今回は神奈川県川崎市にある川崎大師 平間寺で初詣&建築巡りをしてきましたのでその模様を建築好きの視点からレポートしていきたいと思います。
「厄除けのお大師さま」としても知られ、東京の高尾山薬王院、千葉にある成田山新勝寺と合わせて関東三山にも数えられる川崎大師。
いったいどんな建築と出会ったのか、早速紹介してきたと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・川崎大師を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・川崎大師の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・川崎大師の建築的な見どころや注目ポイント
1.川崎大師で初詣!参拝客日本3位の大寺院に参拝
訪れた建築を建築好きの視点からレポートする本ブログでは、2020年元旦には池上本門寺、2021年元旦には築地本願寺のレポートを公開してきましたが、2022年の最初に取り上げるのは川崎大師。
実は今回紹介する川崎大師のレポートは2021年のお正月に訪れた時のものですが、折角のタイミングなので今年の一番目の記事として取り上げたいと思います。
川崎大師と言えば、初詣の参拝者数が明治神宮・浅草戦争時に次ぐ全国3位を誇り、2019年には約300万人が訪れた大寺院です。
最寄り駅の駅名もズバリ「川崎大師駅」。
川崎大師駅は川崎駅からでている京急大師線に乗って約5分ほどの場所にあります。
駅を降りると早速広がる表参道には所狭しと屋台が軒を連ねています。
川崎大師へは、まずこのある表参道通りを東に500mほど進み、その後折り返すように仲見世通りを進みます。
普段は住宅や一般的な商店が多く初詣の時にだけ屋台の出る表参道に対して、こちらの仲見世通りは「元祖せき止め飴」を売る店舗や「達磨」が大量に置かれた土産物屋など、まさに仲見世らしい雰囲気が感じられます。
この達磨は誰か買うんだろうか…という疑問が湧きますが、買う人がいるから存在するのでしょう。これも初詣マジック!と思わずテンションが上がってきます。
2.戦災によって焼失した大伽藍と復活に懸けた建築家に注目
駅から10分ほど歩くと川崎大師の顔ともいえる大山門が見えてきます。
この大山門は川崎大師の開創850年記念事業として1976年に建立されたもので、京都の東福寺三門と法隆寺中門をヒントにしたという外観は優雅で堂々としています。
1976年というと今年で築45年。
意外と新しい建築家と思うかもしれませんが、実は川崎大師のほとんどすべての建築は太平洋戦争の戦火によって焼失してしまっていて、現在の建物は鉄筋コンクリートでつくられた戦後のもの。
その復興には1900年生まれの建築史家 大岡實(みのる)氏が大きく関わっています。
大岡氏は1926年(大正15年)に東京帝国大学建築学科を卒業し、文部省で古社寺の保存・修復に携わってきた人物。
法隆寺や国立博物館など数々の文化財建築の保存工事においても中心的な役割を担ってきた人物でしたが、1949年(昭和24年)に起きた電気座布団が出火原因とされる法隆寺火災事件によって大岡氏の人生は大きく変わります。
建物自体は火災の難を免れたものの、修復途中であった貴重な壁画の大部分が焼損してしまい、大岡は監督責任者として文部省を追われることになります。
失意のうちにあった大岡氏でしたが、まもなく浅草寺本堂の設計という大仕事を任されることになります。
浅草寺本堂の設計は元々は大岡の上司であった伊東忠太氏が行う予定でしたが、高齢であるという理由から辞退となり、その門下にあたる大岡氏が紹介されたのです。
浅草寺の本堂は1951年(昭和26年)から工事が始まり1958年に完成します。
新本堂の設計に当たっては焼失した旧本堂の外観の復元を主眼に置きつつ、従来の木造ではなく、鉄筋コンクリート造によって建設されました。これには「火災によって貴重な文化財が一瞬にして灰に帰することはあってはならない」という大岡氏の強い意志と、伝統的な社寺建築をこれからの時代の新しい工法でいかに受け継ぐかという挑戦があったのだと思います。
浅草寺以降、大岡氏は生涯に渡って100を超える建築を設計することになりますが、浅草寺の工事中に設計を行ったのが川崎大師の本堂なのです。
川崎大師では1964年に完成したこちらの大本堂をはじめ、薬師殿、信徒会館、大山門、八角五重塔など数多くの建物を大岡氏が中心となった大岡實建築研究所が手掛けることになります。
本堂の設計に当たっては、構造は鉄骨鉄筋コンクリートラーメンと鉄骨トラスを組み合わせた構造としつつ、垂木や斗拱など伝統的な木造建築の意匠をきちんと建物を支える構造体として組み入れているそうです。
敷地内の建物は数十年の月日をかけて、大岡實建築研究所が一貫して設計を手掛けていて、新たな川崎大師の大伽藍が形成されています。
建築についての詳細の解説は大岡實建築研究所のHPにかなり詳しい解説が記載されていますので、興味のある方は一度覗いてみて下さい。
