こんにちは。建築好きのやま菜です。
本日は神奈川県の川崎にある川崎市河原町高層住宅団地(河原町団地)を見学してきましたので、建築好きの視点からその魅力や注目ポイントをレポートしたいと思います。
では早速見ていきましょう!
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・河原町団地を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・河原町団地の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・河原町団地の建築的な見どころや注目ポイント
1.河原町団地とは?設計者の大谷幸夫と未来の都市計画
川崎市河原町高層住宅団地(河原町団地)は神奈川県の川崎駅から北に15分ほど歩いたところにある総戸数約3600戸、15棟の建物からなる超マンモス団地です。
設計を行ったのは国立京都国際会館など日本建築史に残る名建築を手掛けた大谷幸夫氏で、この河原町団地はよくみる四角い立方体の団地と違った特徴的な建物は建築好きや団地マニアの間ではファンも多い隠れ名建築でもあります。
大谷幸夫氏といえば、建築家 丹下健三の右腕と言われ、広島の平和記念資料館や旧東京都庁舎の設計も手掛けた大建築家でもあります。
丹下健三氏で思い出されるのは東京大学の丹下健三研究室が発表した架空の都市プロジェクト「東京計画1960」があります。この計画は東京・千葉間を結ぶ東京湾の海上につくられた新たな都市像の提案で1961年に発表されたものです。
1960年代当時はこうしたメガストラクチャーによる巨大な都市構想が次々と発表され、議論されていた時代でした。ここで提案された都市構想は結局は実現することのない夢として収束していくことになるのですが、そんな中1969年に東京と川崎を隔てる多摩川にごく近い敷地に建てられたのが河原町団地なのです。
大谷氏が東京大学の丹下研究室を辞したのはちょうど1960年です。
その後1964年に東大の都市工学科助教授に就任、大谷研究室が発足したのが1967年、独立後の大谷氏が自身が目指す建築・都市像を存分に発揮させて実現したのが河原町団地でした。
2.早速突入!川崎に聳え立つ3600戸のマンモス団地がスゴい
川崎駅を降り、ラゾーナ川崎プラザやソリッドスクエアを横目に約15分ほど歩くと今回のお目当ての河原町団地が見えてきます。
この敷地は元々は日東製鋼の川崎工場(その後東京製綱川崎工場に引き継がれる)が建てられていた土地で、その跡地の敷地を使った河原町団地はなんと総戸数3600戸、約15000人もの人々が暮らすことが想定されていました。
まずは広大な敷地に建てられた建物群に圧倒されます。当時は高度経済成長期の真っ只中。この団地もそんな経済成長期の受皿として大いに賑わっていたそうです。
建物に近づいていくこちらの緑道は元々は川崎河岸駅への貨物線が通っていた線路跡地で、川崎工場と川崎河岸を繋ぐインフラとして活用されていました。
現在は「さいわい緑道」と名付けられて細長い立地を生かしながら周辺住民の憩いの場となっています。
敷地内には道路が通り、保育園が設置され、低層部には商店街が設けられて多くの人々の暮らしを支えていました。
まさに1つの1つの都市が出来上がっています。
団地に入ってすぐの建物を見上げると、早速普通の団地とは一線を画した谷のような吹き抜けとメカニックな構造体が目に入ってきます。
この構造体は後々になって耐震補強のために設置されたものではありますが、なんとも妙にしっくりくるのが不思議です。
耐震補強と言えばなるべく目立たず行うのが常ですが、こちらの河原町団地ではあたかも最初からそう言うデザインであったかのように堂々と設置ているのが気持ちがいいです。
谷間の中に入ってみると意外と太陽の光が入っていて気持ちがいいです。(ただし不穏な雰囲気はある 笑)
大部分がピロティとなっているので風通しも良くて、この団地が単純に奇をてらったり、建築家の作家性にだけで形作られたものでないことが分かります。
団地内は綺麗に歩者分離がされていたり、様々なデザインの棟が分散配置されていたりと見るほうとしては意外と楽しみながら巡れます。
多くの棟では1階部分のピロティは自転車置き場になっています。この日も自転車を漕いだおじいちゃんが巨大な駐輪場の一角にピットインするように自転車を止めていて、未来とも過去ともいえない不思議な光景にちょっと笑ってしまいました。
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3.河原町団地名物!逆Y字のシルエットが度肝を抜く建物がスゴすぎる
団地を中腹くらいまで探索すると見えてくるのが、逆Y字のシルエットが度肝を抜くこちらの建物です。
この棟は河原町団地の中でも特に有名な建物で、ロケの舞台としても何度も使用されているのでひょっとしたら見たことがあるという人もいるかもしれません。
正面にまわるとさらに迫力満点。
