中井「旧林芙美子邸」昭和初期を代表する作家と建築家よって生まれた邸宅をレポート

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今日は新宿区の中井に建つ旧林芙美子邸を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。

【自己紹介】
・建築好きのやま菜と申します。
・今日も素敵建築を求めて東奔西走

【この記事で分かること】
・旧林芙美子邸を実際に訪れたレポートを写真と文字で解説
・旧林芙美子邸の基本情報やアクセス方法、訪れる際のポイント

1.小説家林芙美子の自邸を改修した記念館を見学

今回訪れたのは、新宿区の北西エリアにある中井駅近くに建つ旧林芙美子邸です。
旧林芙美子邸は、1941年に作家である林芙美子の自邸として建てられた建物を改修してつくられ、現在は新宿区立林芙美子記念館として一般公開されています。

林芙美子は大正時代の1928年から連載の始まった「放浪記」が大きな話題となり、その後も様々な私小説やエッセイ、報道部報道班員として海外取材をまとめた著作などで知られる作家です。

こちらの邸宅は林芙美子が40歳手前となった1941年に建てられたもので、芙美子は病気で急逝するまでの10年間をこの家で暮らしました。

林芙美子記念館

芙美子は恋多き女性でもありましたが、建築界との繋がりでは白井晟一と恋人関係にあったことが有名です。
芙美子は20代の後半の時期に放浪記の大ヒットによって得た収入でパリへ旅をしますが、約8ヶ月に及ぶ旅の最中に出会ったのが、若き日の白井晟一でした。

白井は同時期に哲学を学ぶためにドイツに留学していましたが、義兄が開いたフランスでの個展の手伝いの為パリを訪れていて、そこで芙美子と恋に落ち、フランスの建築巡りをしたりお互いに影響を及ぼしたといいます。
白井は後に戦後日本を代表する建築家となり渋谷の松濤美術館をはじめ様々な作品を残しますが、二人の関係も後にお互いのエッセイとして残されていて、現在でも読むことができます。

二人の恋は終わり、月日が経ちましたが、芙美子が自邸を建てるにあたって最終的に建物の設計を手がけたのは建築家の山口文象です。
山口文象は芙美子と同時期に渡欧していて、坂倉準三の紹介もあって設計を手がけるに至りました。

旧林芙美子邸は2つの建物に分かれているのですが、こらは戦時の建築制限によって一建物の面積が約30坪に規制されていたことによります。

このことから自邸の建築に当たっては夫との2つの名義で2棟を建て、それらを連結させるという力技が用いられています。

現在の林芙美子記念館は、2棟の間にある勝手口と土間の連絡通路がアプローチになっています。
敷地の東側の棟に玄関や茶の間、水回りがまとめられ、西側に建てられた棟はアトリエや書斎、寝室となっています。

現在は資料や映像の展示スペースに改修されたアトリエと、南側に設けられた石蔵は内部を見学でき、その他の部屋は外からその様子を見学できます。
内部は不定期で公開されることもありますが、原則は外からの見学となります。

それでも当時の暮らしぶりやデザインのこだわりを随所に垣間見ることのできる、ユニークな記念館となっています。

2.芙美子のこだわりが凝縮した和モダン建築を堪能

林芙美子と山口文象によってつくられた邸宅は風が抜け、自然光が室内を照らす和の建築です。
自邸の建築に当たっては、芙美子自身もかなり建築を勉強し、建築書を読み漁ったり、使う素材についても全国を見て回るなど相当のこだわりをもってつくられました。

林芙美子記念館

元々白井晟一との関係があったり、様々な見聞に加えて作家としての感性も豊かな芙美子のこだわりは相当なものであったと想像できます。
一方で、様々に考えを巡らせてつくられた邸宅でありながら、実際の建築を見てみると品のよさと美しさが際立つ端正な佇まいにまとまっているのが味わい深いです。

まずはじめに見学したのが東側の棟にある茶の間です。

林芙美子記念館

芙美子らの暮らしの中心となった茶の間は、スギの天井にヒノキの広縁、掘り炬燵や造り付けの造作家具が備え付けられたこだわりのお部屋ですが、均衡がとれた落ち着く空間となっているのが印象的でした。
日本建築らしい和の空間を基調にしながらも生活に寄り添った工夫と美意識を感じます。

続いてみたのは茶の間のお隣にある小間です。 こちらのお部屋は書生や芙美子の母の部屋など時期によって様々に使われました。

林芙美子記念館

ちなみにこのお部屋の奥は本来の玄関となっています。
庭と一体となる境界の設えや奥行きのある空間構成も興味ですが、随所に住まい手視点でのこだわりが詰まっているのも注目ポイントです。

林芙美子記念館

例えば従来の日本の建築で大事にされていた客間よりも生活の場となる各部屋が優先されていたり、浴室の浴槽部分が掘り込み式になっているなど、実用性も考え込まれていることに新しい時代の息吹を感じて面白いです。

こちらは西棟のアトリエと書斎です。

林芙美子記念館

アトリエは内側から見ると障子の貼られた和のデザインでしたが、外側から見るとモダニズム建築らしい造形がみられるのが面白いです。

アトリエの隣の書斎は、元々は納戸としてつくられた部屋でしたが収納が多くあり風通しもよいこの部屋を後から書斎に変えたそうです。

庭に面した居間・次の間も簡素なデザインの中に、こだわりの素材やちょっとしたデザインが光ります。

林芙美子記念館

アトリエや蔵の展示物だけでなく、邸宅全体から芙美子の暮らしぶりや美意識を追体験することができるのがとても素敵な体験でした。

林芙美子記念館

素敵な邸宅をたっぷりと堪能して、この日の建築巡りも大満足のものとなりました。
とてもオススメのスポットですので、皆さんも機会があればぜひ訪れてみて下さいね。

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旧林芙美子邸
設計:山口文象
所在地:東京都新宿区中井2-20-1
アクセス:中井駅より徒歩約7分
竣工:1941年
休館日:月曜、年末年始
入館料:一般150円、小・中学生50円
備考:東京都選定歴史的建造物


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