今日は青山に建つ「塔の家」を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・塔の家を訪れたレポートを写真と文字で解説
・塔の家の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・塔の家の建築的な見どころや注目ポイント
塔の家は建築を学んだことがある人であればその存在を知らない人はいないであろう、建築家の東孝光さんの自邸です。
建築の世界では戦後日本の個人住宅の傑作として、東の「塔の家」、西の「住吉の長屋(設計:安藤忠雄氏)」といわれることもあるくらいで、都市住宅という言葉を生みだした記念碑的建築でもあります。
建物はいわゆるキラー通りと呼ばれる外苑前と千駄ヶ谷を繋ぐ通りの中腹に建っていて、Y字に道路が分かれる20㎡に満たない小さな3角形の敷地に建てられています。
この6坪に満たない敷地に建てられたこの住宅は、1966年の竣工。実に半世紀以上も前に建てられたというから驚くばかりです。
お風呂やトイレの扉さえも取り除かれた内部構成は、住むための空間を極限まで小さくし、それでも都心に住むという意思と覚悟をもったアヴァンギャルドな住宅です。
設計者の東孝光氏は郵政省に勤務後、坂倉準三建築研究所に勤務し、この塔の家の建築と共に独立して建築家としての人生をスタートさせた人物。塔の家の竣工した1966年には東氏は若干33歳でした。
有名な住宅なので詳しい解説は他の書籍やウェブサイトに譲るとして、ここからはちょっと変わった切り口この住宅を見てみたいと思います。
この建築を見て私の頭に浮かんだこと。それは「アインシュタイン塔」です。
ここでいうアインシュタイン塔とは有名な物理学者アインシュタインのことではなく、エーリヒ・メンデルゾーンという建築家が1920年代に設計したアインシュタイン塔という建築作品のことです。
ちなみにエーリヒ・メンデルゾーンはル・コルジュジェと同じ1887年生まれのドイツ出身の建築家で、アインシュタイン塔は彼の処女作です。
アインシュタイン塔- Wikipedia このアインシュタイン塔は「表現主義」の建築と呼ばれ、同じコンクリートやガラスといった新たな素材や技術を使い、合理的でインターナショナルな普遍性を謳うコルジュジェらに対し、非合理的・内面的な造形を通して理想な建築や社会の実現を主張するものでした。
「塔の家」も「アインシュタイン塔」も同じ5階建てで、低層部は街に対してやや開きつつ、上層部はプライベートな空間としている構成などの類似点も面白いです。
表現主義では単に造形的な形に目が行きがちですが、合理性では割り切れない個人の内面や主観の側から豊かで理想的な社会に近づこうという側面が重要なのだと思います。
そう考えると、住宅という個人の内面的な主観的な部分が色濃く反映された建築を通して社会に主張した「塔の家」は、表現主義が主張しようとして消えていった理想を、東京の地で昇華させた建築と見ることができるのではないでしょうか。
アインシュタイン塔の最上部には物理学者アインシュタインの相対性理論を実測検証するドームがありましたが、塔の家の最上部には東孝光さんの娘さんである東利恵氏の部屋がありました。
小さいころから都心の街やそこを行きかう人々を「観測」して育った娘さんは、現在建築家として数々の作品を発表しているのはとても興味深いです。
改めて塔の家を見てみると、無駄な部分が一切なく、住宅という最も身近な建築の奥深さをひしひしと感じることができます。
50年以上の時を経た建築はもはやオーパーツのような、古代の神秘的な遺跡感すらあります。
これからの建築家世代が、これらの名建築に引き続く都市型住宅をどうデザインしていくのか、今からドキドキワクワクします。これは次の世代に出された宿題ですね。
ちなみに余談になりますが、「塔の家」の向かいに建つワタリウム美術館も建築好きにファンが多いおススメの美術館です。
設計を手掛けたのはマリオ・ボッタしというスイス出身の建築家。マリオ・ボッタ氏はサンフランシスコ近代美術館(1994年)やイタリアのスカラ座の改修デザインを手掛けたことでも知られる世界的な建築家ですが、このワタリウム美術館はそんな彼の建築作品が日本で唯一見れるおすすめスポットです。
こちらの建築についても、後日このブログで詳しく紹介したいと思います。
半世紀以上に渡って様々なひとに影響を与え続けた「搭の家」は、見れば見るほど傑作といえる奥深い作品でした。
■まとめ
・都市住宅の傑作「塔の家」は「都心に住まう」という強い意思と覚悟をもったアヴァンギャルドな住宅
・表現主義建築の代表作「アインシュタイン塔」と不思議な共通点に注目すると面白い建築
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また、当ブログでも漫画のレポートと、漫画と舞台となった亀戸の建築巡りについて紹介していますので、是非併せてご覧ください。
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塔の家
設計:東孝光/東孝光建築研究所
所在地:東京都渋谷区
アクセス:外苑前駅より徒歩約7分
竣工:1966年
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