今日は東京の北千住周辺で建築巡りをしてきましたので、そこで出会った名建築について紹介していきたいと思います。
あまり知られていませんが、北千住周辺は明治〜昭和初期に建てられた近代建築から有名建築家の最新の建築まで様々な名建築が点在する建築パワースポットでもあります。
一体どんな建築と出会ったのか、早速紹介していきたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・北千住エリアでの建築巡りを写真と文字でレポート
・北千住エリアの著名な建築家がデザインした建築や歴史のある近代建築をまとめ
・北千住エリアの建築の見どころや注目ポイントを解説
1.北千住駅東口交番(IKDS)
まず初めに訪れたのは駅東口に建つ北千住駅東口交番です。
北千住駅東口と言えば、この後紹介する東京電機大学東京千住キャンパスの校舎群がオープンしたことで注目された場所でもあります。
この交番は、キャンパスのオープンに少し先行した2011年に建てられ、それらの校舎群のデザインを意識しつつ、交番として視認性やアイデンティティも確保しているのが注目の建築です。
設計を手掛けたIKDSの池田靖史氏と國分昭子氏は実は東京電機大学東京千住キャンパスを手掛けた槇総合計画事務所出身の建築家。
親子のようなスケール感で建つキャンパスと交番は、そのまま建築家同士の関係を象徴しているようにも見えて面白いです。
設計:IKDS
所在地:東京都足立区千住旭町4-6
アクセス:北千住駅より徒歩約1分
竣工:2011年
2.東京電機大学東京千住キャンパス(槇文彦)
続いて紹介する東京電機大学東京千住キャンパスは、老朽化と学生数の増大から手狭になった神田キャンパスの再整備事業と電機大創立100周年を記念して建てられた大学キャンパスです。
約5000人の学生の利用を想定したキャンパスは世界的な建築家 槇文彦氏が全体のデザインを手掛けていて、道路を跨いだ約26200㎡の敷地に大学の各機能と地域交流のための施設が点在しています。
中でも古大ギリシャのアゴラや中世のヨーロッパのロッジアをモチーフにした公共空間が随所にデザインされているのも特徴で、地域に開きつつ知の交流の場となることが目指されています。
大学キャンパスと言えば、元々あるキャンパスを部分的に建て替えていくことが多いのが現状ですが、キャンパス全体が新たに計画されたここ千住キャンパスでは建物からランドスケープまで槇文彦氏のデザインがたっぷり堪能できる建築好き必見のスポットとなっています。
統括設計:槇文彦/槇総合計画事務所
所在地:東京都足立区千住旭町5
アクセス:北千住駅より徒歩約2分
竣工:2012年
備考:第54回BCS賞
3.北千住BUoY
北千住BUoYは、1964年に建てられた店舗併用団地の一部を改修してつくられたカフェ、ギャラリー、スタジオ、イベントスペース等の複合施設です。
元々ボウリング場だった2階部分はギャラリーとカフェに改修されていて、既存の躯体を活かした様々な人々や文化、歴史が交流する場がデザインされています。
変わらないものとしての無骨なコンクリートの躯体と対応するように、テンポラリーな木の造作や刻々と表情を変える植物があざやなかコントラストをつくり出していたのが印象的でした。
設計:佐藤研吾/In-Field Studio
所在地:東京都足立区千住仲町49-11
アクセス:北千住駅より徒歩約6分
竣工:1964年(2017年改修)
4.三宮神山勝専寺
大橋眼科医院からほどなくのところに建つ三宮神山勝専寺は鎌倉時代の1260年に建てられた寺院です。
この時期にはまだかなり珍しかった鉄筋コンクリートで建てられた本堂は、外壁に煉瓦が張られている珍しい造りとなっています。
インド風とも思える全体のデザインやヨーロッパの古典建築を参照したような装飾など、様々な建築様式がミックスされた建築は唯一無二。
