今回は、神奈川県の日本大通り・海岸通り周辺で建築巡りをしてきましたので、そこで出会った名建築をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・日本大通り・海岸通り周辺エリアでの建築巡りを写真と文字でレポート
・日本大通り・海岸通り周辺エリアの著名な建築家がデザインした建築や歴史のある近代建築をまとめ
・日本大通り・海岸通り周辺エリアの建築の見どころや注目ポイントを解説
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1.神奈川県庁舎

まずはじめに紹介する神奈川県庁舎本庁舎は、関東大震災後の1928年に建てられ、キングの塔の愛称でも知られる地上5階地下1階建ての県庁舎です。
茶褐色のタイルと大理石が全体を覆う建物は、旧帝国ホテルなどを設計したフランク・ロイド・ライトの影響や、当時流行していたアール・デコのデザインを取り入れた壮観の建築となっています。
幾何学的な装飾を取り入れ、時代の先端をいく建築様式を巧みに組み合わせつつ、そこかしこに日本の建築美を取り入れているのも注目ポイント。
特に内部では寺院を思わす仏教モチーフの装飾や格子天井などがみられます。

神奈川県庁舎といえば本庁舎の西側に1966年に建てられた新庁舎も見逃せません。
戦後日本を代表する建築家の坂倉順三氏が手掛けた建物は、塔状部分にコアをまとめ、両側に白い執務室が伸びる合理的なデザインが特徴です。
ピロティやブリーズ・ソレイユといった坂倉の師であるル・コルビュジエの影響が色濃く反映されているのも注目ポイントで、キングの塔と合わせてみてみるとその違いや時代性がよくわかって面白いです。

設計(本庁舎):小尾嘉郎+神奈川県内務部
設計(新庁舎):坂倉順三/坂倉建築研究所
所在地:神奈川県横浜市中区日本大通1
アクセス:日本大通り駅より徒歩約1分
竣工:1928年(本庁舎)、1966年(新庁舎)
2.横浜市開港記念会館

横浜市開港記念会館は、横浜開港50周年を記念して1917に建てられた公会堂です。
ジャックの塔の呼び名でも知られる建築は、東京市技師であった福田重義によるコンペ案をもとに横浜市技師らによって設計が進められ、地上高約35mの時計塔が天に伸びる圧巻の建築が実現しました。
赤煉瓦に白い花崗岩のコントラストが映える所謂「辰野式」の外観に、大小様々なドームを有する建築は、横浜の顔として100年以上に渡って人々に親しまれています。


設計:福田重義+横浜市(山田七五郎+佐藤四郎ら)
所在地:神奈川県横浜市中区本町1-6
アクセス:日本大通駅より徒歩約1分
竣工:1917年
備考:重要文化財
公式HP:https://www.kaikokinenkaikan.com/
3.三井住友銀行 横浜支店

三井住友銀行 横浜支店は、海岸通り沿いに建つ地上2階建ての銀行です。
横浜には銀行建築にルーツを持つ建築がいくつも残されていますが、現役の銀行として当時の建物が使われているのはこの建築のみ。また、建物の設計は、この建物と時期を近くして竣工した日本橋の三井本館(1929年竣工)も手掛けたトロウブリッジ&リビングストン建築設計事務所が手掛けているのも注目ポイントです。
銀行建築らしいオーダーの列柱を設えつつ端正でスタイリッシュなデザインが特徴の建物ですが、間近でみると気づく精巧な装飾も魅力的な建築となっています。


設計:トロウブリッジ&リビングストン建築設計事務所
所在地:神奈川県横浜市中区本町2-20
アクセス:日本大通駅より徒歩約2分
竣工:1931年
4.横浜地方・簡易裁判所(旧横浜地方裁判所)

横浜地方・簡易裁判所は、日本大通り沿いに建つ地上13階地下2階の裁判所です。
元々は1930年に旧横浜地方裁判所として建てられましたが、低層部の正面に旧建物の外観を復元する形で建て替えが行われました。
旧建物は大きな曲線を描く優雅で包み込むような外装が特徴でしたが、新しい建物は旧建物を引き立てつつ対比するようなデザインのタワーが特徴となっています。
また、旧建物の4階部分のラインに合わせて両脇をクリアなガラスの外装としているのも素敵で、新旧のコントラストを楽しめる建物となっています。


原設計:小野武雄+保岡豊/大蔵省営繕管財局
設計:関東地方建設局+梓設計
所在地:神奈川県横浜市中区日本大通9
アクセス:日本大通駅より徒歩約1分
竣工:2001年(旧建物は1930年)
5.横浜情報文化センター(旧横浜商工奨励館)/横浜都市発展記念館・横浜ユーラシア文化館(旧横浜市街電話局)

