今回は京都で私が訪れた建築の中から、建築巡りにおススメの近代建築・現代建築を30作品に厳選して紹介したいと思います。
名建築揃いの京都において30作品を選ぶのは心苦しく大変でしたが、京都を訪れた際の観光ガイドや建築巡りの参考にしていただければ幸いです。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・京都でのの建築巡りを写真と文字でレポート
・京都の著名な建築家がデザインした建築や歴史のある近・現代建築をまとめ
・京都の建築の見どころや注目ポイントを解説
今回紹介しきれなかった建築についても、当サイト内で引き続きレポートしていきたいと思いますので、気になる方は是非ブックマークなどをしてもらえると嬉しいです。
尚、紹介する建築はイベント時のみ特別公開しているものなども含みますので、見学の際はルールやモラルを守った上での見学をお願いします。
1.京都駅ビル
まずはじめに紹介する京都駅ビルは、1日の利用者数が50万人に迫る京都一のターミナル駅につくられた駅舎、広場、商業施設、ホテル、文化施設等の複合施設です。
京都駅としては4代目となる駅舎は、1990年に行われた国際指名コンペによって選ばれ、建築家の原広司氏による建築が1997年に完成しました。
延べ面積約23万7000㎡を超え、様々なプログラムを内包する建築は、条坊制の碁盤の目や京都の玄関口としての門のイメージ、かつて原氏が調査した世界の集落や様々な建築の断片が高密度で集積しています。
大屋根で覆われた中央のアトリウムも圧巻で、駅ビルの避難階段も兼ねた大階段が大きな谷のような大地をつくり出しています。
建設から四半世紀以上経った現在でも、その巨大なボリュームや京都らしさについて賛否両論が巻き起こる建築ですが、巨大で緻密な建築から膨大なエネルギーとダイナミックさが伝わってくる唯一無二の建築となっています。
設計:原広司+アトリエ・ファイ建築研究所
所在地:京都府京都市下京区東塩小路町
竣工:1997年
備考:第40回BCS賞
公式HP:https://www.kyoto-station-building.co.jp/
2.京都タワー
京都タワーは、京都駅前の旧京都中央郵便局の跡地に建てられたタワーで、京都一の高さを誇る建造物でもあります。
地上9階地下3階建ての建物の上に設計者の山田守らしい優雅な曲線のタワー乗っかっていて、展望台の高さは約100m、最高高さは約131mとなっています。
タワーというと鉄骨を組み合わせた鉄塔のイメージがありますが、京都タワーでは殻のような鋼板をつなぎ合わせるモノコック構造とすることで、なめらかで独特のデザインを実現していて、京都の駅前のランドマークとなっています。
設計:山田守/山田守建築事務所+京都大学棚橋研究室
所在地:京都府京都市下京区東塩小路町
アクセス:京都駅より徒歩約1分
竣工:1964年
営業時間(展望タワー):10:00~21:00
展望タワー入館料:大人900円、高校生700円
公式HP:https://www.kyoto-tower.jp/
3.本願寺伝道院
本願寺伝道院は、明治から大正へと時代が移り変わった1912年に旧真宗信徒生命保険会社の社屋として建てられた建物です。
設計を手掛けた伊東忠太は帝国大学(現在の東京大学)の教授を務め、日本建築史を創始したことでも知られる人物。
伊東は明治期に日本に入ってきた西洋建築に加え、法隆寺など日本の伝統建築を学問的に捉え直し、さらに中国やインド、中東諸国に3年間留学しながら建築を研究しました。
本願寺伝道院ではイギリス風の赤レンガの外壁にインドのイスラム様式のドーム、日本の寺院のパーツを石造りに変換したデザインなど様々な様式が融合しているのが特徴。
各部に各国の様式を取り入れつつも、全体としては不思議と調和し、独特ながら京都の街に納まってみえるのはさすがといえます。
足元には伊東のトレードマークの魑魅魍魎像も健在で、訪れた際は必見です。
設計:伊東忠太
所在地:京都府京都市下京区東中筋通正面下ル紅葉町
アクセス:京都駅より徒歩約7分
竣工:1912年
備考:重要文化財
4.COCON KARASUMA(古今烏丸)
COCON KARASUMA(古今烏丸)は、烏丸駅の駅前に元々は呉服商社の社屋として建てられた建物を改修した複合商業施設です。
改修設計を手掛けたのは建築家の隈研吾氏率いる隈研吾建築都市設計事務所。隈研吾氏といえば、以前このブログでも雲の映像をガラスの外装に転写した東京都の渋谷駅(2003年竣工)を紹介しましたが、COCON KARASUMAでは建物内にもはいる唐紙の老舗店に伝わる「天平大雲」をモチーフにした雲柄の外装により建物の新しい顔をつくり出しています。