巨大な宗教施設のようでもあり、何かの基地でもあるような特徴的な形をしています。
低層部の住戸が段々状に広がっていて、真ん中に巨大な吹き抜けがあるつくりは低層部の住戸の日当たりを考慮して生まれたものだそうです。
団地全体を改めて見てみるとどの棟も南北軸に沿って建てられていますが、それでも通常の四角い建物にしてしまうと低層部はどうしても日照条件が低下してしまいます。設計者の大谷氏も3600戸もの巨大な住戸を限られた敷地に入れつつ、魅力的な団地をつくることに苦慮したそうですが、そんな中で生まれたのがこの逆Y字のシルエットです。
当然通常の建物よりも建設費用もかかりますが、その分住棟配置が改善されたり、中庭に共用のコート空間が生まれたりするメリットも生まれるということを説明し、このなんとも不思議な構成の建物が完成したのです。
神々しさすら感じる半屋外の中庭空間は、まるでSF映画にでてくる建物のようです。
まるで近未来の建物のようにも思えますが、この空間がつくられたのは実に半世紀も前のこと。時間感覚が揺さぶられる不思議な空間に脳がくらくらしつつ、ワクワク感が止まりません。
子供が遊ぶのにもピッタリにも思えるこの空間は、建設後しばらくはバスケットゴールが取り付けられるなどこどもの遊び場として大いに活用されていたそうです。
その後バスケットボールの騒音が響くといった苦情の声からゴールは撤去され、現在は静寂が支配する神聖な空間になっていました。
何とも世知辛いエピソードです。
4.設計者の思いを感じる各住戸の「専用庭」にも注目!
河原町団地でもう一注目したいのが、各住戸に設けられた専門の「庭」です。
先ほど見た逆Y字の住棟では低層部の住戸は桝状の専用庭がついたコートハウスとなっています。
大谷氏は一貫して住宅の中の庭の重要性を提唱してきた建築家なのですが、建物の形を逆Y字にしたことで生まれたこのコートハウスはまさに大谷氏の考える都市住宅の1つの到達点であるともいえます。
特に自然も少なく限られた市街地の中で、プライバシーを保ちながら外部の環境を取り入れるコートハウスの概念は現代においても学ぶことの多い概念でもあります。
そうした目線で見てみると、河原町その他の住戸についても1つ1つの住戸が独立したバルコニーになっていることに気づきます。
この時代の団地と言えば、各住戸は連続するバルコニーで一直線につなぐのが常でした。
一見すると特徴の薄く見える高層部分や立方体系の住棟も、バルコニーを使って各住戸に小さな「庭」を設けようとしているという視点で見ると、グッと面白く見えてきます。
また、各住戸が独立したバルコニーを持つことで、デザイン的にも立体感が生まれ、住戸ごとにつくり出される陰影が建物に深みを与えています。
大量の住戸が並ぶにも関わらず、退屈しないファサードに妙なリズム感を感じていたのはこのバルコニーに秘密があったのです。
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5.その他にも驚きや発見に溢れる団地を最後まで満喫
建物全体が彫刻作品のように見えてきたところで、さらに団地内を散策してみると他にも大谷氏の残した印象的なデザインや団地のシステムが随所に見られます。
こちらの樋のようなオブジェクトは車と住棟を分けるガードレールでしょうか。
完全な用途は分からないですがとても印象的なデザインです。私が子供だったら絶対この上を歩いて渡ってみたり、鬼ごっこをする時にはここで足止めできるだろうかなど、いろいろと考えてしまいます 笑
きっとこの団地で育った子供たちも実際にそんな使い方をしていたのだと想像すると嬉しくなります。
鬼ごっこでいうと、ピロティで地上部化繋がりつつ立体的な動線で繋がる団地は格好の遊び場だったように思えます。
現在は高齢化・少子化の影響を得てかつての賑わいは失われているのがさみしい限りです。建築というロングスパンで建ち続ける構築物に対してはやはり時代に対してフレキシブルに変化し続けられる余地が必要ということでしょうか。
奥に見えるのは清掃車用の駐車スペースです。
各階には共用のダストシュートが設置されていましたが、こちらはまだまだ現役で使われているようです。
ダストシュートで集められた後には1階のゴミスペースに集積されて回収されるようです。
どこまでも興味深い河原町団地散策は、様々な発見がありながら大満足に終えることが出来ました。
いつまで残っているかわからないですが、かつての建築家が夢見た理想の都市の一端を垣間見れる河原町団地を現存するうちに訪れることができたのは本当に幸せでした。
皆さんも機会があれば是非訪れてその空間を体験してみてくださいね。
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河原町団地
設計:大谷幸夫
所在地:神奈川県川崎市幸区河原町
アクセス:川崎駅より徒歩約15分
竣工:1969年
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