21.顔の家
顔の家は、古い町家が連なる京都の住宅地に建つ事務所併用の住宅です。
その特徴は何といってもその名の通り顔を模した外観で、口が入口、目が窓、鼻や耳も風などの空気や音を取り入れるようデザインされています。
設計を手掛けた山下和正氏といえば東京青山の洗練された商業施設の先駆けとなったフロム・ファーストビルや、銀座の数寄屋橋交差点交番のデザインでも知られる日本を代表する建築家でもあります。
数寄屋橋交番はトンガリ屋根にまち針のような装飾が取り付くデザインが可愛らしい交番でしたが、洗練されたデザインに加えどこか遊び心と親しみやすさを感じる建築を多く手掛けています。
ちなみに1階は現在ハンドメイドの雑貨を販売するショップとなっていて、子連れの地元民や観光客で賑わっていました。
設計:山下和正
所在地:京都府京都市中京区衣棚通二条上ル
アクセス:烏丸御池駅より徒歩約5分
竣工:1974年
22.大丸ヴィラ(中道軒)
大丸ヴィラ(中道軒)は、大丸百貨店の店主であった下村家の邸宅として建てられた建物です。
下村氏が留学中に魅せられたイギリスのチューダー様式を取り入れたデザインが特徴の建築は、構造は鉄筋コンクリート造ですが木造の構造を意匠としてみせるハーフティンバー風となっていたりと個人の邸宅ならではの見どころが満載です。
この邸宅の愛称である中道軒もチューダーをもじったものであると思われますが、主の理想を実現し愛された家だったことがその名からも伝わってきます。
設計:ヴォーリズ建築事務所
所在地:京都府京都市上京区春日町433-2
アクセス:丸太町駅より徒歩約1分
竣工:1932年
備考:京都市登録有形文化財
23.平安女学院大学
平安女学院大学は、明治のはじめの1875に開校したミッションスクールをルーツにもつ私立大学です。
1895年に建てられた明治館は、クイーン・アン・スタイルというイギリスの19世紀にイギリスの学校建築で流行した様式を取り入れたデザインとなっていて、軽やかで優雅な屋根のデザインなどにその特徴が表れています。
明治館の竣工した3年後に完成した聖アグネス教会は、このブログでも何度も紹介しているJ.M.ガーディナーが設計を手掛けました。
ガーディナーは建築家としてだけでなく教育者としてもよく知られていて、立教大学の校舎の設計や校長を務めた人物でもありますが、ここ聖アグネス教会では明治期の教会の形式をよく残している他、精巧なデザインのステンドグラスなどの細かい装飾を随所で堪能できます。
この他にもこちらの昭和館は、後に東京築地の聖路加国際病院を手掛けるJ・V・W・バーガミニィが意匠設計を、東京タワーを手掛ける内藤多仲が構造設計を手掛けるなど、建築自体も華やかですが、設計者も大物建築家が関わっています。
設計:アレクサンダー・ネルソン・ハンセル(明治館)、J・M・ガーディナー(聖アグネス教会)、J・V・W・バーガミニィ(昭和館)、富家宏泰/富家建築事務所(室町館)
所在地:京都府京都市上京区武衛陣町
アクセス:丸太町駅より徒歩約4分
竣工:1895年(明治館)、1898年(聖アグネス教会)、1929年(昭和館)、1951年(室町館)、1962年(家政館)、1965年(保育館)、1967年(英文館)
備考:登録有形文化財(明治館)、京都市指定有形文化財(聖アグネス教会)
24.京都府庁旧本館
京都府庁旧本館は、明治の終わりの1904年に建てられた京都府の府庁舎です。
ルネサンス様式を基調としつつ、府庁舎機能だけでなく議事堂や貴賓室など様々な機能が収納められていますが、それらがバランスが取れた意匠と合理性の元計画されています。
明治の後期の建築ということもあり、日本人家の手により西洋建築を上手く消化しつつ、所々に和のエッセンスも取り入れられているのが面白いところ。
ヨーロッパに習うことから始まった明治の庁舎建築の集大成ともいえる建築です。
設計:松室重光+久留正道