外装以外にも伝統の継承や新旧を対比するデザインが各所に散りばめられているのも注目ポイントです。
改修設計:隈研吾/隈研吾建築都市設計事務所
所在地:京都府京都市下京区烏丸通四条下ル水銀屋町620
アクセス:四条駅、烏丸駅直結
竣工:1938年(2004年改修)
備考:第16回BELCA賞
5.京都芸術センター
京都芸術センターは、明治2年(1869年)に開校した下京三番組小学校をルーツとし、1931年に建設された京都市立明倫小学校の建物を改修したアートの創造・発信拠点です。
2000年の大改修の改修デザインを手掛けたのは大手の組織設計事務所である佐藤総合計画で、元の建物を最大限に生かした形で芸術センターへの改修が行われているのが特徴です。
建物の外観は、優しいクリーム色の外壁、当時流行していたセセッション風の門柱やスパニッシュ風の屋根などを取り入れたモダンなデザインとなっています。
明倫小学校は京都の近代建築の中では比較的後期に建てられましたが、柔らかくも独特の色使いや、町家や祇園祭などの雰囲気を感じる和風の意匠との融合など、親しみが持てる小学校らしいデザインが随所にみられます。
改修設計:佐藤総合計画
所在地:京都府京都市中京区室町通蛸薬師下ル山伏山町546-2
アクセス:四条駅より徒歩約3分、烏丸駅より徒歩約3分
開館時間:
ギャラリー・図書室・カフェ10:00 ~ 20:00
制作室・事務室10:00 ~ 22:00
休館日:年末年始
入館料:無料
竣工:1931年(1999年改修)
備考:国登録有形文化財
2002年BELCA賞
2006年公共建築賞 特別賞
公式HP:https://www.kac.or.jp/
6.旧北國銀行京都支店
旧北國銀行京都支店は、烏丸通りを北上したところに建つ元銀行建築で、現在は内部を改修して商業施設として利用されています。
設計を手掛けたのは辰野金吾・片岡安といえば以前このブログでも大阪市中央公会堂を紹介しましたが、この建築でも赤煉瓦と白石の帯を組み合わせた辰野式と呼ばれる独特のデザインや角部に設けられたドームなどにその特徴がよく表れています。
規模は大きくないですが、その分細かい装飾が各所に散りばめられているのが特徴で、随所に格式と華やかさが滲み出しています。
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設計:辰野片岡設計事務所
所在地:京都府京都市中京区手洗水町
アクセス:四条駅より徒歩約3分、烏丸駅より徒歩約3分
竣工:1916年
7.京都ゼロゲート/Apple 京都
続いて紹介する京都ゼロゲートは、四条通り沿いに建つ地上7階地下2階建てのテナントビルです。
障子をモチーフにデザインされた外装は、日本的な美学と現代的なスタイリッシュさが融合したデザインとなっていて、シンプルが故の美しさが逆に目を惹きます。
1階に入るApple 京都は、以前このブログでも紹介したApple丸の内なども手掛けたFoster+Partnersがデザインを手がけているのも注目ポイントです。
設計:日建設計+竹中工務店、Foster+Partners(Apple 京都)
所在地:京都府京都市下京区四条通高倉東入立売中之町83-1
アクセス:四条駅より徒歩約3分、烏丸駅より徒歩約3分
竣工:2018年
8.東華菜館(旧矢尾政)
東華菜館は、元々は矢尾政という西洋料理店の新店舗として1926年に建てられた鉄筋コンクリート造5階建てのレストランです。
設計を手掛けたのはウィリアム・メレル・ヴォーリズ率いるヴォーリズ建築事務所。W・M・ヴォーリズといえば、1905年にキリスト教の伝道師・英語教師として来日し、その後建築家、実業家として日本に多大な貢献と影響を与えた人物です。
建物の外観は、ヴォーリズ建築としては珍しいほどの装飾が施されていて、ヴォーリズの得意としていたスパニッシュスタイルにバロック建築やエキゾチックな建築趣味が融合された迫力のデザインとなっています。
大正ロマンを始めとする華やかで新時代の希望に満ちたデザインが一般市民にも広く普及した時代において、単なる西洋風建築ではない、やや過剰ともいえる装飾の建築は建築当時はさぞ人々の目を引いたと思います。
また、現存する日本最古と言われるエレベーターも必見。蛇腹状の内籠に手回しの開閉装置が現役で使われていて、エレベーターを操作する専用の店員さんが慣れた手付きで案内してくれます。
立体的な施された装飾は、よく見ると海の幸や山の幸など食材をモチーフにしているのも注目ポイントです。
詳細記事
・京都「東華菜館」W.M.ヴォーリズが手掛けたレストラン建築をレポート
設計:W・M・ヴォーリズ建築事務所
所在地:京都府京都市下京区四条大橋西詰
