今回は神戸・三宮エリアで私が訪れた建築の中から、建築巡りにおススメの近代建築・現代建築をレポートしたいと思います。
名建築揃いの神戸において30作品を選ぶのは心苦しく大変でしたが、神戸を訪れた際の観光ガイドや建築巡りの参考にしていただければ幸いです。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・神戸での建築巡りを写真と文字でレポート
・神戸の著名な建築家がデザインした建築や歴史のある近代建築をまとめ
・神戸の建築の見どころや注目ポイントを解説
1.神戸市中央区役所・中央区文化センター
神戸市中央区役所・中央区文化センターは、三宮駅南口の旧居留地エリアに建つ地上12階地下1階建ての区役所、文化センター等の複合施設です。
建物の顔となる東側はスカイデッキと呼ばれる大庇と7層の大きな吹抜けとなっていて、建物と街とのバッファゾーンとなっているのが特徴です。
屋内の天井や庇、家具類にも兵庫県産のも具材がふんだんに使われていて、環境に配慮しながら温もりのある空間がデザインされています。
設計:日本設計
所在地:兵庫県神戸市中央区東町115
アクセス:三ノ宮駅より徒歩約4分
竣工:2022年
2.高砂ビル
高砂ビルは、戦後間もなくの1949年に建てられた地上6階建てのテナントビルです。
元々は帽子の貿易業を行う事務所兼倉庫として建てられた建物は、後年の改修時には高い天井高を活かして、ロフトが設けられたテナントビルとなっているのもユニークです。
モダンなデザインの建物は、現在も店舗やギャラリー、ホールとして現役で使われている他、映画やテレビのロケ地としても度々活用されている人気の建物となっています。
設計:大阪設計
所在地:兵庫県神戸市中央区江戸町100
アクセス:三ノ宮駅より徒歩約6分
竣工:1949年
3.こども本の森 神戸
こども本の森神戸は、東遊園地内に2022年にオープンした図書施設です。
設計者の安藤忠雄氏の建築といえば打ち放しコンクリートを使ったデザインを得意とする建築家ですが、こども本の森神戸でも、花時計を中心とした自然の木々や草花と人工的で堅牢なコンクリートの建物が美しく対比されています。
大きな屋根の下に縁側のような中間領域空間がつくりだされていたり、ガラスの大開口を通して花時計や神戸港の自然が借景のように建物内に飛び込んできたりと素材と環境を巧みにデザインに取り入れながら、素敵な本との出会いの場がつくりだされています。
詳細記事
・神戸「こども本の森神戸」本に囲まれた素敵な図書建築をレポート
設計:安藤忠雄/安藤忠雄建築研究所
所在地:兵庫県神戸市中央区加納町6-1-1
アクセス:三ノ宮駅から徒歩約12分
竣工:2021年
4.神戸税関
神戸税関は、こども本の森 神戸の南側の新港エリアに建つ税関施設で、昭和初期の1927年に建てられた旧館と、1999年に増築された新館で構成されています。
褐色の煉瓦が白いラインで挟まれ、天に伸びる塔屋に繋がるデザインからは、重厚で堅牢な印象と共に新時代の幕開けを予感させる軽やかさと飛躍感を感じます。
港エリアの交差点に建つ建物からは、様々な時代を航海し、乗り切ってきた大きな船を連想させられるのも面白いです。
設計:大蔵省営繕管財局(旧館)、日建設計(新館)
所在地:兵庫県神戸市中央区新港町12-1
アクセス:三ノ宮駅から徒歩約14分
竣工:1927年(旧館)、1999年(新館)
5.デザイン・クリエイティブセンター神戸
デザイン・クリエイティブセンター神戸は、昭和初期に建てられた神戸市立生糸検査所(旧館)と国立生糸検査所(新館)を改修してつくられたホール、ギャラリー、図書館、事務所、カフェ等の複合施設です。
2012年の改修で生まれ変わった建物は、ネオゴシック風の外観やホールなどを保存・修復しつつ、現代の人々のための活動・交流拠点として見事にリ・デザインされています。
