今日は2021年7月から開催されているパビリオン・トウキョウ2021の作品群を訪れてきましたので、そこで出会った作品についてレポートしたいと思います。
「パビリオン・トウキョウ2021」は、オリンピック・パラリンピックに際して行われているTokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13の一環として行われているプロジェクトで、東京都内の各所に有名アーティストや建築家の建物やオブジェが展示されています。
■パビリオン・トウキョウ2021
開催期間:2021年7月1日~9月5日
参加アーティスト・建築家:会田誠、石上純也、草間彌生、妹島和世、平田晃久、藤本壮介、藤森照信、藤原徹平
会場:東京都内各所
公式HP:https://paviliontokyo.jp/
総勢9名の日本を代表するクリエイターが、都内の10スポットにつくり出す風景は、2021年の夏にだけしか見れない特別なもの。
いったいどんなパビリオンだったのか、すべてのパビリオンを訪れてきましたので、詳しく紹介していきたいと思います。
また、パビリオン・トウキョウ2021では関連イベントとして「パビリオン・トウキョウ2021展 at ワタリウム美術館」が開催され、制作時に当たって書かれたスケッチや図面などが展示されています。
ワタリウム美術館は建物自体もマリオ・ボッタという有名建築家が設計し、彫刻のようなデザインが特徴的な美術館です。
マリオ・ボッタの日本で唯一の作品でもあるワタリウム美術館もおススメな建築ですので、訪れる際はちょっと気にしてみてみて下さい。
■ワタリウム美術館(パビリオン・トウキョウ2021展)
設計:マリオ・ボッタ
所在地:東京都渋谷区神宮前3-7-6
アクセス:外苑前駅徒歩約7分
竣工:1990年
会期:2021年6月19日~9月5日
休館日:月曜日(8/9は開館)
開館時間:11:00~19:00
入館料:一般1000円、高校生以下無料
公式HP:http://www.watarium.co.jp/
1.”2020-2021″(真鍋大度+Rhizomatiks)
まず初めに訪れたのはワタリウム美術館のすぐ目の前の空き地につくられた“2020-2021”です。
三角形の小さな空き地に設置されたデジタルディスプレイには、2020年の最初の緊急事態宣言以降に収集された様々なデータが文字や映像に変換されて流し続けられています。
ディスプレイにはコロナで中止になったイベントに関する情報など、この1年間で私たちが見聞きしてきたテキストがAIなどのデジタル技術によって映し出されます。
カメラの写真ではわかりずらいですが、デジタルディスプレイの表面には半透明の拡散板のようなものがとりつけられています。
一定の速度で映し出される文章によって、蜃気楼のようなどこか現実離れした感覚と、それでも目の前にあるリアルな現実の狭間を行ったり来たりするような感覚に陥ります。
同じ情報群を受け取っても、見る人にによっても全く違った受け取り方をしそうな気もして面白かったです
デザイン:真鍋大度+Rhizomatiks
所在地:東京都渋谷区神宮前3-41-5
アクセス:外苑前駅徒歩約7分
竣工:2021年
鑑賞時間:11:00~19:00
2.五庵(藤森照信)
続いて訪れたのはキラー通りを千駄ヶ谷方面に程なく歩いたところにある茶室 五庵です。
この建築をデザインした藤森照信氏は元々は建築史家として有名な方でしたが、45歳の時に初めて建築家としてデビューして以来、「ラ コリーナ近江八幡」や「高過庵」などの自然素材を使った人間の原初に立ち返るような建築を数々生み出してきた建築家でもあります。
「にじり口」を再解釈したという梯子を登って2階の茶室に上がると、少し高い位置からの新国立競技場が見えるそう。
小さなお城のような茶室は、基壇部分を本物の芝が覆っていて、渋谷の中に見たことのない風景をつくり出しています。
私が訪れた時も、遠目でこのパビリオンを見た親子が「あれは何だろう!」と駆け寄っていたりもしていて、驚きと親近感をもって渋谷の風景を書き換えていたのが印象的でした。
デザイン:藤森照信
所在地:東京都渋谷区神宮前2-21-1ビクタースタジオ前
アクセス:千駄ヶ谷駅徒歩約10分、国立競技場前駅徒歩約9分
竣工:2021年
鑑賞時間:11:00~19:00(土曜日12:00~19:00)
※内部見学は要予約(ワタリウム美術館にて)
ちなみに東京都内で藤森氏の建築を見るのであれば、2020年8月に銀座にオープンしたマザーハウス銀座店がおススメです。
自然素材を巧みつ使った仕上げや、定型の形に捕らわれない独特のデザインなど五庵との共通点も多い建築です。
■マザーハウス銀座店
設計:藤森照信
所在地:東京都中央区銀座3-8-10 銀座朝日ビル1階
