今日は東京の神保町周辺で建築巡りをしてきましたので、そこで出会った名建築についてレポートしたいと思います。
神保町は古くから古書店街として栄えてきたエリアですが、実は建築も味わい深い建物が沢山建つ建築パワースポットでもあります。
いったいどんな建築と出会ったのか、早速紹介していきたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・神保町エリアでの建築巡りを写真と文字でレポート
・神保町エリアの著名な建築家がデザインした建築や歴史のある近代建築をまとめ
・神保町エリアの建築の見どころや注目ポイントを解説
1.岩波神保町ビル
まず初めに訪れた岩波神保町ビルは神田神保町交差点の一角に建つ地上11階地下2階のオフィスビル兼ホールです。
外壁には当時としては珍しかった彫の深いPCカーテンウォールを採用し、シンプルながら普遍的且つ陰影によって表情を変える外装デザインとなっています。
10階に入る岩波ホールはも元々は多目的ホールとして計画されていましたが、1970年代から主に映画館として利用されるようになった歴史あるホールです。
欧米以外の国々の名作映画を数多く取り上げたり日本で初めて各回完全入れ替え制を実施するなど、約半世紀にわたって映画文化の発展を支えてきました。
今でも多目的ホールとしての名残を随所に感じることができ、コンサートホールのホワイエのように上品な装いは必見です。
設計:芦原義信/芦原義信建築設計研究所
所在地:東京都千代田区神田神保町2-1
アクセス:神保町駅より徒歩約1分
竣工:1968年
2.岩波書店一ツ橋ビル
岩波書店一ツ橋ビルは、岩波文庫や岩波新書、広辞苑などでもお馴染みの岩波書店の本社ビルです。
芦原義信氏は先程紹介した岩波神保町ビルの他、今は解体されてしまった岩波書店の建物を多く手掛けた建築家でもありました。
バブルの頃に建てられたとは思えないほどシンプルなデザインですが、堅実でありながら風景に溶け込むようなシンプルな美ししを持つ建物は、岩波書店らしいとも思えます。
人々が行き交う1階は上階とコントラストを効かせていて、足元に設けられた植栽帯や広場とあわせて細やかな公共性を街に付与しています。
設計:芦原義信建築設計研究所
所在地:東京都千代田区一ツ橋2-5-5
アクセス:神保町駅より徒歩約2分
竣工:1993年
3.小学館ビル
小学館ビルは、白山通り沿いに建つ地上10階地下3階建ての小学館の本社ビルです。
塊感のある巨大なボリュームの建物は、順梁と逆梁を交互に組み合わせた凸凹スラブとコンクリート壁を利用した躯体放射冷暖房が採用されていて、不規則な勤務時間になりがちな出版社に対して快適な効率的な環境性能をもたらしつつ、堅牢でフレキシブルなオフィスを実現しています。
内側に絞られた低層部の外壁は建物を地震から守る構造計画によるものですが、街行く人にも優しい歩道空間を実現していて、意匠・構造・設備がハイレベルで融合しているのが伝わってきます。
1階のCafe Lushでは、神保町名物のカレーや特別コラボメニューがいただけるカフェ・レストランとなっていて、迫力の躯体やこだわりのデザインを体験しつつ、お腹も満たせるオススメのグルメスポットです。
設計:日建設計
所在地:東京都千代田区一ツ橋2-3-1
アクセス:神保町駅より徒歩約2分
竣工:2016年
4.住友商事神保町ビル
住友商事神保町ビルは、神保町駅の南西エリアに建つ地上8階地下1階建てのオフィスビルです。
白い骨材を使用したコンクリートが天に向けて伸びる建物は、品の良い力強さと圧迫感を軽減されたスタイリッシュな外観となっています。
1階部分がセットバックしていて、通行人には快適で広々した地上空間を提供しつつ、建物全体が宙に浮いたような軽やかなデザインになっているのも面白いです。
設計:日建設計
所在地:東京都千代田区神田神保町2-11-15
アクセス:神保町駅より徒歩約2分
竣工:2011年
5.ほんまる
ほんまるは、古本の街として知られる神田神保町に2024年4月にオープンしたシェア型書店です。
