今回は千葉県の鋸南町にある道の駅 保田小学校を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・道の駅保田小学校を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・道の駅保田小学校の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・道の駅保田小学校の建築的な見どころや注目ポイント
1.古い小学校をコンバージョンした道の駅を訪問
今回訪れた道の駅 保田(ホダ)小学校は、以前からずっと訪れたいと思っていた建築でしたが、たまたま友人と千葉にドライブにいく機会があり、せっかくの機会なので旅程に組み込んで訪れてきました。
この道の駅保田小学校は2014年に廃校となった小学校を改修してつくられた直売所、店舗、宿泊所、温浴施設などの複合施設で、鋸南町によるプロポーザルを経て2015年にオープンしました。
プロポーザルで最優秀賞に選ばれ、建築の改修計画を手掛けたのはN.A.S.A設計共同体という建築家らのユニット。
N.A.S.A設計共同体は、このプロポーザルのために組織されたユニットで、古谷誠章氏率いるNASCA、渡辺真理氏、木下庸子氏率いる設計組織ADH、北山恒氏率いるarchitecture WORKSHOP、篠原聡子氏空間研究所の4つの設計事務所が集まった設計共同体です。
いずれの設計事務所も、このブログで何度も作品を取り上げている日本有数の設計事務所であり、建築ファンとしてはとても注目度の高いプロジェクトでした。
保田小学校は、鋸南保田インターを降りて車で数分進んだのどかなエリアに建っています。
電車で訪れる場合は、保田駅から歩して15分ほどの距離にあり、都心からは距離はありますがアクセスは比較的しやすい場所にあります。
元々は小学校だった場所を再利用した道の駅なので、小学校の校庭だったスペースに一部建物を拡張しながら大きな駐車場も併設した道の駅となっています。
建物は大きく校舎部分を活用した店舗・宿泊所・ギャラリースペースと、カフェ・温浴施設が入る増築部分、体育館を活用した直売所の3つの建物で構成されています。
古い小学校が次々と解体され立て替えられる現代において、廃校となった小学校の建物や備品を再利用しながら地元の人と観光客それぞれが集まり、新たな賑いを生み出す拠点として計画されています。
2.校舎を活用した宿泊施設と「まちの縁側」に注目
まず訪れたのが正面に見えた旧校舎をコンバージョンした建物です。
この建物は外観を一見すると校舎には見えませんが、その理由は校舎の前面に「まちの縁側」と名付けられたサンルームを新設しているからです。
この増築部分は地上部分では外部と内部を繋ぐピロティとして、2階部分はギャラリー兼増築棟と連結する回廊となっています。
中に入ると旧校舎の外壁がそのまま内装となっていて、外側の明るく新しいガラス面と対比するようなデザインとなっています。
また、2階の教室部分は宿泊施設になっていて、宿泊客がいない時は中を覗いてみることができます。
施設がリニューアルオープンする前年まで現役の小学校として使われていたこともあり、中では当時使われていた黒板や棚などが再利用されています。
また、校舎の外側に新たな回廊を設けることで宿泊施設の利用者や管理スタッフの動線と、観光で訪れた人の動線を上手く分離する設計となっているのも面白いです。
サンルームには校舎や街の歴史が展示されていたり、小学校時代の備品がファニチャーとして活用されていて、歩いているだけで楽しめます。
1階の教室は飲食店舗やキッズルームなどに活用されていて、食事をしたり子供の遊び場になったりと様々な人が楽しんでいました。
教室は食事処の他、テイクアウトができるお店や、ゲームコーナーなど緩く滞在できる部屋もあるのですが、こちらの部屋のマッサージ機には猫がうとうとしながら寝ていました。
近づいても一切警戒せず、マッサージ機からどこうとしないので、かなり観光客にも慣れているよう。
この猫にとってはここが自分の居場所なのでしょう。
校舎の隣には温浴施設とカフェが入る建物が併設されています。
保田小学校は、鋸山なども近くにあるので、宿泊客の他にも山登りの帰りに立ち寄ってお風呂に浸かるのもよさそうです。
1階のカフェは残念ながらこの日はお休みでしたので、今度再訪したいと思います。
3.体育館を活用した直売所が面白い。遺産を受け継ぎ新たな交流拠点に
カフェの先にあるのが体育館を改修した直売所です。
この直売所は構造部分を一部補強しながら外側をポリカーボネートの素材で覆っていて、現代的なデザインに生まれ変わっています。
大空間を有する体育館は、地元の食材を扱う直売所として賑わっていて、保田周辺のみならず千葉県の特産品なども売られています。
交流拠点というのは、この施設に訪れるというだけでなく、直売所を通じて千葉県の各地とも繋がっていると考えるととても面白いです。
道の駅の改修に当たっては、元々の素材を活かしつつ、安価な素材を上手く使ったデザインが随所に見られます。
元々の校舎が歴史の積み重ねや素材の持つ重厚感を持つのに対して、それに対比するように軽やかさやフレキシビリティを持たせることで、新旧両方が引き立つデザインとなっているのが面白いです。
校舎の外側には学校で使っていた備品を生かしたモニュメントや写真スポットも設けられていて、学校時代の遺産をフル活用しながら新たな時代の施設が形づくられています。
地元の人から観光客まで、老若男女問わず様々な人たちで賑わる道の駅保田小学校。
ストック時代の新たな希望が垣間見える名建築ですので、皆さんも機会があれば是非訪れてみて下さいね。
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道の駅保田小学校
改修設計:N.A.S.A設計共同体
所在地:千葉県安房郡鋸南町保田724
アクセス:保田駅より徒歩約15分
竣工:2015年
営業時間:9:00~17:00
備考:第23回千葉県建築文化賞
公式HP:https://hotasho.jp/
※記載している営業時間や金額は記事執筆時点のものです。変更となっている場合もありますので、訪れる際は公式HP等をご確認ください。
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