今回は私が訪れた群馬県館林市にあるおススメの建築をピックアップしてまとめました。
館林は菊竹清訓氏が設計を手掛けた市民文化センターや第一工房設計の美術館、日比谷公園の野外音楽堂の設計で知られる桂設計の作品群、貴重な近代建築など見どころが満載です。
都内からで1時間半程度でいけるほどよい距離にある館林。いったいどんな建築に出会ったのか、早速紹介していきたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・館林エリアでの建築巡りを写真と文字でレポート
・館林エリアの著名な建築家がデザインした建築や歴史のある近代建築をまとめ
・館林エリアの建築の見どころや注目ポイントを解説
1.館林駅
まずはじめに紹介するのが、館林駅東口をにある館林駅の駅舎です。
館林駅は1907年に東武鉄道が足利まで延長された際に停車場として開業しましたが、現在の駅舎は戦前の1937年に建てられたもの。
シンプルなデザインですが、昔ながらの丸時計と、その時計に呼応するようなアーチ状の外壁と2つの窓がチャーミングです。
足元を引き締めるいぶし銀のようなタイルの外壁と、ポップなカルピスカラーの対比も面白く、現役で使われる親しみやすい駅舎となっています。
所在地:群馬県館林市本町2-1
竣工:1937年
2.製粉ミュージアム本館
館林駅の西口を降りてすぐの場所にある製粉ミュージアムは、館林で創業された日清製粉の歴史や製粉技術について学べるミュージアムです。
こちらの本館は1910年に建てられたもので、建築時には1900年には建てられた工場の部材の一部も再利用してつくられました。
1970年には事務所から記念館への改修が行われ、さらに2012年には免震構造やバリアフリー対応などの大規模な改修がなされ現在に至ります。
自然光が降り注ぐ明るい執務室や、保存された漆喰のレリーフなど、建物も見どころが満載のミュージアムとなっています。
所在地:群馬県館林市栄町6-1
アクセス:館林駅より徒歩約1分
竣工:1910年
開館時間:10:00~16:30
休館日:月曜
入館料:大人200円、小人100円
3.正田醤油正田記念館
正田記念館は、江戸時代末期の1853年に正田文右衛門邸の母屋兼店舗として建てた建物を改修した記念館です。
丁寧に復元と改修がされた館内では、創業当時に使用していた醸造道具のほか、各時代の資料や記念品が数多く展示されていて、風情あふれる空間とともに正田醤油の辿った足跡を知ることができます。
所在地:群馬県館林市栄町3-1
アクセス:館林駅より徒歩約2分
竣工:1853年
開館時間:10:00~16:00
休館日:土曜、日曜、祝日、夏季休暇等
入館料:無料
備考:登録有形文化財
4.毛塚記念館(分福酒造)
毛塚記念館は、江戸時代に創業した老舗の酒造の店舗を保存・改修してつくられた記念館です。
江戸時代末期に建てられた建物は、時代ごとに部分的な改修されていましたが、可能な限りの復元・保存工事が施され建物の歴史から酒造の軌跡、日本酒についての展示を行う記念館として開館しました。
館林ではじめての国の登録有形文化財にも指定されていて、当時の町家建築を現代に残す貴重な文化遺産となっています。
所在地:群馬県館林市仲町3-15
アクセス:館林駅より徒歩約4分
竣工:江戸時代末期
備考:登録有形文化財
5.館林市民センター
館林市民センター(旧館林市庁舎)は、群馬県館林市に建つ地上5階地下1階の市民センターです。
建物の設計は、社会の変化や成長に合わせて有機的に成長する都市や建築を提唱した建築運動メタボリズムの主要メンバーであった菊竹清訓氏が手掛けていて、4隅に塔状の階段やエレベーター、トイレなどを納めたコアが聳え立ち、中央に市民のための機能が積層されているのが特徴です。
これらを四隅にまとめることで、中の庁舎部分を使い勝手の良い大空間にできたり、フレキシブルで拡張性のある建物が目指されています。
2023年には1階にカフェとギャラリーがオープンしたことでも話題となっていて、建設から60年以上経った現在も市民に親しまれる名建築です。
設計:菊竹清訓/菊竹清訓建築設計事務所
所在地:群馬県館林市仲町14-1
アクセス:館林駅より徒歩約7分
竣工:1963年
6.旧館林信用金庫本店
旧館林信用金庫は、大正時代末期に発足した館林信用組合の事務所として建てられ、戦後は館林信用金庫の本店として使われていた建物です。