近年、本好きの個人や企業が棚を借り、それぞれのセンスで選書した本を売るシェア型書店が増えていますが、ここほんまるは直木賞作家の今村翔吾氏がオーナーを務める注目の書店です。
佐藤可士和氏がデザインした店舗は、店舗全体がサインとなるようなスタイリッシュなデザインが特徴。
ニュートラルな白地に木のサインや本棚が映える店舗は、縁日のようなハレの雰囲気を醸し出していてお祭りのような楽しげな空間が広がっています。
店舗デザイン:佐藤可士和
所在地:東京都千代田区神田神保町2-23-5
アクセス:神保町駅より徒歩約2分
竣工:2024年
6.神保町ブックセンター
神保町ブックセンターは、神保町駅を出てすぐの岩波ブックセンター跡地に2018年にオープンしたカフェ・書店・コワーキングスペースの複合施設です。
単なるブックカフェだけでなく、憩うこと、働くこと、集うこと、交流することなど、本を中心に様々な営みを生み出すようにデザインされていて、その運営も設計者であるUDSが行っています。
ソファからカウンターまで様々な席が用意されているのも嬉しいポイントで、岩波文庫を模したメニュー表や食器類などの細かいデザインも素敵なカフェとなっています。
設計:UDS
所在地:東京都千代田区神田神保町2-3−1
岩波書店アネックス1F・2F・3F
アクセス:神保町駅より徒歩約2分
竣工:2018年
営業時間:
平日 9:00~19:00
土曜、日曜、祝日 10:00~19:00
公式HP:https://www.jimbocho-book.jp/
7.矢口書店・古賀書店
神田の古書店街には戦前に建てられた古き良き建物が数多く残されていて、古書店街を散策するとそんな古建築をいくつも見かけます。
1928年に建てられた矢口書店・古賀書店もそんな古建築のうちのひとつ。
木造3階建てのモルタル塗りの建物は、北側にペディメントのような三角装飾があったかと思えば、東側はかまぼこ状のデザインとなっていたりと、見ていて楽しいデザインが満載です。
所在地:東京都千代田区神田神保町2-5-1
アクセス:神保町駅より徒歩約2分
竣工:1928年
8.神保町の古本屋
神保町の古書店は、靖国通り沿いに建つ建物の1階につくられた古書店です。
滑らかに湾曲しながら連続する1本の金属壁がフロアの中を緩やかに仕切っていて、狭い場所、広い場所、開かれた場所、閉じられた場所といった様々な性格の場所を生み出しているのが特徴の建築。
周囲の風景を反射する鉄板の間を、まるで現実と空想の世界を行き来するように彷徨う様は、まだ見ぬ古書と出会う古書店という場所の魅力をより一層高めてくれます。
設計:not architects studio
所在地:東京都千代田区神田神保町2-7-4
アクセス:神保町駅より徒歩約2分
竣工:2021年
9.神保町SFⅢ
神保町SFⅢは、靖国通り沿いのF字の敷地に建つ地上9階地下1階建てのオフィスビルです。
実は靖国通り沿いの4つのボリュームの内、真ん中の2つは全く別の建物で、ランダムな開口部が特徴的な両脇の2つの棟が本体となっています。
イレギュラーな敷地に対して、向かって右側の棟にエレベータやトイレといったコアが納められていて、オフィスとしてはL字型の執務室を確保しています。
正面のパンチングパネルは、コンピュータによるアルゴリズミックデザインと環境解析を使って木漏れ日感と風の流れをデザインに落とし込んでいて、いち早くBIMやコンピュテーションデザインを取り入れた建物としても興味深い建物です。
設計:日建設計
外装デザイン協力:アンズスタジオ
所在地:東京都千代田区神田神保町3-3-1
アクセス:神保町駅より徒歩3分
竣工:20011年
備考:2011年度グッドデザイン賞
10.東方学会本館
東方学会本館は、元々は中学校として建てられ、戦後は東方文化に関する学術的な研究団体である東方学会の本館として使われてきた建物です。
装飾を排した端正なデザインと、水平庇によって生み出される豊かな影の表情が特徴の建物は、簡素な中に味わい深さがにじみ出ています。
シンプルな造形の建物ですが、近づくとエントランスは半円のアーチがデザインされていて、建物のアクセントとなっているのも素敵です。
