今日は東京の大森周辺で建築巡りをしてきましたので、そこで出会った名建築について紹介したいと思います。
大正~昭和の貴重な住宅建築から、バブルの大規模再開発、既存の長屋や高架下をうまく活用したプロジェクトまで様々な建築がまじり合う大森はまさに建築パワースポット。
それでは早速、魅力あふれる大森建築の世界に、一緒にトリップしていきましょう!
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・大森エリアでの建築巡りを写真と文字でレポート
・大森エリアの著名な建築家がデザインした建築や歴史のある近代建築をまとめ
・大森エリアの建築の見どころや注目ポイントを解説
1.旧高橋診療所
京浜東北線の大森駅を出てまず初めに訪れたのは、西口の池上通り商店街に建つ旧高橋診療所です。
元々は地元の診療所兼住宅として建てられ、現在はギャラリー・クラシックという名前の貸しギャラリーとなっています。
こう見えて実は木造の建物の建物ですが、さらに注目なのは白い外壁に褐色屋根のスペイン風のデザイン。
当時アメリカでは1915年にサンフランシスコで開催されたパナマ・太平洋万国博覧会に端を発したスパニッシュ住宅が流行していて、そのデザインを取り入れたことからこのようなスペイン風のデザインとなっています。
1960年代に大きな改修がされ、建物内部は大きく変わっていますが、外観は当時のままの姿を見ることが出来ます。
所在地:東京都大田区山王3-30-5
アクセス:大森駅より徒歩約2分
竣工:1931年
備考:国登録有形文化財
2.塚﨑家住宅
池上通り商店街の入り口の坂を上がった先にあるのが1924年(大正13年)に建てられた塚﨑家住宅です。
先ほどの高橋診療所はスパニッシュ風でしたが、こちらの建物は大谷石を多用し、水平庇が特徴的な明らかにフランクロイドライトの影響を受けています。
ライトと言えば近代建築3巨匠の1人でもあり、前年の1923年には帝国ホテルも手掛けた当時最も注目されていた建築家でもあります。
この住宅の建つ山王エリアは現在も高級住宅地として知られていますが、この2つの建物からも古くから知識人・文化人が多く住む大森駅西口エリアのハイカラな雰囲気を感じることが出来ますね。
所在地:東京都大田区山王2-12-5
アクセス:大森駅より徒歩約7分
竣工:1924年
備考:国登録有形文化財
3.ヒューリック大森ビル(櫻井潔)
続いて大森駅の東口に移動します。
駅前ロータリーに面して建つヒューリック大森ビルは地上9階建ての飲食店、クリニック、学習塾、美容室などが入る複合建築です。
各階のテナントのアプローチにもなっているバルコニーは立体的に植栽が配置されていて、経済重視の単調なファサードになりがちな駅前の風景に楽しげな変化をもたらしています。
駅前の商業施設や再開発を数々手掛け、収益面積を最大限確保しつつ、テナントの視認性や価値を高める手法に精通する設計者の手腕が遺憾なく発揮された建物です。
設計:櫻井潔/櫻井潔建築設計事務所・ETHNOS
所在地:東京都品川区南大井6-28-12
アクセス:大森駅より徒歩約1分
竣工:2017年
4.大森ベルポート(山下設計)
大森ベルポートは、かつて大森駅の東口にあったいすゞ自動車の本社・工場跡地の再開発プロジェクトです。
1991年と1996年の2期に分かれて建設された建物は、いすゞ本社の他は賃貸オフィスとして貸し出されていて、中央のアトリウムを公開空地とすることで高度利用がなされています。
何といっても注目なのは、日本最大級ともいわれる高さ約45m、4000㎡を超える超巨大アトリウム。
現在でもイベントやロケなどで度々使用されているので見たことがあるという人もいるかもしれませんが、この建物が計画されたバブルの時代の空気をパッキングしたような巨大な空間はまさに圧巻です。
私は今回訪れるまでこの建物についてほとんど知らなかったのですが、この建物を訪れたことをSNSでつぶやくとあっという間に2000リツイートを超えるプチバス状態に。30年間に渡る皆さんの様々な思い出を聞くことができました。
建築が長い時間の中で様々な人に体験や記憶を刻み込むことがあたらめて実感できて、私にとっても思い出の建築になりました。
詳細記事
・大森ベルポートがスゴい!バブルの雰囲気漂う超豪華建築をレポート【東京大森】
設計:山下設計
