今回紹介するのは誰もが知っている建築「東京タワー」です。
あまりに有名な東京タワーですが、建設の経緯や設計した内藤多仲については意外と知らない方も多いのではないでしょうか。
今回は、実は2019年に全面改修を行いさらに魅力的になった東京タワーに注目して、その建築の魅力や見どころについてレポートしていきたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・東京タワーを実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・東京タワーの基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・東京タワーの建築的な見どころや注目ポイント
①東京タワーってどんな建物?
東京タワーは1958年に港区の芝公園内に建てられた高さ333mの鉄塔で、正式名称は「日本電波塔」といいます。
東京タワーの建設前は放送事業者が各自で高さ153m~177mの電波塔を建設して放送を行っていました。戦後のテレビ放送の開始に伴って各テレビ局の電波塔の乱立や関東圏全域へ電波が届きにくいといった問題を解決する為、関東一円を網羅する総合 電波塔の建設が構想されました。
構想段階から「世界一高い塔」を標榜し、初期時点では380mの高さも検討されていましたが、上空の風の影響の揺れで画像が乱れる恐れがあることなどの詳細の計算を行った結果、現在の「333m」という高さが導かれました。
当時はフランス・パリのエッフェル塔が312mで当時の自立式鉄塔としては世界最高の高さでしたが、東京タワーによってこれを上回る世界一の高さのタワーが建設されることになりました。
当時の建築基準法では建築物は高さ制限から31mまでしか建てられませんでしたが、当時の郵政大臣である田中角栄(実は一級建築士でもあります。)による「東京タワーはテレビ塔であるから広告物であり、建築物ではない」との主張から建築されるにいたったそうです。
この前人未到のプロジェクトには日本の塔設計の第一人者である内藤多仲が中心となって設計を行いました。
②設計者内藤多仲について
内藤は「耐震構造の父」とされ、大阪の通天閣や名古屋テレビ塔、さっぽろテレビ塔をはじめ、数々の電波塔を設計した「塔博士」です。
1910年に東京帝国大学を卒業後、1913年に早稲田大学教授に就任、今では当たり前になった「耐震構造」を提唱した人物でもあります。
自身が考案した耐震構造を採用した歌舞伎座(現在は隈研吾氏の設計により建替)の構造設計が有名ですが、その他にも明治生命館(岡田信一郎)や日生劇場(村野藤吾)などの現在も残る数々のプロジェクトを数多く手掛けています。
夜の日生劇場。日比谷公園の入口の目の前にあります。
③東京タワーの設計と建設
建設地は300mを超す鉄塔を支える強固な地盤や日本のシンボルとなるランドマーク性、集客により建築費や運用費用をペイする為の展望の良さなど複数の要件から現在の芝公園に決定されました。
東京タワーの設計に関しては内藤による「無駄のない安全・安定したものを追求していった結果出来たもの」「いわば数字のつくった美しさによって出来たもの」という言葉がその真髄を表しています。
よく比較されるパリのエッフェル塔と違い、日本は地震や台風する国です。
当時は実用コンピュータはおろか電卓すらない中で手計算と簡単な風洞実験によって行われました。
ちなみにエッフェル塔に比べて東京タワーは足元部分が広がっていますが、これは高さや風加重などに耐えるための計算から導かれた為で、下層にある建物はそれを支える「重し」としての役割も担っているそうです。
建設後には、風速計や地震計等による実測や調査委員会による今後予想される強風による最大風速の検証がなされましたが、いずれも内藤らによる設計の想定を裏付けるものだったそうです。
構造計算に約3カ月、着工から約15カ月で東京タワーは完成しましたが、エッフェル塔が27ヵ月かかって建設されたことと比べるとこのプロジェクトがいかに神業的に行われたかが分ります。
また、使われた鉄骨量はエッフェル塔の半分以下だったことを考えても東京タワーの合理性・数学的に無駄のない美しさが実感できます。
④地上デジタル放送開始に伴う大改修
東京タワーは大きく2回リニューアルされています。
