴重な建築でもあります。
その他にも本格的なゴシックデザインが堪能できる図書館旧館や、大正時代に建てられた塾監局をはじめ各年代の建物が点在する様はまさに建築歴史博物館のようです。
近代建築だけでなく1980年代以降には建築家の槇文彦氏が手掛けた図書館新館や大学院棟、谷口吉郎氏が手掛けた建物を隈研吾氏が改修した第二研究室談話室・萬來舎などみどころ満載の建築を一挙に見ることが出来ます。
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設計:
曾禰中條建築事務所(図書館旧館、塾監局、第一校舎)
第二研究室談話室・萬來舎(谷口吉郎)※改修:隈研吾
槇文彦(図書館新館、大学院棟)
所在地:東京都港区三田2-15-45
アクセス:田町駅より徒歩約6分、三田駅より徒歩約6分
竣工:
1875年(三田演説館)
1912年(図書館旧館)
1926年(塾監局)
1937年(第一校舎)
1951年(第二研究室談話室・萬來舎)
1981年(図書館新館)
1985年(大学院棟)
備考:重要文化財(三田演説館、図書館旧館)
7.蟻鱒鳶ル(岡啓輔)
慶應義塾大学から少し南に歩いた聖坂沿いに建つ蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)は、建築家でありアーティストでもある岡啓輔氏がセルフビルドで建築を進める建物です。
設計図もないまま少しずつ更新されていく建築はまさにそれ自体が作品と言えます。
私も何度か見に行ったことがあるのですが、外国人観光客や建築学生にとってはもはや結構な有名スポットになっていて、見学に行くとだいたい同じような同士に遭遇します。
今回5年ぶりくらいに見に行ったのですが、前回の見学時にはなかったお知らせ看板が掲げられ(事業主・設計者・施工者などすべて岡啓輔氏でした)、少しだけ建物が高くなっていました。
今後この作品がどのように建設が進められ、最終的にどのようになるのか注目です。
設計:岡啓輔
所在地:東京都港区三田4-15-34
アクセス:田町駅より徒歩約7分、三田駅より徒歩約7分
竣工:建設中
8.普連土学園(大江宏)
蟻鱒鳶ルの少し手前の小路を入った先にあるのは、キリスト教フレンド派の日本で唯一の中学校・高等学校である普連土学園の校舎です。
高低差がある敷地をうまく利用して建てられた建築群は、建築家の大江宏氏が手掛けていて、渡り廊下や屋上庭園、ライトコートを介して各建物が立体的に繋がる姿は壮観です。
宗教に関係の深い学校だけあって、校舎全体が1つの家族のような温かさもありながら、凛とした姿に緊張感と知性も感じることができる名建築です。
設計:大江宏
所在地:東京都港区三田4-14-16
アクセス:田町駅より徒歩約8分、三田駅より徒歩約8分
竣工:1968年
備考:DOCOMOMO Japan選定
9.普連土学園百周年記念館(小川守之建築・設計事務所)
再び聖坂に戻って蟻鱒鳶ルの目の前に建つのは普連土学園の100周年の記念事業として建てられた普連土学園百周年記念館とその5年後に増築された110号館です。
大江氏の建築コンセプトを継承しつつ、地下にある講堂の上にホールや図書館、英語教室などが積み重ねられています。
それぞれの機能は外階段や回廊によって敷地と呼応するように連続していて、学校全体で1つの建築となるようにデザインされているのも注目です。
尚、普連土学園は大江宏氏の建築群や百周年記念館の他にも、2006年に建てられた120周年記念館(山下設計)なども校舎もあり、建築好きとしてはたまらない建築スポットとなっています。
設計:小川守之/小川守之建築・設計事務所
所在地:東京都港区三田4-14-16
アクセス:田町駅より徒歩約8分、三田駅より徒歩約8分
竣工:1990年
10.クウェート大使館(丹下健三)
普連土学園の目と鼻の先にあるクウェート大使館は、後に数多くの大使館建築を手掛けた建築家丹下健三氏が手掛けた最初の大使館建築でもあります。
積み木の様な箱型の建物が立体的に積み重なり、その箱をエレベーター等が入った2本のシャフトが繋いでいるのが特徴。
箱状の建物の隙間は屋上庭園にもなっていて、建物全体が1つの立体都市と見立てられているのも面白い建築です。東京の中の小さな異都市ともいえる建築は、まさに大使館建築ならではです。
尚、クウェート大使館についてはこちらの記事で詳しく紹介していますので、気になった方は是非合わせてお読みください。
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設計:丹下健三/丹下健三・都市・建築設計研究所
所在地:東京都港区三田4-13-12
アクセス:田町駅より徒歩約8分、三田駅より徒歩約8分
竣工:1970年
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