今回は東京羽田にある穴守稲荷神社を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・穴守稲荷神社を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・穴守稲荷神社の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・穴守稲荷神社の建築的な見どころや注目ポイント
1.激動の歴史をたどり現代に受け継がれたユニークな神社を訪問
今日訪れたのは東京都大田区の羽田空港から程なく歩いたところに建つ穴守稲荷神社です。

穴守稲荷は、元々は今よりも東の羽田空港寄りの場所にあり、江戸時代後期に羽田浦で暴風雨によって堤防に穴が開いた時に、近くに祀られた稲荷大神の助力よって水没を免れたことにルーツに持つ神社です。
その後明治時代には穴守神社という社号となり、多くの参拝者が訪れる神社となります。
また、明治の中頃から穴守神社へ朱鳥居を寄進することが盛んになり、明治時代の終わりには数万基の鳥居が奉納される少し変わった神社ともなります。


この鳥居は現在でも境内のあちこちでみることができますが、昭和のはじめには約8万基ほどの鳥居が境内に溢れていたというから驚きです。

私が訪れたときは境内の参拝者もまばらといった印象でしたが、境内のあらゆることろに大小様々な鳥居が溢れているのはとてもユニークな光景です。

ちなみに鳥居といえば穴守稲荷神社の現在の最寄り駅は京急穴守稲荷駅ですが、この駅を出た所にある鋼鉄製の朱の大鳥居は大手ゼネコンの大成建設が奉納したもの。
戦後の神社の工事を請け負った縁もあったそうですが、建築好きとしてはこんな所にも大成建設の名がと驚きました。
穴守稲荷駅から程なく歩くと、穴守稲荷神社の境内が見えてきます。
現在の社殿は、戦後から暫く経った1960年代に再建されたものです。

緩やかに広がる唐破風の屋根に千鳥破風が乗った軽やかなデザインが特徴の建物は鉄筋コンクリート造の特性を活かした建築となっています。

社殿の建築を手掛けたのは、浅草の浅草寺や以前このブログでもレポートした川崎大師等の設計を手掛けたことでも知られる大岡實建築研究所というのも注目ポイントです。
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戦前までは大きな隆盛を極め、東京はもとより関東においても広く名を知られていた穴守稲荷神社でしたが、太平洋戦争が終わり空港がGHQの管制下に置かれると、米軍の航空基地の拡張を理由に空港のすぐ近くにあった神社や周辺住民は強制退去の憂き目に遭います。
この強制退去はまさに強制且つ突然のことで、住民らはまさに着の身着のままに近い状態でこの地を追われることになります。

穴守稲荷神社はこの時に、元の場所から川を挟んだ現在地に移転することとなりますが、本格的な再建がなされたのは1960年代になってからでした。
戦争が終わり20年、まさに念願の新社殿です。

現在の境内に残る建築では、この社殿の他に1969年に竣工した神楽殿も大岡實建築研究所が手掛けています。

2.数々の歴史と一風変わった構築物を体験
元の穴守稲荷神社の敷地は、現在その面影はほとんど残っていませんが、唯一境内南端にあった大鳥居だけはその姿を残しています。

この鳥居も、空港拡張のため取り壊される予定だったそうですが、取り壊そうとすると事故が起きたり祟りが起きたという都市伝説のような話が残っています。
結果として旧穴守稲荷神社の記憶を受け継ぐ唯一の構築物として、現在も空港の南西端に鳥居だけが残されています。
2018年からは御縁年午歳記念事業として奥之宮の改修工事と境内の整備が進められてきました。


それらの工事は2年後の2020年に完了し、千本鳥居や稲荷山などが新たにつくられました。

奥之宮の神砂(お砂)は、持ち帰って家の玄関等に撒くと願いがかなうとされていて、お持ち帰り用の砂も据えられています。

この砂は神社に伝わる狐と砂の言い伝えからきていて、境内には狐塚があったり狐をモチーフにしたキャラクターもつくられています。

稲荷山は戦前にあった築山を造り替えたもので、稲荷神社の総本社である伏見稲荷大社のご神体山である山城国稲荷山をモチーフにしたもので、穴守稲荷神社の新たなシンボルになっています。

荒々しい石造りの構造物が螺旋状に積み上がる様はユニークかつダイナミックです。
ちなみに、この稲荷山はかつて強制退去の際に神社や鳥居前町の撤去工事を行った大林組が施工を手掛けているというのも興味深いです。

10mを超える構造物はダイナミックで、頂上からは神社や周辺の街、羽田から飛び立つ飛行機を望むことができます。
現在は羽田の地にひっそりと佇む穴守稲荷神社ですが、実際に訪れてみると見どころ満載で、明治以降の激動の歴史も体感できるとてもユニークな神社でした。
とてもオススメのスポットですので、皆さんも機会があれば是非訪れて、その建築と歴史を体感してみてくださいね。
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穴守稲荷神社
設計:大岡實建築研究所(社殿・神楽殿)、社寺建築研究所(奥の宮・狐塚)
所在地:東京都大田区羽田5-2-7
アクセス:穴守稲荷駅より徒歩約3分
竣工:1965年(社殿)、1969年(神楽殿)、2020年(奥の宮・狐塚)
公式HP:https://anamori.jp/


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