今日は兵庫県神戸市にある倚松庵(いしょうあん)を見学してきましたので、その模様をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・倚松庵を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・倚松庵の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・倚松庵の建築的な見どころや注目ポイント
1.文豪谷崎潤一郎が昭和初期を過ごした邸宅を訪問
今日は神戸市東灘区に谷崎潤一郎が暮らした邸宅が残されているときき、早速訪れてきました。
最寄駅である魚崎駅から約5分ほど歩いた所に建つ倚松庵は、谷崎潤一郎が1936年から戦中の1943年までの約7年間に渡り暮らした邸宅です。
現在の倚松庵は、神戸新交通六甲アイランド線の橋脚の建設に伴い1990年に現在地に移築されたものですが、この倚松庵は谷崎の代表作のひとつである「細雪」のモチーフにもなった建物。
細雪は当時の大阪の船場を舞台に4姉妹の日常を描いた小説ですが、当時松子夫人とその妹たちと生活した倚松庵がその作品に大きな影響を与えています。
現在の倚松庵は原則週末限定で一般公開されていて、入館料も無料で見学することができます。
建物の入口にはひっそりと倚松庵の名が彫られた石のサインがありました。
また、不定期ですが谷崎や文学に関するイベントも行われているようで、私が訪れたときも谷崎の研究者によるイベントの準備が行われていました。
東側の門から中にはいると2階建ての建物がみえてきます。
谷崎が住むのは1936年ですが、この邸宅が建てられたのは1929年と比較的新しく、神戸の領事館で働くベルギー人一家のための邸宅でした。
谷崎は何十回も引っ越しをしていたことでも知られる人物ですが、ここ倚松庵は近くにあった借家を見学に来た際に一目惚れして、大家に掛け合って大家を引っ越させて谷崎が借りた住まいでした。
ちなみに私が訪れた時は応接室行われるイベントの準備をしていました。
大型の家具も一時的に庭に出していたのですが、なんだか引っ越しの当日に立ち会ったような不思議な光景でした。
当時としては最新鋭のモダンな住宅にほれ込んだ谷崎でしたが、結果として大家とのトラブルにより7年住んだ後に立ち退くことになります。
しかし7年という期間は引っ越し魔の谷崎としてはかなり長い期間。妻の松の名をとって倚松庵と呼んでいることからも谷崎にとって特別な時間を過ごした場所であったことが伺えます。
2.和洋折衷の魅力的な住宅を堪能
入口の門をまっすぐに進むと邸宅の玄関が見えてきます。
建物の中は玄関から中廊下が伸び、右側に水回りや女中部屋、左側に応接室や食堂、和室が配置されています。
建物の外部は和の装いでしたが、内部は洋室もありとてもモダンなデザインでした。
南側の窓から自然光が降り注ぐ洋室は、大きな窓からの視線の抜けもあり、実際の大きさよりも広く見えます。
美しいステンドグラスの嵌め込まれたドアや、マントルピースなども見応えがあり、シンプルながらところどころにこだわりの意匠がみられます。
また、天井にとりつけられた半球形の間接照明も素敵で、陰翳礼讃を著した谷崎らしい光と影が、そこかしこに垣間見れます。
奥の和室は、細雪にも度々登場する部屋です。
和室のデザインも面白く、例えば板の間には下部に障子がはめ込まれていたりと、当時としてもかなり凝ったデザインの住宅だったと思われます。
内部を見学して気づくのは、外からでは気づきにくい大小様々な窓の多さです。
これらの窓から、時間や季節によって刻々と変化する自然光や空気感が感じられる邸宅だったことが想像できます。
こちらの電話の裏にも曇りガラスの開口があったのが面白いです。
玄関前の階段を上がった上階には、3つの和室があります。
こちらも当時としてはまだ珍しく先鋭的だった中廊下を取り入れたプランとなっています。
階段の手すりもかなり凝ったデザインです。
こちらの和室の窓には欄干が巡り、明るい自然光が降り注ぎます。
窓から見える風景は当時のものとは異なりますが、谷崎や妻の松子さんはこの窓からどんな風景を見ていたのだろうと考えてしまいます。
簞笥や鏡台などの家具も展示されていて、倚松庵での生活に思いが巡ります。
各部屋には谷崎についての解説や関連資料のほか、移築前の建物の瓦なども展示されています。
再び1階にもどり、浴室などの水回りも見学しました。
昔ながらの五右衛門風呂など、裏手の設備もじっくり見ることができて、ととも興味深かったです。
住宅建築は、そこに住んでいた人々の暮らしや人生が垣間見られてとても面白いです。
さらにここ倚松庵は細雪の舞台のモチーフにもなっているので、再び作品を読み返したくなりました。
素敵な建物をたっぷりと堪能して、この日の建築巡りも大満足のものとなりました。
とてもオススメのスポットですので、皆さんも機会があれば是非訪れてみてくださいね。
ちなみに神戸周辺のおススメ建築の記事についても書いていますので、神戸を訪れる際は是非参考にしてみて下さい。
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倚松庵(旧谷崎潤一郎邸)
所在地:兵庫県神戸市東灘区住吉東町1-6-50
アクセス:魚崎駅より徒歩約5分
竣工:1929年(1990年移築)
開館時間:10:00~16:00
入館料:無料
備考:原則土曜、日曜のみ開館
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