高尾町「高尾山口駅」自然の人間の間を繋ぐ素敵建築をレポート

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皆さん高尾山に登ったことはありますか?
高尾山は都心からすぐのところにあることもあり、都内や関東近郊にお住まいの方であれば一度は訪れたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
この高尾山に上る為の最寄り駅ですが、実は2015年に世界的建築家の隈研吾氏の手によってリニューアルがなされているのです。

今回はそんな高尾山口駅についてその見どころをご紹介したいと思います。

【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー

【この記事で分かること】
・高尾山口駅を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・高尾山口駅の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・高尾山口駅の建築的な見どころや注目ポイント

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①そもそも高尾山ってどんな山?

高尾山は東京都八王子市に属する標高599mの山です。
国定公園にも指定しされていて、2007年には富士山と並んでミシュランの三ツ星にも指定されました。
都心から約一時間というアクセスの良さもあり、年間約260万人が登る登山者数世界一の山でもあります。

また古くは山岳信仰の場としても重要な意味を持ち、744年に開山された薬王院は成田山新勝寺、川崎大師平間寺とともに真言宗智山派の三大本山とされています。

②高尾山口駅のリニューアル計画が浮上・隈研吾氏が設計

そんな高尾山にアクセスする駅として、高尾山口駅は1967年に開業し、それ以来高尾山への玄関口として親しまれてきました。
2015年には京王電鉄が中心となり、高尾山の自然について展示したり学んだりできる施設「TAKAO 599 MUSEUM」や温浴施設がオープンし、ますます注目を浴びる存在となりました。
同じ年にオープンした高尾山口駅のリニューアルには建築家隈研吾氏が選ばれ、大きな話題となりました。

③高尾山口駅・高尾山へのアクセス

高尾山へのアクセスはまずは高尾山口駅からのアクセスがメジャーなアクセスとなります。
今回ご紹介する高尾山口駅はこの高尾山への入口に当たる駅です。まさに高尾山の玄関口ともいえる駅として存在しています。

車でもアクセスできますが、紅葉の季節などは大渋滞になることと、駐車場の台数にも限りがあることから電車で訪れることをおススメします。

高尾山に伸びる際には高尾山口駅降車後徒歩5分程で登山道の入口に到着します。
ここから徒歩で登ってもよいですし、途中まではケーブルカーまたはリフトで登ることも出来ます。

ケーブルカー・リフトは登山口に隣接する駅から乗ることができます。先ずはチケットを購入し、その後乗車を待つ列へと並びます。

□ケーブルカー・リフトの料金
ケーブルカーとリフトはどちらも料金は一緒です。2019年10月から若干の料金の値上げがあり以下の料金となります。(記事執筆時点の情報です)
大人:片道490円/往復950円
小児:片道250円/往復470円


詳細はこちらのHPにも記載がありますので、訪れる際にはチェックしてみて下さい。
また季節や混雑状況によって若干の違いはありますが、最終便は17:15~18:00と意外と早いので、事前に計画と建てて乗り遅れないようにしましょう。

ケーブルカーは約6分、リフトは約12分で到着します。
せっかくの登山ができるのに自分の足で登らないの?と思いかもしれませんが、ケーブルカーは「紅葉の美しいケーブルカー」第1位にも選ばれたこともあり、リフトも大自然を肌で感じながら登ることができるのでどちらもおススメです。
チケットは往復でも購入できますが、行きと帰りでケーブルカー・リフトを入れ替えて両方乗ることをおススメします。

また、ケーブルカー・リフトを降りてすぐのところにある「高尾山スミカ 」 は成瀬・猪熊建築設計事務所によるリノベーションプロジェクトです。高尾山に訪れた際には合わせてチェックするようにしましょう。

尚、 ケーブルカー・リフトの乗車には紅葉の季節では1時間以上並ぶこともありますが、一緒に行った人とおしゃべりしたり、写真をとったりしながら気長に待ちましょう。

④隈研吾ってどんな人?

隈研吾は1954年、横浜生まれの日本の建築家です。
小学生の時に東京オリンピックがあり、父に連れられて見た丹下健三設計の代々木体育館を見て感動したことが建築家を志す大きなきっかけとなったそうです。
東京大学に入学し芦原義信、槇文彦、原広司などの名だたる建築家に師事し、大学院を卒業後は大手設計事務所の日本設計に入社します。
その後、大手ゼネコンや米国コロンビア大学の客員研究員を経て1990年に独立し、隈研吾建築都市設計事務所を設立します。

独立後間もなくの時期は、ポストモダンと呼ばれる建築ムーブメントの只中で、西洋のイオニア式の柱を引用した建築「M2」やドリス式の柱をそのまま建築にしたような「ドーリック」を発表し注目を集めました。

M2ビル
M2(世田谷区)

東京というカオスな都市にはカオスが必要、といった独自の理論を組み立てましたが、バブルの崩壊と共にその理論は説得力を失っていきます。

そんな中1990年代後半からは、作風がガラリと変わり木やガラスといった素材を使った繊細で作品へとシフトしていきます。
これを隈氏は「負ける建築」と呼び、権威的でモニュメンタルな建築を否定し、都市に開き、自然と調和するような建築を生み出していきます。
日本古来からの美意識を現代の建築にアレンジしたような隈研吾氏の建築は大変に評価され、今や世界的建築家としての地位を確立しています。
近年では歌舞伎座や国立競技場、高輪ゲートウェイなど国家的なプロジェクトを次々実現しています。

