今回は他の建物で火災が起きたことを想定して、その炎や熱で自分の建物が延焼しないようにするための規制いわゆる「延焼のおそれのある部分」について解説したいと思います。
このブログの管理者であるやま菜は、普段このブログでは私が巡った建築をレポートしていますが、実は設計事務所で建築の設計を行う建築士でもあります。
建築設計者以外にはあまりなじみのないものかも知れませんが、街に建っているすべての建築物はこのルールを元につくられています。建築の法律を知ることで街に建つ建物の見方がちょっと変わったり、新たな発見があるものです。
以外に身近な延焼ライン、いったいどんな規定なのか、早速見ていきましょう!
尚、記事内容は執筆時点に私が把握している内容をもとに記載しています。建築法規については法改正や地域の条例、個別の条件によっても異なってきますので、実際に計画する際は建築士の方にご相談ください。
1.延焼のおそれのある部分とは?
延焼のおそれのある部分は、建築基準法2条1項6号に規定されていて、条文を引用すると以下の通りです。
“延焼のおそれのある部分 隣地境界線、道路中心線又は同一敷地内の二以上の建築物(延べ面積の合計が五百平方メートル以内の建築物は、一の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線から、一階にあつては三メートル以下、二階以上にあつては五メートル以下の距離にある建築物の部分をいう。ただし、防火上有効な公園、広場、川等の空地若しくは水面又は耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分を除く。”
まとめると
①隣地境界線、道路中心線、(1つの敷地に2つの建物がある場合は2つの建物の外壁の中心線)から一定距離の範囲
②一定距離の範囲は1階は3m、2階以上は5mの範囲が対象
③面積の合計が500㎡以内ならば1つの建物とみなせる
④防火上有効な公園や川などの空地に面する場合、その部分は免除される
となります。
2.何のための規定なの?
火災が起きたときに火元から出火した炎や飛んできた火の粉によって自身の建物が燃えない(消火活動が行われるまでに延焼しない)ようにする為の規定です。
自分の建物でない部分が出火したことを想定しているので、隣地との境界線や道路から一定以上離して建築することや、距離が近い部分については防火性能を有する仕上下とすることなどが定められています。
3.具体的にはどうなるのか?
延焼のおそれのある部分では、その範囲内にある外壁であったり屋根であったり開口部(窓)を一定以上の性能にする必要があります。
制限が生まれる範囲は
1階:隣地境界線または道路の中心から3m
2階以上:隣地境界線または道路の中心から5m
と決められています。図にすると最初の画像のようなイメージとなります。
炎だけでなく、飛んでくる火の粉に対しては上の階のほうが影響を受けやすいので、1階と上階では上階のほうが規定を受ける範囲が大きくなるようになっています。
また、隣地や道路といった敷地外だけでなく、同じ敷地内であっても面積の合計が500㎡を超える場合は建物間の外壁の中心からそれぞれ1階3m、2階以上は5mの範囲が延焼ラインにかかってきます。
4.ケーススタディ
では具体的に延焼のおそれのある部分とはどういった範囲になるのか建物のモデルを使ってみていきます。
今回ケーススタディで使うのはこんなケースです。
1つの敷地の中に3つの建物が建っていて、道路は2つの道路に接しています。
延焼ラインを書き込むとこんな感じになります。
整理すると
・隣地、道路から3m、5mの範囲は階数によって延焼ラインが異なる
・左と真ん中の建物は合計500㎡以内なので1つの建物とみなすので建物間で延焼ラインは生じない
・真ん中と右の建物は合計500㎡を超えてしまうので、建物の中心から一定距離に延焼ラインが生じる
の3つがポイントですね。
南側(下側)から見るとこんな感じになります。
東側(右側)から見るとこうですね。
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5.2つの建物の大きさが違う場合はどうなる
ここで注目したいのが真ん中と右の建物の外壁の範囲が違うことです。
こういった場合は短い建物から長い建物に向かって線を引き、45°反射した線から1階3m、2階以上は5mの範囲が延焼ラインにかかるようになります。
実際は隣り合う建物が全く同じ間口ということはほとんどないと思うので、多くの場合は今回の図のように限られた範囲での延焼ラインとなります。
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いかがでしたでしょうか。
以外に身近な延焼ライン、知っていくと街を歩いているときも見えないラインが気になってくるもの。
普段は気にしない建築法規ですが私たちの生活にとっても重要で身近なものですね。
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