今回は東京の神楽坂周辺で建築巡りをしてきましたので、そこで出会った名建築について紹介したいと思います。
神楽坂は古い神社仏閣から江戸時代の面影を残す坂道や石畳の通りの残る歴史ある街としても知られていますが、実は世界的建築家 隈研吾氏の3部作をはじめ建築巡りにもピッタリの作品が点在する建築パワースポットでもあります。
そんな神楽坂を今日は建築の目線からたっぷり紹介していきたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・神楽坂エリアでの建築巡りを写真と文字でレポート
・神楽坂エリアの著名な建築家がデザインした建築や歴史のある近代建築をまとめ
・神楽坂エリアの建築の見どころや注目ポイントを解説
1.赤城神社・パークコート神楽坂
赤城神社・パークコート神楽坂は、神楽坂駅の北口を出て1分ほどの場所に建つ神社と集合住宅です。
赤城神社は鎌倉時代の1300年(正安2年)に創建された由緒ある神社で、2010年に老朽化などの理由から「赤城神社 再生プロジェクト」として大規模な建て替え工事が行われました。
建て替えに際しては、建て替え資金を賄うために神社の土地の一部を使って約70年の定期借地権を持つ分譲住宅が計画されたことも特徴の一つです。
また、神社及び集合住宅のデザインは日本を代表する建築家でもある隈研吾氏が行ったことでも大きな話題となっていて、和の要素とガラスとアルミといった現代的な素材を組み合わせた建築も注目のスポットです。
詳細記事
・赤城神社がスゴい!隈研吾氏デザインの新し過ぎる神社をレポート【東京神楽坂】
設計:隈研吾/隈研吾建築都市設計事務所
所在地:東京都新宿区赤城元町1-10
アクセス:神楽坂駅より徒歩約3分
竣工:2010年
2.都住創ラスティックビル
続いて訪れた都住創ラスティックビルは、赤城神社から西に5分程歩いたところにある地上7階全10戸の共同住宅で、あまり知られていませんが隈研吾氏の最初期の作品でもあります。
隈研吾氏といえば今でこそ木をふんだんに使った和の大家としてのイメージが強いですが、もともと隈研吾氏はコンクリートを多用したポストモダン建築でデビューした建築家でもありました。
都住創ラスティックビルも地上部には崩壊する過程のような柱の装飾があしらわれていて、隈研吾氏の初期の作風を知ることができる貴重な建築でもあります。
出世作でもあるM2(イオニア式の柱を巨大化したような建築)やドーリック(ドリス式の柱を巨大化したような建築)が竣工する直前に建てられた建築でもある点に注目してみると面白い建築です。
ちなみに隈研吾氏の東京都内のおススメ建築についてはこちらの記事にまとめていますので、隈氏の建築を訪れる際は是非参考にしてみて下さい。
関連記事
・建築家 隈研吾がデザインした東京都内のおススメ作品30選
設計:隈研吾/隈研吾建築都市設計事務所
所在地:東京都新宿区天神町77-5
アクセス:神楽坂駅より徒歩約5分
竣工:1990年
3.アユミギャラリー
ここから再び神楽坂駅に戻り、神楽坂駅の目の前に建つアユミギャラリーを巡ります。
アユミギャラリーは元々は大正~昭和初期にかけてイギリスで建築を学んだ建築家 高橋博のアトリエとして建てられた建築で、1984年に建物の1階をギャラリーとして改修され現在に至ります。
戦後間もなくに建てられ、イギリスと和風を折衷しながら丁寧に建築は、今見ても味わい深い貴重な近代遺産として存在感を放っています。
設計:高橋博(改修:鈴木喜一建築設計工房)
所在地:東京都新宿区矢来町114
所在地:神楽坂駅より徒歩約1分
竣工:1954年(1993年改修)
4.la kagū
la kagū(ラカグ)は、神楽坂駅の南口を降りてすぐのところに建つ商業施設です。
元々は1969年に建てられた新潮社の倉庫でしたが、隈研吾氏の手によってリノベーションがなされ街に開いた新たな商業施設として生まれ変わりました。
残念ながらla kagūは2019年に一度閉店してしまいましたが、隈研吾氏のデザインをそのままに食品・雑貨を扱う「AKOMEYA TOKYO」の旗艦店として再オープンがなされました。
倉庫の構造体を上手く活かした大空間、地形のようなウッドデッキの大階段を追加することで街と連続する美しい建築に再生されていて、今や神楽坂のランドマークとなっています。
※追記
先日再訪し、新しく入ったAKOMEYA食堂でランチをしてきました。
こだわりのお米と、ご飯によく合うおかずの組み合わせが素敵過ぎる食堂でしたので、皆さんも訪れた際は是非立ち寄ってみて下さいね。
設計:隈研吾/隈研吾建築都市設計事務所
所在地:東京都新宿区矢来町67
アクセス:神楽坂駅より徒歩約2分
竣工:2014年(改修)
備考:2015年度グッドデザイン賞
ちなみに隣接する新潮社の本館・別館も1959年の建築で、軽やかに並ぶ窓や味のあるタイルが特徴的ないぶし銀のような建物なので、訪れる際は是非合わせて見てみることをおススメします。
5.矢来町の家
