隈研吾が設計した浅草文化観光センターに初潜入してきた【東京浅草】

東京建築巡り

皆さん浅草文化観光センターはご存知でしょうか。
東京近郊にお住まいの方は浅草寺や雷門を訪れたことがあるという方は多いと思いますが、その雷門の目の前にあるの観光案内所を含む複合施設が浅草文化観光センターです。

この建築は公開コンペで設計者が決定され、今や世界的建築家といえる隈研吾氏が当選・実現しました。
この公開審査には私も観客として参加していた思いで深い建築ではあるのですが、この審査会から10年間、一度も内部に入ってみたことはありませんでした。
この度遂に内部にも潜入してきましたので、その結果を踏まえてこの建築について徹底レポートしていきたいと思います。

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①浅草文化観光センターとは

浅草文化観光センターは浅草・雷門の目の前に建つ地上8階地下1階の建物です。
300㎡ちょっとの小さな敷地に観光案内所や多目的ホール、会議室、展示室、展望テラスが積層され、平屋の木造住宅が積み重なったデザインが特徴的です。

もともと3階建ての浅草文化観光センターがありましたが、築50年以上たち老朽化していることから2008年に公開コンペが行われ、隈研吾氏の提案が最優秀賞となり2012年にオープンするに至りました。

この公開コンペは私も聴衆としてしていましたが、前面ガラス梁で仲見世から引用したカラフルな幕が印象的な乾久美子氏の提案や、水平ルーバーが特徴的なシーラカンスの提案が印象的だったのをよく覚えています。
最終審査である2次審査に残った6つの提案の中で隈研吾氏の案はどちらかといえば「大人しい」提案に思え、個人的には選ばれないだろうなと思っていました。結果としては隈研吾氏の案が最優秀賞に選出、実現するとこになりました。
そんな隈研吾案も、当選案が発表されると「浅草の景観を壊しかねない」と反対論が唱えられたそうです。
では実際の建物はどうだったか、建物に行く前に設計者である隈研吾氏についてと、この建物の構成についてちょっとだけご紹介したいと思います。

②設計者の隈研吾ってどんな人

詳細は同じく隈研吾氏設計の高尾山口駅の記事でも紹介していますが、隈研吾は1954年、横浜生まれの日本の建築家です。
東京大学に入学し芦原義信、槇文彦、原広司などの名だたる建築家に師事し、大学院を卒業後は大手設計事務所の日本設計に入社します。
その後、大手ゼネコンや米国コロンビア大学の客員研究員を経て1990年に独立し、隈研吾建築都市設計事務所を設立しました。

1990年代後半から現在のように木などの素材を上手く活かした「負ける建築」をテーマに作品を発表し、権威的でモニュメンタルな建築を否定し、都市に開き、自然と調和するような建築を数多く生み出していきます。
近年では国立競技場を始め数々の国家的なプロジェクトの設計者として活躍しています。


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③建物の構成

建物の構成と開館時間は以下のようになっていますが、3階~5階の会議室や事務室以外は自由に出入りすることができます。
もちろん利用料金は無料で、1・2階の観光案内所の部分だけでなく、上階の施設も無料で入れますので、訪れる際は是非上の階にもいってみることをおススメします。

8階:カフェ・展望テラス
7階:展示スペース
6階:多目的スペース(飲食可・休憩可)
4階・5階:会議室・観光ボランティア事務室
3階:旅行団体支援スペース
2階:観光情報コーナー(情報検索用パソコン4台/公衆無線LAN、AC電源も使用可)
1階:案内カウンター・ロビー、外貨両替所
地下1階:化粧室

ホールも兼ねた多目的スペースは休憩スペースも兼ねているので、特別なイベントを行っているとき以外は自由に入って休憩できます。飲食物の持ち込みも可能なので劇場型のスペースで前面の雷門や仲見世を眺めっながら一息つくことができます。

ちなみに利用時間は観光案内部分が、9:00~20:00、会議室と展望テラス・カフェは22:00までとなっています。

④さっそく雷門前に突撃。外観を観る

浅草駅を降りて雷門に向かうと、シックな色合いの建物の上部が見えてきます。
建物は7つの平屋の家屋が積み木のように積み重なったデザインとなっています。隈研吾氏は「敷地が広くないので、ペンシルビルにならないように、また、浅草の風景に合うように屋根のある平屋を重ねるデザインを考えた」と説明しています。

コンペの時に比べて屋根の勾配が若干緩くなったりしていますが、その分安定感は増しています。
ちなみにこちらがコンペから数ヵ月後のコンペ展示会で公開されていた模型です。

屋根以外部部分にはガラスの外装の全面にピッチを変えた木製のルーバーが配置されています。
垂直方向には平屋を積み重ねることでボリュームを分節して、水平方向では細かく割ったルーバーで面を分割することで、建物のスケールをうまくダウンスケールさせています。

遠くからだと分かりずらかったのですが、近づいてみると、特に正面側ではルーバーの先はガラスで透けているのでさらに透明感が増します。この透明感は外から見たときだけでなく、建物の内側から見たときにも効いてくるのは流石だと感じました。

