改築&リノベーションで迷ったら読むべき「超」おススメ本を紹介【建築実務】

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増築や改築・リノベーションを行う上での法規って複雑で分りずらいですよね。
増改築については既存建物の状態によって条件が大きく変わることや 度重なる建築基準法の改正からプロでも実際その場面に遭遇すると迷ってしまうことが多いのではないでしょうか。
私も新築の場合とは違って馴染みのないこともあり苦労しながら、条例を頑張って読み込んだり、今までの事例をあさって何とか理解を深めていました。
そんな中、ものすごく参考になる書籍に出会ったのでご紹介したいと思います。

■プロが読み解く 増改築の法規入門 Q&Aと実例で学ぶ「可否の分かれ目」はスゴ本

※写真は改定前のもの

この本は建築雑誌としても有名な「日経アーキテクチュア」民間指定確認検査機関「ビューロベリタスジャパン」がコラボして生まれた増改築に関わる建築法規の解説書です。
実際の物件を元に、前半は日経アーキテクチュアで取り上げられた増改築事例15件の解説、後半はビューロベリタスジャパンの検査員によるQ&A方式による法規解説を行った本です。
まさに増改築のバイブルといえるこの本を早速ご紹介していきたいと思います。

【追記:2019年11月8日に増補改訂版が発売されました。新たな事例や改正となった法規が反映された完全版なので、これから購入する方はこちらの増補改訂版の購入をおススメします】

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①建築確認って必ずしも必要でないって知っていましたか?

いきなり初歩的なことで恐縮ですが、確認申請って必須ではないことって結構あるんですね。
私も実際に増築案件を担当した時に初めて知ったのですが、新築の場合は基本的には建築確認は必須ですが、既存の増改築の場合は建築確認が不要な場合も多いです。
この本のはじめには既存建物に対して増改築を行う際のフローと建築確認が必要か不要かについてのチャート図があり、どんなケースの場合に確認申請が必要なのかについて簡単におさらいすることができます。

建築確認が必要となった場合、必要ない場合の各フローを図で示した上で、各ケースの具体的な解決のために行った工夫や解決策を豊富な事例をもとに解説してくれます。

例えば建築確認を行う条件として「大規模の修繕、主要構造部の過半の工事」というものがあります。
1階の柱をすべて切った上で免振層を追加する工事を行う場合。これはかなりの大規模工事になることが予想されますが、建物が2階以上であれば過半の工事に当たらないので建築確認は不要だったりします。
もちろん条文をそのまま読めば当たり前のことのように思えますが、実際にそういったケースに当たった際にはちょっと迷ってしまいますよね。この本ではそんな疑問に丁寧な解説がなされています。

②まず前半の事例紹介で実際のプロジェクトの事例解説が参考になる

まずはじめのpart1では、実例集として実際の15物件での事例を建築確認あり・なしに分けて紹介しています。
写真や色付きの図面を豊富に使用して、少なくとも4ページ、多いものでは8ページに渡り改修の経緯から法解説、工夫や関連事項について解説してくれます。
例えば以下のような場合です。

■事例1:居室を屋外化して対応したシェアハウスの改修事例

この物件は1972年に鉄筋コンクリート増で建てられ、1979年に5~7階が増築された印刷会社の事務所兼工場の改修事例です。
この古い建築を保育所と診療所、上階にシェアハウスと共同住宅に改修するのですが、この考えただけで身構えてしまう改修計画の全容が余すところなく解説してくれています。
例えば2方向避難を確保する為に居室だった部分を屋内化して避難バルコニーをつくったり、エレベータと階段を屋内に新設するなどの工夫によって法規制をクリアすることができたそうです。

■事例2:建築確認をあえて不要にした若鶴大正蔵の事例

築90年の酒蔵を研修所として改修した富山県の若鶴大正蔵の事例です。ここではあえて建築確認が不要となる改修を選択し、特徴的だった木の架構を残す選択がされています。
既存不適格の酒蔵を集会場に用途変更すると耐火対応や内装制限で木造の蔵のよさがなくなってしまうことから、申請機関と相談した上で研修所として改修していているのですが、その工夫として延べ面積が1000㎡以下となるように玄関部分を後退させ防火の規制を最小限にしています。
一方で安全性の観点から土壁などの主要構造部を残しつつ新規の構造補強を行って現行法上必要な体力は確保しているそうです。
また、既存の架構を残すために集会場にしたことで、地域住民に自由に使ってもらうことができなくなった制約については管理方法などを工夫して運用面で市民の人に開くことを選択していることが解説されています。

この他にも廃校となった学校を宿泊機能を持つ道の駅に改修した例、違法建築だった戸建住宅を減築して法適合させて販売した例、増築扱いにならないアウトフレームによる補強工事でオフィスを改修した例など、参考になる事例ばかりです。

③後半の確認検査員による制度の解説も秀逸

後半のpart2ではQA方式で分かりずらい増改築の法規についての徹底解説があります。
「既存不適格の扱い」「防火避難規定の改正の変遷について」「用途変更で現行法規が適用される項目は?」「シェアハウスへの用途変更の注意点は?」「太陽光発電設備の設置に確認申請は必要?」などなど実際にそういった事態に遭遇すると迷ってしまう様々な疑問について事細かに解説されています。

例えば近年増加しているシェアハウスへの用途変更について。シェアハウスは基準法上の「寄宿舎」に該当するといった基本的なことから、避難や防火上主要な間仕切りなどの規定の注意点、既定緩和のポイントなどについて解説されています。
各QA毎に関連条文もしっかり書かれているので、その点も安心でき、根拠を把握したうえで学ぶことができます。

その他にもいわるゆ増改築時の「1/2ルール」についてもかなりのページを割いて、その考え方から法改正の変遷が表や図を使いながら解説されています。
実際の増築案件を行ってからでないと詳しく知る機会は少ないかもしれないことが、ポイントを押さえた上で分かりやすく知ることができます。

④途中に挟まるコラムや付録も有難いものばかり

本書の初めのページにはカラーでの「建築基準法・改正条文の主な変遷」「用途変更:適用 条文チェックリスト」「増築等:遡及緩和 条文チェックリスト」などこんなまとめが欲しかったという付録が収納されています。

これがほしかった!と唸ってしまう付録がいきなり巻頭からついていて、これだけでも購入する価値はあるくらいです。

また、コラムのページでも「告示、助言、条例はどう違う?」「条、項、号、イロハ・・・そのルールは?」など知っておくとちょっと便利な知識が補強できることもポイントです。

いかがでしたでしょうか。
増改築は新築と同じくらい、もしくは既存建物の状態によってはそれ以上に厄介なものです。
私もこの本に出会ってからずいぶんと助けられたのでここでシェアしようと思いました。
新築案件の絶対数が確実に減っていく中、これからは既存のストックを生かした設計案件がますます増えていくことは必至です。
持っていて絶対損はない、間違いなくおススメの一冊ですので、是非とも一度読んでみて下さい。


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