今回は、東京都の豊島区に建つ旧鈴木家住宅を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約6000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・旧鈴木家住宅を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・旧鈴木家住宅の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・旧鈴木家住宅の建築的な見どころや注目ポイント
1.和洋の貴重な近代建築が堪能できる鈴木信太郎記念館を見学
今回訪れたのは、東京都の豊島区と文京区の境に建つ旧鈴木家住宅(鈴木信太郎記念館)です。

旧鈴木家住宅は、明治時代の中ごろから昭和にかけて日本のフランス文学研究のパイオニアとして活躍した鈴木信太郎の暮らした邸宅であり、現在は豊島区の指定有形文化財にもなっています。
東京メトロの丸ノ内線の新大塚駅をでて5分ほど歩くと、大谷石による旧鈴木家住宅のエントランスがみえてきます。

鈴木信太郎は、東京帝国大学仏文学科で学び、その後は帝国大学(現在の東京大学)に席を置き、日本のフランス文学研究の礎を築いた研究者でした。
鈴木は、フランス文学研究の第一人者として渡辺一夫、伊吹武彦、小林秀雄といった多くの教え子を輩出し、東京大学文学部の教授を退官した後は中央大学や東洋大学などでも教授を務めました。
ちなみに東京帝国大学で共にフランス文学のパイオニアとして活動し、鈴木との共著も多くある文学者に辰野隆がいましたが、彼は東京駅丸の内駅舎等の建築を手掛けた辰野金吾の息子であったというのも建築好きとしては興味深い事実です。
また、鈴木は稀覯本の収集家としての顔も持っており、海外から持ち込んだ貴重な書籍を大量に保有していました。

旧鈴木家住宅の洋館は書斎棟と呼ばれ、彼が集めた書籍の一部が展示されています。
鈴木は30歳の頃に自費でパリに1年間留学していますが、その際に収集した書籍は約1000冊ほどもあったそう。
これらの書籍は、鈴木が帰国するタイミングで船便で輸送される予定でしたが、不運なことに事故ですべて焼失してしまいます。
大きなショックから神経衰弱になった鈴木でしたが、こうした経験から数年後の1928年に建てられることになるこちらの書庫棟は、当時まだ珍しかった鉄筋コンクリート造で建てられました。
書斎棟は建設時は1階建てでしたが、1931年には2階を増築するなどもしています。

鉄筋コンクリート造で建てられた書斎棟は、結果としてその後の戦火から貴重な書籍と建築を守ることになり、現在までその姿を残しています。
2.貴重な建築と美しすぎる書斎をたっぷりと堪能
鈴木信太郎記念館の入口は、中央の茶の間・ホール棟にあります。

鈴木信太郎記念館の入館料は無料。
エントランスでスリッパに履き替えて早速内部を見学します。
茶の間・ホール棟は、現在は受付や事務所として使われているコンパクトな建物で、書斎棟や座敷棟に繋がるハブのような役割を持っています。

記念館に入ってすぐの場所ホには、等身大の鈴木信太郎のパネルがあり、一緒に記念写真を撮ることもできます。
この茶の間・ホール棟が建てられた戦後間もない時代は新築建物の建築制限があり、新しく建てる家は15坪の広さまでと決められていました。

この茶の間・ホール棟の隣に建つ座敷棟は、現在の埼玉県春日部市から移築したものですが、移築は15坪の建築制限から外れるということで、1948年にお隣の座敷棟が移築されました。

鈴木の本家は現在の春日部市に広大な土地を持つ大地主でしたが、座敷棟は明治時代の中期に建てられた屋敷の一部となっています。


座敷には当時の面影を残した貴重な建築と共に、移築の経緯や図面、模型などが展示されています。
この邸宅は、何度かの改修を経ながらも区に寄贈される直前まで暮らしの場として使われていました。
大切に使われ続けていた邸宅を、その空間と共に体感できるのはとても貴重な体験です。
座敷棟を堪能した後は鉄筋コンクリート造の書斎棟を見学します。

書斎棟は1階が展示空間となっていて、鈴木信太郎の足跡を辿りつつ、彼が集めた貴重な資料をみることができます。
決して広くはない展示スペースですが、天井まである書架が並ぶ空間は圧巻の一言。

大きな窓とステンドグラスからの優しい自然光で満たされた書斎は、異世界に迷い込んだような非日常感がありつつも、どこか落ち着く空間となっています。

本棚には貴重な書籍がズラリと並んでいます。
数十年、あるいは100年を超える時を経た外国の書籍や鈴木の愛蔵所が並ぶ書斎をたっぷりと堪能しました。
展示は他にも鈴木の交友関係をはじめとして興味深い内容が満載でとても楽しめました。
また、献呈本には、谷崎潤一郎や大佛次郎など著名な人物からのものもあり、興味深く拝見しました。

素敵な建築と展示をたっぷりと堪能して、この日の建築巡りも大満足のものとなりました。
とてもオススメの記念館ですので、皆さんも機会があれば是非訪れてみてくださいね。
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鈴木信太郎記念館
設計:大塚泰(書斎棟1階)、栗谷鶉二(書斎棟2階/1931年)、鈴木成分(書斎棟2階/1956年)、栗谷鶉二(茶の間・ホール棟)
所在地:東京都豊島区東池袋5-52-3
アクセス:新大塚駅より徒歩約3分
竣工:明治時代中期(座敷棟/1948年移築)、1928年(書斎棟)、1946年(茶の間・ホール棟)
開館時間:9:00〜16:30
休館日:月曜、第3日曜、祝日、年末年始
入館料:無料
備考:豊島区指定有形文化財


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