1度目は2003年の地上デジタル放送移行に伴い行われたリニューアルで、大展望台の下の約100mの地点に約500tの送信機室が、約240mの地点に約100tのアンテナが増設されました。
また、この増築に先だって北山恒氏や谷内田章夫氏らによる特別展望台・大展望台のリニューアル工事も行われ、約半世紀ぶりの大改修となりました。
しかし地上デジタル放送への対応は今後の超高層建築物が建設されることも踏まえると東京タワーのだけでは電波障害への問題を解決できないことから「東京スカイツリー」が建設されることになります。
東京スカイツリーが完成したことで、電波塔としての役割はスカイツリーに引き継ぐことになりましたが、災害時のバックアップ機能をはじめ、都内屈指の観光地とランドマークとしての役割はまだまだ現役で果たしています。
2017年から2019年にかけては観光地としての魅力を増大させる為更なる大改修が行われました。
⑤リニューアルした最新の東京タワー
2017年から2019年にかけては展望台をはじめとする大規模なリニューアルが行われました。
リニューアルに際しては高さ約250mにある特別展望台は「トップデッキ」に、中間部の高さ約150mにある大展望台は「メインデッキ」に名称が変更されました。
トップデッキは一足早く2018年3月にリニューアルオープンし、建築家白根昌和氏「ゲストと一緒に創る展望台」「東京の未来を映し出す鏡」をコンセプトにLED照明をはじめ、照明と鏡を組み合わせた近未来的な演出を楽しめます。
トップデッキには事前予約の「トップデッキツアー」に申し込みすることで参加でき、ウェルカムドリンクなどのサービスをはじめ高さ250mの願望を生かしたリッチで特別な空間が体験できます。
そして2019年9月にリニューアルオープンしたのがメインデッキです。
「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」をコンセプトに「光」と「影」の演出がなされています。
陰翳礼讃は谷崎潤一郎による作品ですが、建築学生必読の書といわれるくらい建築を学ぶ人になってはバイブルの本ですが、60ページくらいの短い文章ですので読んだことがないという方はこれを機に是非読んで見て下さい。
暗い内装のエレベーターを抜けると一気に視界が開け、前面ガラス張りの明るい展望台にでる演出は是非注意してみて見て下さい。
またこのガラスのカーテンウォールは2019年のリニューアルで下面にあった鉄柵が取り払われ、幅も約倍に増大されました。
床も従来のゴム製の床からカーペット素材に変更され、歩き心地や耐久性が向上しています。
フワフワするような不思議な感覚の柄のパターンが、150mの高さと相まって高揚感が高まります。
有名な下が覗けるガラス板の数も大幅に増えました。私が訪れたのは土曜日の夕方でしたがほとんど並ぶこともなく楽しめました。
また、この日はキングコング西野さんによる「にしのあきひろ 光る絵本展 in 東京タワー」が開催されていました。
展示の内容も面白かったですが、外面のガラスとは反対側の内側の壁にちりばめられた暗い空間に光る絵と、外側に広がる明るい眺望の対比が面白かったです。
夜になると黒地に光る絵本と、外に光る東京の夜景が呼応して建築的にも見事な展示でした。
この他東京タワーでは様々なイベントが企画されていますので、こまめにチェックすると思いもよらない面白いイベントが開催されていたりします。
いかがでしたでしょうか。
いわゆるベタすぎる、または東京に住んでいれば近すぎていったことのない人も多い東京タワーですが、実際に訪れてみると見どころも多くとても楽しめる建築です。
皆さんもぜひ一度訪れてみて下さい。
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東京タワー(日本電波塔)
設計:内藤多仲+日建設計工務
2002年リノベーション
特別展望台:北山恒
大展望台1階:木下道朗
大展望台2階:谷内田章夫
2018年・2019年リノベーション
建築設計:日建設計
内装設計:電通、日展、ドリームスタジオ
トップデッキ内装デザイン:白根昌和、高木秀太事務所
所在地:東京都港区芝公園4-2-8
アクセス:赤羽橋駅・御成門駅より徒歩約5分、神谷町駅より徒歩約7分、芝公園駅・大門駅より徒歩約10分
竣工:1958年
備考:第1回BCS賞
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