所在地:京都府京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町
アクセス:丸太町駅より徒歩約10分
竣工:1904年
備考:重要文化財
25.京都市京セラ美術館
京都市京セラ美術館は、昭和初期の1933年に開館した京都市美術館を2019年に改修し、翌年2020年にリニューアルオープンした美術館です。
1933年に建てられた京都市美術館は、日本趣味を基調とするという設計要件から洋風建築の上に和風の屋根がのる帝冠様式が特徴の建物でした。
今回の改修にあたっては美術館の顔として長きに渡って愛されてきた特徴的な建物立面を活かすため、前面広場を地下までなだらかに降ろしガラス・リボンと呼ばれるガラスの境界を設けてロビーやカフェ、ミュージアムショップなどを外部と繋がった地下空間に設けるアイデアが採用されています。
元の建物を保存・活用しつつ、現代の美術館に求められるスペースや機能を様々なアイデアで実現しているのがとても興味深いです。
また、新たに併設されたギャラリーを古い建物と対比するような現代的なデザインとしているのも注目ポイント。
古さと新しさが常に入れ替わり共存する京都という街に相応しい建築となっています。
改修設計:青木淳+西澤徹夫
所在地:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124
アクセス:三条京阪駅より徒歩15分
竣工:1933年(2019年改修)
開館時間:10:00~18:00
休館日:月曜
備考:第64回BCS賞
第30回AACA賞
第8回京都建築賞 最優秀賞
公式HP:https://kyotocity-kyocera.museum/
26.京都国立近代美術館
京都国立近代美術館は、京都市京セラ美術館の向かいに建てられた近代美術館を中心に展示する美術館です。
建物の設計を手掛けたのは、世界的にも著名な建築家である槇文彦氏。
槇文彦氏といえば、以前このブログでも紹介した東京代官山のヒルサイドテラスや表参道のスパイラルなどの作品の中で現代的でスタイリッシュなデザインと日本建築の持つ奥性やモチーフを融合させたデザインが特徴の建築家でもあります。
京都国立近代美術館でも幾何学を多用した抽象的なデザインの中に、障子のモチーフにしたスクリーンや、岡崎公園をはじめとする周辺環境を借景として取り込む手法などがみられ、槇文彦氏の建築哲学と技法が随所に散りばめられています。
設計:槇文彦/槇総合計画事務所
所在地:京都府京都市左京区岡崎成勝寺町26-1
アクセス:東山駅より徒歩約10分
竣工:1986年
開館時間:10:00~18:00
休館日:月曜
備考:第29回BCS賞
公式HP:https://www.momak.go.jp/
27.京都府立図書館
京都府立図書館は、日本初の公立図書館でもある京都集書院を前身とした由緒ある図書館で、現在の建物は1909年築の旧図書館の一部を保存しつつ2001年に大規模な改修を経て再オープンした建築です。
旧図書館は先ほど紹介したフォーチュンガーデン京都(旧島津製作所本社)などを手掛けた武田五一による設計で、セセッション(分離派)と呼ばれる建築様式が採用されているのが特徴です。
セセッションはこの図書館が建設された19世紀末から20世紀初頭に起こった建築潮流で、これまでの古典主義建築をはじめとする西洋の伝統的な様式から脱却した新たな表現を目指したものでしたが、ヨーロッパで起こったセセッションのムーブメントを日本に持ち込んだのが武田五一でした。
ここ京都府立図書館はセセッションの日本国内での走りのような作品で、白い窓枠やその上に輝く金色の装飾などは武田が学んだ西洋のセセッション建築から引用した当時の最先端のデザインが随所に散りばめられています。
詳細記事
・京都「京都府立図書館」100年の歴史の詰まった素敵な図書館をレポート
