今回は2014年に世界遺産&国宝に指定された富岡製糸場に行ってきましたので、その模様をレポートしたいと思います。
産業的な側面にスポットが当たることも多い富岡製糸場ですが、実はその建築もかなり面白い上に見どころもたくさんあります。
そんな富岡製糸場について建築に注目しながら詳しく紹介していきたいと思います。
1.富岡製糸場とは
富岡製糸場は、明治政府が1872年(明治5年)に建設された器械製糸工場です。
鎖国を終えた明治政府の国策として建設された富岡製糸場は、規模・品質共に当時としては世界トップクラスの製糸場となり日本の近代化の礎を築きました。
建設に当たってはフランスの生糸技術を導入し、フランス人指導者ポール・ブリュナの指導のもとに日本の職人さんを一挙に集めての大工事の末完成しました。
繭を乾燥・貯蔵する置繭所は長さ104m、繰糸所に至っては約140mの奥行きに300釜の繰糸器が並ぶ巨大工場で、まさに国家的建築プロジェクトとなったこの事業は日本だけでなく世界から注目を浴びました。
また、富岡製糸場で働いた工女たちは日本各地に技術を伝え、1920年代には日本は世界一の生糸輸出国になることとなります。
その後関東大震災や2度の世界大戦を乗り越え、1987年に操業を停止するまで100年以上に渡って製糸工場として機能し続けました。その功績や歴史的価値が認められ、2014年に日本の近代化遺産で初の世界遺産登録、及び国宝指定がなされました。
2.アクセスと見学方法
富岡製糸場へのアクセスは上州富岡駅から徒歩で約20分となります。
駅からは定期的に周遊バスなどもでているのでこちらも利用できます。
また、車でもアクセス可能ですが、敷地内には駐車できないので近隣の駐車場を調べておくことをおススメます。
徒歩圏内には市営駐車場もあるので、自家用車でいく場合は活用しましょう。
■見学料
大人:1000円
高校・大学生:250円
小・中学生:150円
尚、チケットは入口入ってすぐのチケット売り場で購入できますが、2020年からは「PayPay」や「LINE pay」、クレジットカードやICカード決済サービスも利用できます。
また、オプションとして解説員によるガイドツアーが200円で受けられます。
ガイドツアーは、約40分ほどかけて場内を案内してもらえますが、こちらは時間があえば是非利用することをおススメします。
■開場時間
9:00~17:00まで(最終入場16:30)
※年末(12月29日から31日まで)は閉場。その他臨時閉場あり
では早速見ていきましょう!
3.早速見学!まずは国宝の双子建築
富岡製糸場には数々の歴史的建築物がありますが、まず入口を出ると正面に見えてくるのが東置繭所です。
置繭所は東置繭所と西置繭所の2つがあり、どちらもほぼ同じ大きさのいわば双子のような建築です。
置繭所とはその名の通り、繭を保存しておくための施設です。
主に2階部分が繭置場に使われていて、白い窓は乾燥の為の換気窓です。1階部分の真ん中はアーチ状の通路になっていてここから東置繭所の内部に入れます。
桁行約104m、梁間約12mの建物には1棟約16tの繭を収容できたとされていて、ほぼ同じ形の西棟と合わせて32tもの繭が保管可能となっています。
一見煉瓦を積み重ねたそ積石造の建物に見えますが、構造は「木骨煉瓦造」といって木造の柱と梁が構造体となっています。
西洋式の工場の建設という命題と、日本の施工体制や技術が合わさったことにより世にも珍しい木骨煉瓦造の建築ができたのです。
煉瓦はしっかり「フランス積み」ですが、内部では木造の架構をみることができます。
東置繭所の1階は当初から事務所などとして利用されてきましたが、現在はギャラリーや売店となっています。
お土産を打っている売店の他シルク製品なども多数販売されています。
製糸場に関しては教科書で習っていても実際には知らないことが多くかなり勉強になりす。
実際に使われていた建築の内部でその歴史について知っていくのは感慨深い体験でした。
反対側にあるこちらの西置繭所は2020年まで5年計画の保存修繕工事が行われている為私が見学したときには一部しか見れませんでした。
1階内部鉄骨で補強したガラスの多目的ホールとなるそうで、2020年の10月ごろから一般公開されるとのことですよ。
4.製糸場の要!繰糸所を見学
続いてみるのが、製糸場の要ともいえる繰糸所です。
こちらも置繭所と同じく国宝に指定されています。
内部にはいると小屋組が見えて、この建物が木で組まれていたことを思い出します。
桁行約140mと置繭所より40m近い内部にはズラリと繰糸機が並びます。
こちらは置繭所と比べてかなり開放的な雰囲気で、左右の開口部からは光が溢れています。
この窓は繰糸の作業の為に手元を照らす為にも必要だったもので、ガラス窓はフランスから輸入したそうです。
置繭所とは一味違ってここで働く人の姿がうっすらと浮かぶ壮観な内部空間でした。
4.メインの建物以外にも注目!
富岡製糸場の中には今まで見てきた3つの建物の他にも重要文化財となっている建築をはじめ数々の近代建築に触れることができます。
こちらの検査人館は生糸の検査などを行う技術者の住居です。
コロニアル様式が採用された和洋折衷の造りの建物は現在は事務所として使用されています。
2階の煉瓦の壁が特徴的で、政府の重要人物が訪れた際に使用される貴賓室などもこの2階に設けられています。
同じくフランス人指導者ブリュナが暮らしていた首長館(ブリュナ館)は内部の見学も可能で、内部を直に見て回れます。
また、首長館の裏手からは1896年に建てられた寄宿舎が見えます。
世界最大規模の製糸場にはこのような寄宿舎も整備されていて、この製糸場が1つの街になっていたことがよく分ります。
こちらの写真の奥手に見えるのは昭和期の1940年に建てられた寄宿舎です。
時代の変遷の中で富岡製糸場自体も変化してきたのがよく分ります。
最後はこちらの診療所です。
こちらは第2次世界大戦に向かおうとしている1940年に建てられました。
簡素な造りですが、1つの街として機能していた製糸場には必要な建物ですよね。
敷地の隅々まで歴史の流れを感じる建築が目白押しなので、訪れる際は事前にチェックしておくことをおススメします。
いかがでしたでしょうか。
世界遺産にも登録され、ますます注目度の上がる富岡製糸場。
日本と世界の歴史が空間ごと体験できるので、気になった方はちょっと遠出になりますが是非一度訪れてみてはいかがでしょうか。
旧富岡製糸場
所在地:群馬県富岡市富岡1
アクセス:上州富岡駅より徒歩約20分
竣工:1872年
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