今回は目黒区の駒場にある旧前田家本邸を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・旧前田家本邸を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・旧前田家本邸の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・旧前田家本邸の建築的な見どころや注目ポイント
1.駒場公園に建つ素敵な邸宅を訪問
今日訪れたのは、渋谷から井の頭線に乗り、駒場東大前駅を降りて程なく歩いたところに建つ旧前田家の邸宅です。
前田家といえば加賀百万石で知られる大名家の子孫であり、本郷に大名屋敷を構えていた名家でした。
そんな前田家の邸宅が何故駒場にあるかというと、関東大震災後に本郷の東京帝国大学の敷地の拡張することとなり、駒場の東京帝国大学の敷地と交換されることになったのです。
そうして当時の前田家の16代当主であった前田利為氏の邸宅として1929年に洋館が、翌1930年に隣接する和館が建てられることになりました。
イギリスのチューダー様式をとりいれたデザインは当時の最新鋭のもの。
細部に至るまで精巧につくり込まれた装飾や、見る角度や陽の光によって微妙に表情を変えるスクラッチタイルなどどこをみてもため息がでるほどの美しさです。
この後日本で建てられる数々の洋館は、前田邸を参考にされたと思われたものも多いですが、前田邸のもつ密度は圧倒的です。
建設当初は100人以上もの使用人が使える大邸宅だったそうですが、第2次世界大戦中に当主の前田利為氏が亡くなり、戦後はGHQに接収されて連合軍司令官の邸宅として使用されます。
接収が解除されたのが1957年のことで、その後10年間をかけて邸宅周辺を公園として整備し、東京都立駒場公園に生まれ変わりました。
駒場公園の建築といえば、以前このブログでも1967年に開館した日本近代文学館をレポートしました。
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・駒場「日本近代文学館」建築と文学を堪能できる素敵な文学館をレポート
日本近代文学館の記事でも触れましたが、当初は前田家の洋館も近代文学博物館として使われていました。
これらの博物館や文学館は戦後の復興期において、貴重な資料が離散してしまうことを危惧した研究者や作家らの活動が実を結んで実現したもので、建設された当時の建物が今も現役で使われています。
2.みどころ満載!圧巻の建築を心ゆくまで堪能
大きな車寄せをくぐって建物の内部にはいると、赤い絨毯の敷かれたロビー空間が広がります。
若い頃よりイギリスやドイツに留学し、豊富な海外経験を有した前田氏は、この洋館を外国の要人を迎え、もてなすことのできる迎賓館としての建築を求めました。
天井高の高い開放的な空間では様々な素材や意匠が組み合わせられていて、訪れた人をもてなします。
こちらは入ってすぐ右手にあるサロンと客室。
大きな開口部からは自然光が降り注ぎ、彫りの深い装飾の表情をより豊かに演出しています。
サロンからは庭園にでることもできます。
市松模様にデザインされたタイルが味わい深いです。
部屋ごとに素材やファブリックが全く異なるデザインとなっているのも面白く、扉をくぐる度に新しい世界に入り込むような、めくるめく空間体験が楽しめます。
和洋様々な装飾が彫り込まれた大理石のマントルピース、当時最新鋭の設備であったラジエーター、場所場所によって異なる光と影を生み出す間接照明やステンドグラスなど、時間がいくらあっても堪能しきれないほど見どころが満載。
重厚な石材、職人さんの手仕事が光る木材、優雅で繊細なファブリックなどが一体となりながら豊かな空間が形つくられていて、この邸宅での暮らしに対する想像力が膨らみます。
また、内装のデザインは格調高い王朝風の装飾が多く見られますが、旧加賀藩当主らしい金箔の装飾や古九谷の調度品も織り込まれていて、和の要素も多くみられるのもユニークでした。
こちらの1階と2階を繋ぐ階段は、前田邸の中でも特に印象深い空間です。
フレンドグラスから降り注ぐ神秘的な光は、階段を昇り降りするという日常をドラマチックに演出しています。
色とりどりの光は、手すりの透かし彫りの装飾を通過するこでより演出されています。そしてこだわりの装飾は、これらの大開口部から降り注ぐ光と多種多様な照明によって豊かな表情を見せてくれます。
長く佇んでいると、時間の経過とともに空間が違った表情に変化していくのをハッキリと感じ取ることができます。
完璧につくり込まれた人工物の中で、外部の自然と時間の流れを堪能することは名建築の贅沢な楽しみのひとつです。
3.和館も注目!日本の美意識が凝縮した空間を堪能
洋館を堪能した後は、隣接して建てられた和館を見学しました。
当時最新鋭の西洋様式を反映した洋館に対して、こちらの和館は純和風の邸宅となっています。
和館の設計を手掛けたのは平安神宮などの建築を手掛けたことでも知られる佐々木岩次郎。
いぶし銀のような鈍い輝きをはなっている和館には、日本の美意識が随所に反映されています。
決して派手さはないのですが、精巧につくられた欄間のすかし彫りや、木の使い分けによる豊かな表情など、洋館にまさるとも劣らないくらい見どころが満載です。
庭園を望む縁側からは豊かな自然を感じることができ、遥か昔のくらしの風景を感じ取ることができます。
敷地内は他にも当時の趣を残す門や塀があったり、敷地南側の正門横には三角屋根が可愛いタイル貼りの門衛所があったりするので、訪れた際はこちらも見逃せません。
和館と洋館を繋ぐ渡り廊下もスクラッチタイルがあしらわれた近代的なデザインとなっていて、とても興味深いです。
こちらの門は、両側に唐破風がとりつく珍しいデザインとなっていて、下部には竹を割ったようなデザインになっていたりとユニークです。
前田家は関東大震災後に建てられたこともあり、和風のデザインの中にアンカーボルトが埋め込まれていて、構造的にも堅牢なものとなっています。
素敵な邸宅をたっぷりと堪能して、この日の建築巡りも大満足のものとなりました。
とてもオススメの建築ですので、皆さんも機会があれば是非訪れてみてくださいね。
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旧前田家本邸
設計(洋館):塚本靖+高橋貞太郎
設計(和館):佐々木岩次郎+木村清兵衛(和室)
所在地:東京都目黒区駒場4-3
アクセス:駒場東大前駅より徒歩約8分
竣工:1929年(洋館)、1930年(和館)
備考:重要文化財
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