頑丈に建てられた建築は関東大震災や二度の世界大戦を免れて現代まで残っていて、現代にもその姿を伝えています。
所在地:東京都足立区千住2-11
アクセス:北千住駅より徒歩約5分
竣工:1905年(本堂)
5.旧千住郵便局電話事務室(山田守)
勝専寺から日光街道を渡ってすぐのところに建つのは1929年に建てられた旧千住郵便局電話事務室です。
設計者の山田守と言えば後に日本武道館を手掛けた建築家としても知られますが、元々は逓信省営繕課の出身。
この旧千住郵便局電話事務室は山田守氏が30代半ばだった比較的初期の作品です。
交差点に沿ってアールがかった外壁や、リズミカルに連続する2階の窓、細かい陰影を生み出すタイルなど見応え抜群の建築を堪能できます。
設計:山田守
所在地:東京都足立区千住中居町15-1
アクセス:北千住駅より徒歩約7分
竣工:1929年
備考:DOCOMOMO JAPAN選定
【洋館好き必見のイチオシ漫画】
「数寄です!」などの建築漫画で知られる漫画家さんが、水色のかわいい洋館に一目惚れ。
土地ごと売却され、再開発さそれうになった近代建築をなんとか残そうと奮闘するルポ漫画。
業者とのヒリヒリするやりとり、億単位のお金と多くの人を巻き込む責任など、建築保存のリアルな葛藤と闘いが生々しく描かれているイチオシ漫画です。
2023年の3月についに完結!取り壊される洋館がどんな運命を辿るのか、今なら現在進行形で楽しめます。
>Amazonで詳細を見る
6.千住の極限住宅(川口通正)
旧千住郵便局から程なくのところに建つのは建築家の川口通正氏が手掛けた千住の極限住宅です。
川口通正氏といえば以前大塚の十坪の塔という作品を紹介しましたが、都心の制約の厳しい住宅を数多く手がけた建築家でもあります。
狭小の敷地面積や斜線制限、隅切りの制限を巧みに解きほぐしながら建てられた建物は、東京の隠れた名住宅。
斜線制限を回避するよう設けられた塔屋部分や屋根の天窓など、厳しい条件の中で豊かで快適な住まいを創造しようとしているのがよく伝わってきます。
設計:川口通正/川口通正建築研究所
所在地:東京都足立区寿町
竣工:1996年
7.大黒湯
千住の極限住宅からほどなくのところに建つ大黒湯は、まるで寺院のような大屋根や唐破風が目を引く銭湯です。
関東大震災の復興期には宮大工によってこうした宮造りの銭湯が都内のいたることろに建てられましたが、この大黒湯はその中でもかなり気合の入った一作。
堂々とした大屋根や装飾の他にも、唐破風の下にある弓は弓射る=湯入るという駄洒落だったりと、今ではなかなか見られない当時の文化や風俗を垣間見れます。
残念ながら2021年の6月で閉店してしまうそうで、今後この銭湯がどうなるのかとても気になるところです。
所在地:東京都足立区千住寿町32-6
アクセス:北千住駅より徒歩約8分
竣工:1929年
備考:2022年に解体済
8.学びぴあ21・トミンタワー千住五丁目(東京都住宅供給公社+石本建築事務所)
学びぴあ21・トミンタワー千住五丁目は区の生涯学習センター、図書館、レストラン、住宅の複合建築です。
一見して大人しい外観の建物ですが、すぐ目の前の荒川の土手からアプローチする半屋外の大屋根や側面のシンボリックな丸窓などこの場所の新たなランドマークになることが目指されています。
土手とほぼ同じ高さの1階から3階まではいる図書館の蔵書は都内の区立図書館の中で最も多い約70万冊となっていて、近隣にお住まいの方が羨ましい限りです。
設計:東京都住宅供給公社+石本建築事務所
所在地:足立区千住5-13-5
アクセス:北千住駅より徒歩約10分
竣工:2000年
9.タカラ湯
北千住には先ほどの大黒湯を筆頭に大正末期から昭和初期に建てられた銭湯建築が今も何件か残っていますが、このタカラ湯もそんな古き良き銭湯のひとつです。
