荻窪「荻外荘」歴史の舞台ともなった伊東忠太設計の邸宅をレポート

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今日は荻窪にある荻外荘を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。

【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走

【この記事で分かること】
・荻外荘を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・荻外荘の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・荻外荘の建築的な見どころや注目ポイント

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1.昭和初期に建てられ、歴史の舞台ともなった邸宅が一般公開開始

今回は杉並区の荻窪に建つ荻外荘(てきがいそう)が、リニューアル工事を終えて一般公開が始まったと聞き、早速訪れてきました。
荻外荘は、東京帝国大学医科大学教授であり、宮内省侍医頭なども務めた入澤達吉が、1927年に自らの別邸として建てた邸宅です。

建設からちょうど10年目の1937年には、内閣総理大臣となった近衞文麿が入澤からこの邸宅を購入し、近衛の住まいとして政治的な会談や親交の舞台にもなりました。

戦後は増改築が行われたり、邸宅の半分が移築されたりしていましたが、周辺を含めた整備と建物の復元工事が行われ、2024年にリニューアルオープンとなりました。
荻窪の閑静な住宅街を15分ほど歩くと、荻外荘の入口が見えてきます。

元々南側に斜面を持った高台に建てられた荻外荘でしたが、リニューアルに際して南側の敷地は区立の公園として整備されました。
この荻外荘公園からは高台に建つ荻外荘の建物がよく見えることもあって、広場を駆け回るこどもやピクニックする人々の他に、建物にカメラを向けて写真を撮る人も多くみられました。

現在の建物入口は北西と北東にある門からアクセスします。
荻外荘の建物は戦後に東側半分が豊島区に移設するなどしていましたが、今回の整備で再び荻窪の地に移築復元されています。
建物の入口はちょうど移築した建物の継ぎ目付近に設けられています。

エントランスの横にはロッカーがあり、その向かいには旧台所スペースを使った事務室とチケットカウンターがあります。

チケットを購入して中に入ると、スリッパに履き替えて内部の見学がスタートします。
ちなみに入館料は一般300円となっています。

2.独特のデザインが光る邸宅内部を堪能

荻外荘の中は、東西に伸びる廊下から南側に配置された客間や食堂、寝室といった各部屋に繋がる廊下が垂直に伸びる独特の間取りとなっています。

まずは廊下を向って左側に進み、1番奥にある応接室から見学します。

荻外荘

決して派手はない小さなお部屋なのですが、建具や天井など、独特なデザインが随所に散りばめられた室内は、入った瞬間から思わず「おぉ」と声が漏れてしまう不思議な魅力をもった空間となっています。

建物の設計を手掛けたのは、このブログでも何度も取り上げたことのある建築家・建築史家の伊東忠太なのだから、建築ファンとしてはたまりません。

伊東忠太といえば、日本建築史を創始し、それまで「造家」といわれていた言葉を「建築」と改めたことでも知られる建築史家であり、明治神宮や築地本願寺といった神社仏閣をはじめ現在の一橋大学の兼松講堂、虎ノ門の大倉集古館などの実作で知られる建築家でもありました。
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日本の建築史に大きな影響を与えた伊東でしたが、荻外荘の元々の家主であった入澤の義弟であったことから、伊東の手がけた作品としては稀にみる住宅建築が建設されたというのも面白いです。

荻外荘

建物の東側に位置する応接室は、元々はこちらの玄関に隣接していた部屋でしたが、この玄関にも足元のタイルなどにその独特のデザインが垣間見れます。

応接室のお隣はお手洗いとなっていますが、こちらも今回の整備工事で復元されていて、廊下から内部を窺いうことができます。

続いて中央の廊下を進んで客間や食堂を見てまわります。

公園に面する客間や食堂は南側に広縁が設けられていて、自然光が降り注ぎ、建物の外の自然が間近に飛び込んでくる気持ちのいい空間となっています。

広縁のガラス戸は菱形状の独特のデザインとなっていて、伝統的な東洋のイメージとモダンなデザインの両方が感じられます。

荻外荘

荻窪郊外に建てられた邸宅ということもあり、周辺の豊かな環境を巧みに取り込んだ空間がとても魅力的です。
こちらの応接室は、精巧な装飾や見事な調度品が並ぶ荻外荘の中でも一際豪華なお部屋です。

荻外荘

この応接室は、第二次近衞内閣時にいわゆる「荻窪会談」が行われた場所でもあり、当時の日本の行末を左右する歴史の舞台にもなりました。
ここで話し合われた内容を元に、二ヶ月後に日本は日独伊三国同盟を結ぶことになります。

こちらは食堂のお隣の書斎です。
書斎元々洋室だった部屋を近衛の時代に和室に改装していますが、その後は当時からほとんど手が加えていないまま残されていて、様々な素材を組み合わせつつも、それぞらの要素が調和しているようです。

荻外荘

また、こちらの部屋は、戦争が終わった1945年の12月に近衛が自害した部屋でもあります。
改めて荻外荘を巡ってみると、遠い昔の歴史の中にあった出来事が、目の前に再び蘇って追体験できます。

3.蔵や喫茶も必見!荻外荘を隅々まで堪能

続いて廊下をぐるりと回って、南西にある居間と旧寝室へ。

今はお隣に茶の間、南側に押入を挟んで先ほどの書斎があります。
廊下を挟んで庭の自然を楽しむこともできる配置です。

こちらの旧寝室は現在は資料室として使われていて、荻外荘の模型や当時の写真などが展示されています。

今の向かいには1938年に建てられた2階建ての蔵があります。 蔵は中に入ることはできませんが、外側から内部の様子と展示を見ることができます。

荻外荘

邸宅の西側は増築された別棟となっていますが、今回の整備工事でミュージアムショップと喫茶スペースとなっています。
せっかくなので喫茶スペースで、ひと休憩しました。

この日頂いなのはこちらのスノボールとお茶のセットです。
ほんのり甘いスノーボールと、さっぱりとした加賀棒茶はベストマッチで、建築見学の合間の休憩にピッタリでした。

荻外荘

庭の緑を眺めながら荻外荘の素敵な建築とその建築が辿ってきた歴史に思いを馳せました。

建物を楽しんだ後は、敷地の東側の門から荻窪駅に戻ります。
道路を挟んだ向かい側の敷地では、2025年にオープン予定の休憩所・案内所が建設中でした。この建物は隈研吾建築都市設計事務所が設計を手掛けていて、荻外荘と合わせて杉並の新たな注目スポットとなっることが期待されています。

素敵な建築をたっぷりと堪能して、この日の建築巡りも大満足のものとなりした。
とてもオススメのスポットですので、皆さんも機会があれば是非訪れてみて下さいね。

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荻外荘
原設計:伊東忠太
所在地:東京都杉並区荻窪2-43-36
アクセス:荻窪駅より徒歩約15分
竣工:1927年
開館時間:10:00~17:00
休館日:水曜、年末年始 入館料:一般300円、小・中学生150円


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