カーポートは建築物!?カーポートの建築法規を徹底解説【建築法規解説】

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建築物を建てるときには建築基準法をはじめ様々なルールがあります。
建築設計者以外にはあまりなじみのないものかも知れませんが、街に建っているすべての建築物はこのルールを元につくられています。建築の法律を知ることで街に建つ建物の見方がちょっと変わったり、新たな発見があるものです。

やま菜
やま菜

このブログの管理者であるやま菜は、普段このブログでは私が巡った建築をレポートしていますが、実は設計事務所で建築の設計を行う建築士でもあります。

今回はそんな建築法規の中から誰もが馴染みが深い(?)であろうカーポートにまつわる法規についてご紹介します。
カーポートを計画中の方や、建築法規を学びたての方、建築に興味がある方の参考になればと思います。

尚、記事内容は執筆時点に私が把握している内容をもとに記載しています。建築法規については法改正や地域の条例、個別の条件によっても異なってきますので、実際に計画する際は建築士の方にご相談ください。

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1.カーポートは建築基準法上の建築物

建築基準法2条では建築物の定義として「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの」としている。
カーポートも上記の条件を満たしているため、確認申請を必要とする「建築物」に含まれます。

建築基準法では第6条で確認申請を行う建築物を1号~4号までの4つに分類していますが、カーポートはこの4号の建築物に当たる為、面積が10㎡を超える場合は必ず確認申請が必要になります。
また、カーポートを建てる場所が防火・準防火地域の場合は、面積にかかわらず、確認申請が必要となります。

また、建築基準法の条文では「土地に定着する工作物」とありますが、コンクリート等の基礎のあり・なしに関わらず「建築物」となることにも注意が必要です。

2.建築基準法ではどんな規定が問われるの?

では建築基準法上の建築物とされるカーポートでは具体的にどういった規定が問われるのでしょうか。注意しなければいけないのは以下の2つです。

①建蔽率・容積率

まず注意しなければいけないのは建蔽率と容積率です。
既に建築物がある状態で増築を行う際は、建蔽率と容積率にどの程度余裕があるのかの確認は必須です。
建築面積に関しては高い開放性を有する、水平距離1m以内の部分の水平投影面積は建築面積に算入しない(建築基準法施行令2条第2号)という規定もあるので緩和できる部分も大きいです。

ちなみに高い開放性とは平成5年建設省告示1437号によると
1.外壁を有しない部分が連続して4m以上
2.柱の間隔が2m以上
3.天井の高さが2.1m以上
4.地階を除く階数が1である

を満たしている場合となります。

また行政によってはビルディングタイプ(住宅なのかオフィスなのか店舗なのか)や大きさによって建蔽率・容積率に算入しなくてもよいという緩和措置がある場合があるので、計画の際には計画地の行政に確認するようにしましょう。

②防火性能

カーポートを建てるのが、防火地域・準防火地域・22条区域の場合は屋根材(壁がある場合は壁材も)を一定の防火性能を有する仕様にする必要があります。
ここで問題となるのが、カーポートが「延焼のおそれのある部分(延焼ライン)」にかかるかどうかです。
延焼のおそれのある部分は平屋においては隣地境界線道路の中心線、同じ敷地内に建物がある場合でカーポートと合計した床面積500㎡を超える場合はその建物の外壁とカーポートの中心線から3mの範囲になります。

住宅の場合は500㎡を超えることはそうそうないと思いますが、集合住宅やビルなどに隣接してカーポートを建てる場合は延焼ライン内にカーポートが入ってくる可能性が高いです。
延焼のおそれのある部分についての詳細はこちらの「延焼の恐れのある部分とは?【建築法規解説】」に解説していますので、詳しく知りたい方は見てみて下さい。

延焼ライン内にカーポートが入っている場合は屋根材が制限されて、一般的なカーポートでみるようなポリカーボネートの屋根は使えなくなります。
この範囲で使用できるのは不燃認定をとっているDRタイプのFRP板やアルミ樹脂鋼板、ガリバリウム鋼板など一定の防火性能を持った材料のみとなります。

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3.カーポートを確認申請しないで建てる風潮があるのは何故か

ハウスメーカーでカーポートを建てるとき、「カーポートはうちでは建てられないから、引き渡しの後に施主責任で建ててください」と言われた人もいるのではないでしょうか。

これには2つ理由があって
上記で説明したようにカーポートを建蔽率・容積率を超えてしまう(もしくはその分建物を小さくしなければならない)
カーポートの柱などに使われるアルミニウム材が建築基準法に定められていなかった為、構造計算や特別な認定を得る必要があった
の2つが挙げられます。
「②」に関しては平成14年にアルミニウム合金造建築物に関する告示が公布・施行されたことにより、現在では特別な手続きを必要とせず確認申請を行うことができるようになりました。(平成14年国土交通省告示第410号)

ただし、延べ面積が50㎡を超える場合は構造計算書の添付が必要になることに注意が必要です。また、50㎡以下の場合でも行政によっては構造計算書を求められる場合があるので確認が必要です。
構造計算書はメーカーに言えばすぐに揃えてもらえますが、間口や柱の位置をカスタマイズした場合などで他の事例がない場合は、構造計算書の作成に最大2週間くらい掛かる場合もあるので注意が必要です。

また、「①」「②」に加えてそもそもホームセンターで売っているカーポートを建てたほうがカーポート自体も安いし、申請に係る費用も掛からないので、違法建築でも価格を抑えたいといった施主側(とそれを進める業者側)の心理ももちろんあります。
ただし、当然違法建築なので是正を求められれば撤去しなければならないですし、万が一火災があったときにカーポートが燃えたり延焼が起きて、人の命が失われるといったことにもなりかねません。
みんながやっているからや、そんなことは起こらないだろうという考えはやめて、きちんとした建築を建てていくことが事業者側にも施主にも求められます。

4.その他敷地ギリギリに建てる場合も注意が必要

最後に見逃しがちな法規上の注意点を2つ紹介します。
①2項道路に面する場合
2項道路とは幅員4m未満の道で特定行政庁が指定したものですが、これらの道路は道路中心から2mの部分はたとえ敷地内であっても建築を建てることができません。(建築基準法42条2項)
ついつい通常の建築と違って見逃しがちですが、もちろんカーポートの屋根がかかってもいけないので、カーポートに接する道路の幅員が狭い場合は注意が必要です。

②民法の規定の50㎝に注意
防火その他の規定をクリアしたとしても、隣地ギリギリにカーポートを建てる場合は建築基準法的に問題がなくても民法に抵触する可能性があります。
民法234条では建築物を隣地境界線から50cm以上離すことが定められています。

よく住宅を建てるときに隣地から50㎝離してくださいという話を聞きますが、カーポートも建築物である以上はこの規定の範囲内です。
この50㎝の規定は壁からの距離なので屋根がギリギリな分には問題ありませんが、それでも雨水の流出や降雪時雪が隣の敷地に落ちないかは気にしたほうがよいでしょう。

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いかがでしたでしょうか。
分ってしまえばなるほど納得な建築法規。これからも定期的に身近な建築法規について解説していきたいと思います。


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