アクセス:京都河原町駅より徒歩約1分、祇園四条駅より徒歩約2分
竣工:1926年
営業時間:11:30~21:30
公式HP:https://www.tohkasaikan.com/
■レストラン菊水
ちなみに鴨川の対岸に建つ地上5階建てレストラン菊水も注目の近代建築です。
精巧な意匠が特徴的であった東華菜館に比べるとかなりシンプルな建物にみえますが、放物線のような塔屋に当時流行していた表現派の影響がみられたり、絶妙にアシンメトリーになっている立面など、よく見るとユニークなデザインとなっているのが面白いです。
長く見ているとどこか愛嬌を感じる建築は、東華菜館と合わせて鴨川沿いのランドマークとなっています。
設計:上田工務店
所在地:京都府京都市東山区四条大橋東詰祇園
アクセス:京都河原町駅より徒歩約2分、祇園四条駅より徒歩約1分
竣工:1926年
営業時間:10:00~22:00
公式HP:http://www.restaurant-kikusui.com/
9.京都国際マンガミュージアム
京都国際マンガミュージアムは国内外の様々な漫画関連の資料を集め、研究・展示する漫画専門のミュージアムです。
元の建物である龍池小学校は平成初期の1995年まで小学校として利用されてしましたが、統合によりその役目を終えた後、2006年に小学校の建物を活用した新たな施設に生まれ変わりました。
建物は元々の躯体を残しつつ、広場側にはガラスと吹抜けによる増築空間が追加されていて、増築部分はロビーやイベント空間、新たに追加されたエレベーターなどの移動空間にもなっています。
広場側は広場に視線が通り、光のあふれる気持ちのいい空間となっていて、新しく明るい現代的な増築部分と、歴史の積み重なった重厚で陰影豊かな空間となるギャップも見どころのひとつ。
明と暗、新と旧、直線と曲線が上手く対比される空間は、漫画そのものの歴史ともリンクしながらここにしかないミュージアムをつくりだしています。
詳細記事
・京都「京都国際マンガミュージアム」昭和初期の小学校を改修した建築をレポート
設計:京都市営繕課
改修設計:類設計室
所在地:京都府京都市中京区烏丸通御池上ル
アクセス:烏丸御池駅より徒歩約2分
竣工:1928年(講堂)、1929年(本館)、1937年(北館)、2006年(リニューアル)
開館時間:10:30~17:30
休館日:火曜、水曜
入館料:
大人 900円
中高生 400円
小学生 200円
備考:登録有形文化財
手塚治虫文化賞特別賞
公式HP:https://kyotomm.jp
10.新風館
新風館は元々は1926年に建てられた旧京都中央電話局を増築・改修して建てられた建物です。
旧京都中央電話局の設計を手掛けたのは、昭和の日本を代表する建築家である吉田鉄郎。
この旧京都中央電話局が最初に大きな転換点を迎えたのは2001年です。世界的建築家リチャード ロジャースらにより大規模な増築・改修が行われ、元の建物を活かしつつ、古い建物と対を成すようなビビットな色の鉄骨や中庭のイベントスペースが印象的な建物が完成し、「新風館」と名前もリニューアルされました。
そして2021年に隈研吾建築都市設計事務所がデザイン監修を行った大規模な改修が行われて、現在の新風館となりました。
このリニューアルでは、旧京都中央電話局の東側の中庭を継承しつつ、新たに地上7階地下2階建てホテル・レストラン・商業施設がつくられました。
新しい新風館は、隈研吾氏がよく用いる木や金属といった素材を組み合わせながら、静と動の両方を感じる建物となっています。
遠目では一見して落ち着いているようで、近づいてみるとダイナミックなデザインとなっていたり、逆に近づいてみて初めて感じられる木や錆などの素材感が印象的に感じられるなどと、設計者の様々な工夫や仕掛けが楽しい建築となっています。
詳細記事
・京都「新風館」新旧の建物が交錯する素敵建築をレポート
改修設計(2020年):隈研吾建築都市設計事務所+NTTファシリティーズ
改修設計(2001年):リチャード ロジャース パートナーシップ ジャパン+NTTファシリティーズ
原設計:吉田鉄郎
所在地:京都府京都市中京区烏丸通姉小路下ル場之町586-2
アクセス:烏丸御池駅より徒歩約1分
竣工:1926年(旧京都中央電話局)、2001年・2020年改修
営業時間:
SHOPS 11:00~20:00
RESTAURANT 8:00~24:00
備考:第30回AACA賞
2021年グッドデザイン賞
2021年JIA優秀建築選100選
公式HP:https://shinpuhkan.jp/
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