今回は、神奈川県の馬車道周辺で建築巡りをしてきましたので、そこで出会った名建築をレポートしたいと思います。
【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今までに約5000件の建築を巡った建築トリッパー
・今日も素敵建築を求めて東奔西走
【この記事で分かること】
・馬車道周辺エリアでの建築巡りを写真と文字でレポート
・馬車道周辺エリアの著名な建築家がデザインした建築や歴史のある近代建築をまとめ
・馬車道周辺エリアの建築の見どころや注目ポイントを解説
1.みなとみらい線馬車道駅

まずはじめに紹介するみなとみらい線馬車道駅は、2004年に開業したみなとみらい線の駅舎です。
みなとみらい線の駅舎は、著名な建築家を起用した設計でも知られていますが、ここ馬車道駅は建築家の内藤廣氏がデザインを手掛けました。
過去と未来の要素が掛け合わさった駅空間は、表面だけでなく本物の煉瓦積みの空間が広がっているのが大きな特徴。
重厚な煉瓦と対比するような白い天井や透明なベンチのデザインも魅力的で、それぞれの素材がお互いを引き立たせながら、過去から未来に繋がる駅空間をつくりだしています。


設計:内藤廣/内藤廣建築設計事務所+鉄道建設・運輸施設整備支援機構
所在地:神奈川県横浜市中区本町5-49
施工:2004年
2.横浜アイランドタワー(旧横浜銀行本店別館)

横浜アイランドタワー(旧横浜銀行本店別館)は、馬車道駅前に建つ地上27階地下3階建てのオフィス、ギャラリー、店舗等の複合施設です。
アイストップにもなっている低層部分は、1929年に建てられた旧第一銀行横浜支店を曳家して保存・復元して活用しているのが特徴です。
水平に伸びる低層の古典主義建築と、垂直に伸びつつ水平性を受け継いだ端正なデザインのタワーのバランスも素敵で、古さと新しさが共存する横浜を象徴するような建物となっています。


原設計:西村好時+清水組
設計:UR都市機構+槇総合計画事務所
所在地:神奈川県横浜市中区本町6-50-1
アクセス:馬車道駅より徒歩約1分
施工:2003年(旧建物は1929年)
備考:横浜市認定歴史的建造物
3.横浜市役所

横浜市役所は、近隣エリアに点在していた市役所を集約し、2020年に竣工した地上32階地下2階建ての市庁舎です。
現代的なスタイリッシュさと凛とした日本らしさが融合した外観が特徴の庁舎は、足元では巨大なアトリウムによるオープンスペースや水辺と一体化するようなテラス空間が様々にデザインされているのが特徴です。
庁舎でありながら街の一部のような空間は、高低差による空間の仕切りや視線の抜けが巧みに取り入れられているのがとても素敵でした。


設計:竹中工務店+槇総合計画事務所+NTTファシリティーズ
所在地:神奈川県横浜市中区本町6-50-10
アクセス:馬車道駅より徒歩約1分
竣工:2020年
備考:第63回BCS賞
第64回 神奈川建築コンクール優秀賞
4.横浜北仲ノット

横浜北仲ノットは、かつて旧横浜生糸検査所の敷地であった場所に建てられた地上58階地下1階建ての集合住宅、ホテル、商業施設等の複合施設です。
高層タワーの足元には1926年に建てられた倉庫と事務所が保存されていて、新旧の間のスペースは半屋外のオープンスペースとして整備されています。
生糸をモチーフにデザインされた低層部分の店舗や軽やかに伸びるタワーと、煉瓦の風合いと重厚感あふれる旧建物部分のコントラストも鮮やかで、新旧の要素が合わさり、お互いを引き立てているのにも注目です。


原設計(旧倉庫部分):遠藤於菟
新築設計:鹿島建設
所在地:神奈川県横浜市中区北仲通5-57-2
アクセス:馬車道駅より徒歩約1分
竣工:1995年(旧建物は1926年)
備考:横浜市認定歴史的建造物
5.横浜第二地方合同庁舎(旧横浜生糸検査所)

横浜第二地方合同庁舎(旧横浜生糸検査所)は、1926年に横浜生糸検査所として建てられ、戦後は横浜農林総合庁舎として使われた庁舎を建替えてつくられた地上23階地下3階建ての庁舎です。
建て替えに際しては、低層部分は旧横浜生糸検査所の建物を復元してデザインされているのが大きな特徴。
南側では新旧の建物が融合しているのがよく分かりますが、正面から見ると後ろにそびえる高層タワーに対して低層部が浮き上がり、別々の建物に見えるのが面白かったです。


