今回は、福岡の博多・天神エリアで建築巡りをしてきましたので、そこで出会った名建築をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・博多・天神エリアでの建築巡りを写真と文字でレポート
・博多・天神エリアの著名な建築家がデザインした建築や歴史のある近代建築をまとめ
・博多・天神エリアの建築の見どころや注目ポイントを解説
1.JR博多シティ

JR博多シティは、福岡の玄関口である博多駅ビルの建替えによって建てられた地上11階地下3階建ての百貨店、飲食店、映画館等の複合施設です。
九州を代表する駅として要求される諸機能や動線を巧みに複合・処理しながら、博多の顔となるデザインが光る福岡駅前のランドマークです。
一見するとシンプルな装いの建物ですが、宙に浮くようなルーバーとガラスの組み合わせや、アシンメトリーな立面、アクセントにもなっている大屋根から、日本建築にみられるような美学が感じられるのも面白い建築です。


設計:博多駅開発設計共同企業体(三菱地所設計+JR九州コンサルタンツ)
所在地:福岡県福岡市博多区博多駅
竣工:2011年(改修)
備考:2011年度グッドデザイン賞(博多口駅前広場)
2.KITTE博多

博多駅の西口広場に隣接して建つKITTE博多も、JR博多シティと合わせてみたい注目建築です。
旧博多郵便局の建替えプロジェクトとしてつくられた地上12階地下4階建ての建物は、三菱地所設計と日本郵政の協働によってデザインされています。
ルーバーや障子のようなガラス開口など博多駅ビルのデザインで使われていたモチーフを取り入れつつ、デッキや貫入通路によって周辺環境とつながっているのも魅力的です。
奥行きや角度をつけることで表情が変化する外装デザインにも注目で、JR博多シティと一体となりながら博多駅前のランドマークとなっています。


設計:日本郵政+三菱地所設計
所在地:福岡県福岡市博多区博多駅中央街9-1
アクセス:博多駅より徒歩約1分
竣工:2016年
3.THE BASICS FUKUOKA(旧ハイアット リージェンシー福岡)

THE BASICS FUKUOKA(旧ハイアット リージェンシー福岡)は、博多駅の東口エリアに建つ地上13階地下1階建てのホテルです。
建物の設計を手がけたのは、このブログでも度々紹介した世界的建築家マイケル・グレイヴス氏で、象徴的な造形や独特の色使いは他のホテルとは一線を画した大胆で繊細なデザインとなっています。
2020年には大規模な改修とリブランドが行われ、外観は極力もとのデザインを残しつつ、40mを超える吹抜けの円形ロビーは約5000冊の本を収蔵するライブラリーに生まれ変わるなど、新たなホテルとしてリスタートしています。


設計:マイケル・グレイヴス
所在地:福岡県福岡市博多区博多駅東2-14-1
アクセス:博多駅より徒歩約7分
竣工:1993年
4.キャナルシティ博多

キャナルシティ博多は、かつて紡績工場があった跡地の再開発プロジェクトによって建てられた商業、オフィス、ホテル等の複合施設です。
建物のデザインを先導したジョン・ジャーディ氏と言えば、後に手がける六本木ヒルズ(2003年竣工)をはじめ、数々の商業施設プロジェクトを成功に導いた建築家です。
それぞれの建物がつくり出す渓谷のような隙間の下にはキャナル(運河)が流れ、建築のスケールを超えた非日常的な都市景観をつくりだしています。
様々な形態や色彩で彩られた空間が立体的に広がり、施設を歩くだけでめくるめく体験ができるのも素敵なポイント。博多を訪れた際には是非その空間わ味わってほしい福岡のオールタイムベスト建築です。


設計:ジョン・ジャーディ/ジャーディ・パートナーシップ・インターナショナル+福岡地所+銭高組+清水建設+大林組+フジタ+日建設計
所在地:福岡県福岡市博多区住吉1-2
アクセス:博多駅より徒歩約10分
竣工:1996年
備考:第39回BCS賞
5.010 BUILDING

