今日は東京の霞が関で建築巡りをしてきましたので、そこで出会った名建築をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・霞が関エリアでの建築巡りを写真と文字でレポート
・霞が関エリアの著名な建築家がデザインした建築や歴史のある近代建築をまとめ
・霞が関エリアの建築の見どころや注目ポイントを解説
尚、すぐお隣の虎ノ門周辺エリアの建築巡りのレポートもこちらの記事にまとめていますので、興味のある方は是非合わせてご覧ください。
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1.霞が関ビルディング

まずはじめに紹介する霞が関ビルディングは、地上36階地下3階建て高さ約147mの日本で最初に建てられた超高層ビルです。
1960年代までは建物の高さを100尺(約31m)までとする制限がありましたが、霞が関ビルでは柔構造の導入を始めとする新たな技術の採用や、今では当たり前となっているデッキプレートのスラブの活用、モジュール化といった様々な工夫により超高層ビルが実現しました。
ちなみにこの時の設計メンバーが立ち上げた日本設計事務所(現在の日本設計)は、その後西新宿の高層ビル群の設計を手掛けるなどして世界の先端をいく超高層ビルの数々を生み出していきました。
容積を積むことによって得られた足元の広場も注目ポイント。2009年には大規模なリニューアルが行われ、周辺エリアとのつながりを含めた豊かな空間が広がっています。


設計:三井不動産+山下設計
低層部改修設計(2009年):日本設計
所在地:東京都千代田区霞が関3-2-5
アクセス:霞ヶ関駅より徒歩約4分、虎ノ門駅より徒歩約2分
竣工:1968年
備考:第10回BCS賞
2009年グッドデザイン賞
2.東京倶楽部ビルディング

東京倶楽部ビルディングは、外堀通り沿いに建つ地上14階地下1階建てのオフィス・商業等の複合施設です。
建物の外装は周辺の風景や方位に合わせてデザインが分かれていて、東西はガラスのスクリーン、南面は堀の深い格子状のデザインとしたりと、街並みと連続しながらもアクセントとなるようなさりげなくも巧みなデザインとなっているのが面白いです。

設計:日本設計
所在地:東京都千代田区霞が関3-2-6
アクセス:霞ヶ関駅より徒歩約4分、虎ノ門駅より徒歩約2分
竣工:2007年
備考:2008年度JIA優秀建築選
3.旧文部省庁舎

旧文部省庁舎は、外堀通りと桜田通りが交差する霞が関の南エリアに建つ地上6階建ての旧文部省の庁舎です。
外堀通りに沿って水平方向にカーブする外壁とエントランスの上部に伸びる垂直の装飾の対比が特徴です。
褐色のスクラッチタイルの外壁と、細かい凹凸によって生み出される陰影豊かな表情も魅力的で、竣工から100年近く経とうとする現在でも優雅で気品あふれる姿を保っています。


設計:大蔵省営繕管財局
所在地:東京都千代田区霞が関3-2-2
アクセス:霞ヶ関駅より徒歩約2分、虎ノ門駅より徒歩約1分
竣工:1932年
備考:登録有形文化財
4.財務省庁舎

財務省庁舎は、旧文部省庁舎から桜田通りを少し北上したところに建つ地上5階地下1階建ての財務省の庁舎です。
財務省庁舎ができたのは日本が太平洋戦争に突入する年である1939年で、当時は竣工といっても一部は未完成の状態で使用されていました。
その後GHQによる接収などを経て、外壁のタイルが貼られるなど現在の姿になったのは1963年のことでした。
遊びの少ない理路整然としたデザインは資材難や戦時中ということもありますが、財務省らしさを感じるデザインでクールで知的な印象を感じます。


ちなみに日本橋の日本銀行は上空から見ると「円」の文字となっていますが、こちらの建物は日本の「日」となっているのも面白いです。
設計:大蔵省営繕管財局
所在地:東京都千代田区霞が関3-1-1
アクセス:霞ヶ関駅より徒歩約1分
竣工:1939年
5.外務省庁舎

外務省庁舎は、戦後の1960年に建てられた地上8階地下1階建ての外務省の庁舎です。
建設にあたっては逓信省出身の建築家小坂秀雄のコンペ当選案に対して建設省が実施設計を行い日本の木造建築をモチーフにした架構形式を採用したデザインが特徴となっています。
モダニズムの系譜を引き継ぎながら水平垂直に組まれ建物を支える日本的な構造体が印象的で、意匠と構造が見事に融合した名庁舎建築となっています。


