今日は東京の荻窪駅周辺で建築巡りをしてきましたので、そこで出会った名建築について紹介していきたいと思います。
歴史ある近代遺構から有名建築家による作品までたっぷりと紹介していきたいと思いますので、是非建築巡りの参考にしたり、バーチャル建築巡りとして楽しんでいただければと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・荻窪エリアでの建築巡りを写真と文字でレポート
・荻窪エリアの著名な建築家がデザインした建築や歴史のある近代建築をまとめ
1.三菱UFJ銀行荻窪支店

まず初めに訪れた三菱UFJ銀行荻窪支店は、地上4階建ての大手銀行の支店ビルで安藤忠雄建築研究所が手掛けています。
安藤氏と言えばコンクリート打ちっぱなしのイメージが強いですが、ガラスや曲面を使って周辺環境を取り込むデザインが得意な建築家でもあます。近づくと思わず吸い込まれるような構成や現代的でスタイリッシュなデザインと自然環境とを対比共存させるようなデザインに安藤建築らしさを感じます。
4階の屋上は市民が自由に利用できるオープンスペースになっているので、訪れた時には是非立ち寄ってみて下さいね。

設計:安藤忠雄建築研究所
所在地:東京都杉並区荻窪5-28-9
アクセス:荻窪駅より徒歩約1分
竣工:2010年
2.NTT荻窪ビル

続いて訪れたのは荻窪駅の南口をでて5分ほど歩いたところにあるNTT荻窪ビルです。
この建物は、日本武道館や御茶ノ水の聖橋などを手掛けた建築家山田守が設計し、元々は荻窪郵便局電話事務室として建てられたものです。
交差点に面する丸みがかかったアール部分はもともと2階建てで、白い壁面に大きなガラス窓が特徴だったのですが、訪れてみてビックリ。現在は褐色のパネルに覆われ、3階建てになっています。
それでも側面部を見てみると、モダニズム建築らしい無駄をそぎ落としたデザインを垣間見ることが出来ます。
各地でこの時代の建物の建て替えが進んでいますが、どういう形であれ取り壊されないで使われ続けていることに感謝したい建築です。

設計:山田守/逓信省
所在地:東京都杉並区荻窪4-31-1
アクセス:荻窪駅より徒歩約4分
竣工:1932年
■旧中田家長屋門
ちなみにNTT荻窪ビルの目の前にある古い長屋門は、江戸時代に建てられた中田家の門を移築したものです。

元々この地に建っていた中田家は地元の名士で、明治天皇が休息した明治天皇荻窪御小休所として史蹟指定されていました。
戦後に邸宅を取り壊して高層ビルを建てる際に小休所は壊されてしまいましたが、長屋門は壊されずに残っています。
裏側をみると現在は駐輪場や物置のようにも使われているようでしたが、残っているだけでも貴重な歴史遺産。以前桜の季節に訪れた時はとても美しい都市景観を形成しています。

所在地:東京都杉並区荻窪4-30-5
アクセス:荻窪駅より徒歩約4分
竣工:江戸時代(その後移築)
3.旅館西郊・西郊ロッヂング

NTT荻窪ビルの交差点から東に3分ほど歩いたところにあるのは、昭和初期に建てられた高級下宿であった旅館西郊・西郊ロッヂングです。
交差点に面して建つ丸みを帯びた建物が新館ですが、それでも1938年の建物。
奥の旅館西郊は現在も旅館として宿泊ができ、手前の西郊ロッヂングは賃貸住宅として利用されていて、いずれも近代建築・レトロ建築好きから圧倒的な人気を得ています。
先ほどのNTT荻窪ビルがエリート建築家による純モダニズム建築なのに対して、こちらの建物は所々に和の要素が入り込む和洋折衷モダニズムなのも見どころのひとつ。
どちらの建物も、当時としては抜群にお洒落で街の話題の建物だったことが想像できてワクワクします。


所在地:東京都杉並区荻窪3-38-9
アクセス:荻窪駅より徒歩約7分
竣工:1931年、1938年
4.荻窪家族プロジェクト

荻窪家族プロジェクトは、14戸の賃貸住居とコモンスペース、オーナー住居からなる集合住宅です。
賃貸部分は基本的にはワンルームになっていて、各個室の他にも共有のキッチンや浴室、ラウンジ、アトリエ、屋上ガーデンなど、様々なものが共有できるように計画されています。
集まって住まい、生活空間の一部を少しずつシェアすることで豊かな生活環境と、家族のような人間関係を生み出す住まいのあり方がデザインされています。