アールデコ調のデザインや、スクラッチタイルの外壁は大正時代から昭和初期にかけて多く見られるスタイルで、当時の館林ではかなり珍しい街のシンボル的な建物であったことが想像できます。
平成元年からは市の所有物となり、現在も館林市市民センターの分室として現役で使われているのも嬉しい限りです。
所在地:群馬県館林市仲町5-25
アクセス:館林駅より徒歩約6分
竣工:1934年
7.旧館林二業見番組合事務所
旧館林二業見番組合事務所は、料亭組合と芸妓置屋の組合の二業の組合事務所として1938年に建てられた建物です。
組合事務所として使われたのは数年で、その後は日清製粉や基督教会と所有者を変え、現在は市の所有物となっています。
唐破風屋根の玄関に3つの瓦屋根が並ぶ正面のデザインは圧巻で、昭和初期の館林市の華やかで堂々とした雰囲気を感じることができます。
所在地:群馬県館林市本町2-16-2
アクセス:館林駅より徒歩約8分
竣工:1938年
備考:登録有形文化財
※通常は内部は未公開
8.武鷹館(旧館林藩士住宅・長屋門・付属住宅)
武鷹館は、館林城下の侍町にあった中級武士の武家屋敷である旧館林藩士住宅をはじめとした建築群です。
旧館林藩士住宅は廃藩後家主と親戚関係にあった旧藩士の山田家によって管理されていましたが、1999年に館林市指定重要文化財に指定され2001年に現在の場所に移築されました。
横一列に並んだ諸室や、2つの玄関など江戸時代の武家屋敷特有の間取りや建築様式をみることができる邸宅は、貴重な建築遺産です。
また、敷地内には大正時代に建てられた長屋門がギャラリーになっていたり、事務所や会議室として使われる付属住宅があったりと各時代の建築をみることができるのも嬉しいポイントです。
所在地:群馬県館林市大手町5-10
アクセス:館林駅より徒歩約12分
竣工:江戸時代後期(旧館林藩士住宅)、大正時代(長屋門)、1954年(付属住宅)
開館時間:9:00~17:00
公開日:土曜、日曜、祝日
入館料:無料
9.館林市文化会館
館林市文化会館は、約1000席の大ホールと300席の小ホールの2つのホールを有する文化施設です。
派手さはないですが、元々ある高低差を利用しながら城壁を想起させるデザインで周辺の風景と一体化して、まさに館林の地に根を張ったような建物となっています。
大ホールは2019年より「カルピスホール」と名称が変更され、アサヒ飲料が年間使用料を払うこととなりました。これらは施設の維持費や修繕費に充てられるとのことでまだまだ現役で市民に使われる施設となりそうです。
設計:日建設計
所在地:群馬県館林市城町3-1
アクセス:館林駅より徒歩約15分
竣工:1974年
公式HP:https://www.city.tatebayashi.gunma.jp/sp003/index.html
10.三の丸芸術ホール
三の丸芸術ホールはミュージカルや映画上映、ライブなどに利用されている約500席の多目的ホールです。
円形のホールと反円形の出っ張った諸室が柔らかに連続しているのが特徴で、親しみやすい市民のホールを建築で体現しています。
シンプルな図形を組み合わせながら、多様な空間や、ドラマチックな光の効果や、重厚さと軽やかさを両立する素材使いがデザインされているのも面白いです。
設計:岡設計
所在地:群馬県館林市城町1-2
アクセス:館林駅より徒歩約15分
竣工:1987年
11.館林市役所
館林市役所は、東京の日比谷野外音楽堂など設計を手掛けたことでも知られる桂設計による市庁舎です。
先に紹介した菊竹清訓氏設計の市庁舎の老朽化に伴い、1982年に敷地を変え地上5階建ての市庁舎が建てられたのがこちらの庁舎。
市民を受け入れるようなダイナミックなピロティや、シンプルながら飽きのこない彫りの深い造形、周囲の自然と鮮やかなコントラストが印象的な褐色の外壁など市庁舎らさ溢れる素敵なデザインが満載です。
設計:桂設計
所在地:群馬県館林市城町1-1
アクセス:館林駅より徒歩約15分
竣工:1982年
ちなみに桂設計は市庁舎をはじめ公共建築を多く手掛けていて、このあと紹介する田山花袋記念文学館(1987年)の他、向井千秋記念子ども科学館(1991年)、館林総合福祉センター(1993年)なども手掛けています。
12.旧上毛モスリン事務所