原設計:武田五一
改修設計:日本設計
所在地:京都府京都市左京区岡崎成勝寺町9
アクセス:東山駅より徒歩約10分
竣工:1909年(2000年改築)
開館時間:
平日 9:30~19:00
土曜・日曜・祝日 9:30~17:00
休館日:月曜、毎月第4木曜
公式HP:https://www.library.pref.kyoto.jp/
28.ロームシアター京都
ロームシアター京都(京都会館)は、岡崎公園の中に建てられたホールやギャラリー、レストラン等の複合施設です。
建物の設計は近代日本を代表する建築家の前川國男のが手掛け、日本のモダニズム建築の一つの到達点ともいえる建築は、その中心に京都の中でも最大規模である約2000席のホールを擁し、長きに渡って京都の文化の発信拠点としての役割を担ってきました。
2015年には香山壽夫建築研究所による改修工事が行われ、建物の補修と共に元の建物のコンセプトや周辺環境との関係を保持しつつ、ロビーや商業施設などが現代のニーズに合わせた形にリ・デザインされています。
設計:前川國男/前川國男建築設計事務所
改修設計監修:香山壽夫建築研究所
所在地:京都府京都市左京区岡崎最勝寺町13
アクセス:東山駅より徒歩約10分
竣工:1960年(2015年改修)
備考:第27回BELCA賞
第17回公共建築賞
公式HP:https://rohmtheatrekyoto.jp/
29.国立京都国際会館
国立京都国際会館は、日本初の国立の国際会議場として1966年に宝ヶ池公園の辺に建てられた国際会議場です。
台形のコンクリートがダイナミックに伸びる建物は、日本古来の神社の社殿や合掌造りを連想させつつ近未来的な雰囲気も漂わせたデザインとなっているのが特徴です。
日本の伝統的なイメージと、西洋で開花したモダニズムの建築が出会い融合したような建築は、宝ヶ池の豊かな自然と合わさることによってより鮮やかで魅力的な建築となっているのも素敵です。
日本のモダニズム建築の中でもとりわけ高い評価を得るこの建物の中では、京都議定書の採択を始めとする様々な国際会議が行われ、歴史の一ページに刻まれています。
設計:大谷幸夫
所在地:京都府京都市左京区岩倉大鷺町422
アクセス:国際会館駅から徒歩約5分
竣工:1966年
備考:第8回BCS賞
公式HP:https://www.icckyoto.or.jp/
30.ザ・プリンス 京都宝ヶ池
最後に紹介するザ・プリンス 京都宝ヶ池は、先ほど紹介した国立京都国際会館での国際会議の出席者の宿泊施設として1986年に建てられたホテルです。
設計を手掛けたのは戦後日本を代表する建築家の村野藤吾氏で、宝ヶ池の雄大な自然や京都の山々と呼応するような大きなカーブを描いたドーナツ状の平面と、中庭を取り囲むようにロビーや受付、レストランや客室が円形に並んでいるのが特徴です。
また、内装も有機的な曲線や円形のモチーフが随所に使われていて、村野建築に共通する優雅で艶やかな空間がとても印象的な建築となっています。
力強く直線的な要素でつくられている京都国際会議場と対比的に、このホテルでは包み込むような曲線と円による調和のデザインが全面に用いられていて、一つの小宇宙のような空間をつくりだしています。
詳細記事
・京都「ザ・プリンス 京都宝ヶ池」建築家村野藤吾が設計したホテルをレポート
設計:村野藤吾/村野・森建築事務所+竹中工務店
所在地:京都府京都市左京区岩倉幡枝町1092-2
アクセス:国際会館駅より徒歩約7分
竣工:1986年
公式HP:https://www.princehotels.co.jp/kyoto/
※記載している営業時間や金額は記事執筆時点のものです。変更となっている場合もありますので、訪れる際は公式HP等をご確認ください。
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