設計:連健夫建築研究室
所在地:東京都杉並区荻窪4-24-18
アクセス:荻窪駅より徒歩約8分
竣工:2015年
5.区立大田黒公園 記念館

区立大田黒公園は、ドビュッシーなどを日本に紹介したことでも知られる音楽評論家の大田黒元雄氏の邸宅跡を区が整備してつくられた公園です。
公園の中を進んだ先に見えてくるピンク色の建物は1933年に大田黒氏が仕事部屋として建てたもので、現在は記念館として整備されて内部を無料で見学することができます。
室内の仕事部屋は繊細な彫刻が施された家具や、当時使われていたピアノ、暖炉などがきれいに保存されていて、太田黒氏が過ごした空間をタイムトリップしたかのように追体験できます。
外観はとってもシンプルな形状。周りの自然が豊かなので、多様な自然にシンプルな建物がよくマッチします。


公園内は開園時間内であれば誰でも無料で散策することが出来きます。
1980年代初頭の公園開園時に建てられた茶室の他、鯉の泳ぐ池や茶室の奥に見える蔵も見どころが多い公園となっています。
こちらの蔵は記念館と同年代に建築されたもので、登録有形文化財にも登録されているので、訪れた際は是非チェックしてみて下さいね。

設計:前田健二郎(記念館)
所在地:東京都杉並区荻窪3-33-12
アクセス:荻窪駅より徒歩約10分
竣工:1933年
備考:登録有形文化財(記念館、蔵)
6.アトラス 荻窪大田黒公園

区立大田黒公園に隣接し、記念館のまさにすぐ隣に建つ分譲マンション アトラス荻窪大田黒公園です。
設計を行ったアーキサイトメビウスの今井敦氏は、数々のデザイナーズマンションを手掛ける集合住宅の名手でもあります。
手前に突き出た平屋の建物はマンションの住民専用のラウンジとなっていて、その奥に総戸数41戸の住居や共有のルーフテラスやラウンジが集積しています。
目前の大田黒公園の緑を借景のように取り込み自分の住居の一部にしてしまうようなプランニングや、前面道路から大きく引くことで建物の圧迫感を抑えながらオープンスペースをつくり出す手法など、確かなデザインセンスが光る建物となっています。

設計:今井敦/アーキサイトメビウス
所在地:東京都杉並区荻窪3-31-14
アクセス:荻窪駅より徒歩約10分
竣工:2020年
7.区立角川庭園 旧角川家住宅

区立角川庭園は、俳人で角川書店の創設者でもある角川源義氏の旧邸宅を区が整備してつくられた庭園です。
角川源義氏が住んでいた旧角川家住宅も一部改修が行われましたが、展示室や貸室として利用できる幻戯山房として生まれ変わりました。
建物の設計は角川氏の俳句仲間であったという建築家・俳人の加倉井昭夫氏。日本の伝統的な数寄屋造りを踏襲しながらも、モダニズムをはじめとする海外の影響も受けつつアレンジされた邸宅はまさに数寄屋です。

設計:加倉井昭夫
所在地:東京都杉並区荻窪3-14-22
アクセス:荻窪駅より徒歩約15分
竣工:1955年
備考:登録有形文化財
8.荻外荘

荻外荘(てきがいそう)は、東京帝国大学医科大学教授であった入澤達吉が、1927年に自らの別邸として建てた邸宅です。
その後1937年には内閣総理大臣となった近衞文麿が入澤から譲受け、近衛の住まいとして政治的な会談や親交の舞台にもなりました。
戦後は増改築が行われたり、邸宅の半分が移築されたりしていましたが、周辺を含めた整備と建物の復元工事が行われ、2024年にリニューアルオープンしました。
建物の設計を手掛けたのは入澤の義弟であった建築家・建築史家の伊東忠太であり、日本の建築史に大きな影響を与えた伊東の稀にみる住宅建築としても貴重な建物となっています。
丁寧に復元された建物内では、精巧な装飾や陰影豊かな空間、見事な調度品など見所が満載で、周辺の環境を巧みに取り込んだ、豪華で豊かな邸宅を堪能できます。

詳細記事
・荻窪「荻外荘」歴史の舞台ともなった伊東忠太設計の素敵な邸宅をレポート
原設計:伊東忠太
所在地:東京都杉並区荻窪2-43-36
アクセス:荻窪駅より徒歩約15分
竣工:1927年
休館日:水曜、年末年始
観覧料:一般300円、小・中学生150円
また、2025年の7月には道路を挟んだ向かい側の敷地に地上2階建ての展示棟がオープンしました。

多角形の屋根が軽やかに広がり、ルーバーやガラスの開口によって分節化された展示室やカフェが屋根の下に納められた建物はさまに現代の東屋のようです。
屋根の架構がダイレクトに現れる2階の展示室、外の自然と繋がる1階のカフェなど、小さいながら特徴的な空間が体験できるのも面白いです。
オープン当初は荻外荘内にあったカフェスペースやミュージアムショップは展示棟の開館に合わせてこちらの建物に移動したので、荻外荘を訪れた際には是非こちらもあわせて訪れてみてくださいね。

設計:隈研吾建築都市設計事務所
所在地:東京都杉並区荻窪2-42-12
アクセス:荻窪駅より徒歩約15分
竣工:2025年
後半も注目の建築が満載です