所在地:東京都千代田区西神田2-4-1
アクセス:神保町駅より徒歩約5分
竣工:1926年
備考:千代田区景観まちづくり重要物件
11.一誠堂書店
一誠堂書店は、創業100年以上の老舗書店で、5階建ての現在のビルは1931年(昭和6年)に建てられたものです。
門型石張りの低層部の上に上品なタイル張りの上層部がのるデザインは、今見ても知的でスタイリッシュに感じます。
ポイントとなる上層部の装飾や白いタイルと対比するようなグリーンのアクセントカラーなど、シンプルながら設計者のセンスが光る名建築です。
設計:東京都市建築研究所
所在地:東京都千代田区神田神保町1-1-7
アクセス:神保町駅より徒歩約3分
竣工:1931年
公式HP:https://www.isseido-books.co.jp/
12.さぼうる
さぼうるは、1955年に創業した神保町を代表する老舗の喫茶店です。
山小屋のようなデザインの建物が特徴の建物は、エントランスには巨大なトーテムポールが鎮座していたり、中は煉瓦が敷き詰められた空間が広がっていて、外界から隔絶されたかのような独特の雰囲気があります。
最初に建てられたさぼうるは、現在は軽食メニューが中心、お隣に建つさぼうる2はフードメニューが中心となっていてどちらも週末には行列が絶えない人気店となっています。
ちなみに「さぼうる」はスペイン語では「味」や「味わい」を意味する言葉ですが、珈琲や軽食を提供する喫茶店としての意味だけでなく、創業してからの歴史の蓄積が空間全体で味わえるとっておきの喫茶店建築です。
詳細記事
・神保町「さぼうる」歴史の積み重なった素敵すぎる老舗喫茶をレポート
所在地:東京都千代田区神田神保町1-11
アクセス:神保町駅より徒歩約1分
竣工:1950年代
営業時間:11:00~19:00
定休日:日曜、祝日
13.小学館すずらん通りビル
小学館すずらん通りビルは、その名の通り神保町の神田すずらん通りビルに建つオフィスビルです。
表通りと裏通りの2つの道路に面する建物は、エレベータや階段、トイレといったコアを長手方向の片側にコンパクトに抑えることで2面に面する大きな執務空間を確保しているのが特徴。
驚くほどスマートな構造部材と、透明なガラスによってもたらされるスタイリッシュなデザインにも注目で、設計者の知性と工夫を存分に感じることが出来ます。
設計:日建設計
所在地:東京都千代田区神保町1-15-2
アクセス:神保町駅より徒歩約4分
竣工:2004年
備考:2008年度グッドデザイン賞
14.三省堂書店 神保町本店
三省堂書店は1881年に創業し、ここ神保町本店は創業100周年の記念事業として建てられた売り場面積1000坪を超える巨大書店です。
小豆色のフレームが特徴の外観は神保町のランドマークにもなっていますが、見方によっては大きな百科事典、もしくは巨大な門のようにも見え、表の靖國通りと裏手の神田すずらん通りを繋ぎつつ、人々を建物内に引込んでいます。
地下のレストラン放心亭もおススメで、昭和の香りを残す風格あるタイルや煉瓦の空間で頂くランチは至福の時間。
ドイツのビールと料理を中心としたビアホールですが、カレーの街神保町らしくランチメニューは色々な種類のカレーが頂けるので、建築巡りの合間の食事スポットとしてもおススメです。
残念ながら老朽化を理由に2022年に一時閉店となり、2026年頃を目途に新しいビルに建て替え予定となっています。
三省堂書店神保町本店の一時閉店時の様子やレポートは、別サイトとなりますがこちらの記事にも書いていますので、興味のある人は是非併せてご覧ください。
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設計:阪永金重+聡建築設計事務所+ニッテン設計事務所
所在地:東京都千代田区神田神保町1-1
アクセス:神保町駅より徒歩約3分
竣工:1981年
備考:現存せず
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