単にスケスケで空いているだけでなく、閉じながら開く、開きながら開くというのは例えば町屋のルーバーや障子といった日本古来からの建築要素を上手く用いているとも言えます。

また、この斜めの屋根と上階の床との間に生じた空間は設備の為の空間としても上手に使われています。
こうしてみると一軒奇抜に見える建築も、狭い敷地の中で最大限の効果を発揮する工夫が幾重にも積み重ねられた結果の建築であることが分かります。

ちなみに先に挙げた景観論争ですが、建物が竣工してからは景観に関する批判的な意見はあまり聞きません。
実際私が訪れた時もこの建物を景観を壊す奇抜なもの、として見ている人はいないように感じました。むしろこれだけの建物がありながら雷門を写真に撮る人は多くいても、この建物の存在はほとんどの人が気にしていないようでした。

⑤内部に潜入。内観を観る

早速中に入ってみます。
1階と2階は観光案内所の機能となっており、建物正面側の階段で上下に移動できます。
この2フロアも外観で見た斜めの屋根がうまく生かされていて、2つのフロアが連続して上に繋がっていきます。

階段部分には木のアートワークがありますが、こういった階段の途中にここまで大々的なアートワークがある建築もじつはちょっと珍しかったりします。
ここにも上下のフロアを繋ぐこと、その空間づくりに対する配慮がうかがえるポイントです。

2階は地上階と比べて人は少なめです。
情報を検索したい人は4台のPCを自由に伝えるほか、WifiやACアダプタもあるので自由に必要な情報にアクセスできるようになっています。

高尾山口駅もそうでしたが、隈研吾氏がどこまで関わっているのかは分かりませんが、近年の隈研吾建築はこうした利用者に対する配慮が主凄く充実しているのが特徴です。
隈建築を苦手とする人は結構多い(?)ですが、こうしたところは見習わなければと強く感じます。

こちらは6階の多目的ホールです。こちらのホールは外観で見た斜めの屋根が有効に利用されています。
こちらはイベントで利用されているとき以外は自由に使って休憩していいとのことです。
飲食も可なので買ってきたものを持ち込んで休憩、ということもできますが私が訪れたときには誰もいませんでした。

7階は展示スペースになっています。
フロアは基本的には床か外側に向かって下がっていたり、全面のカーテンウォールの為、内側から見ると街に視線が投げ出された感覚が強く、解放感と浅草という街への「近さ」を感じる仕掛けになっています。

このフロアはカーテンが目を引きますが、こちらは安東陽子氏というデザイナーが手掛けたものです。安東氏は隈研吾だけでなく、伊東豊雄氏、青木淳氏、平田晃久氏など数多くの著名建築家ともコラボしている織物や布といったテキスタイルのスペシャリストです。
こちらのカーテンの不思議な感覚は是非ご自身で体験してみることをおススメします。

よく見るとカーテンだけでなく天井も分節されていて、外装のルーバーのように建物のスケール感をグッと身近なものに引き寄せていることが見て取れます。この建築はこの分節ポイントを見つけてみて周るのもおススメます。

最後に8階の展望テラスです。
エレベータを降りて通路を歩くとまず見えてくるのはアサヒビールタワーと東京スカイツリーです。

こちらのフロアにはカフェの他に無料で座れる休憩スペースも用意されていて、浅草の眺望がこれでもかというくらいに望めます。

展望テラスからは今まで見たことのなかった上からの仲見世通りが望めます。
正面には仲見世通りと浅草寺、右を見ればアサヒビールとスカイツリー。まずはここを拠点に浅草観光の期待感を増幅するのもいいでしょう。

8階の展望テラスからはこちらの外階段を通って7階の展示スペースに入れますが、ここでも浅草の街との距離感を肌で感じることができます。

最後に建物の裏側の階段部分です。

こちらの階段も建築と一体化された照明や、センスを感じるサインなど細かいところまでデザインされています。
今回は1階からの順に各フロアを見てきましたが、私の見学時は、1・2階を見た後は一度エレベータで最上階まで行き、そこから階段で1フロアずつ降りていきました。
建築を見学するのであればこのルートが一番おすすめだと思いました。

いかがだったでしょうか。
今回はじめて内部に潜入してきましたが、実際に体験してみると細かい配慮とデザインの行き届いた建築に想像以上に驚かされてしまいました。
正直、隈建築はかつてM2・ドーリックでやったことからの反転ぶりなどずっと苦手としていたのですが、前回の高尾山口駅と合わせてその空間が持つ魅力に感服してしまいました。
特に近年の隈建築は実際に体験してみてその魅力に気づく部分も大きいと思うので、期待があればぜひ実際に体験してみてください。



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設計:隈研吾建築都市設計事務所
所在地:東京都台東区雷門2-18-9
最寄り駅:伊勢崎線浅草駅徒歩5分、銀座線浅草駅徒歩1分、都営浅草線浅草駅徒歩2分
施工:2012年

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