設計:小坂秀雄+建設省営繕課
所在地:東京都千代田区霞が関2-2-1
アクセス:霞ヶ関駅より徒歩約1分
竣工:1960年(北庁舎)、1970年(中央・南庁舎)
6.中央合同庁舎第1号館本館

中央合同庁舎第1号館本館は、外務省庁舎の向かいに建つ地上8階地下1階建ての建物で、霞が関で最初に建てられた合同庁舎でもあります。
点在していた各省を集約し、日本の戦後復興と成長の拠点として建てられた庁舎は、合理性と堅牢性が第一に考えられてE字型のシンプルなつくりとなっています。
ここまでいくつかの庁舎建築を巡ってきましたが、時代や庁舎の性格によって明快にデザインや素材が分かれていて、それらの背景と合わせて見学するととても興味深いですね。


設計:建設省大臣官房官庁営繕部
所在地:東京都千代田区霞が関1-2-1
アクセス:霞ヶ関駅より徒歩約1分
竣工:1954年
7.警視庁本部庁舎

警視庁本部庁舎は、桜田通りを北上し内堀通りとぶつかる三角形の敷地に建てられた地上18階地下4階建ての警視庁の本部庁舎です。
ドラマやニュースなどでも度々目にする建物は皇居前の三角敷地を上手く活かしたシンボリックなデザインとなっていて、日本の安全と秩序を守る要石のようにも見えます。
開口部を隔てる重厚な壁材がリズミカルに並び、先端部は緩やかにカーブするなど、警察の本部施設としての格式と品格を感じるデザインの中にちょっとした親しみやすさが表現されているのも注目ポイントです。


設計:岡田新一/岡田新一設計事務所
所在地:東京都千代田区霞が関2-1-1
アクセス:霞ヶ関駅より徒歩約2分、桜田門駅より徒歩約1分
竣工:1980年
8.東京高等地方簡易裁判所合同庁舎

東京高等地方簡易裁判所合同庁舎は、その名の通り東京高等裁判所、東京地方裁判所、東京簡易裁判所等が入る地上19階地下3階建ての建物です。
低中高層がそれぞれ少しづつセットバックしながらずっしりと立ち上がる端正な外観からは安定感と理性を感じます。
内部の動線分けも美しさの域まで達する合理的な計画となっていて、様々な法定が並び動線が錯綜する裁判所を集積回路のように処理しているのが面白いです。


設計:最高裁判所事務総局経理局営繕課
所在地:東京都千代田区霞が関1-1-4
アクセス:水道橋駅より徒歩約1分
竣工:1984年
備考:第26回BCS賞
9.法務省旧本館 赤れんが棟

法務省旧本館 赤れんが棟は、警視庁本部庁舎の向かいに建つ地上3階建ての旧司法省の庁舎です。
ドイツ人建築家のヴィルヘルム・ベックマンとヘルマン・エンデが設計を手掛けた本格的なネオバロック様式の建築は、一度戦禍で大部分が焼失したものの戦後すぐに修復が行われ、その後竣工当初の姿への復元工事もなされて現代にその姿を伝えています。
明治期に建てられた煉瓦の建築も建替えなどによりだいぶ少なくなっている中、明治時代の建物の中でも現存する数少ない貴重な建築でもあります。


設計:ヴィルヘルム・ベックマン+ヘルマン・エンデ
所在地:東京都千代田区霞が関1-1-1
アクセス:霞ヶ関駅より徒歩約2分、桜田門駅より徒歩約1分
竣工:1895年
備考:重要文化財
10.法曹会館

最後に紹介する法曹会館は、法務省旧本館 赤れんが棟の隣に建ち、元々は司法界の交流場として建てられた建築です。
法曹会館が建てられたのは昭和初期の1936年なので実に80年以上前の建物となります。省庁が建ち並ぶ霞が関エリアにおいて、住宅や教会のようなスケールと尖塔屋根やステンドグラスのデザインが印象的な建築となっています。
上にいくに従って段々と小さくなっていくアーチ窓等私設の会館ならではの遊び心溢れるデザインも素敵です。


設計:藤村朗/三菱地所
所在地:東京都千代田区霞が関1-1-1
アクセス:霞ヶ関駅より徒歩約4分、桜田門駅より徒歩約2分
竣工:1936年
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