今回は東京の代々木上原にある日本最大のモスクである東京ジャーミイを見学してきましたので、その模様をレポートしたいと思います。
東洋で最も美しいモスクともいわれる東京ジャーミイは、美しく知的でありながら、とっても優しい建築でもありました。
こと記事を通してその魅力が少しでも伝わったり、見学の際の参考にしていただければと思います。
では早速見ていきましょう!
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・東京ジャーミイを実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・東京ジャーミイの基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント
・東京ジャーミイの建築的な見どころや注目ポイント
1.代々木上原に建つ日本最大のモスクとは
小田急線の代々木上原駅から井の頭通りに数分歩くと見えてくるのが今回訪れる東京ジャーミイ・トルコ文化センター。
「ジャーミイ」というのはトルコ語でイスラム教の礼拝が行われるモスクを意味し、もともとの語源は「人の集まる場所」を意味する言葉でもあります。
代々木上原にこの日本最大ともいわれるモスクが建つ歴史は古く、もともとは大正時代にソ連で社会主義革命が起きた際に迫害を恐れたトルコ系民族のタタール人が満州を経由して日本に逃れてきたことがきっかけだそうです。
これが約100年の出来事で、その後十数年の年月を経た1938年に東京ジャーミイの前身である東京回教礼拝堂が建設されるに至りました。このモスクは今のような大きな建物ではなく木造のモスクでしたが、半世紀以上に渡って地元のイスラム教徒の方々に親しまれてきました。
東京回教礼拝堂が1986年に老朽化によって取り壊された後、トルコ共和国宗務庁が中心となって2000年再建されたのが現在建つ東京ジャーミイの建築です。
はじめて訪れた人は見慣れぬその姿に圧倒される人も多いですが、よく見ていくと建物の外部の細かい装飾や、イスラムの教えを表したカリグラフィー(文字を美しい模様のように変形させたもの)に心を奪われます。
イスラム教は偶像崇拝が禁止されているので、建物の内外にはこうしたカリグラフィーによる装飾が溢れていて、東京ジャーミイの見どころの1つにもなっています。
尚、この東京ジャーミイではイスラム教徒でなくても内部を見学することが可能です。
建物の外壁には「見学はご自由です」という大弾幕も掲げられていて、一般の方にも開かれています。見学の際には女性はストールかスカーフが必要であったり、露出の少ない服装とするなどの最低限のルールはありますが、それさえ守れば誰でも見学できる寛容なモスクです。
見学については公式HPにも丁寧な案内がありますので、訪れる人は参考にしてみて下さい。
参考HP
東京ジャーミイ公式HP 見学について:https://tokyocamii.org/ja/visit/
実は私は学生時代に一度この建築を訪れたことがあったのですが、内部を見学するのは今回が初めて。ドキドキしながな入り口のドアをくぐります。
2.内部を見学!信者以外も見学できる開かれた建築に感激
緊張しながら内部に入ると、外部とは一味違った落ち着いた上品な空間が広がります。
1階はトルコ文化センターとしての役割も持っていて、トルコの民芸品や芸術作品が展示されるギャラリーにもなっています。
恐る恐る中に入ると、入口にいた男性から声を掛けられ、中を案内してもらうことが出来ました。
「今これを無料で配っているからよかったらお土産に持って帰ってよ」「スカーフがとっても似合うね。写真を撮ろう」と明らかに建築を見に来たであろう私達にも分け隔てなくフレンドリーに接してくれる男性に緊張がほぐれます。
1階はギャラリーの他、トルコ民家の応接間を再現したというゲストルームや講演会やイベントに使われる多目的ホールなどが配置されています。
建設の際にはトルコから直接材料を運び、トルコの職人や建築家を呼び寄せてつくったというだけあって、どこを見ても精巧で丁寧なつくりに感動します。
日本の建築とは全く異なる文脈と趣にもかかわらず、どこか安心感があり、くつろげるような空間となっているのがとても面白かったです。
先ほどの男性から「ちょうどいいね。あと少しで礼拝が始まるから是非見ていくといいよ。後ろのほうであれば礼拝もみれるから」と優しく声をかけてもらいました。
後から知ったのですが、この男性は下山茂さんという日本人の男性で、早稲田大学卒業後アフリカのスーダンでイスラムの村々を渡り歩いたことをきっかけにムスリムの世界に入った方のようです。
短い時間しか接していませんが本当にパワフルでフレンドリーで魅力あふれる方でした。
今回意図していたわけではないですが、訪れたのがちょうど12時の礼拝の直前だったのは偶然とはいえものすごく幸運でした。
下山さんが教えてくれた通り、ここ東京ジャーミイではくれぐれもマナーを守った上でですが、礼拝時も礼拝堂の内部を見学することが出来ます。
貴重な礼拝の様子を見させていただくために早速2階の礼拝堂に向かいます。
彫刻のような壁の装いやその上に建つ屋根の精工な装飾など見どころが満載でした。
2階の上がると半ドームの並ぶ広場に出ます。カラッとした雰囲気の広場に広がる異国のデザインに一瞬東京にいることを忘れてしまいます。
建物は伝統的なオスマン・トルコ様式を表したデザインとなっていて、どこを見ても空間と装飾の美しさに目を奪われます。
礼拝まで15分ほど時間があったので、ここから内部に入って先に礼拝堂の見学をさせてもらいます。
入口で靴を脱いでいざ礼拝堂の中に入ります。
ちなみに石造りの外壁やカリグラフィだけでなく、木製のドアの装飾もとっても素敵でした。完全に閉じるでもなく内部と外部をゆるやかにつなぐ木細工によるドアもこのモスクのあり方を象徴しているようでした。
