今回は私が訪れた東京都内の駅建築の中から、建築見学に特にオススメの建築を紹介したいと思います。
街の中心として人やモノを運ぶ駅は、時代や社会、技術等の影響を受けながら変化していっています。実はきちんと見てみるととっても面白い駅舎建築。魅力的な駅建築の世界をお楽しみください。
【こんな人におすすめ!】
・東京都内の名建築といわれる駅舎建築について知りたい
・建築見学したいけど、駅から近い、むしろ駅自体が作品になるような建築を知りたい
・建築に興味があって、いろいろな建築について知りたい
では、早速見ていきましょう!
1.JR東京駅(辰野金吾)
まず最初に紹介するのは東京を代表する駅といってもいいJR東京駅です。
日本近代建築の父ともいわれる辰野金吾が設計を行い、1914年に竣工したこの建物はまさに日本を代表する駅舎建築といえます。
実は当初は外国人設計者による瓦屋根の和洋折衷建築となる予定でしたが、西洋化を推し進める政府の方針で辰野金吾による煉瓦造りの洋風建築となった経緯があったりして面白いです。
当初は正面の入口は皇室専用でしたが、現在は3つの入り口すべてが利用できるようになっています。
また、2012年に行われた大改修で空襲で焼けて以来失われていたドームの復元再生などが行われ、より当時の姿に近い建築に生まれ変わりっているのも注目です。
設計:辰野金吾
所在地:東京都千代田区丸の内1-9
竣工:1914年(2012年改修)
2.渋谷駅
渋谷駅は常に工事をしながら渋谷の地下・地上に張り巡らされていますが、有名建築家のデザインがいくつも見られる建築パワースポットでもあります。
東急線の改札を入ると安藤忠雄氏による宇宙船の中に入るような卵状の空間が広がります。未来のような、太古のような不思議な建築に包まれながら地上から地下へ旅することができます。
また、JRのハチ公口のファサードデザインは隈研吾氏によるものです。
ガラスのファサードに雲の写真がプリントされていて、駅内部を透過したり、空を反射したりと不思議な風景をつくりだしています。(巨大な広告は宿命ですが、かなり残念な感じですね。)
2020年に竣工した銀座線の渋谷駅は内藤廣氏がデザインに参加しています。
巨大な生物の中に入り込んだようなM字のフレームは渋谷といえどもかなり不思議な見たことのないホームをとなっています。
常に現在進行形で工事をしている渋谷駅は、いつ訪れてもその時代ごとの最新の建築が見れるおススメ建築スポットです。
設計:安藤忠雄/隈研吾/内藤廣ほか
所在地:東京都渋谷区道玄坂
3.JR原宿駅
お隣のJR原宿駅は原宿・表参道の玄関口にして、都内に現存する最古の木造駅舎です。
週末ともなると若者でごった返す駅ですが、細部も丁寧につくられた今では貴重な擬洋風建築です。
残念ながら耐震性能や防火性能と増加する利用者数の問題から2020年の秋に解体が決定されました。隣には新しい改札口を追加したガラス張りの新駅舎が完成しています。
設計:不詳
所在地:東京都渋谷区神宮前1-18-20
竣工:1924年
備考:現存せず
4.東急東横線 旧田園調布駅(矢部金太郎)
旧田園調布駅は大正7年にイギリスのハワードを模してつくられた田園調布の街の起点に建つ駅舎です。
台地を利用して放射状につくられた田園調布の入り口として、家のような門のようなシンボル的な存在です。
1990年のホーム地下化に伴い一旦解体された後、2000年に当時の姿を忠実に再現する形で復元されました。
スケール感が小さいためか、何処か人懐っこくて親近感がわく駅舎です。
建築内部には改札に降りつエレベータが設置されているので、訪れた際は利用してみてはいかがでしょうか。
設計:矢部金太郎
所在地:東京都大田区田園調布2
竣工:1923年(2000年復元)
5.東急大井町線 上野毛駅(安藤忠雄建築研究所+東京急行電鉄+大建設計)
上野毛駅は2006年に着工してから約5年間かけて完成した駅舎です。
設計は安藤忠雄氏が行ったことで大きな話題となり、幅約20mのコンクリートの屋根が道路の上部を横断しているデザインが最大の特徴です。
普段地面の下に隠れている線路がボリュームとして立ちあがって、道路や街を貫通するのが面白いです。
駅の内部の陰影も美しくて、こちらのホームに降りつ階段の途中には十字架のように切り取られた美しいシルエットが見られます。
設計:安藤忠雄建築研究所+東京急行電鉄+大建設計
所在地:京都世田谷区上野毛1-26-6
竣工:2011年
6.大江戸線飯田橋駅(渡辺誠)
飯田橋駅はホームへと続くエスカレータに設けられた「ウエブフレーム」と呼ばれる構造物が特徴的な駅舎です。
このウエブフレームは単に斬新でアートなデザインというわけではなく、複雑な条件を満たす形を条件にコンピューターから生み出されています。