原設計:遠藤於菟
設計:関東地方建設局
所在地:神奈川県横浜市中区北仲通5-57
アクセス:馬車道駅より徒歩約1分
竣工:1993年(旧建物は1926年)
備考:横浜市認定歴史的建造物
6.アパホテル&リゾート横浜ベイタワー

アパホテル&リゾート横浜ベイタワーは、地上35階地下2階高さ約135m、客室数2311室の超大型ホテルリゾートです。
1棟のホテルとしては日本で最大の客室数を誇るこのホテルは、赤レンガ倉庫のリノベーション設計を手掛けた新居千秋都市建築設計がデザインを手掛けています。
新居千秋氏と言えば両国のアパホテル&リゾートも手掛けていますが、ガラス張りのオフィスビルと異なり白い外壁に規則正しく並ぶ窓が作り出すホテル独特のデザインと、足元に広がる立体的なテラスが素敵な注目のホテル建築となっています。


設計:新居千秋/新居千秋都市建築設計+久米設計
所在地:神奈川県横浜市中区海岸通5-25-3
アクセス:馬車道駅より徒歩約3分
竣工:2019年
7.東京藝術大学馬車道校舎/旧富士銀行横浜支店(旧安田銀行横浜支店)

東京藝術大学馬車道校舎は、1929年に安田銀行横浜支店として建てられた銀行建築です。
近年は、2001年まで富士銀行の横浜支店として使用された後、2005年に東京藝術大学大学院の校舎となっています。
ドリス式の列柱が並び、ルスティカ積みの荒々しい外壁が特徴の建物は、銀行建築らしい重厚感と堅牢さがよく表れています。
建物南側部分は1954年に増築されたものですが、元の建物に馴染みつつ絶妙に雁行していることで元の建物の正型のシルエットが浮かび上がっているのも素敵です。


設計:安田銀行営繕課
所在地:神奈川県横浜市中区本町4-44
アクセス:馬車道駅より徒歩約1分
竣工:1929年(1954年増築)
備考:横浜市認定歴史的建造物
8.馬車道大津ビル(旧東京海上火災保険ビル)

馬車道大津ビル(旧東京海上火災保険ビル)は、馬車道沿いに1936年に建てられた地上4階地下1階建ての建物です。
現在はオフィス、ギャラリーとして使われている建物は、古典様式を引用した荘厳な近代建築が多く建つ馬車道エリアの建築の中で最もシンプルな建物となっています。
派手さはないですが、近づくとわかる細かな装飾や、彫刻のような開口部、バランスのとれたプロポーションなど、よく見ると伝わってくる設計者のこだわりと技量が光る馬車道の隠れた名建築です。


設計:木下益治郎
所在地:神奈川県横浜市中区南仲通4-43
アクセス:馬車道駅より徒歩約1分
竣工:1936年
備考:横浜市認定歴史的建造物
9.神奈川県立歴史博物館

神奈川県立歴史博物館は、1904年に横浜正金銀行本店として建てられた銀行建築を改修した博物館です。
建物の設計を手掛けたのは、横浜赤レンガ倉庫の設計者でもある妻木頼黄で、戦後まで銀行建築として利用された後、1967年に建物の修復・復元工事が行われて県立の博物館として再オープンしました。
石材を全面に使ったネオ・バロック様式の建物は、元銀行らしい堅牢で格調高いデザインとなっていて、天に聳え立つドームや精巧な彫刻など見どころが満載。
また1階は喫茶ともしびというカフェが入っているので、建築巡りの合間のランチスポットにもピッタリです。


設計:妻木頼黄
所在地:神奈川県横浜市中区南仲通5-60
アクセス:馬車道駅より徒歩約1分
竣工:1904年
備考:重要文化財
10.損保ジャパン日本興亜横浜馬車道ビル(旧川崎銀行横浜支店)

損保ジャパン日本興亜横浜馬車道ビルは、神奈川県立歴史博物館の南側に建つ地上9階地下2階建てのオフィス、店舗等の複合施設です。
元々の建物は1922年に建てられた旧川崎銀行横浜支店で、妻木頼黄のもとで学んだ横浜出身の建築家 矢部又吉が設計を手掛けてたもの。
重厚感のあるルネサンス風の外壁の一部を保存しつつ、ミラーガラスによる現代的な建物を使った建物は、新旧の要素がスリリングにお互いを引き立てあっていて、後の横浜の建築にも大きな影響を与えました。
また、東側の道路に隣接するスペースは公開空地にもなっているので、訪れた際は是非内部の空間も体験してみてほしいです。