続いて訪れた矢来町の家は、神楽坂駅から南にほどなく歩いた住宅街の中に建つ事務所兼住宅です。
コンクリートや鉄骨、ガリバリウム鋼板などの素材を組み合わせながらシャープで図形的な美しさが際立つ都市型住居となっています。
素材から一見してシンプルで生活感のない建物のようにも見えますが、駐車場の先に見える谷のような中庭やコンクリートの隙間から見える屋上庭園など、都心の限られた敷地の中で快適な暮らしを享受できるできるようにデザインされていることが垣間見えます。
設計:宇津木卓三/アーキアン建築研究所
所在地:東京都新宿区
アクセス:神楽坂駅より徒歩約3分
竣工:1995年
6.矢来亭
矢来亭は、矢来町の家からすぐのところに建つ集合住宅です。
一見して木造の個人邸のようにも見えますが、実は地上3階の低層集合住宅で、建物の共用部分には随所に和の意匠が施されています。
門を入った内部では上空から光の射す路地のような内部空間が広がっていたり、玄関ホールを入るったガラスの先には坪庭があったりと外部からは想像できない豊かな空間が広がっています。
設計:川口通正/川口通正建築研究所
所在地:東京都新宿区
アクセス:神楽坂駅より徒歩約4分
竣工:1998年
7.カフェ・ベローチェ神楽坂店
神楽坂駅からまさに神楽坂を8分程歩いたところにあるカフェ・ベローチェ神楽坂店は、カフェ・ベローチェを運営するシャノアールの50周年を記念してつくられた旗艦店舗です。
これまでのブランドを一新し、「Casual&Rich」をコンセプトに掲げた店舗は、今日本で最も話題の建築家集団といっても過言ではないSUPPOSE DESIGN OFFICEがデザインを手掛けています。
建物の正面はクラシカルな丸窓や白と黒のスタイリッシュな外装となっていて、今までのベローチェのイメージから一新しています。
建物のエントランスと道路の間の中間領域は、人々が佇めるバッファーゾーンになっていて気軽に休憩することも出来ます。
グラフィカルな床のデザインや、トイレの表示システム、メニューや食器のリデザインなど様々な試みがなされていて、今都内で最も注目したいカフェの1つです。
詳細記事
・カフェ・ベローチェ神楽坂店が面白い!生まれ変わった注目カフェをレポート【東京神楽坂】
設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE
所在地:東京都新宿区神楽坂4-1-1
アクセス:神楽坂駅より徒歩約8分、牛込神楽坂駅より徒歩約5分
竣工:2016年(改修)
営業時間:7:00~21:00
8.大江戸線牛込神楽坂駅
都営地下鉄大江戸線は各駅を建築家がデザインしているのですが、その中でもこの牛込神楽坂駅は見どころの多いお気に入りの駅がこちらの牛込神楽坂駅です。
駅の内装は永い歴史を持つ牛込の地をデザインコンセプトに、まるで地層のような黄土色のタイルが特徴的な建築となっています。
改札口付近は天空色と呼ばれるエメラルドグリーンの天井からはじまり、徐々に地層の中を入りこむようにしてアプローチする地下鉄ホームは一見の価値ありです。
地層をコンセプトにしながらも巧みな照明計画で明るく分かりやすいデザインとなっていたり、遠近感を錯覚させるタイルの貼り方など見どころ満載の駅となっています。
設計:前田雅之/空間工房
所在地:東京都新宿区箪笥町
竣工:2000年
備考:2001年度グッドデザイン賞
9.kif/kif annex
kifと隣接して建つkif annexは、飯田橋駅南東エリアの住宅街に建つ店舗と集合住宅の複合施設です。
シックな黒い外装と薄い表皮のようなスタイリッシュなデザインは千葉学氏の得意とする設えですが、低層部には複数の飲食店やベーカリーもあるので住民外であってもその空間を体験できるのがうれしいところ。
また、神楽坂らしい路地が交錯するような動線やテラスが立体的に計画されているのも特徴で、住宅街の一角に小さな小宇宙のような空間が浮かび上がっているのが印象的でした。
設計:千葉学/千葉学建築計画事務所
所在地:東京都新宿区若宮町14-7
アクセス:飯田橋駅より徒歩約4分
竣工:2009年(kif)、2023年(kif annex)
10.二村記念館(近代科学資料館)
最後に紹介する二村記念館(近代科学資料館)は、東京理科大学の創立110周年を記念して建てられた記念館です。
二村化学工業の創立者でもあった二村氏の寄付により建てられた建物は、1906年に建てられた東京物理学校(東京理科大学の前身)の校舎の外観を復元したものとなっています。
細部まで細かくデザインされた建物の中では、東京物理学校から引き継がれた貴重な資料をはじめ、数学や科学に関する興味深い展示が堪能できます。
所在地:東京都新宿区神楽坂1-3
アクセス:飯田橋駅より徒歩約3分
竣工:1991年
備考:1906年築の東京物理学校校舎を復元
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