横浜情報文化センターと横浜都市発展記念館・横浜ユーラシア文化館は、共に1929年に建てられた旧横浜商工奨励館と、旧横浜市街電話局を改修・増築して建てられた地上12階地下3階建ての複合施設です。
交差点に対して優雅なカーブを描きつつ白い花崗岩やリズミカルに並ぶ窓が印象的な旧横浜商工奨励館と、濃茶色のタイルの直線的で堅実なデザインが印象的な旧建物旧横浜市街電話局が同じ軒高で連なり、少しセットバックした位置に増築されたタワー伸びる建物は、3つの建物が見事に折り重なりながら、現代の一つの建物として成立しています。


旧建物は店舗や展示室として利用できるのも嬉しいポイントで、工夫に満ちた建築技や装飾、それぞれの建物の違いや接点を間近でみることができます。

原設計:横浜市建築課(旧横浜商工奨励館)、逓信省営繕課(旧横浜市街電話局)
改修設計:日建設計
所在地:神奈川県横浜市中区日本大通11、12
アクセス:日本大通駅より徒歩約1分
竣工:1929年、2000年(横浜情報文化センター)、2002年(横浜都市発展記念館・横浜ユーラシア文化館)
6.KN日本大通ビル(三井物産横浜ビル)

日本大通ビル(三井物産横浜ビル)は、横浜情報文化センター(旧横浜商工奨励館)の南側に建つ地上4階地下1階建てのオフィスビルです。
一見して1つの建物に見えますが、正面向かって左側が1911年に建てられた1号館で、右側が1927年に2号館として増築された部分となっています。
シンプルなデザインの建物ですが、日本ではじめて全面的に鉄筋コンクリート造を採用した事務所ビルでもあり、装飾を排しながらもコンクリートのもつ堅牢性と優雅な造形美が遺憾なく発揮された記念碑的な建物となっています。


設計:遠藤於菟+酒井祐之助
所在地:神奈川県横浜市中区日本大通14
アクセス:日本大通駅より徒歩約1分
竣工:1911年(1号館)、1927年(2号館)
7.KRCビル(旧マークスビル)

KRCビル(旧マークスビル)は、日本大通り沿いに建つ地上9階地下2階建てのオフィスビルです。
シックな色のフレームに風景を反射するガラスの外装が印象的な建物は、石やタイルによる建築が立ち並ぶ横浜の建築の中で新鮮に映ります。
端正なデザインの中に、リズミカルに並ぶフレームが並ぶ特徴的なガラスのカーテンウォールは、日本大通りの木々や周囲の建築を映し出すスクリーンのようにみえてとても面白かったです。


設計:アントニン・レーモンド/レーモンド設計事務所
所在地:神奈川県横浜市中区日本大通18
アクセス:日本大通り駅より徒歩約3分
竣工:1972年
8.横浜市中区役所

横浜市中区役所は、横浜公園の向かいに建つ区役所庁舎です。
建物の設計は建築家 前川國男氏率いる前川建築設計事務所が手掛け、前川氏が多くの作品で実践してきた打ち込みタイルの褐色の表情や、リズミカルに連なるアーチの庇が特徴です。
陽の光によって表情を変えるタイル、市民に開いたガラスのエントランスなど、これまで前川氏が手掛けてきた建築の特徴が随所に見られるのも注目ポイントです。
2020年に大規模な改修が行われて、前川氏の建築のエッセンスを引き継いだ現代の建築が形つくられています。


設計:前川國男/前川建築設計事務所
改修設計:建築設計加藤住吉
建築設計加藤住吉
中区日本大通35
アクセス:日本大通り駅より徒歩約4分
竣工:1983年(2020年改修)
9.旧日本綿花横浜支店

旧日本綿花横浜支店は、横浜市中区役所のお隣に建つ地上4階地下1階建ての建物です。
西側の事務所棟と東側の倉庫棟は共に1928年に建築家の渡辺節の設計で建てられ、現在は旧事務所棟は横浜DeNAベイスターズが運営する「THE BAYS」として、旧倉庫棟は横浜市中区役所の別館として利用されています。
昭和初期のモダンなスクラッチタイルの外壁は日本大通りの並木道ともよく馴染んでいて、天候や時刻によって微妙に変化する陰影豊かな表情をみせてくれます。頂部の帯装飾も素敵でシンプルな建物に華を与えています。


設計:渡辺節
所在地:神奈川県横浜市中区日本大通34
アクセス:日本大通り駅より徒歩約3分
竣工:1928年
備考:横浜市指定文化財
横浜市認定歴史的建造物
10.日本キリスト教会横浜海岸教会

日本キリスト教会横浜海岸教会は、開港広場公園に隣接して建つ教会で、日本のプロテスタント教会発祥の地でもあります。
現在の協会は、1923年に起こった関東大震災により焼失した教会を1933年に再建したもの。天に伸びる尖塔と縦長の窓が印象的な建物は、プロテスタント教会らしいシンプルな造形のデザインが特徴です。
建物以外にも門柱や塀のデザインも素敵で、周囲に高い建物が立ち並ぶ現在でも近くを通りかかると、象徴的な尖塔と門塀がとても印象に残る建物となっています。