所在地:東京都品川区南大井6-26
アクセス:大森駅より徒歩約5分
竣工:1991年、1996年
備考:1991年日事連優秀賞建築作品表彰日事連会長賞
1997年SDA賞
おまけ:第一昭和荘
大森ベルポートから南に10分ほど歩くと見えてくるのは昭和初期に法律関係の事務所として建てられた第一昭和荘です。
近年では内部を一部改修しつつもしのはらというお蕎麦屋さんとして地域の人に親しまれていましたが、2021年の10月に取り壊しが決まっているそうです。
建物の内部も丁寧に使い続けられているので、当時のデザインが随所に見てとれる貴重な近代遺産となっています。
交差点に面する表面は立派な洋風の建物に見えますが、裏手にまわると昭和らしい木造モルタル造なのも可愛らしかったです。
ちなみに2021年10月の取り壊しまでの期間限定で海苔茶漬け専門店として営業が行われています。
実際に訪れてみたレポートも書きましたので、興味のある方は是非こちらの記事も合わせてご覧ください。
※12月3日追記:海苔茶漬け専門店青は2021年9月で閉店し、取り壊し済です。
詳細記事
・昭和初期の建物を改修した海苔茶漬け専門店を堪能!取壊し間際の建築をレポート【東京大森】
所在地:東京都大田区大森北4-13-19
アクセス:大森駅より徒歩約10分
竣工:昭和初期
備考:2021年に解体済
5.日本キリスト教会大森教会(山口文象)
第一昭和荘からすぐの場所に建つ日本キリスト教会大森教会は近代日本の建築界を牽引した山口文象氏が手掛けた教会です。
山口と言えば復興局で山田守に師事し、分離派運動のメンバーとして活動したり、RIA建築総合研究所(現アール・アイ・エー)を設立するなど近代日本において華々しい活躍をした建築家でもありますが、久ヶ原教会(1950年)や渋谷の山手協会(1966年)など実は特徴的な都内の教会建築を手掛けた建築家でもあります。
限られた敷地の中で経済的に最大限の室内面積を確保するために用いられた鉄筋コンクリートの折半構造の建物は、建物内外にうっすらとした陰翳を生み出しつつ側面からの光を内部に取り込んでいて、シンプルながら宗教建築としての豊かな表情をつくり出しています。
設計:山口文象
所在地:東京都大田区大森北4-14-5
アクセス:大森駅より徒歩約11分
竣工:1959年
6.大六天根岸神社
大森教会からほどなくのところにある大六天根岸神社は大きな屋根にコンパクトな社殿が特徴的な神社。
昭和初期に建てられたとされる建物は地上から2m以上持ち上げられていて、手前の小さな階段からアプローチする一風変わった作りです。
第六天の魔王を祀る社殿は昭和初期に建てられたそうですが、詳しい由緒は不明とのこと。住宅街の中に建つ神社でこの時期にコンクリート造というのは珍しいですが、さらに独特のプロポーションや階段についても興味が引かれるちょっと不思議な神社でした。
所在地:東京都大田区大森北4-24-3
アクセス:大森駅より徒歩約12分
竣工:昭和初期
7.大森諏訪神社
大森駅の南東エリアの住宅地を彷徨っていると随分と古そうだけれでも立派な神社を発見。
境内の説明板から大森諏訪神社という神社で、建物は戦後まもなく再建されたものということが分かりました。ちなみに神社の創建は江戸時代とも鎌倉時代ともいわれ、詳しいことは分かっていないそうです。
丁寧に彫られた彫刻や透かしの木細工などは見応え抜群で、戦後間もなくに建てられたとは思えないほどでした。戦後の時期だからこそ、失われたものへの供養の気持ちと復興の願いを込めて建てられたのかなと想像が膨らむ建築でした。
所在地:東京都大田区大森西2-23-6
アクセス:大森駅より徒歩約18分、大森町駅より徒歩約6分
竣工:1947年(本殿)、1957年(社殿)
8.守屋家住宅主屋
守屋家住宅主屋は、大森の閑静な住宅地に建つ1929年に建てられた木造2階建ての住宅です。
外観のみしか見ることはできないですが、玄関に入った右手はタイル貼りの洋室となっていて、和洋折衷の邸宅であることが分かります。
庇や壁の装飾も細かく丁寧に施されていて、当時の職人さんの技が光っているのも素敵です。
所在地:東京都大田区大森北3
アクセス:大森駅より徒歩約15分
竣工:1929年
備考:登録有形文化財
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