建築絵本「百年の家」家が主人公のおススメ絵本を紹介

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本日は建築絵本「100年の家」をご紹介します。


「100年の家」はある家についての100年間の出来事を定点観測のような絵と共に、家目線で語られる物語です。

はじめのページを開くと以下のような言葉が描かれています。
「この家の扉の上の横板に、1656と記されているのが読めるだろう。それがこの家、つまり、このわたしがつくられた年だ。それはペストが大流行した年だった。はじめわたしは石と木だけの家だったが、時とともに、窓ができて、わたしの目になり、庇ができて、人の話しごえも聞こえるようになった。」
そして1900年のある日、ある人達に見つけられることから物語は始まります
  国際アンデルセン賞画家賞受賞インノチェンティの傑作
人が家に命を吹き込み、家が家族を見守る。家と人が織りなす100年の歳月。
100年の歳月を、ことばの世界と細密な絵の世界で融合させた傑作絵本!
1軒の古い家が自分史を語るように1900年からの歳月を繙きます。静かにそこにある家は、人々が1日1日を紡いでいき、その月日の積み重ねが100年の歴史をつくるということを伝えます。自然豊かななかで、作物を育てる人々と共にある家。幸せな結婚を、また家族の悲しみを見守る家。やがて訪れる大きな戦争に傷を受けながら生き延びる家。そうして、古い家と共に生きた大切な人の死の瞬間に、ただ黙って立ち会う家。ページをめくるごとに人間の生きる力が深く感じられる傑作絵本が、ここに……

最初は荒れ晴れたぼろ屋だった建物が、人の手によって生命を吹き込まれていきます。
読者はページをめくることで時の流れや日々の変化を感じ取る仕掛けとなっています。

建物に屋根が追加されたり、1階建てだったところが2階建てになったりと、家はゆるやかに変化していきます。
建物の周りも畑をつくったり、井戸を整理したりと生活に合わせて変化していきます。

もちろん、描かれるのはいいことばかりではありません。
1900年からの100年間ということで、現代を生きる我々はこの100年の間に起こる2度に渡る世界大戦やの大きな社会の変化のことを知っています。
また100年の間には人の死というものも目にします。ページの最初の頃に描かれていた人々はやがて年老いてこの世から離れていきます。
建築と読者だけが、過去の記憶から続く一連の出来事を目撃することになります。

そしてそれは言葉だけでなく、絵本という形でビジュアルに描かれることで、ページをめくるごとに視覚的な発見と記憶を伴って読者に伝わっていきます。
読み終わった時には、1軒の家とそのごく周辺という小さな世界ながら、壮大な物語を目撃した気持ちになります。

本を読むということは、自分が生きられなかった世界、まだ体験しきれていない人生の追体験や予行演習である、という読書の素晴らしい側面を存分に味わえる一冊。
「100年の家」は1時間足らずで100年という時間の中での変わるもの、変わらないもの、そしてその中で生きていくことを体感できるスゴい本でした。
おススメです。


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