今回は東京から離れて、京都の岡崎公園内にある京都府立図書館を見学してきましたので、その模様をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・京都府立図書館を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・京都府立図書館の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・京都府立図書館の建築的な見どころや注目ポイント
1.京都の岡崎公園内に建つ歴史ある図書館を見学
今日訪れたのは平安神宮に隣接することでも知られる岡崎公園内にある京都府立図書館です。
この京都府立図書館は、日本初の公立図書館でもある京都集書院を前身とした由緒ある図書館。
現在の建物は元の建物の一部を保存しつつ2001年に大規模な改修を経て再オープンしたもの。
今回は11月に開かれた京都モダン建築祭というモダン建築の公開イベントにあわせて見学を行ってきました。
図書館へのアクセスは、最寄りのから歩いて10分ほどですが、公園の入口に入る際は平安神宮の巨大な鳥居をくぐります。
京都府立図書館が建つ岡崎公園は京都の中心市街地から電車で数分離れた東山駅から歩いて10分ほどの場所にあります。
岡崎公園は平安神宮の火除け地だったこともあり、公園の入口には大きな鳥居が建ち誇っています。
公園内には京都府立図書館の他にも建築家前川國男氏が席したロームシアター京都や槇文彦氏が設計した京都国立近代美術館、近年大改修を経てリニューアルオープンした京都市京セラ美術館など世界的にも著名な建築家らによる近現代の建築が一堂に会していて、建築ファンにはたまらない公園になっています。
今回訪れたの京都府立図書館の元々の建築家武田五一氏がデザインしたもの。
武田氏といえば先日紹介したフォーチュンガーデン京都(島津製作所旧本社)や京都市役所をはじめ、主に関西の近代建築を牽引した建築家です。
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また、武田氏は京都大学(当時は京都帝国大学)の建築学科の創設に関わったり、寺社仏閣の保存・修復においても大きな功績を残し、関西建築界の父とも呼ばれた人物でもあります。
現在の建物は2001年に部分的に保存しながら建て替えられたものですが、武田氏がデザインした建物の一部は今も保存され建物の一部となっています。
建物を少し引いたとこらから見てみると、近代建築の外壁の後ろに大きなガラスのボリュームがあることがわかります。
外観は近代建築でも、建物の大部分は建て替えによってリニューアルしていますが、こうした新旧がさりげなく対比されるデザインとなっているのが面白いです。
新しい図書館では上階で図書館としてのヴォリュームを確保しつつ、地上から地下にかけての大階段・吹抜けや地下に光を導く半円の前庭など、合理性とゆとりの両方が上手くデザインされているように感じました。
2.紆余曲折を経て誕生した京都府立図書館を堪能
元々京都府立図書館が現在の岡崎公園に建設される経緯にはちょっとした紆余曲折がありました。
図書館の前身となった京都集書院は明治のはじめの1872年に京都の中心市街地に設置されたのですが、経済的な理由から京都集書院はほどなくして閉鎖されてしまいます。
その後京都府教育会図書館にその役目と書籍が引き継がれ、1898年に京都府立図書館がオープンします。
そこから約10年の時を経て1909年に現在の岡崎公園に再度移転することとなり、現在の建物の礎が築かれます。
京都府立図書館が現在の地に移転した1909年近辺は日本の近代化が進み、日本各地に大規模な公共図書館が建設され始めた時代でした。
例えば以前このブログで紹介した大阪図書館(大阪府立中之島図書館)が竣工したのが1904年、東京上野の旧帝国図書館(国際子ども図書館)が竣工したのが1906年と今も残る近代図書館が建設されたのがちょうどこの時期でした。
大阪府立中之島図書館や旧帝国図書館の外観は西洋の古典主義建築を引用したルネッサンス様式でしたが、ここ京都府立図書館はセセッション(分離派)と呼ばれる建築様式が採用されているのが特徴です。
このセセッションは、この図書館が建設された19世紀末から20世紀初頭に起こった潮流で、これまでの古典主義建築をはじめとする西洋の伝統的な様式から脱却した新たな表現を目指したものでした。
セセッションの建築は自然の植物を抽象化した幾何学的な装飾や直線的なデザインが特徴ですが、ヨーロッパで起こったセセッションのムーブメントを日本に持ち込んだのが武田五一でした。
ここ京都府立図書館はセセッションの日本国内での走りのような作品で、白い窓枠やその上に輝く金色の装飾などは武田が学んだ西洋のセセッション建築から引用した当時の最先端のデザイン。
古典主義建築にみられるような重厚で伝統的なデザインに対して、京都府立図書館では華やかさと軽やかさが際立って感じられます。
ちなみに今回の京都モダン建築祭では、本来立入禁止となっている外部階段が公開されていて、これらの装飾や当時の建具をたっぷりと堪能することができました。
また、京都モダン建築祭では外部階段の他にも、当時の建物の天井のレリーフやドアの一部が公開されていました。
このレリーフは当時の漆喰職人によってつくられたのもで、西洋のレリーフが日本の職人の手によって形作られた様を間近でみることができました。
100年以上の歴史の詰まった建築をたっぷりと堪能して、この日の建築巡りも大満足なものとなりました。
とっても魅力的な図書館ですので、皆さんも機会があれば是非訪れて、その空間を堪能してみてくださいね。
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京都府立図書館
原設計:武田五一
改修設計:日本設計
所在地:京都府京都市左京区岡崎成勝寺町
アクセス:東山駅より徒歩約10分
竣工:1909年(2000年改築)
開館時間:
平日 9:30~19:00
土曜・日曜・祝日 9:30~17:00
休館日:月曜、毎月第4木曜
公式HP:https://www.library.pref.kyoto.jp/
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