アクセス:銀座駅徒歩約3分
竣工:2020年
営業時間:11:00~20:00
3.東京城(会田誠)
続いて訪れたのは明治神宮外苑のいちょう並木入口に建つ東京城です。
元々あった石塁の上に建てられたのはなんとダンボールとブルーシートでできた2つのお城。
会田氏は「恒久性とは真逆の仮設性、頼りなさ、ヘナチョコさ─しかしそれに頑張って耐えている健気な姿」を表現したかったそうです。
重厚さや高級さ、スマートさを競い合うようにした建物が立ち並ぶ青山エリアにおいては、特にこの作品が持つ批判性や力強さが際立ちます。
今回私が見た中で最も人々が集まっていたのもこのパビリオンで、「あれ、こんなのあったっけ?」と驚きながら近づくカップルや、じっーっと城を眺めるおじいさんまでいろいろな人の心をつかんでいるようでした。
デザイン:会田誠
所在地:東京都港区北青山2-1
アクセス:外苑前駅徒歩約2分、青山一丁目駅徒歩約2分
竣工:2021年
4.オブリタレーションルーム(草間彌生)
続いて訪れたのは渋谷駅から5分ほどのところにある渋谷区役所第二美竹分庁舎内にあるオブリタレーションルームです。
草間彌生氏がデザインしたこのパビリオンは、床・壁・天井・家具などすべてが白一色の部屋に、来場者が水玉のシールを貼っていくことで変化していく作品となっています。
オブリタレーション(消失)のタイトルの通り、白のインテリアが会期中にどんどん水玉に侵食されていく様子は、これまでの建築空間では体験したことのない不思議な感覚を呼び起こします。
床や壁だけじゃなく、ソファの布や畳、(模造の)植物などにシールを貼っていくのは背徳感と未知のワクワク感の両方を感じます 笑
シンクの蛇口に青のシールが数珠つなぎのように貼られていたり、シールが連なって絵のように貼られていたりと、1人の来場者の貼ったシールに別の人が反応しながら予想外に水玉が増殖していく様子は来場者参加型の作品ならではです。
水玉は来場者と共にどんどん増えていくので、今後いったいどんな空間に変化していくのかとても楽しみな作品です。
デザイン:草間彌生
所在地:東京都渋谷区渋谷1-18-21渋谷区役所 第二美竹分庁舎内
アクセス:渋谷駅徒歩約3分
竣工:2021年
鑑賞時間:10:00~18:00(要事前予約)
5.ストリート ガーデン シアター(藤原徹平)
旧こどもの城前に建つのは「植物と人のための劇場」をコンセプトにしたというストリート ガーデン シアターです。
このパビリオンでは植木鉢ならぬ「植木梁」と名付けられた木のフレームが、多数の植木鉢と共に立体的に組み上げられていて、訪れた人々はその間を縫うように小さな立体都市の中を彷徨います。
事前に見ていた写真のイメージとは違って、実際に訪れてみると想像以上に木の香りが漂い、風に揺れる植物たちの息遣いを感じるパビリオンなことに驚きます。
様々な高さや角度からみる植物と、その植物越しに見える渋谷の風景がとても新鮮で、まさに今しか見ることのできない特別な風景を堪能できます。
デザイン:藤原徹平
所在地:東京都渋谷区神宮前5-53-1 旧こどもの城前
アクセス:渋谷駅徒歩約5分
竣工:2021年
鑑賞時間:10:00~18:00
6.Global Bowl(平田晃久)
続いてストリート ガーデン シアターのすぐお隣、国際連合大学前の広場に建つのは建築家 平田晃久氏デザインのGlobal Bowlです。
まるでお椀のようなパビリオンでまず最初に驚くのはその大きさです。近づいてみると想像以上に大きく感じるビリオンは、うねる様な3次元のカーブを交差させながら広場の中心にシンボリックに置かれています。
平田氏の建築は有機的な形態の中に生まれる「からまりしろ」と呼ばれる余白の空間がその特徴。
このパビリオンも内部とも外部ともいえる、都市とも建築とも呼ばれる余白の空間がデザインされていて、機能を規定しないで様々な人が集まり交錯する場がつくり出されていました。
私が訪れた時は特に子供に大人気でしたが、大人でも思う存分楽しみましょう!
デザイン:平田晃久
所在地:東京都渋谷区神宮前5-53-70 国際連合大学前
アクセス:渋谷駅徒歩約5分
竣工:2021年
鑑賞時間:10:00~18:00
東京都内で平田氏の建築を見るのであれば、大塚のTree-ness Houseがおススメです。
Tree-ness Houseは上階は集合住宅ですが、1階はギャラリーにもなっているので、展示会によっては内部も見学が可能。
「木の幹」「枝」「葉っぱ」をモチーフとした「ひだ」のような空間が街に表出しているデザインは、平田氏の提唱する「からまりしろ」をより明確に感じることができます。
■Tree-ness House
設計:平田晃久
所在地:東京都豊島区
最寄駅:大塚駅徒歩10分
竣工:2017年