旧上毛モスリン事務所は、上毛モスリン株式会社の本館事務所として使われてきた木造二階建の擬洋風建物です。
設計者は不明ですが、壁・屋根・窓・天井と随所に和風と洋風が合わさったデザインが余す所なく詰め込まれているのが特徴で、当時の職人のセンスや工夫が随所に垣間見れます。
建物は群馬県指定重要文化財にもなっていて、周辺エリアを代表する貴重な近代建築となっています。
所在地:群馬県館林市城町2-3
アクセス:館林駅より徒歩約20分
竣工:1909年
開館時間:9:00~17:00
休館日:月曜
13.田山花袋記念文学館
田山花袋記念文学館は、館林で生まれ少年期を館林で過ごした作家田山花袋(かたい)を記念してつくられた文学館です。
田山花袋は「蒲団( ふとん)」や「田舎教師」などの作品を著し、自然主義文学を確立したことで知られる作家です。
一見してシンプルな造形と閉じた装いの建物に見えますが、城壁や武家屋敷の要素が抽象化されてデザインに反映されていて、館林の街並みに馴染んでいました。
館内には花袋の自筆原稿や著書、書簡、遺品等の貴重な資料の他、生まれ育った館林との関係や影響などの展示もあり、様々な側面から花袋の魅力を知ることができます。
設計:桂設計
所在地:群馬県館林市城町1-3
アクセス:館林駅より徒歩約20分
竣工:1987年
開館時間:9:00~17:00
休館日:月曜
入館料 :大人220円、中学生以下無料
公式HP:http://www.city.tatebayashi.gunma.jp/bunka/
■田山花袋旧居
田山花袋記念文学館のすぐ向かいには、田山花袋が7歳から14歳までを過ごした田山花袋旧居が移築・復元されています。
この建物は元々は市内に江戸時代に建てられた武家屋敷で、大小様々な5つの部屋から当時の生活を伺い知ることができます。
旧上毛モスリン事務所と同じ敷地に建っていて、周りは高い木々に囲まれているので、明治時代にタイムトリップしたような不思議な感覚を体験できます。
所在地:群馬県館林市城町2-3
アクセス:館林駅より徒歩約20分
竣工:江戸時代後期(1981年移築)
開館時間:9:00~17:00
定休日:月曜
備考:館林市指定文化財
14.旧秋元別邸
旧秋元別邸は、元々は上毛モスリンの専務を務めた杉村熊三郎の邸宅として建てられ、その後館林の最後の藩主であった 秋元家の別邸として使用された建物です。
ツツジやモミジが植えられた庭は現在はつつじが岡第二公園として公開されていますが、公園の豊かな自然を取り込む和風建築は簡素でありながらとてもとても贅沢な空間となっています。
離れの洋館が昭和初期に増築されていたり、独特な形の開口部があったりとぐるりと周るのが楽しい建築です。
所在地:群馬県館林市尾曳町8-1
アクセス:館林駅より徒歩約22分
竣工:明治時代末期(離れの洋館は昭和初期に増築)
15.群馬県立館林美術館
群馬県立館林美術館は、元々水耕田だった広大な土地に、芝生の広場を囲むように弧を描くように建てられた平屋の美術館です。
美術館へは弧に沿うようにアプローチしていくのですが、低層の建物と緩やかなカーブが周りの風景と連なっているようで気持ちがいいです。
カーブする壁面は目の前の川と一体となっていて、自然でおおらかな土地に建築全体が溶け込んでいるようです。
建物自体はシンプルですが、館林の雰囲気に良く合う、休日にのんびり過ごしたくなる美しい美術館です。
設計:高橋靗一/第一工房
外構設計:オンサイト計画設計事務所
所在地:群馬県館林市日向町2003
アクセス:館林駅よりバスで約20分
竣工:2000年
開館時間:9:30~17:00
休館日:月曜、年末年始
備考:第43回 BCS賞
第17回 村野藤吾賞
公式HP:http://www.gmat.pref.gunma.jp/
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いかがでしたでしょうか。
館林は県立美術館はバスでの利用をお勧めしますが、それ以外の建築は駅の周辺に固まって分布しており見学しやすいので、是非一度訪れてみて下さい。
また、同じ群馬の高崎市の建築を以下の記事で紹介していますのでよろしければこちらも是非ご覧ください。
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