先程紹介した大黒湯と同じく宮大工による破風屋根や彫刻は見事なもので、銭湯という場所がこの街の人にとってとても大事な場所であったことが伝わってきます。
また、このタカラ湯で、特徴的なのは銭湯の中にある縁側と庭園。四季折々の花が咲く日本庭園には錦鯉が泳いでいて、心も体も癒やされる至福の時間を味わえます。
所在地:東京都足立区千住元町27-1
アクセス:北千住駅より徒歩約15分
竣工:1938年
10.桜木町交番(富永譲)
最後に訪れた桜木町交番は荒川の西新井橋のすぐ目と鼻の先に建てられた交番です。
5つの道路が交差点に面して建てられた交番の外装は、前面の通りのカーブをトレースするような曲面となっているのが特徴です。
よく見ると1階の掲示板も2階の外装に呼応するようにデザインされていて、交差点の風景によく馴染んでいました。
竣工から四半世紀以上経ちますがよくメンテナンスされていて、この日も市民の安全を見守っていました。
設計:富永譲/フォルムシステム設計研究所
所在地:東京都足立区千住元町38-7
アクセス:北千住駅より徒歩約20分
竣工:1995年
おまけ:大橋眼科医院(鈴木英夫)
北千住駅の西口に移動して駅前通りを程なく進んだところにあるのは大橋眼科医院です。
大正時代の雰囲気溢れる外観と各所に散りばめられた装飾が特徴的なこの建物は、1917年に建てられた建築を1982年に再建したもの。
もともとの設計は東京藝大教授で彫刻家の飛田朝次郎氏がデザインしたものでしたが、再建に当たっては元の建物をイメージしつつ、北千住の昭和通りにあった街灯の他、都内の近代建築のパーツを再利用して組み合わせています。
有名建築家のデザインでは見られないブリコラージュ的な建築は、作り手の熱意と遊び心に溢れていて、北千住の必見建築となっています。
大橋眼科についてはこちらの記事で詳しくレポートしていますので、興味のある方は是非合わせてご覧ください。
詳細記事
・北千住の大橋眼科がスゴい!つくり手の想い溢れる近代建築を徹底レポート【東京北千住】
残念ながら建て替えの為に2022年に解体されてしまいましたが、クラウドファンディングで資金を集めた移築プロジェクトが進行しているので、今後の動きに注目です。
設計:鈴木英夫(飛田朝次郎)
所在地:東京都足立区千住3-31
アクセス:北千住駅より徒歩約3分
竣工:1982年(1917年)
備考:2022年に解体
【読むだけで建築について詳しくなれるイチオシの漫画】
実際に一級建築士の資格を持つ人気R18漫画家が描く、唯一無二の建築漫画が話題になっています。
話ごとに建築のデザインはもちろん、法規や構造、施工や不動産に渡って幅広く扱っていて、建築好きなら毎回ワクワクしながら読めて、建築の知識も吸収できる超おススメ漫画です
>Amazonで詳細が読めます
また、当ブログでも漫画のレポートと、漫画と舞台となった亀戸の建築巡りについて紹介していますので、是非併せてご覧ください。
関連記事
・建築本「一級建築士矩子の設計思考」がスゴい!話題の本格建築漫画をレポート
2024年4月18日には「一級建築士矩子の設計思考」第3巻が発売になりました。
いかがでしたでしょうか。
交番にはじまって交番で終わる北千住の建築巡りでしたが、すべてを見終えてみるとまさに歴史を感じる近代建築から最新の現代建築まで一挙に巡ることができました。
皆さんも機会があれば是非、北千住建築の世界にトリップしてみてくださいね!
建築学ランキング
にほんブログ村
↑建築系のブログランキング。よければクリックして応援してもらえると嬉しいです。
建築やデザイン好きな人は、他にも面白いブログや参考になるブログがいっぱいあるので是非見てみてください^^
■他にもこんな記事がおススメです
・市役所を改修!立川まんがぱーくは漫画読み放題のスゴい建築だった【東京立川】
・都電荒川線で行く建築巡りの旅!おススメ建築味わい尽し決定版
・本のプレゼントで迷った時に!オススメのギフト本ジャンル別20選