横須賀美術館を見学!不思議な建築の見どころを解説【神奈川県横須賀】

今回トリップする建築はこちら。

横須賀からバスで15分程のところにある「横須賀美術館」です。
横須賀美術館は北側を東京湾に向け、3方を緑地に囲まれた敷地に建つ美術館で、建築家の山本理顕(やまもとりけん)氏が設計を行っています。
山本理顕氏といえばこのブログでも取り上げた福生市庁舎をはじめ様々なプロジェクトを手掛けた日本を代表する建築家ですが、2008年竣工した横須賀美術館はそんな山本理顕氏の初の美術館でもあります。
いったいどんな建築なのか早速見ていきたいと思います。

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1.地中に埋まった美術館!開くと閉じるを両立させるデザインに注目

バスを降りて2分ほど歩くと見えてくるのはガラスに囲われて地中に埋まっている不思議な美術館です。
通常の美術館は収蔵品を守るため、そして美術鑑賞に集中する為に閉ざされた建築となっていることがほとんどですが、この美術館ではそんな閉ざされた美術館のイメージを打ち崩すとてもクリアなイメージです。

早速近づいてみると地上に見えていたのは建物の上半分だけで、もう半分は丘の地下部分に埋まっていることに気づきます。
来場者は緩やかな丘を登りながら自然と1階のエントランスに導かれますが、初めにみた時にはこの丘が建物を外部の環境から守るためにつくられたものであり、美術館の目の前のオーシャンビューに視線を誘導する役割も担っていたことには正直気づきませんでした。
あまりにも自然な丘なので初めて訪れたときは「そういうものなのか」と自然に受け入れていましたが、実は建物を外部環境から守りつつ海への絶景へ視線を誘導する建物構成がとても巧みに計算されています。

さらに近づいてみると建物はガラスの外皮とその内側の鉄の内皮の2重構造になっていることがよくわかります。
このガラスと鉄の2つの素材が入れ子のような構造になっていて、まるで繭のシェルターのように建物全体を包み込んでいます。
美術館の作品にはデリケートな環境管理が欠かせませんが、この「建物の半分地下に埋める」「外皮ガラス」「内皮の鉄板」という3重の対策を建築全体で行うことで閉じながら開いた美術館を実現しているのが横須賀美術館です。

内皮の鉄板には丸い開口が開いていて、明るい光を建物内に取り入れつつ、これがそのまま美術空間へのエントランスにもなっています。
穴のあいた鉄板の内皮、その向こうに見えるガラスの外皮、その外側に伸びる芝生の広場。単純に閉じるでもなく、開くでもなく、外部の環境に対していくつものレイヤーを設けてグラデーションのように周辺環境とのつながりや距離感を調整しています。

こうして建物全体を地中に埋めることは、外部の環境から建物をしっかり守りながら構造的にも軽やかで大きな空間を実現させています。
実は一見この建物は鉄とガラスの建築のようにも見えますが、建物が地下に埋まっているのでその主要な構造は鉄筋コンクリートでつくられています。そして地下に埋まった鉄筋コンクリートの土台の上に鉄骨で組まれた大屋根が架かっているのです。
横須賀美術館に入ると余計な柱が全くないことにも驚きますが、地下に根を張る鉄筋コンクリートがまるで基礎のように上の鉄板と屋根を支えているので、その分地上部分の自由度が高まっているのです。

この土台となる鉄筋コンクリートによって建物の内部は極力制約を受けない大胆なスペースが実現していて、天井高の高い展示スペースや立体的に配置されたワークショップや映像スペースなど横須賀美術館の特徴でもある魅力的な空間が実現しています。

2.自然と建築のバッファーゾーンにも注目

続いて注目したいのが自然と建築のバッファーゾーン(中間領域)の取り方です。
建物の構成をよくよく見てみると、建物の海側の前面部は基本的にはカフェレストランやミュージアムショップになっていて、塩害をはじめとする外部環境から収蔵品を守るバッファーゾーンがつくられていることに気づきます。
これも海風をはじめとする外部の自然環境から建物を守る仕掛けの1つですが、建物の正面側をこのようなバッファーゾーンとすることで美術館と外部環境の間に人が滞在し、賑わったりくつろいだりする中間領域がつくり出されています。

こちらの建物の正面に向かって左手から見ると路地の様にも見えます。
建物の正面が人が集まる場所になることは、集まった人からすればこの建築が建つまでは意識されなかった海の方向へ自然と視線が向く客席にもなり、訪れた人々自身も美術館の「顔」になり美術館の賑わいを演出しているのがとても面白いと思います。

3.山本理顕氏は「竪穴式」の建築家

私的な意見ですが、戦後活躍した日本の著名な建築家は「高床式」と「竪穴式」の2つのタイプが存在すると思います。
「高床式」の建築家はとにかく建物を持ち上げてピロティや人口大地をつくり、土地から離れた上空に建築をつくる建築家です。丹下健三氏や菊竹清訓氏は高床式建築家の代表格でしょう。

それに対して山本理顕氏は「竪穴式」の代表的な建築家といえます。
埼玉県立大学や福生市庁舎など山本理顕氏の建築はとにかく地中に埋まり、大地と一体となった建築ばかりです。
そんな中、海に面した厳しい敷地環境、作品を収蔵するシェルターとしての役割、広がる海への眺望といった様々な条件が重なった横須賀美術館はまさに竪穴式建築家にピッタリの条件でもあり、その手法が遺憾なく発揮されています。

外部の環境と関わりを調整し、1つのシェルターとして存在する建築というテーマは山本理顕氏が様々な建築で問い続けてきた共通のテーマでもあります。
この建築ではそれらのテーマが建築デザインとピッタリ結びついただけでなく、厳しい外部環境がそのまま美しさにも繋がっているのも大きな特徴です。
1階のテラス席だけでなく屋上テラスからガラスの大屋根越しに見る景色はまさに絶景でした。

私は今までにこの美術館を3~4回訪れていているのですが、いろいろな美術館の中で一緒に行った人の満足度がダントツナンバーワンの美術館がこの横須賀美術館だったりします。
ちょっと行きづらい場所にはあるのですが訪れて絶対損はない建築ですので、温かくなってきた春の休日にちょっと足を延ばしてトリップしてみてはいかがでしょうか。


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名称:横須賀美術館
設計:山本理顕
所在地:神奈川県横須賀市鴨居4-1
最寄り駅:横須賀駅からバスで約30分
竣工:2006年

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