設計:雪野元吉
所在地:神奈川県横浜市中区日本大通8
アクセス:日本大通り駅より徒歩約3分
竣工:1933年
11.横浜開港資料館

横浜開港資料館は、日本大通りと海岸通りの結節点に建つ資料館です。
元々は1931年に英国総領事館として建てられた旧館と、1981年に建てられた新館の2棟で構成され、現在は横浜の歴史資料等が展示される資料館として活用されています。
領事館らしいクラシックな近代建築と、日本の伝統建築のモチーフや長屋門を思わせるデザインの新館が一体となっているのもユニークで、新旧、和洋の建築美と緻密なデザインを堪能できる隠れた名スポットです。


設計:英国工務省(旧館)、浦辺鎮太郎(新館)
所在地:神奈川県横浜市中区日本大通3
アクセス:日本大通り駅より徒歩約2分
竣工:1931年(旧館)、1981年(新館)
備考:横浜市指定有形文化財
12.横浜海洋会館(旧大倉商事横浜出張所)・横浜貿易会館

横浜海洋会館(旧大倉商事横浜出張所)は、日本大通りの北端に、元々は大倉商事横浜出張所として建てられた地上3階地下1階建てのオフィスビルです。
褐色のスクラッチタイルに開口部と建物全体が縁取られた外観が特徴の建物は、1929年に建てられた歴史ある建物となっています。

設計を手掛けた大倉土木は、現在の大成建設の前身となった会社でもあり、すぐお隣に建つ横浜貿易会館も同年に大倉土木の設計・施工で建てられました。
横浜貿易会館はカフェやレストランが軒を連ねているでランチや休憩のスポットにもピッタリです。
横浜港をバックに古き良きレトロな建物が連なる姿は、海岸通りの顔ともなっていて、昭和初期の横浜港の風景を現代に伝えています。


設計:大倉土木
所在地:神奈川県横浜市中区海岸通1-1
アクセス:日本大通り駅より徒歩約3分
竣工:1929年
13.横浜税関庁舎

横浜税関庁舎は、昭和初期の1934年に建てられ、現在はクイーンの塔の愛称でも親しまれる税関庁舎です。
青緑色のドームを中心に両翼に広がるような建物は、クイーンの愛称がピッタリの優雅で気品に溢れた姿が印象的な建物です。
古典主義、ロマネスク風、イスラム風、モダニズムなど、様々な様式が散りばめられつつ一つの建物にまとめられているのも見事です。
正面が注目されることが多い建物ですが、裏手や足元の装飾も見応えがあり、訪れた際はじっくり時間をかけて堪能するのがオススメです。


設計:大蔵省営繕管財局
改修設計:香山壽夫建築研究所+アプル総合計画事務所
所在地:神奈川県横浜市中区海岸通1-1
アクセス:日本大通り駅より徒歩約3分
竣工:1934年
備考:横浜市認定歴史的建造物
14.象の鼻パーク&テラス

象の鼻パーク・象の鼻テラスは、1854年にアメリカのペリー提督が2度目の来日で上陸した場所に開港150周年の記念事業として整備された公園と観光案内所、カフェ、公衆トイレ等の付帯施設です。
時代とともに一時は堤防の形は直線状となった時代もありましたが、2009年の整備時に、当時の弓なりの形に復元され、象の鼻パークと名付けられました。
広場全体を緩やかに取り囲んで結び付けるスクリーンや、象をモチーフにしたベンチなどのファニチャー類、海を背景としたステージなど様々な仕掛けが丁寧にデザインされた素敵な公園&建物です。


設計:小泉雅生/小泉アトリエ
所在地:神奈川県横浜市中区海岸通1-1
アクセス:日本大通り駅より徒歩約5分
竣工:2009年
備考:2009年UD賞まちなみ部門受賞
第55回神奈川建築コンクール優秀賞
公式HP:https://zounohana.com/
15.横浜港大さん橋国際客船ターミナル

大さん橋国際客船ターミナルは、国際コンペで選ばれたfor(Foreign Office Architects)による客船ターミナルと広場が一体となった建築です。
これを建築といっていいのかどうか迷うほどの、建築の様な公園のような、海に顔を出した鯨の上を歩いているかのような不思議な構築物です。
通常私たちが建築を認識するときは、「これは床」「ここは壁」と当たり前のように認識していますが、forはこの建築でそうしたこれまでの建築言語を乗り越えることを試みています。
竣工からもうすぐ出20年になりますが、今でも横浜のスポットの中でも人気のスポットで、横浜を訪れた際には是非とも堪能したい建築です。


設計:for(アレハンドロ・ザエラ・ポロ、ファッシド・ムサヴィ)
所在地:神奈川県横浜市中区海岸通1-1
アクセス:日本大通り駅から徒歩約7分
竣工:2002年
公式HP:https://osanbashi.jp/
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