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3.礼拝堂がスゴい!宇宙を感じさせる荘厳な建築に酔いしれる
モスクの中は女性はストールもしくはスカーフの着用が必須です。持っていない方の為に貸し出し用のスカーフもおいてくれていますが、この後ご時世ですのでできれば自分のスカーフを持っていくことをおススメします。
男性も露出は避けるなどの最低限のマナーを守って中にはいりましょう。
礼拝堂の内部に入るとそこには圧巻の内部空間が人がります。
こちらの礼拝堂は中2階部分も含めると600人以上もの人が入れるそうで、日本にあるモスクの中でも最大級のもの。
真ん中の大ドームを中心に6つのドームが取り囲む空間はまさに小さな宇宙。壮大な空間でありながら、何か大きなものに包み込まれているような安心感も感じます。
この後の礼拝で実感するのですが、このドームは音響装置としての役割も担っていて、礼拝の最初に謳われる恐らくコーランの一説であろう言葉が美しく反響します。
一見すると美しい模様のようにみえる装飾はすべてアラビア語のカリグラフィーになっていて、その1つ1つがクルアーン(コーラン)などをはじめとするイスラムのメッセージとなっています。
カリグラフィーの他にも室内の装飾はアラベスク模様による細かい装飾に溢れています。
偶像崇拝をしないイスラム教では、植物や自然をモチーフにした幾何学模様が発展していて、そこには精巧さや複雑さと共存する秩序のようなものが感じられます。
模様の1つ1つには長い年月をかけて練り上げられ、受け継がれてきた伝統と奥深さを感じますが、そうした模様にもこの建築のもつ奥深さの秘密があるのだと思います。
東京ジャーミイのパンフレットには「ジャーミイにこめられた意味」ということが書かれていて、それによると
「ジャーミイは歴史」
「ジャーミイは文明」
「ジャーミイは芸術」
「ジャーミイは崇拝」
「ジャーミイは知識」
「ジャーミイは平等」
「ジャーミイは共存」
「ジャーミイは清浄」
「ジャーミイは避難所」
といった様々な意味があるとのことです。
実際にジャーミイの建築を訪れて、この文章を読んだときに感じたのが「なんて寛容なんだろう。そしてなんて知的なんだろう」という思いです。
イスラム教についてあまり知識がなく誤解している部分も多くありましたが、自分が思っているよりずっと寛容で知的な場所であったことに静かな感動を覚えます。
そして全く違った文化にふれることは、こんなにも心を豊かにしてくれるのだ、と強く感じました。
こちらは礼拝堂の背部の開口部。
礼拝中とても興味深かったのは、荘厳な空間での宗教的な儀式の最中に外部の音が結構聞こえること。
写真のようにモスクの中に開口部は結構空いていて、外の景色がよく見えます。
すぐ前の上原通りの車の音や、時には救急車の音が聞こえてくる礼拝堂で、彼らの祈りは日常の中にあって、これは彼らの日常の空間なんだと感じました。
モスクというと外界から遮断された閉鎖的なイメージを勝手に持っていたのですが、街と、もっと言うと世界と繋がった空間がモスクという空間なんですね。
礼拝が終わると、無言で腕を突き合わせて挨拶する男性の姿も見られました。ここは祈りの場でもあり、家族や友人が集まるコミュニティの場でもあります。
しばらく佇んだ後モスクを後にして、建物2階の外観を見学します。建物裏側にも丁寧にカリグラフィーが刻まれていて、まさに建物全体が大きなクルアーンであることが分かります。
ちなみに隣接する建物の2階にはカフェにもなっていて、本格的なトルコ料理のランチを頂くこともできます。
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スマホで街や建築を撮る時は、外付けのレンズがおススメです。
おススメはクリップ式タイプで、スマホのカメラレンズに合わせて挟むだけで、簡単に超広角撮影ができます。
色んな種類がありますが、イチオシはこちらのレンズ。
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+αでリモコンシャッターがあればさらに快適です。
こちらのドロップスタイルのシャッターはスタイリッシュで機能的。
カラビナもついてくるので、バッグやベルトに掛けられます。
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4.施設内のマーケットで雑貨やお土産をゲット
礼拝堂の見学を終えた後は1階にあるハラールショップショップでお買い物。
こちらのマーケットでは本場トルコの食材をはじめ、雑貨やお土産など様々なものが売られています。
ショットしたカウンターもあって、ここで佇んだり、立ち話をする信者の方がいたりと単なるショップにはない人間味あふれるマーケットでした。
実は最初に下山さんに話しかけていただいたときにこのマーケットも案内していただいたのですが、こちらの「ターヒン」と呼ばれる中東ではメジャーな胡麻ペーストが特におススメとのこと。
ぶろうのジャムのような「ペクメズ」と合わせてパンに塗ると絶品とのことで、折角なのでお土産に購入してきました。
1瓶560円ですが、セットで買うと1000円になってとってもお買い得。
いかがでしたでしょうか。
建築とは単なる器ではなく文化であり、人と合わせてはじめてその価値が発揮されることを改めて実感する1日でした。
最後はしっかりとお土産も入手して、文句なしに最高の建築巡りとなりました。
東京ジャーミイ・トルコ文化センター
設計:ムハッリム・ヒリミィ・シェナルプ+鹿島建設
所在地:東京都渋谷区大原1-16
アクセス:代々木上原駅より徒歩約3分
竣工:2000年
備考:2002年度日本建築学会作品選集
開館時間:10:00~18:00
入館料:無料
日本語ガイド付きツアー:毎週土曜・日曜・祝日の14:30~(無料)
公式HP:https://tokyocamii.org/ja/
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