大岡實建築研究所:http://www.ohoka-inst.com/kawasaki.html
3.現代に蘇った大伽藍!境内に建てられた建築群を堪能
境内においてひときわ目立つ建築と言えばこちらの八角五重塔です。
現存する五重塔の中では八角形の平面を持つ塔は珍しいですが、円形の宝塔を起源に持つ真言宗の塔としては本来の形に近いものだとか。
この辺りのには建築史家・社寺建築の豊富な知識を持つ大岡氏の知識と経験が垣間見れます。
また、境内のどこから見ても優美なその姿を見れるのは、八角五重塔ならではです。
こちらの大本坊は戦前の1934年に完成しつつも、太平洋戦争で骨組みだけを残して焼けてしまった建物。
この建物も大岡實建築研究所の手によって改修がなされ、現在も寺務所として使われ続けています。
その他にも1974年に建てられホールや結婚式場も入る信徒会館、年末の除夜の鐘や追悼の鐘を鳴らす鐘楼堂、1975年に移築・改修された不動門など境内のどこを見ても興味深い建物が立ち並んでいます。
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5.境内を巡る!注目ポイント満載の川崎大師を満喫
境内には大岡氏の建築以外にも注目したい建築や彫刻が沢山あります。
まず見逃せないのはこちらの川崎大師平間寺福徳稲荷堂で、震災や戦火を逃れて境内に唯一残る木造の建築です。
こちらは降魔成道釈迦如来像という黄金の像で、1977年に開創850年記念事業としてつくられたもの。
その後ろには2017年い造られた日本百観音霊場のレリーフが並びます。
像の大きさもかなりのもので、金色に輝く像に反射する太陽がまぶしいです。
こちらの祈りと平和の像は彫刻家の圓鍔勝三氏によるもの。
中央の女神が祈りを、周りの天女が平和を表しているそうで、天に伸びる五重塔と合わせて見ると天界から降り立ったようにも見えます。
初詣ということで境内にも屋台がびっしり並んでいて、正にハレの日といった感じです。
境内を巡るだけで一つの大きなイベントに来たような感じになれてテンションが上がります。
絶対に許可をとってないであろう大人気アニメの屋台などもあって、これにはちょっと笑ってしまいました 笑
6.最後は印度風!一風変わったデザインの建物の秘密とは
最後に川崎大師で見逃せない、ちょっと変わったな建築を紹介したいと思います。
その特異な建築とは、境内の一番西に建つ薬師殿(旧自動車交通安全祈祷殿)です。
その特徴は何といっても日本の伝統的な木造寺院とは全く違ったイメージの、インド風のデザイン。
日本の伝統的なお寺のイメージからはだいぶ離れた建築に見えますが、仏教建築をその源流まで遡ると、仏教の発祥の地であるインドに行きつくのはある意味自然なことなのかもしれません。
インド風の寺院と言えば東京築地に建つ築地本願寺(1934年竣工)が有名ですが、築地本願寺は大岡を浅草寺の設計者として推薦した伊東忠太の設計でした。
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・インド風!?特異な寺院建築、築地本願寺を見学してきた【東京築地】
設計に際しては仏教の聖地ブッタガヤの五塔の建築などを参考にしたそうです。
大岡氏は、敷地の条件や予算などの制約から、ブッタガヤの塔のデザインを応用して、大本堂に安置されていた三像に着想を得た三塔形式のデザインを生み出しました。
また、このインド風のデザインは鉄筋コンクリートという素材による寺院建築という大岡氏が追求してきた建築形式にもピッタリ当てはまることにも注目です。
そんな事情からこの一風変わった、唯一無二のインド風自動車交通安全祈祷殿が完成したのです。
境内の一番奥に建っているので、初詣の参拝客もあまり見かけない場所ではありますが、その分じっくりと建物全体を味わえるおススメスポットとなっています。
いかがでしたでしょうか。
折角なので日本有数の初詣スポットに訪れてみようと始まった今回の建築見学でしたが、見終えてみると新しい発見や興味深い歴史が盛り沢山、大満足の建築巡りとなりました。
皆さんも機会があれば是非一度訪れてみて下さいね!
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川崎大師平間寺
設計:大岡實/大岡實建築研究所(大本堂、薬師殿、信徒会館、大山門、八角五重塔、他多数)
所在地:神奈川県川崎市川崎区大師町4-48
アクセス:川崎大師駅より徒歩約10分
竣工:1963年、1964年(大本堂)、1970年(薬師殿/旧自動車交通安全祈祷殿)、1970年(信徒会館)、1975年(大山門、不動門)、1980年(八角五重塔、東京別院)他
公式HP:http://www.kawasakidaishi.com/index.html
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