010 BUILDING(ゼロイチゼロ ビルディング)は、キャナルシティ博多の向かいの敷地に建つ地上3階建てのシアターホール、飲食店、バー等の複合施設です。
螺旋状に巻き上がるような外装が特徴の建物は、ほと走る高揚感とエネルギッシュなパワーが建築で表現されています。
大胆なデザインの建物は、那珂川をはじめとする周辺環境に対する特異点ではありますが、周りの環境と不思議と馴染んでみえ、ここにくると何かが起こりそうなワクワク感と共に街を彩っています。


設計:Clouds AO+NKS2 architects+中原拓海建築設計事務所
所在地:福岡県福岡市博多区住吉1-4-17
アクセス:博多駅より徒歩約12分
竣工:2022年
6.ホテル イル・パラッツォ

ホテル イル・パラッツォは、那珂川の河岸からほど近い場所に建つ地上8階地下2階建てのホテル・レストラン等の複合施設です。
建物の設計を手掛けたのは世界的な建築家として知られるアルド・ロッシ氏で、この建物は彼が日本で手掛けた初めての建築でもあります。
イラン産の赤い天然石と水平に伸びる緑色の銅板が印象的な建物は、古代からの建築の記憶を引き継ぎつつ、どこの時代にも属さない不思議な象徴性を持っています。
内装デザインは内田繁氏や三橋いく代氏の他、世界で活躍するデザイナーが手掛けていて、まさに夢の共演の先に生まれた記念碑的な建築となっています。


設計:アルド・ロッシ+金子満/弾設計+内田繁/スタジオ80
改修設計:内田デザイン研究所
所在地:福岡市中央区春吉3-13-1
アクセス:中洲川端駅より徒歩約7分
竣工:1989年(2023年改修)
7.旧福岡県公会堂貴賓館

旧福岡県公会堂貴賓館は、那珂川と薬院新川が合さった三角州に1910年に建てられた来賓館です。
フレンチルネサンス様式の優雅な装いの建物は、公会堂、福岡高等裁判所、 福岡県の農林事務所、福岡県教育委員会庁舎など様々な用途に転用されつつ1984年には国の重要文化財に指定されます。
一見すると石造りみえますが、実は木造2階建てというのも面白いポイント。
様々なデザイン上の工夫によって重厚で貴賓あふれる建物がかたち作られていて、明治時代の技師と職人さんの技をたっぷりと味わうことができます。

設計:三條栄三郎
所在地:福岡県福岡市中央区西中州6-29
アクセス:天神駅より徒歩約8分
竣工:1910年
■天神中央公園 ハレノガーデン

ちなみに旧福岡県公会堂貴賓館を訪れた際に合わせて注目したいのが、天神中央公園内に建つハレノガーデンです。
風や視線が抜け、重要文化財が鎮座する天神中央公園の中で、風景に馴染みつつ貴賓館を引き立たせるようなデザインが素敵な隠れた注目建築となっています。

設計:yHa architects
所在地:福岡県福岡市中央区西中洲6
アクセス:天神駅より徒歩約8分
竣工:2019年
8.福岡市赤煉瓦文化館(旧日本生命九州支店)

福岡市赤煉瓦文化館は、元々は日本生命九州支店として建てられた地上2階地下1階建ての建物です。
建物の設計を手がけたのは後に東京駅丸の内駅舎等を手掛ける辰野・片岡建築事務所で、赤煉瓦と白い花崗岩を組み合わせたデザインは辰野式建築の特徴がよく表れています。
小さな建物ですが、象徴性と豊かな表情を併せ持った建物は明治期の煉瓦造りの建物の一つの到達点といっても過言ではありません。
建設から100年以上経った現代でも見るものを圧倒し、雄弁に語りかけてくる素敵な建築です。


