今日は埼玉県ふじみ野市の福岡河岸記念館を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約6000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・福岡河岸記念館を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・福岡河岸記念館の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・福岡河岸記念館の建築的な見どころや注目ポイント
1.近代の舟運を支えた貴重な建物を訪問
今回訪れたのは、埼玉県のふじみ野市にあるふじみ野市立福岡河岸記念館(旧福田屋)です。
ふじみ野市は川越市の南東エリアに隣接し、この福岡河岸記念館も川を渡った先は川越市という立地に位置します。

福岡河岸記念館は、江戸時代から昭和初期まで東京浅草との間で回漕問屋を営んでいた福田屋の家屋を改修してつくられた記念館です。
記念館としての建物は通年公開されていますが、この日は年に数度の特別公開日で、普段は入れない離れの上階などをできるということを知り早速訪れてきました。
最寄駅である上福岡駅からバスで10分ほど進み、最寄りのバス停から数分歩くと、福岡河岸記念館の建物が見えてきます。

この福田屋は、すぐ先を流れる新河岸川の舟運を使い、地元の発展にも大きく貢献した回漕問屋であり、現在残されている建物は明治時代に建てられた建物群の一部です。
現在残されている建物は一部となっていますが、正面右手の主屋の他、裏手の台所棟、3階建ての離れ、正面の文庫蔵など当時の建物がそのまま記念館・資料館として公開されています。
入口でチケットを購入した後、早速記念館を見学します。

主屋と付属する台所棟は、記念館のオープンに際して解体・復元が行われ、若干の位置移動がなされましたが、回漕問屋らしい独特の特徴や工夫が随所にみられます。

例えば玄関入口の敷居は取り外し可能なようにつくられていて、必要に応じて取り外して広い間口と段差のなく内外が繋がるような仕掛けとなっています。

玄関を入ってすぐの場所には丁場があり、当時の雰囲気が伝わってきます。
また、丁場の奥の約三畳ほどの広さのスペースは金庫部屋であり、床下を石で囲い当時は窓外に防犯の石が敷かれていたそうです。

続く書院つくりの部屋は欄間に見られる精巧な意匠や、取り外し可能な障子など、こだわりが凝縮した見応えのある空間が続いています。
2階へは置型の階段で上がりますが、こちらも調度品と呼ぶのが相応しいようなこったつくりとなっています。
急な勾配も現在の当時の建物ならではで、ワクワクしながらあがりました。

陰影豊かな1階に対して、陽の光が気持ちいい2階も見所が満載でした。

窓のデザインも各所で異なっていて、部屋ごとに様々なデザインを楽しめるのも面白いです。
1階の奥に繋がる台所棟では、当時の生活の様子がよく伝わってきます。

台所棟は明治初期の建物をさらに明治30年代に増改築したものですが、多くの使用人や関係者も含めた食事が作られていたことが想像できます。
台所棟の2階はは男部屋と呼ばれる二つの部屋があり、公開はされていませんがこちらも急な階段が残されています。

台所から少し離れた所には女部屋があり、こちらも当時の生活を窺い知ることができる貴重な建築遺産となっています。
2.普段は公開されない離れの上階をたっぷりと堪能
主屋の裏手にある離れは、主に接客用として明治時代の後期に建てられたものです。

明治時代に建てられた木造三階建ての住居で現存する建物は、埼玉県内ではこちらの離れのみとなっているそうです。

建物は地上3階まで続く6本の通し柱が使われていることもあり、大正時代に起こった関東大震災や、2011年の東日本大震災も乗り越える堅牢な建物となっています。

1階は客間の他、浴室がありましたが、程なくして改修されて食事の配膳スペースなどに変わっていきました。
天井に残る旭光形の装飾は当時のものです。真ん中の部屋で切られているのが今となっては面白いです。
客間からは裏手の庭園が望めます。当時はこちらの裏手にも出入り口があったそうですが、現在は他の住宅が建てられていました。

ガラスの開口から庭園の木々が切り取られて見えたのも面白いです。

また、こちらのお手洗いには陶器の小便器と陶器の足置きが備え付けられているのも注目ポイントです。
今回は特別公開日ということで、離れの2階・3階にもあがらせてもらいました。

急な階段を上った先にはそれぞれ10畳ほどの和室があり、敷地内や新河岸川を望めます。
各階の床の間には唐三銘木が使われていて、それぞれの特徴がでているのも見所です。
窓からは先ほど見た女部屋、男部屋の小さな窓も見ることができます。

3階に登ると、独特の鉄柵のデザインがあしらわれたステンドグラスがお出迎えしてくれます。
離れでは、近江八景の浮き彫りが施された外の風景も利用しながら絵画の様にも見える障子など、当主と職人さんの見事なこだわりと技を堪能できます。

3階からは東京スカイツリー(当時船で荷を運んでいた浅草近辺ですね)が小さく見えたり、富士山や筑波山も望むことができました。
十代目当主であった星野仙蔵氏は、船問屋だけでなく政治家や実業家としても活躍しましたが、ここを訪れた多くのお客さんも、こだわりの建築と風景を堪能したのだろうと想像が膨らみます。
3.蔵や庭園など、敷地内に残された歴史遺産をあますところなく見学
離れを堪能した後は、文庫蔵を見学します。

こちらの蔵は明治30年代に建てられたもので、現在は船問屋に関する展示のほか、星野仙蔵氏の功績やゆかりの品をみることができるギャラリーとなっています。

現在は見ることのない商い道具の他、剣道の達人であった星野氏の展示はとても興味深いものでした。
建物を堪能した後は、裏手にある庭園を見学しました。

庭園からは離れや文庫蔵の裏側を見ることができ、鮮やかな庭園の自然といぶし銀のように佇む歴史ある建物の美しい対比を楽しみました。
素敵な建物をたっぷりと堪能して、この日の建築巡りも大満足のものとなりました。
とてもオススメの建築ですので、皆さんも機会があれば是非訪れてみて下さいね。
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ふじみ野市立福岡河岸記念館
所在地:埼玉県ふじみ野市福岡3-4-2
アクセス:上福岡駅より徒歩約20分
竣工:明治時代初期~後期
開館時間:10:00~16:00(5月から9月は~16:30)
休館日:月曜、年末年始
入館料:大人100円、小・中・高校生50円
備考:離れの2・3階は通常は非公開(年に数回特別公開日あり)
埼玉県景観重要建造物
2009年度彩の国景観賞


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