原設計:矢部又吉
設計:日建設計
所在地:神奈川県横浜市中区弁天通5-70
アクセス:馬車道駅より徒歩約2分
竣工:1989年(旧建物は1922年)
備考:第31回BCS賞
横浜市認定歴史的建造物
11.ディーグラフォート横浜(旧東京三菱銀行横浜中央支店)

ディーグラフォート横浜(旧東京三菱銀行横浜中央支店)は、元々は現在の三菱UFJ銀行の前身の一つである第百国立銀行の支店として1934年に建てられた銀行建築の一部を保存・復元して建てられた地上21階地下1階建ての集合住宅です。
元々の建物は損保ジャパン日本興亜横浜馬車道ビルと同じく矢部又吉が手掛けていることもあってか、マンション部分の外観は損保ジャパンを意識したブルーとホワイトのデザインでまとめられています。
低層部に立ち並ぶイオニア式の円柱は、タワーマンションと組み合わさることで新たな役割を担っているように見え、ユニークな景観をつくりだしていました。


原設計:矢部又吉
設計:戸田建設
所在地:神奈川県横浜市中区本町4-41
アクセス:馬車道駅より徒歩約1分
竣工:2004年年(旧建物は1934年)
備考:横浜市認定歴史的建造物
12.横浜銀行協会(旧横浜銀行集会所)

横浜銀行協会(旧横浜銀行集会所)は、本町通りに銀行員の交流と親睦を目的として建てられた建物です。
銀行建築といえば古典主義建築ですが、こちらの建築は当時流行していたアール・デコ調を採用したスタイリッシュなデザインが特徴の建築です。
細部を飾るテラコッタの装飾も見事で、派手さはなくても華やかさがあり、時代の最先端をいく先鋭性と気品に溢れた素敵な建築となっています。


設計:大熊喜邦+林豪蔵
所在地:神奈川県横浜市中区本町3-28
アクセス:桜木町駅より徒歩約2分
竣工:1936年(1965年増築)
13.日本郵船歴史博物館(横浜郵船ビル)

日本郵船歴史博物館(横浜郵船ビル)は、1936年に建てられた横浜郵船ビルを改修してつくられた博物館です。
16本のコリント式の立ち並ぶ外観が印象的な建物は、2000年代に入って博物館としてリニューアルしました。
事務所として建てられたこともあってか、近隣に建つ銀行系の近代建築と比べてみてみると、重厚感を持たせつつも端正で合理的なオフィスらしいデザインとなっているのがとても面白いです。


設計:和田順顕建築事務所
所在地:神奈川県横浜市中区海岸通3-9
アクセス:馬車道駅より徒歩約3分
竣工:1936年(2003年改修)
14.かながわビル(県民共済馬車道ビル)

かながわビル(県民共済馬車道ビル)は、日本郵船歴史博物館を南下したところに建つオフィス、ホール、ギャラリー等の複合施設です。
角地の敷地に対して丸みを帯びながらカーブする外装と、斜めに伸びる屋根が特徴の建物は、知らずに通ると通り過ぎてしまうほど街に溶け込んでいます。
東側のエントランスは屋根まで伸びるシリンダーが伸びるデザインとなっていて、建物内に都市の要素を引き込んでいます。


設計:黒川紀章/黒川紀章建築都市設計事務所
所在地:神奈川県横浜市中区元浜町4-32
アクセス:馬車道駅より徒歩約2分
竣工:1983年
15.YOKOHAMA AIR CABIN

YOKOHAMA AIR CABINは横浜市中区の桜木町駅前と、コスモワールド等がある新港地区の運河パークを結ぶロープウェイです。
駅舎のデザインは山下設計が手掛けていて、丸みを帯びたガラスの軽やかな外装が印象的な駅舎となっていて、ぐるぐると横浜を循環するようなイメージを感じます。
また、ロープを支える鉄塔はよく見ると、上の方はホワイト色ですが、下に行くにつれて少しグレー掛かったいろに変化していで都市景観への配慮が見られるのも注目ポイント。
大きな開口が取られたキャビンからは、普段は見ることのできない高さから横浜の街を堪能できます。


設計(駅舎):山下設計
所在地:神奈川県横浜市中区
アクセス:桜木町駅より徒歩約1分
竣工:2021年
公式HP:https://yokohama-air-cabin.jp/
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