設計:辰野・片岡設計事務所
所在地:福岡県福岡市中央区天神1-15-30
アクセス:天神駅より徒歩約5分
竣工:1909年
9.アクロス福岡

アクロス福岡は、旧福岡県庁舎の跡地に建てられた地上14階地下4階建てのホール、ギャラリー、オフィス、店舗等の複合施設です。
内部を貫く巨大なアトリウムやステップガーデンと呼ばれる段々状にセットバックした屋上空間を擁する建築は、隣接する天神中央公園と一体となりながら魅力的な都市空間をつくりだしています。
様々な都市機能を内包しつつ自然の恵みを享受する建築は、建築当時も大きな話題を呼びましたが、竣工から30年を経ることで植物が成長し、さらなる魅力を纏って福岡の街を彩っています。


設計:エミリオ・アンバース+日本設計+竹中工務店
所在地:福岡県福岡市中央区天神1-1-1
アクセス:天神駅より徒歩約5分
竣工:1995年
備考:第37回BCS賞
10.福岡市庁舎

福岡市庁舎は、アクロス福岡の西側に建つ地上15階地下2階建ての庁舎です。
一見するとひとつの建物に見えますが、敷地南側の議会棟が1982年に先に建てられ、その後1988年に行政棟が建てられたというのも面白いポイントで、縦に貫くスリットが2つの建物の間に差し込まれています。
端正なデザインの建物ですが、近づくとエントランスの庇や足元にある外構の個性的なデザインや、コントラストが美しい陰影豊かな表情など様々な見どころが散りばめられているのも素敵でした。


設計:菊竹清訓/菊竹清訓建築設計事務所
所在地:福岡県福岡市中央区天神1-8-1
アクセス:天神駅より徒歩約3分
竣工:1982年、1988年
11.天神ビジネスセンター

天神ビジネスセンターは、2015年から福岡市が主導して実施している天神ビックバンの初期構想の目玉として建てられた地上19階地下2階建てのオフィス、商業の複合ビルです。
ピクセル状に切り取られ、露出したガラスのキューブが迫り出すようなデザインは、これまでの箱型のオフィスとは全く異なったアプローチで街と繋がっているのがとても面白いです。
世界の先端都市を感じさせるスタイリッシュさの中に、軒下や中間領域といった日本の伝統建築のエッセンスが見え隠れしながら確かに存在しているように感じられるのも面白く、これからの天神の発展を象徴するようなエネルギー溢れる建築です。


建築デザイン:重松象平/OMA
内装デザイン:グエナエル・ニコラ
設計:日本設計+前田建設工業
所在地:福岡県福岡市中央区天神1-10-20
アクセス:天神駅より徒歩約1分
竣工:2021年
12.福岡銀行本店

福岡銀行本店は、天神駅前の明治通りと昭和通りに挟まれた敷地に建つ地上11階地下4階建ての地方銀行の本店ビルです。
花崗岩の外壁がマッシブに立ち上がり、中間部分に大きな外部空間を抱き込んだ建物は建築家の黒川紀章氏が設計を手掛けたもの。
銀行建築に求められる堅実性、象徴性と都市空間を内包しつつ公共性を兼ね備えた建築はまさに唯一無二です。
現代的な装いの中に軒下空間に人々が集う日本古来からの風景が重ねられているのも面白く、竣工から50年以上に渡って愛される福岡の名建築です。


設計:黒川紀章建築都市設計事務所
所在地:福岡県福岡市中央区天神2-13-1
アクセス:天神駅より徒歩約1分
竣工:1975年
■福岡県庁舎

ちなみに黒川紀章氏といえば博多駅のすぐ北側に建つ福岡県庁舎の設計も手掛けています。
東公園内の一角に建てられた庁舎は、公園の緑や水景と調和するようにデザインされています。
端正なデザインの中に環境との関係が丁寧に織り込まれているのも注目ポイントで、博多を訪れた際には是非立ち寄ってみてほしい建築です。


設計:黒川紀章建築都市設計事務所+日建設計+九州開発計画研究所
所在地:福岡県福岡市博多区東公園7-7
アクセス:馬出九大病院前駅より徒歩約5分
竣工:1981年
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