⑤隈研吾氏のデザインの特徴は屋根にあり

まず目につくのはダイナミックな大屋根です。
これは高尾山薬王院をイメージしたものとのことで、駅の内外を区切りながらつなげる役目を果たしています。

この大屋根はこの建築の最大の注目ポイントですが、隈研吾氏の建築を見る上でも重要なポイントです。
上記の「隈研吾ってどんな人?」隈研吾氏は初期の建築で大きな挫折をし、その後は日本古来からの美意識を現代の建築にアレンジすることで成功したという解説しましたが、その目の付け所が屋根なのです。

もともと日本の建物の特徴は大きな木組みの屋根にあります。これは国土の約7割を木に囲われ、雨も多く降る日本では屋根が重要な建築の要素だったからです。
石造りの壁から発展してきた西洋の建築とは大きな違いです。シドニーのオペラハウスの設計者でも有名なヨーン・ウッツォンが日本建築を描いたスケッチでは宙に浮かぶ屋根だけが書かれていました。
日本の壁は障子や襖に代表されるように、水平方向に関しては抜けています。その結果水平方向に視線を通して外部の環境を内部に取り入れて借景にしたりとしたことが可能になりました。

この日本建築にみられる「屋根」に注目してデザインすることで、隈研吾の建築は日本人の心に響く建築を生み出していっているのです。
2009年に行われた浅草の観光センターの最終公開審査は私も見に行きましたが、スタイリッシュで先鋭的な提案をするほかの建築家に対して、隈氏が木の屋根を積見重ねた提案で見事勝利を勝ち取っていたのがとても印象的でした。

高尾山口駅では外側に向かって開くように広がる屋根は、高尾山へ向かう人々の気持ちを高揚させ、ワクワク感を演出しています。
また、屋根の大きさにも一工夫あり、建築と大自然との間にあるようなスケールとなっています。
一旦ホームから天井高の低い1階に降りた後で、利用者のスケール感覚を自然に向かって解放していますし、帰りの際には自然のスケール感覚を駅の一階といういつものスケールに戻すようなデザインになっています。

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⑥ホームから地中に入っていくような構内に注目

高尾山口駅のホームは2階の高さにあるので、一旦階段またはエレベータで降りで改札を出る必要があります。
改札に向けていったん下がる為の階段は、土のような柄の仕上げ材で下方に続いています。

トンネルの中を通って別世界に向かう様な、これから広がる大自然の準備がここでなされます。
電車の中の雰囲気とは一変してここで1つスイッチが入れ換わる仕掛けとなっています。
一見すると暗くなりがちなダークな内装も間接照明によって照らされる効果によって上品で美しいし仕上がりに見えるところに隈研吾氏の手腕が現れています。

まるで高尾山の山の大地の中にもぐりこんだかのような空間体験から一変、改札を出ると開放的な大屋根につながるようなデザインとなっています。

⑦利用者に寄り添った細かい配慮がすごい

デザイン上も優れている高尾山口駅ですが、利用者の為の細かな配慮がなされていることは特筆すべき点です。
例えば、ユニバーサルデザインがなされた「だれでもトイレ」はもちろんのこと、改修に合わせて通常のトイレも大きく拡張されています。

男性用で個室が3室、小便器が5つ、女性用で個室が14室あります。
駅のトイレは大行列で使えない、というのはよく見る光景ですが、特に女性用のトイレを大きく増設したことはとてもうれしいです。
トイレの個数などはあまり配慮されない建築が数多くある中、使う人にとってどうあるべきかがよく配慮されていると思います。

また、改札を出た広場も十分な広さと柱を利用したスタイリッシュなベンチがきちんと計画されています。

これも使う人にとってはありがたい存在。隈研吾氏の建築には否定的な意見の方も多いかと思いますが、こういった細かい配慮がきちんとされて、利用者にとって使いやすい計画がきちんとされている点はさすがとしか言いようがありません。
高尾山への期待を胸に収めながら、この駅についても単に通過するだけでなく、細かく見てみるといろんな配慮と工夫の跡が見えてきます。

⑧隈氏と駅建築

実は隈研吾氏は高尾山口駅の設計と同時期に栃木県の駅舎の設計も行っています。
これは宝積寺という駅で駅前広場のちょっ蔵広場も同じく隈氏の設計です。

先ほど、高尾山口は大屋根が特徴といいましたが、こちらも屋根(天井)が木組みでつくられているという共通点があります。
こちらの宝積寺もダイナミックな屋根を頭上に駅を降りて行き、駅前広場といった設計であり、高尾山口駅との共通点をいくつも見てとれます。
また、2020年にオープン予定の高輪ゲートウェイ駅も隈研吾氏の設計ですので、オープンした際にはその屋根に注目してみると面白いでしょう。

その他にも「大和張り」「羽目板張り」「小端立て張り」「千本格子」といった様々な種類の木組みや隈氏が長年にかけて実践してきた様々な木の表情を見ることができることもポイントです。

いかがだったでしょうか。
私は2015年のオープンして間もなくの夏と、2018年の秋の計2回訪れていますがどちらも建築も山も満喫でき、大満足でした。
ここまで紅葉の写真が続きましたので、最後にこちらは夏の高尾山。

何度でも行きたくなる高尾山。皆さんも是非訪れてみてはいかがでしょうか。
おススメです。

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高尾山口駅
設計:隈研吾/隈研吾建築都市設計事務所
所在地:東京都八王子市高尾町
竣工:1967年(2015年改修)
備考:2016年度グッドデザイン賞


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