内部は共用部だけでなく様々な部分に旧建物時代の名残が残されていて、例えばカフェでは旧生糸検査所時代の家具や機器を使ったテーブルなどを間近で体感することができます。
設計:清水栄二(旧館)、置塩章(新館)
改修設計:佐藤総合計画
所在地:兵庫県神戸市中央区小野浜町1-4
アクセス:三ノ宮駅から徒歩約14分
竣工:1927年(旧館)、1932年(新館)、2012年改修
備考:第26回BELCA賞
神戸市景観形成重要建築物
6.新港貿易会館
新港貿易会館は、デザイン・クリエイティブセンター神戸のすぐ南側に建つ地上4階地下1階建ての会館建築です。
元々は港湾関係業者の事務所兼交流拠点として建てられた建物は、道路を受け流すような丸みを帯びた外観とアールデコ風のデザインとなっています。
船舶を思わせる丸窓や、嵌め込まれたステンドグラス、昭和初期の建物らしいスクラッチタイルの外装も特徴で、神戸の港湾エリアのランドマークとして永きに渡って親しまれています。
設計:新港相互館
所在地:兵庫県神戸市中央区新港町8-2
アクセス:三ノ宮駅から徒歩約15分
竣工:1930年
備考:登録有形文化財
神戸市景観形成重要建築物
7.旧神戸居留地十五番館
旧神戸居留地十五番館は、旧居留地の中心エリアにアメリカ合衆国の領事館として建てられた建物で、阪神・淡路大震災で一度全壊しましたが1998年に修復がなされました。
正面左右に設けられた三角形のペディメント(破風)やベランダがトレードマークの建築は、コロニアルスタイルの特徴がよく表れた貴重な建築で、国の重要文化財にも指定されています。
内部は何度かリニューアルがされていますが、当時の面影が残る建物で食事やアフタヌーンティーを楽しむことができるとっておきの建築グルメスポットです。
所在地:兵庫県神戸市中央区浪花町15
アクセス:三ノ宮駅より徒歩約10分
竣工:1880年頃(1998年改修)
備考:重要文化財
8.チャータードビル
チャータードビルは、イギリスのチャータード銀行の神戸支店として1938年に建てられた地上4階建ての元銀行建築です。
建物の設計を手掛けたJ・H・モーガンは、フラー建築会社の技師として来日し、東京の旧丸の内ビルの設計に携わったり、その後も数々の建物を手掛けた建築家で、このチャータードビルは彼の遺作でもあります。
イオニア式の柱が立ち並ぶ外観は、銀行建築らしい堂々とした出で立ちで、神戸のレトロ建築群の一角を担っています。
設計:J・H・モーガン
所在地:兵庫県神戸市中央区海岸通9-3
アクセス:三ノ宮駅より徒歩約11分
竣工:1938年
9.大丸 神戸店
大丸 神戸店は、メリケンロードと西国街道が交差する角地に建つ老舗の百貨店です。
この地には元々は建築家村野藤吾が設計した店舗が建てられていましたが、阪神・淡路大震災で損壊し、1997年に現在のビルに建て替えられました。
老舗の百貨店の持つ重厚で伝統的イメージと、煌びやかで華やかなデザインが融合した店舗は周辺エリアの新たなランドマークとなっています。
伝統的なスタイルやデザインを取り入れた足元の空間も魅力的で、遥か昔に建てられたかのような風格を纏っているのも面白いところ。
建物南側には昭和初期に建てられた独逸染料合名会社の外装も保存されているので、訪れた際には是非ぐるりと周って見てみてほしいです。
さらに建物の南東側には大丸神戸店南館として、ウィリアム・M・ヴォーリズが設計した旧居留地38番館が残されているのも注目ポイントです。
コンパクトな建物ですが、リズミカルに並ぶ開口部が楽しげな建物となっていて、歴史の重さの中に暖かくて楽しげな雰囲気が同居する神戸の隠れた注目建築です。
設計:日建設計、ウィリアム・M・ヴォーリズ(大丸神戸店南館/旧居留地38番館)
住所:兵庫県神戸市中央区明石町40
アクセス:元町駅より徒歩約5分
竣工:1929年(大丸神戸店南館/旧居留地38番館)、1997年