コンピュータと建築家が協働する新しい建築手法を実践した世界でも数少ない記念すべき駅です。
また、ホーム部は工法や設備の位置を工夫して広がりがある空間をつくるなど、目立ちにくいですが細かい部分も配慮された美しい空間が味わえる隠れた名建築です。
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設計:渡辺誠/アーキテクツオフィス
所在地:東京都文京区後楽2-1
竣工:2000年
備考:2001年度グッドデザイン賞 金賞
2001年度JIA 新人賞
2002年日本建築学会賞 作品賞
7.JR高尾山口駅(隈研吾建築都市設計事務所)
年間の登山者数世界一を誇る高尾山ですが、最寄り駅となる高尾山口駅は2015年に隈研吾氏の手によってリニューアルされました。
高尾山口駅から外側に向かって開くように広がる屋根は、高尾山へ向かう人々の気持ちを高揚させつつワクワク感を演出していて、建築と大自然との間にあるようなスケールとなっています。
ホームから地中に入っていくような構内や利用者に寄り添った細かい配慮が随所に見られるトイレや家具など駅建築の見本例のような作品なことにも注目です。
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設計:隈研吾/隈研吾建築都市設計事務所
所在地:東京都八王子市高尾町
竣工:1967年(2015年改修)
備考:2016年度グッドデザイン賞
8.JR上野駅(鉄道省建築課)
都内有数のターミナル駅でもあるJR上野駅は、関東大震災で焼失した初代の駅舎に代り、1932年当時としては先進的な鉄筋コンクリート造で建設されました。
乗車口と降車口を上下に分離した立体的な構成が最大の特長で、始発・着駅として旅の趣を演出しつつ、大量の人・車・電車を効率的に捌くよう考えられています。
リニューアルを繰り返しながらも当時の面影が残されたところも多くあり、見どころ満載の正に東京を代表する駅舎となっています。
2020年には公園口改札が100m北側の新駅舎へ移設される予定で、新改札口やロータリーが新設されて新たな上野駅の顔ができるので、完成が今から楽しみです。
設計:鉄道省
所在地:東京都台東区上野7-1
竣工:1932年
9.JR両国駅(鉄道省建築課)
JR両国駅は千葉方面のターミナル駅としてスタートし、駅舎は鉄筋コンクリート造の駅舎としては上野駅より前の1929年に竣工しました。
今も残る丸時計が、当時時計というものが個人が持ち歩くものではなく公共的なものであったことを実感できます。
今は使われなくなった通路を改修したステーションギャラリーが2015年にオープンしている他、2016年には駅舎の一部を大幅改修して「江戸NOREN」がグランドオープンしています。
見どころが満載なので時間をとってじっくり見たい駅舎です。
設計:鉄道省建築課
所在地:東京都墨田区横網1-4-29
竣工:1929年
10.JR高輪ゲートウェイ駅(隈研吾建築都市設計事務所)
高輪ゲートウェイ駅は2020年にJR山手線・京浜東北線の田町~品川駅間にできた新駅です。
JR山手線の新駅としては1971年に出来た西日暮里駅以来49年ぶりとなり、デザインアーキテクトとして隈研吾氏が起用されたことでも大きな注目を浴びています。
上空に掛けられた大屋根は日本の折り紙をデザインをモチーフにしていて、ジグザグに折れ曲がる白いフレームに薄い膜が張られているのが特徴的な建築です。
隈研吾氏は近年の作品の中で、日本が近代化の中でずっと置き去りにしていた「屋根」という部位に注目してきました。
隈氏は本来日本の歴史的にも気候的にも重要な屋根という要素を、自然の素材と合わせて再解釈してきましたが、高輪ゲートウェイ駅はそんな隈研吾氏のここ十数年のテーマを結実させた最新作として必見の建物です。
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デザインアーキテクト:隈研吾建築都市設計事務所
設計:東日本旅客鉄道東京工事事務所、東京電気システム開発工事事務所、JR東日本コンサルタンツ・JR東日本建築設計JV
所在地:東京都港区港南2
竣工:2020年
備考:2020年度グッドデザイン賞
令和2年度鉄道建築協会賞
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いかがでしたでしょうか。
駅舎建築は時代を反映しているだけでなく、建築全体を見学しやすかったり、何より駅そのものが建築なので天気も気にせず見学するなどの利点がたくさんあります。
気になる建築があれば是非訪れてみて、その駅舎の空間や歴史を堪能してみて下さい。
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